2022年09月06日

◆ 有能な技術者は日本を出ろ

 有能な技術者が、サムスンに引き抜かれて、高給を得た、という事例がある。これを悲嘆する人もいるが、むしろ歓迎するべきだ。

 ――

 有能な技術者が、サムスンに引き抜かれて、高給を得た、という事例がある。
  → 韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」ダイヤモンド

 高給を得ただけでなく、福利厚生も素晴らしいそうだ。
 特筆すべきは年1回の健康診断である。サムスン系列の病院で行うのだが、まるでホテルのように豪華だ。検診には最新鋭の装置を使い、診断後2週間以内には結果が送付されてくる。サムスンの健康診断はどんな小さな異変も見逃さないと、韓国内でも定評があるらしい。

 社内食堂ではバラエティーに富んだ食事が1日3回無償で提供される。

 勤務時間が明らかに短くなったことだ。それまでは土曜日にも当たり前のように出勤していたのだがその習慣もなくなり、無意味な残業が激減したように思う。

 サムスンに勤める日本人には、単身者でも60〜80平方メートル前後、2〜3LDKのアパートが貸与される。

 給料以外のサービスがいろいろと提供されるので、明らかに実質年俸は2倍以上だろう。しかも、残業も激減したようなので、時給で言えば、2.5〜3倍ぐらいになっているかもしれない。
 労働時間は減って、通勤時間も短縮して、食事は豪華で、健康診断も満点だ。
 これが日本で働くと、安月給で、長時間労働で、通勤時間が長くて、食事は貧相で、自炊も必要で、健康診断はろくにない。
 前者を貴族とすれば、日本では半ば奴隷だ。どっちがいいかは、明らかだろう。

 ――

 で、どうしてこれだけの差があるかというと、日本では、労働者が稼いだ金を、会社がすっかり搾取してしまうからだ。そのデータは、下記にある。
 2021年度の企業の内部留保が、金融・保険業をのぞく全業種で初めて500兆円を超えた。 この10年でみた内部留保の増加率は約8割にのぼる。
( → 内部留保、初の500兆円超え 21年度 10年で増加率8割:朝日新聞

 企業は金がないわけではない。金はありあまっている。なぜなら、労働者に配るべき金を、企業が搾取して、自分たちのポケットに入れているからだ。労働者は、半奴隷状態だ。特に、有能な技術者であればあるほど、搾取されている額は多いことになる。日本以外でならば、年収 3000万円が妥当でも、日本企業では、年収 1000万円に据え置かれる。そして、その差額の 2000万円を、会社側が頂戴する。だから企業の内部留保は 500兆円異常にふくれ上がったのだ。

 ――

 とすれば、「自分の金を奪われたくない」と思う労働者は、日本から出た方がいいだろう。特に、有能な技術者であればあるほど、そうだ。
 上の例では、日本人技術者が、サムスンに引き抜かれた。
 先日の項目では、日本人研究者が、中国の大学に引き抜かれた。
  → 中国への頭脳流出: Open ブログ

 いずれにしても、「日本から国外への頭脳流出」という形で、優秀な人材が外部流出したことになる。

 これを見て、「けしからん」と憤慨する人もいるようだ。だが、それは筋違いというものだ。
 「優秀な人材を日本に留めたい」と、本気で思うのならば、有能な人材に払う金を奮発すればいいだけだ。金を払えば、彼らは日本にとどまる。
 しかし企業は、金を払おうとしない。なぜなら、「優秀な人材を日本に留めたい」とは(本気で)思っていないからだ。かわりに、「優秀な人材を日本に搾取したい」と思っているだけだからだ。(そうでなければ、金を払うだけで解決する。)

 そして、こういうふうに「搾取したがる」というだけの会社は、有害無益であるから、さっさと倒産してしまえばいいのだ。日本の家電会社は、どれもこれも衰退していったが、それは、「技術者に金を払わない」という体質のせいで、技術者が逃げていったからだ。このようなケチな搾取体質の会社は、衰退するのが当然なのだ。さっさとつぶれてしまえばいい。

 将来的には、異本の家電会社は、中国や韓国の会社の、下請けや子会社になるだろう。ちょうど、シャープが台湾の会社に買収されたように。東芝の白物家電やレグザが中国の会社に買収されたように。……こうして次々と買収されてしまえばいいのだ。
 技術者を搾取することしか考えていないような会社は、存在すること自体が悪なのだから、さっさとつぶれるか買収されてしまえばいいのだ。

 ただし、これらの会社の経営者に、少しでも頭があるのならば、買収される前に、有能な技術者に金を払おうとするだろう。……とはいえ、そのようにまともな会社は、日本では数少ない。例としては、キーエンスとか、東京エレクトロンとか、そのような少数の会社があるだけだ。
 逆に言えば、会社がまともな給料を払うようになれば、優秀な人材が集まるので、世界トップレベルの水準を保てるのだ。



 [ 付記 ]
 日本の伝統的な会社は金払いが悪い。そのことは、次の事例からもわかる。
  → 「逃した魚は大きかった」東芝が売却した事業の今 |東洋経済

 東芝は、子会社の東芝メディカルシステムズをキヤノンに売却した。それが高い成長力を持つということで、「逃した魚は大きかった」と思っているらしい。
 とはいえ、東芝メディカルシステムズの売却をめぐっては、 キヤノンと富士フィルムが買収争いをしたせいで、相場よりも3割ぐらい値段が上がった。当時は「キヤノンは高値づかみをした」と批判されたものだ。その意味では、「逃した魚は大きかった」と嘆くほどのことはない。むしろ、キヤノンに買収してもらったことで、東芝にいたときよりもずっと高い成長が可能になったようだ。
 そして、同時に、東芝の給与水準からキヤノンの給与水準に変更されたことで、社員の給与は大幅に上がったらしい。社員の息子による報告がある。
shinjin85  俺の親父がここに勤めてたけれど、……キヤノンになって給料めちゃ上がったらしい。
( → はてなブックマーク

 東芝も、キヤノンも、社員も、みんな得したようだ。win-win-win である。無能な経営者の下を離脱すれば、すべてが改善されるのだ。

 ※ 無能な経営というものは、それほどにも悪なのである。



 【 関連動画 】

 キーエンス





 東京エレクトロン





posted by 管理人 at 20:11 | Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こういうのを改善する一助も学術会議の役割のはずなんですが。

それと今の時勢はこういう煽り前提のようなタイトルはやめたほうがいいですよ。
内容も「どうすれば技術者を国内でやっていけるようにできるか」に留めるほうがいいでしょう。炎上商法紛いの記事や文体は長期的には毒ですよ。
現実の問題を取り扱うので「嫌なら見るな」も適用ができないでしょうし。
Posted by もぅがん at 2022年09月23日 09:08
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ