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これは 22日の事故であり、本日 24日までにすでにあちこちで報道されているが、早くも Wikipedia の記事ができているので、そちらを見るとわかりやすい。
→ 名古屋高速バス横転炎上事故 - Wikipedia
動画を見ると、状況がいっそうよくわかる。
後者の動画の表紙(および 前者の動画の 0:30 のあたり)には、バスの残骸の正面画像がある。その正面部を見ると、運転席の下あたりに、穴があいている(陥没している)ことがわかる。ここに柱のようなものがぶつかって、バスの車体にのめりこんだのだ、と推定できる。
このことは、空中撮影した俯瞰画像からも判明する。前者の動画の 0:12 のあたりには、次の画像がある。

コンクリートの隔壁が斜面状になっていることがわかる。ここにバスが乗り上げて、バスがジャンプしたのだ、とわかる。
横転したバスの正面位置は、衝突地点(上記の赤丸)から5メートルぐらい先である。いったん衝突したあと、さらに5メートルほど進んだことになる。それというのも、ジャンプしたおかげだ。仮にジャンプしなかったなら、赤丸の場所にバスは止まっていたことになるが、その場合には、激しい衝突の衝撃が人体にぶつかるので、ほぼ全員が死んでいただろう。
今回は、バスの先頭にいた二人が死んだだけだ。死因は焼死だと見られている。他の全員は、軽症だけで済んだ。衝突による死者はゼロだと見られる。これほどにも被害が少なくて済んだのは、バスがジャンプしたことで、衝突時の過大な衝撃エネルギーを緩和したからだろう。
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では、現場はもともとそういうふうに(ジャンプしやすいように)設計されていたのか? 調べてみよう。
場所を特定するには、後者の動画の 0:18 で、画面の左端を見るといい。ここには建物の壁に、猫の画像がある。猫の画像に該当するのは、「ロイヤルオークビル」だ。
ここのそばの衝突地点になるのは、これだ。
まさしく斜めの斜面になっていることがわかる。このことが被害を小さくした、決定的な要因だと言えるだろう。
ただし、斜めの程度は大きくなかった。だからバスの正面部分は陥没した。そのせいで、エンジンの給油管は破断して、漏れた軽油が炎上して、2名が焼死した。その意味では、万全ではなかった。
では、どうすればよかったか? 私の提案は、こうだ。
「この斜めの部分は、バスが衝突することを予想して、十分な斜面部分を持つこととする。具体的には、
・ 斜面の角度をもっと寝かせる
・ 斜面の幅を2倍程度に広げる
とする」
どうせこの部分には、黄色いポリタンクがたくさん並んでいるのだ。その横幅は広い。だから、その横幅になるぐらいは、コンクリートの壁(というかジャンプ台)の幅を大きくしてもいいのだ。
なお、この黄色いポリタンクは、主たる目的は「警告用」だろうが、副次的には「衝突緩衝物」としての役割もあるのだろう。たぶん入っているのは水だろう。それだと、バイクか軽自動車ぐらいにしか役には立つまい。大型のバスやトラックにはほとんど意味がないだろう。(ないよりはマシという程度。)
バスを停めたのはこの斜めのコンクリート部分だが、これをもっと傾けることで、バスの陥没を回避して、炎上を防ぐことができるだろう、と予想される。
なお、それとは別に、バスの側でも対処することができる。それは「自動ブレーキの搭載」だ。
このバスには自動ブレーキは明らかに搭載されていなかったのだろう。もし搭載されていれば、事故は防げたはずだ。
では、バスに対する自動ブレーキの搭載義務の状況はどうなっているか? 調べると、次の通り。
「 2014年以後に販売される新型車から、自動ブレーキは義務づけられた」
換言すれば、それ以前から継続生産される旧型モデルは、その後も依然として販売され続けた。
→ 大型トラック・バスの自動ブレーキ必須、2014年11月から新型車に義務化
対応モデルはいつごろから販売されたかというと、次の一例がある。
→ 小型バス「ローザ」2019年モデルを発売 先進安全装置を新規搭載し、安全運転のサポート機能を大幅に強化
これが 2019年8月30日だ。この分からすると、現在も走っているバスの大半は、まだまだ自動ブレーキを搭載していない、と思える。特に大型バスでなく小型バスだと、コストの問題もあって、搭載は遅れそうだ。
※ なお、今回のバスの定員は約60人なので、大型バスだと言える。
→ 60人乗れる大型バスは大変希少
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上のことからして、自動ブレーキを搭載したバスは、なかなか普及しそうにない。特に、既存のバスは、(乗用車よりも)寿命が長いこともあって、なかなか普及が進まないようだ。
となると、自動ブレーキ搭載バスへの買い換えが進むように、政府としても何らかの助成をしてもいいだろう。たとえば、「自動ブレーキ搭載バスには、自賠責の保険料を大幅に割引する」というふうに。これなら、買い換えが進む動機になる。
※ その金はどこからもってくるか? 自動ブレーキの非搭載車の保険料を大幅に引き上げればいい。増減を合わせれば、トントンになる。国の支出はゼロで済む。
【 関連項目 】
本項とちょっと似た話を、前に書いたことがある。「首都高のカーブで、車が壁にぶつかって、ジャンプして、壁の向こうにある川に落ちた」という事故だ。
→ 首都高の転落事故: Open ブログ
※ 高速道路でジャンプした、という点では、話は似ている。
(本質的に関連しているわけではないのだが。)