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これは「法の下の平等」を否定する発想だ。通常ならば「ありえない」と否定されるところだが、「法の下の平等」が適用されるのは内国民だけだ。外国人には適用されない。だから、外国人には不平等な扱いをするとしても、直ちには矛盾することにはならない。
では、何のためにそうするのか? それは、国内で犯罪した外国人が、母国に逃亡して、日本には引き渡されないことがあるからだ。本来ならば「犯罪人引き渡し条約」に基づき、犯人の身柄の引き渡しを求めるべきだ。ところが、その条約が結ばれていないことが多い。それというのも、日本には死刑という制度があるせいだ。すでに死刑廃止を決めた国は、自国民の生命を守るために、死刑のある日本には犯人を引き渡したがらない。かくて、犯人の身柄の引き渡しができなくなる。
堺市東区日置荘西町7丁のマンション一室で8月、住人の荒牧愛美さん(29)と長女リリィさん(3)が殺害された事件で、大阪府警は8日、殺人容疑で指名手配中のブラジル国籍の夫(33)について、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配したと発表した。夫は事件直後に出国し、ブラジルに滞在しているとみられる。
( → 堺の母子殺害容疑でブラジル人の夫を国際手配 府警、各国に協力要請:朝日新聞 )
海外に逃亡した容疑者を日本の法律で裁くには、日本の捜査機関が犯罪人引き渡し条約に基づき、身柄の引き渡しを求める必要がある。だが、国際法に詳しい北村泰三・中央大名誉教授は「ブラジルとは条約を結んでおらず、容疑者が日本に引き渡される可能性は低い」とみる。
条約を締結していなくても、外交交渉で引き渡しが実現することがある。ただ、ブラジルは自国民保護の観点から、ブラジル人を他国に引き渡さないと憲法で定めており、引き渡しは見込めないという。
北村名誉教授は「多くの国と条約を結ぶべきだが、日本は死刑制度があることを理由に敬遠される。死刑の恐れがある者は対象外とした上で、条約を結ぶ選択肢もある」と指摘する。日本の条約締結相手は米国と韓国だけで、他国と比べて極端に少ないのが現実だ。
( → 条約なし、引き渡しに難題 ブラジルへ帰国の男、堺で妻子殺害の疑い:朝日新聞 )
すぐ上にあるように、「日本は死刑制度があることを理由に敬遠される」とのことだ。
そこで、「死刑の恐れがある者は対象外とした上で、条約を結ぶ」という提案がなされているが、それだと、今回のように、複数殺人をした凶悪犯は、対象外となってしまう。だったら、意味がない。
それでは困る。そこで、困ったときの Openブログ。うまい案として、冒頭の案を出すのだ。「外国人には死刑を免除せよ」と。特に、「母国では死刑廃止がなされている外国人については」という条件を付けて。
こういうふうに法制化すれば、死刑の適用が確実に免除されるので、犯罪者を日本に引き渡すことも可能になるだろう。

[ 付記1 ]
この方法は、日本人だけに重罰が科されるので、「法の下の平等」に反するように見える。だから、普通の法学者の頭からすれば、「とんでもない」とされるだろう。こんなことを思い浮かべる法学者もいないだろう。
だが、そこはコロンブスの卵。「法の下の平等」に反するように見えることを成立させる、意外な方法があるのだ。それは「外国人は《 法の下の平等 》の対象外だ」という発想だ。
これはまるで、巨人の江川の「空白の一日」みたいに、制度の穴を突くようなインチキに見えるかもしれない。だが、二つの国の法制度が食い違うときには、それを何とか整合させようとする手法を考えてもいいのだ。
本来ならばありえないような手法も、場合によってはかろうじて成立させてしまってもいいのだ。いささか強引ではあるが。
[ 付記2 ]
ただし、この方法が実現しても、ブラジルとの間では適用されない。死刑の有無にかかわらず、ブラジルには「自国民を引き渡さない」という憲法の規定があるからだ。
したがって、本項の話の適用対象は、ブラジル以外となる。
[ 付記3 ]
ではブラジルとの間では、どうするか? ブラジル本国で「代理処罰」をしてもらえばいい。このことは、朝日の記事に記してあるので、そちらを参照。