2022年08月16日

◆ JR 路線廃止とバス転換(函館)

 北海道新幹線の新設にともなって、函館本線が廃止され、バス転換がなされる。この事例を調べる。

 ――

 まずは朝日の記事を紹介しよう。この記事が現地を調べている。特に、小樽市の塩谷しお や 駅に焦点を当てている。
 北海道小樽市にあるJR函館線の塩谷駅。4月末の休日、駅近くの公民館で住民に対する説明会があった。
 小樽市の迫(はざま)俊哉市長(63)が切り出した。「鉄道の運行を続ければ将来に大きな負担を残す。100年以上も地域の生活を支えてきた鉄道を断念せざるを得なくなりました」
 迫市長が「断念」としたのは、「山線」とよばれる函館線の小樽―長万部(おしゃまんべ)間約140キロの区間だ。
 小樽など沿線9市町は3月、廃線・バス転換の受け入れを決めている。
( → (現場へ!)ローカル線のあした:1 北国の「足」、消えゆく鉄路:朝日新聞


hakodatesen.jpg
出典:ITmedia


 記事はこう続ける。
 山あいにある塩谷地区では、鉄道がなくなれば、今はバスを使うには山道を越えて国道まで出なければならない。雪に覆われる冬場は、お年寄りにとって深刻な問題になる。
 「お年寄りの家の近くまでいけるコミュニティーバスを走らせてほしい」。

 これはどういうことか? 通常ならば、鉄道線のすぐそばに国道が走っているので、駅のそばの国道にバス停を設置すればいい。ところが塩谷駅のそばには国道が走っていないようなのだ。
 
 そこで現地を地図で確認してみる。




 
 なるほど。地図上部の国道(クリーム色の線)と、地図下部の鉄道(白と黒の線)は、かなり離れている。鉄道駅のそばに住んでいる人にとっては、国道まで出るのは大変そうだ。

 とはいえ、Google マップで距離を測ると、その距離は 800メートルで、徒歩 10分間だ。このくらいは、都会人の感覚なら、ごく短距離だと言える。





 こんな短距離について、「お年寄りの家の近くまでいけるコミュニティーバスを走らせてほしい」というのは、贅沢が過ぎるというものだろう。都会のお年寄りは、そんな要求はしない。800メートルぐらいなら自分で歩く。自分で歩けなくなったら、介護施設に入る。「自分の家のそばまでコミュニティーバスを走らせろ」なんていう要求はしない。どうしても欲しければ、タクシーを呼べばいいだけだ。
 まったく、田舎民というのは、どうしてこんなに強欲なんだろう? 何でもかんでも、たかればもらえる、と思っているのだろうか?

     ※ 「でも坂道があると、厳しいよ」という反論もありそうだが、大丈夫。高低差がないことは、Google マップで確認済みだ。「高低差なし」と記されている。
    ( Google マップでは坂道の有無が必ずわかるので、徒歩や自転車の利用のときには便利だ。)
     ※ ただしストリートビューで確認すると、いくらか坂道はある。これはまあ、都会でも橋を越えるのと同様だろう。





 さて。一方では、田舎(郊外)で無料のコミュニティーバスを走らせている事例が、現実にある。基本的にはモデル事業であるようだが、部分的には(採算を考えた)有償事業でもあるようだ。



 大阪府河内長野市の住宅地「南花台」を、7人乗りの電動カートが走っていた。時速16キロ。毎週土曜日の日中は、地元のスーパー「コノミヤ」の屋上駐車場を起点に、1周約4キロのコースを15分かけて回る。道路には電磁誘導線が埋め込まれていて、カートは決まったコースを「自動走行」する。
 平日は、手動運転のみで住宅地の中ならどこからでもタクシーのように乗り降りできる。実証実験中の自動運転は無料だが、こちらは1回100円がかかる。
( → ゴルフカート、公道スイスイ ヤマハ発とJAF、地域の足狙う:朝日新聞




 この車種は、もともとは電動カートだ。
 ヤマハ発動機の電動カートは4〜7人乗りで、ゴルフ場やリゾート施設などで活躍してきた。低速だが、ナンバープレートを取得すれば公道を走ることもできる。これを、人口減が進む古い「ニュータウン」や中山間地域、観光地などで活用する。

 実は、この事例については、本サイトでも前に言及したことがある。
  → 自動運転バスの剛性: Open ブログ

 ここでは「い〜にゃん号」というものが紹介されている。一方、公開紹介されたものは、よく似ているが、別モデルであるようだ。モデルチェンジした新バージョンであるらしい。メーカーサイトもある。
  → 公道仕様車ラインナップ - ゴルフカー | ヤマハ発動機

 見ればわかるように、ドアがないだけでなく、壁さえもない。横からの風雨はじかに当たる。雪の日には寒くて凍えそうだ。(暖房は効かない。)
 5〜7人乗りなので、マイクロバスとしての用途にはいい。だが、郊外の住宅街ならともかく、人家が少ない塩谷地区のような僻地では乗車人数が過大だろう。僻地のためには、乗車人数はもっと少なくていい。一方で、北海道ならばドアや暖房が必要となる。そのためには、マイクロバスよりは、普通のタクシーの方が適しているだろう。特に、軽自動車のタクシーがいいかもしれない。

 では、ヤマハ発動機のゴルフカーは、地方都市ならばいいか? そうも言えない。やはり、ドアがないのは厳しい。また、時速 16km というのは遅すぎる。普通のマイクロバスの方がよさそうだ。(コストはいくらかは上がるだろうが、冬季に風雨を避ける利点の方が大きい。)

 ――

 結論。

 鉄道の路線廃止のあとには、原則としてバス転換でいい。
 バス転換でバスの路線が遠い場合には、タクシーでバス乗り場まで移動すればいい。というか、どちらかと言えば、近所の人に頼んで、自動車に乗せてもらえばいい。代金もタクシー代ぐらいを払えばいいだろう。つまり、白タクだ。(ウーバーと同じ。)
 僻地の鉄道の路線廃止については、バス転換を基本として、タクシーや白タクで補うのがベストだ、と言えるだろう。
 


 [ 付記1 ]
 塩谷駅のそばでは、駅前の住戸の数は少なく、国道沿いの住戸の数は多い。このことからして、もともと村の生活圏は国道沿いが主体だ、とわかる。とすれば、鉄道を廃止して、バス路線ができることは、多くの国道沿いの人にとっては利便性が増すので、歓迎するべきことだ、と言えるだろう。実際、住民の多くは鉄道の路線廃止に賛成しているはずだ。反対しているのは、駅のそばにいる少数の住戸の人だけだろう。

 こことは別に、新設される北海道新幹線の新駅(冒頭の図)では、駅のそばの住民が「路線廃止を早めてくれ」と望んでいるそうだ。倶知安や長万部など。
 札幌延伸に合わせ廃止される山線のバス転換について、倶知安は時期の前倒しを要望する。
 倶知安町の文字(もんじ)一志町長(59)は「新幹線が通れば観光客だけでなく、周辺の町村も含め定住人口の確保につながるはずだ」と語る。「バス転換を3〜5年は前倒ししないと新駅前の整備に影響がでかねない」
 今の駅の西側に新駅をつくる長万部町も5年ほどの前倒しを求めている。
( → (現場へ!)ローカル線のあした:2 新幹線駅、沿線の同床異夢:朝日新聞

 [ 付記2 ]
 「 800メートルぐらいは歩け」と記した。だが、豪雪地帯では老人が徒歩で歩きにくい、という問題がある。
 なるほど。それはその通り。しかし、だからといって「ドアなしのマイクロバスを」というのは、筋違いだ。どちらかと言えば、タクシーの方がいい。(本文通り。)

 ただし、本質的には、老人は豪雪地帯に住むべきではない。なぜなら、そもそも自宅の 雪掻き・雪下ろし すらできないからだ。体がちゃんと動く 70歳ぐらいまでならともかく、それ以上になったら、豪雪地帯を離れて、温暖な地域に移動するべきだろう。
 「どうしても豪雪地帯に住みたいんだ。そのための金をおれのために出してくれ。国民全員はおれのために奉仕しろ」
 というのは、強欲すぎる。



 【 関連項目 】

 → JR赤字路線の廃止: Open ブログ(2022年07月28日)

  ※ 只見線の事例を取り上げている。他の関連項目へのリンクもある。
 


【 後日記 】
 続報。
 政府に新方針が出た。
  → 函館線を貨物線として維持、国が協議へ 北海道やJRと 旅客と分離:朝日新聞
 この記事に、こうある。
 函館線の函館―長万部間(約148キロ)を貨物路線として維持する

 なるほど。たしかに、長万部より北は、路線廃止をしてもいい。かわりに東の千歳線があるから、そちらを使えば、貨物列車は通ることができるのだ。
  → Google マップ  

 しかし、長万部より南は、かわりとなる路線(貨物線)がない。だから、この部分を廃止すると、貨物線が一切、通れなくなる。それは困る、というわけだ。
 では、フェリーは? 記事には、こうある。
 船舶では鉄道のように大量の貨物を運べず、港湾からのトラック輸送も人手不足の折、ドライバーの確保が難しくなっている。

 フェリーで済むと思ったのだが、そうも行かないらしい。大量の物流には、鉄道が不可欠らしい。
 では、鉄道を残すか? しかし、貨物のためだけに鉄道を使えば、JR に大赤字が出る。かといって、貨物に加えて旅客を残しても、やはり大赤字が出る。
 あちらが立てば、こちらが立たず。困った。どうする?

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「路線を残すが、旅客は廃止して、赤字を最小化する。その上で、貨物料金は、大幅に値上げする」

 どうせフェリーが対抗馬にならないのなら(貨物列車がそれほどにも必要不可欠なら)、その分、料金を大幅に値上げすればいいのだ。大幅に値上げして、それでも貨物列車が必要だという相手にだけ、少数の列車を走らせればいいのだ。これで済む。
 「そんなことをしたら、農家が大赤字になる」
 と心配する人も多いだろうが、ご心配なく。北海道のタマネギ農家は、年収 3000万円ぐらいの高所得者が多い。自動車も BMW やベンツの保有者がたくさんいる。あまりにも金持ちぞろいなので、テレビで特集番組の報道をしていたほどだ。
  → 自然を相手に働く農家は大変?でも年収3000万円も夢じゃない!
  → “儲かる酪農は丸森町に倣え” 売上3000万円を支える生産者の..... New !

 タマネギ農家ほどではなくとも、ジャガイモ農家も同様だろう。ジャガイモは、病原菌に弱いという性質があり、病原菌の移入を防ぐために、生のジャガイモの輸入が禁止されている。輸入障壁があるわけだ。その分、国内農家は優位に立つ。かなり高価格にしても大丈夫だ。だから北海道のジャガイモ農家はボロ儲けできる。

 以上のような状況があるのだから、鉄道の料金を大幅値上げしても大丈夫なのだ。とりあえずは料金を2倍ぐらいに引き上げるといいだろう。それで路線の赤字の分は埋めることができそうだ。


posted by 管理人 at 20:54 | Comment(13) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>田舎民というのは、どうしてこんなに強欲なんだろう?

北海道の日本海側は豪雪地帯なんだから仕方ないだろ
Posted by 通りすがり at 2022年08月16日 21:43
>都会のお年寄りは、そんな要求はしない。800メートルぐらいなら自分で歩く。

東京のような非雪国で温暖な地域ならお年寄りでも800メートル位平気で歩けるだろうけど、北海道の日本海側とか豪雪地帯なんだから冬場にお年寄りが800メートル歩くとか過酷だと思うが。
Posted by 通りすがり at 2022年08月16日 21:53
白タクは今現状は禁止行為だし(海外では認可されている国も多い)、今後解禁されるとよいが、小樽市西部〜余市町を走るコミュニティバスがあってもいいと思うが。やはり冬場は1メートル以上積雪する豪雪地帯だし、関東圏と比べたら過疎っているが、それなりに人口がある地域だろうし。
Posted by 通りすがり at 2022年08月16日 22:02
つうかせめて小樽駅〜余市駅間だけでもJR路線を存続させてほしいところですね。余市もニッカウイスキー工場など観光地として人気があるし。
Posted by 通りすがり at 2022年08月16日 22:15
> 豪雪地帯なんだから冬場にお年寄りが

 この問題は、もともと書く予定だったのに、書き忘れてしまったので、 [ 付記2 ] に書き足しました。
Posted by 管理人 at 2022年08月16日 22:23
> 小樽市西部〜余市町を走るコミュニティバス

 余市どころか、もっとずっと先の僻地まで、(コミュニティバスのかわりに)路線バスが走りますよ。
 バス停もたくさんできるし、本数も増えるので、利便性は鉄道よりもはるかに上がります。
 また、鉄道と同じ額の赤字負担をしてもらえるのなら、バス代はほとんど無料になります。(鉄道はそれほどにも莫大な赤字を垂れ流している。)
Posted by 管理人 at 2022年08月16日 22:35
>老人は豪雪地帯に住むべきではない。

まあせめて北海道なら札幌の地下鉄駅に近いマンションに住むべきでしょうね。マンションなら雪掻きは要らないだろうし。
Posted by 通りすがり at 2022年08月16日 22:37
> 札幌の地下鉄駅に近いマンション

 金持ちならマンションに月 10万円以上を払ってもいいけれど、貧乏人なら四国や中国地方の田舎で、家賃2万円以下の物件がいっぱいありますよ。たとえば、
  https://x.gd/LoMjc
  https://x.gd/YdTzE
  https://x.gd/DFWc2

 タダみたいな空き家もあるはず。
  https://zero.estate/category/zero/shikoku/

 格安の戸建ても。
  https://www.homes.co.jp/akiyabank/chugoku/

Posted by 管理人 at 2022年08月16日 22:55
>老人は豪雪地帯に住むべきではない。

やはり札幌みたいな中途半端な都会よりも、どうせなら東京に住んだほうがよいですね。雪もあまり降らないし温暖だし。
JR北海道も過疎地域の利便性よりも東京へのアクセスの良さを優先したんだし。
Posted by まりもん at 2022年08月21日 15:00
 最後に 【 後日記 】 を加筆しました。函館線の南半分だけを貨物線として残す、という政府方針。
Posted by 管理人 at 2022年09月12日 20:55
貨物列車はJR貨物が旅客会社に線路使用料を払って運行しています。この線路使用料は政策的に低く抑えられています。

これまで、新規の新幹線開通により並行する在来線はJRから第三セクターに転換された際、従来通りの貨物列車の線路使用料では第三セクターとして維持できないため、新規開業した新幹線のリース料から「貨物調整金」という形で補助をして運行を継続しています。(新規開業の新幹線は旅客会社へリースという形となっている)

おそらく、函館〜長万部間はこれまで通り新幹線リース料から線路使用料の補填で落ち着くのではないでしょうか。
Posted by 港北 at 2022年09月12日 22:29
> おそらく、函館〜長万部間はこれまで通り

 それが政府・自民党の狙いらしいので、「それじゃ赤字垂れ流しになるからダメだ。かわりにこうしろ」というのが、本項の提案です。
 赤字垂れ流しだと、そのうち赤字の負担に耐えきれなくなるので、都市部を含む運賃全般を値上げせざるを得なくなります。一部はすでに値上げが決まっています。このあと都市部でどんどん値上げが続くことになる。

 → http://openblog.seesaa.net/article/487908696.html

 赤字を出す地方が自分で赤字を負担するか、代わりに黒字の都市部が犠牲になって赤字を負担するか、という問題。政府が選ぶのは後者。本項は前者。
 自動車は道路代さえ自分で負担しないで政府に負担してもらっているが、(都市部の)電車利用者は、自分の分どころか他人の赤字までひっかぶって負担している。
Posted by 管理人 at 2022年09月13日 07:10
最後の少し前に、リンクを一つ追加しました。
 「“儲かる酪農は丸森町に倣え” 売上3000万円〜」
 という記事リンク。
Posted by 管理人 at 2022年09月24日 22:47
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