2022年09月06日

◆ 園児の車内放置の対策

 幼稚園児を車内に置き去りにしたせいで、死亡させてしまった、という事件があった。これをどう予防するか?

 ――

 幼稚園児を車内に置き去りにしたせいで、死亡させてしまった、という事件があった。降車時に確認を怠ったせいらしい。
 5日午後2時15分ごろ、静岡県牧之原市静波の幼保連携型認定こども園「川崎幼稚園」の職員から「園児がバスの中で倒れ、意識がない」などと消防に通報があった。園外の駐車場にとめてあった送迎用のバスから河本千奈ちゃん(3)が見つかり、その後死亡が確認された。県警牧之原署は、千奈ちゃんが登園後、バスから降ろされないまま約5時間にわたって車内に置き去りにされていたとみて、業務上過失致死の疑いも視野に捜査している。
 目立った外傷はなく、熱中症の疑いがあるという。
 バスは同日午前8時50分ごろに園に到着。ただ、千奈ちゃんはバスから降ろされていなかったとみられている。登園時、バスには園児6人と、運転した幼稚園の増田立義理事長(73)、派遣職員の70代女性の計8人が乗っていたという。
( → 幼稚園のバス内で意識がない3歳女児発見、死亡を確認 静岡・牧之原:朝日新聞

 5日は普段運転している運転手が急きょ休み、園の増田立義理事長(73)がバスの運転をした。
( → こども園を家宅捜索 「降車確認、覚えてない」 女児死亡:朝日新聞

 実は、以前にも福岡で似た事例があって、そのときに事件の再発を防ぐ方針が文科省から出ていた。にもかかわらず、再発したわけだ。
 昨年7月、福岡県中間市の保育園のバス内に朝から夕方まで取り残された男児(当時5)が熱中症で死亡。
  男児の死亡を受けて文部科学省と厚生労働省、内閣府は昨年8月、都道府県や市町村などに通知を発出。送迎バスの運行について、運転担当職員のほかに子どもに対応できる職員が同乗▽乗車時、降車時に子どもの人数を確認▽座席に子どもが残っていないか確認▽確認した内容を職員間で共有――などの安全対策を各保育園、幼稚園、認定こども園などに促すよう自治体に求めていた。
( → 園バスに放置か、女児死亡 5時間、熱中症疑い 県警捜査 静岡:朝日新聞

 最後のチェックシステムがまともに働いていれば、事故は起こらなかったはずだ。ところが、事故が起こった。とすれば、このチェックシステムがまともに働いていなかったことになる。
 具体的に言えば、「派遣職員の70代女性」というのが、何も仕事をしていなかったことになる。本来ならば、この人がチェックするべきだったのだが、チェックしていなかった。
 増田理事長と派遣職員は、「千奈ちゃんの降車をはっきり確認したか覚えていない」という趣旨の話をしているという。
( → こども園を家宅捜索 「降車確認、覚えてない」 女児死亡:朝日新聞

 理事長はともかく、この派遣職員は何も仕事をしていなかったことになる。とはいえ、それもむべなるかな。この派遣職員は 70代女性ということなので、相当の高齢者だ。75歳ぐらいかもしれない。こんな高齢者は、責任の軽い作業をするだけにするべきであって、人命に関わるような最重要の業務を一人だけで担当するべきではない。
 なのに、こんな高齢の派遣職員(正社員ではない)に、人命に関わるような最重要の業務を一人だけで担当させた。そのようなことをした理事長に、最大責任があると言える。それも、経営責任だ。
 したがって、最重要の責任は、理事長の経営責任にあると言える。この幼稚園は、即時、業務停止処分として、免許取り消しにするべきだろう。そのあとは資産を売却して、他の幼稚園会社が経営すればいい。
 資産を売却したあとは、その代金で、園児の遺族への補償金とすればいいだろう。




 さて。今回の事件は別として、今後はどう対策すればいいだろうか?
 これについて、IT機器を使って事故の再発を防ぐ、という案が出た。しかし、高価すぎて、普及しにくいらしい。
 子どもの車内置き去りは海外でも大きな問題で、置き去りを検知し、事故を防ぐシステムへの注目が高まっている。車載向けセンサーを開発、生産するIEE(ルクセンブルク)のバス用レーダーセンサーは2020年に量産を始め、米国ではスクールバスへの搭載が増えているという。
 三洋貿易は「管理者はコスト負担を懸念している様子がみられるので、システムの普及には補助金などでコスト負担をおさえることが必要だ」としている。
( → 「園児残してバスを離れた」 送迎担当者267人中21人が経験あり:朝日新聞

 「金がかかるので、国の補助金に頼りたい」というわけだ。いかにも安直である。頭が悪すぎる。何でもかんでも金に頼ればいいというわけではないのだ。
 では、かわりにどうすればいい? 困った。

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「登降園管理アプリを使って、人数の整合性をチェックする。降車しない園児がいれば、人数の整合性でエラーが出るので、ただちに異常が検知される」

 これは、IT分野における「パリティ・チェック」のようなものだ。「パリティ・チェック」をすれば、エラーが出たときに、エラーが検出される。それと同様のシステムを、人数の整合性チェックに用いればいいのだ。

 まず、登降園管理というのは、下記項目で述べたようなものだ。そちらを参照。
  → 幼稚園・保育園のIT化: Open ブログ


kidsly.gif
出典:kidsly のサイト
 

 従来は電話で園児の欠席を連絡していた。しかしこれだと、電話の受付で、職員の負担が多大になる。
 そこで、スマホのアプリで園児の出欠を報告するようにするわけだ。

 すると、どうなるか? 今回の幼稚園は、園児が 158人。学級別で、それぞれの学級の人数もわかる。出席者数もわかる。ここで、親は「出席」と連絡したのに、現実には園内にいない園児がいれば、出欠表に現れた人数と、現実の人数とで、不整合が起こる。この不整合を検知することで、「園児が一人いない!」ということがわかる。そこでただちに、「どこだ? 園内にいるのか? いや、今は開園直後だから、きっとバスの車内だ!」とわかる。こうして、車内に置き去りにされたことは、10分後ぐらいに検知される。

 以上の方法は、登降園管理アプリを使うだけで済む。しかも、このアプリを使うのは、事務作業の効率化のために必要なので、もともと導入済みである。つまり、新たに上乗せしてかかる追加費用はゼロだ。コスト・ゼロで、安全確認ができることになる。

 というわけで、正しい対策は、「登降園管理アプリを使うこと」である。これによってコスト・ゼロで、十分な対策が実現できる。
 
 ※ ただし頭の古い園長・理事長は、登降園管理アプリを使えないので、さっさと退任してもらうしかない。
 


 [ 付記 ]
 当面の対策としては、「人数の二重チェック」をするといいだろう。つまり、車内にいる添乗員が人数のチェックをするだけでなく、車外にいる幼稚園教諭も人数をチェックする。バスから降りてくる園児の人数を、計数する。その数が、乗車した人数と一致するかどうかを、チェックする。(整合性のチェックだ。)
 この際、車内にいる添乗員は、75歳のボケ老人だとしても、車外にいる幼稚園教諭は若手であるから、計数を間違えることはない。こうして安全性は保たれる。

 ※ なお、バスの運転士は、計数には参加しない。バスの運転士は、運転だけに専念する。その方が運転が安全になるからだ。計数に気を取られて、運転の安全性が損なわれたら、かえって逆効果になる。ヤブヘビ。ヤバい。
 


 【 追記1 】
 コメント欄で教えてもらったが、管理システムはすでに導入されていたそうだ。
 同園では、保護者が送迎する場合は保護者がシステムに登園を登録し、バス利用の園児については園側が登録する。
( → バス取り残され3歳女児死亡事件、管理システムで登園扱い 乗車園児6人まとめて「登園」入力か - 社会 : 日刊スポーツ

 ではなぜ、不整合が検出されなかったのか? 
 園側が入力する管理システム上では登園扱いになっていたことが6日、捜査関係者への取材で分かった。園側が同じバスの計6人をまとめて「登園」と入力したとみられる。県警は、バス降車時の車内点検だけでなく、園内での出欠確認も徹底されていなかったとみて、詳しい経緯を調べる。

 登園時に入力ミスをしたらしい。ま、そこまでは、ありがちなことである。このようなミスは、想定されている。
 問題は、その後に、「園内での出欠確認」がなされていなかったことだ。出欠を取れば、「1人足りない」ことがわかるはずだ。なのに、そうしていなかった。
 呆れる。出欠点検は、最低限、必要なことだ。学校ならば、授業時間ごとに、何度も出欠点検をする。その最低限のことをやっていなかったことになる。まったく呆れはてる。免許取り消しが妥当だね。

 【 追記2 】
 新情報。
 増田理事長と添乗した70代の女性派遣職員が「バスを降りる園児の人数のチェックは自分ではなく、相手がすると思っていた」とそれぞれ説明していることも判明した。2人とも人数の確認をしていなかったという。
( → 園バス内、確認せず施錠 運転した理事長 静岡・園児死亡:朝日新聞

 「ダブル・チェック」ならぬ「ダブル・不チェック」という体制だったようだ。何らかの「うっかり」や「部分ミス」ではなく、もともと「何もしない」というのが原則の体制だったわけだ。
 ここまでひどいとは思わなかったね。幼稚園というよりは、殺人施設と呼ぶべきか。
 
 【 追記3 】
 続報。
 園児のバス乗車時に送迎補助の職員らが記入する紙の確認表に、女児の欄にだけチェックが入っていなかったとみられることが6日、関係者への取材で分かった。女児の乗車時だけ、何らかの理由で記入漏れが起きた可能性がある。
 女児については、2人が何らかの理由で乗車を確認した意味の丸印を書き込む作業を失念するなどした可能性がある。
 一方で園側が入力する管理システム上では、園内にいない女児が登園扱いになっていたことも明らかになった。県警は乗車時の確認作業の不備に加え、降車時などにも体制に問題があったとみて、経緯を詳しく調べる。
 本来の運転手は園児の降車後、確認作業を兼ねて車内の清掃などを習慣にしていたという。男性理事長と女性は5日朝の降車後、車内の確認をしていなかったとみられる。
 バスの窓枠を含めた外装にはシールなどの加工が施され、車内の様子を確かめるのは難しい状態だったという。
( → バス乗車時、確認印なし システム上は「登園」 牧之原の園児死亡事故|あなたの静岡新聞

 ひどいものだ。ダメダメ状態が多重化している。

 【 追記4 】
 アメリカの対策。
 「車内置き去り」に対してアメリカではどのような対策が講じられているのだろうか?
 朝、子どもたちを乗せたバスが学校に到着し子どもたちが降車するのを見届けると、ドライバーはエンジンキーをイグニッションから抜く。
 その瞬間からバス内にアラームが鳴り響く(10分以上の走行後のみ)。このアラームを消すためにドライバーはバスの最後部まで歩いてアラームを解除(リセットボタンを押す)する必要がある。
 リセットボタンを押す際に最後部まで行く間、一席ずつ確認して子どもが眠ったまま残っていないか? シート下に隠れたりしていないか? 確認しながら歩くことになる。
 カメラやセンサーではなく、ドライバーが一席ずつ歩いて子どもたちが車内に残っていないかを確認する。そして、ボタンを押すという作業を最後におこなう。
 その後、ふたたび運転席に戻るまで、もう一度シートや車内を確認することもできる。
 アナログなシステムではあるが、確実に子どもの置き去りを防ぐことができる。
( → 幼稚園バス3歳児置き去り死、防ぐには? 「スクールバス王国」アメリカ 安全策は意外にアナログ でも確実(AUTOCAR JAPAN)




 【 関連項目 】

 本項の続編がある。
  → 車内の置き去りのセンサー: Open ブログ
 
posted by 管理人 at 23:00 | Comment(14) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今回の件でも、管理システムはあって、人数は入力されたようです。実際は5人しかいなかったはずですが、思い込みで6人と。

https://www.nikkansports.com/general/news/202209060001165.html

どのようなシステムかわかりませんが、本件でハードが紙であったかIT機器であったかは、おそらく本質ではありません。
2重チェックにすれば、安全性が上がりますが、2人目がものぐさをしないとは限りませんし、2人目が忙しいときに1人目が勝手に入力する可能性もあります。
個人名を一人一人入力する方法にすれば、安全性が上がりますが、いると思い込んで出席にする可能性があります。

バス搭乗時と、始業後に指紋認証をする方法はどうでしょうか。
バス搭乗時は、保護者の前で指紋認証をします。
始業後の指紋認識は、確認時刻を保護者にリアルタイムで開示します。通知するようなアプリだと確実ですね。
そして、始業後の確認時刻は、バスの運行が終わっている時刻に限定します。でないと、車内でまとめて指紋をチェックする可能性があります。時刻に問題ないか、この方法なら保護者がチェックできます。
(自分としてはいい案だとおもうのですが、
たとえば、渋滞などでバスが大幅に遅れた場合は対応困難です。
始業時刻より後なら、車内で指紋認証してもばれません。
そして時間に追われているときは、ミスやいい加減な対応が起こりやすいものです。
Posted by サク at 2022年09月07日 08:38
 情報ありがとうございました。

 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2022年09月07日 08:50
 最後に 【 追記2 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2022年09月07日 10:51
ずさんな話ですが、どの業界にもなくはない話なのでしょうね。
幼稚園業界の内部事情は何も知りませんが。

指紋認証する方法は、
指紋認証できるスマホで、同時に自撮りもする仕組みにすれば、
その時点で車内にいるか、室内にいるか確認できますね。

保護者に自動送信する仕組みにすれば、
保護者が自己責任で確認できるわけです。
Posted by サク at 2022年09月07日 16:55
担任も気づいていたようですが、今日は欠席なのかと気にしてなかったようです。どんなシステムをつくっても運用する人間が劣悪ではどうにもならないかと

車もコロナのため消毒したことになってましたが、してれば気づいたので実際はしてなかったとかもうどうにもなりませんね
Posted by ファミマ at 2022年09月07日 18:50
 欠席に気づいていたのなら、管理アプリで計数された出席者数と照合するだけで、不整合を検出できます。

 その照合するシステムを構築すればいい、というのが、本項の趣旨。
 逆に、照合するシステムがないせいで、不整合が検出されず、幼児死亡となったのが、今回の事例。

 「どんなシステムをつくっても」ではなく、今回は検出システムそのものが存在しなかった。
Posted by 管理人 at 2022年09月07日 19:35
不整合があっても人間がそれをよくあること、たいしたことないと認識すれば同じことですよ。
どんなシステムがあってもというのは、事故を起こした園はいてもいなくても出席と入力することになってたからで、たとえ検出システムがあっても同じことです
Posted by ファミマ at 2022年09月07日 19:45
> たいしたことないと認識すれば

 いや、人が認識するだけじゃなくて、警報を鳴らすところまでやって、システムです。
 園内で「ウー、ウー」とサイレンが鳴って、保護者に異常通知のメールがいっせいに通報されて、セキュリティ管理会社にも緊急通報が行く……というぐらいまでやる。
 それでも何もしないで放置しているなら、外部から強制介入がなされて、園長が緊急逮捕されて、園児が救出される……というふうになるべき。
 そこまでシステムを構築するべきだ。
Posted by 管理人 at 2022年09月07日 19:55
 最後に 【 追記3 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2022年09月07日 21:22
バス内の確認作業ですが、園児の取り残しの確認はもちろんですが、普通は、落とし物や忘れ物の確認が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか?

幼稚園児ならバス内に落とし物(ハンカチなど)や忘れ物をすることは十分にあり得るので、いずれにせよ何かしらのチェック作業を行うのが普通では?と思いました。

ただ、この認定こども園は経営が無茶苦茶なようですので、当たり前のことが通じないのかもしれませんが。。。
Posted by 反財務省 at 2022年09月07日 22:23
> 落とし物や忘れ物の確認

 【 追記3 】  に書いてあります。
Posted by 管理人 at 2022年09月07日 22:37
 最後に 【 追記4 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2022年09月08日 11:51
> 【 追記4 】について

 昨日からNHKで、韓国での対策が報じられていますが、アメリカとほぼ同じ対策が取り入れられているようです(2018年に法改正がされ、バスにこのような装置を導入することが求められているとのこと)。

 https://www3.nhk.or.jp/lnews/shizuoka/20220907/3030017254.html
Posted by かわっこだっこ at 2022年09月08日 21:37
 ↑書き忘れました。

 韓国では、さらに去年からは、外から車内が見えやすいように子どもの送迎バスの窓ガラスの透明度を検査することを法律で義務づけた、と同じ記事に書いてあります。
 つまり、今回の静岡のこども園のような送迎バスは、韓国では全然ダメ、法律違反だ、となるようです。
Posted by かわっこだっこ at 2022年09月08日 21:41
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ