2022年08月15日

◆ 自動ブレーキと夜間歩行者 .4

 自動ブレーキの性能試験で、夜間の性能試験はいまだに不十分なものである。

 ──

 自動ブレーキの性能試験では、夜間の性能試験もなされている。2018年に始まった。下記のようなものだ。
 夜間の対歩行者被害軽減ブレーキの評価は、道路を横断中の模擬歩行者に対し、時速30〜60kmで試験車両を接近させて警報やブレーキの作動状況を確認する。試験は夜間に、街灯がある道路環境を模擬して実施した。試験条件は、対向車両がいない見通しの良い道路を横断するケースと、対向車両の後ろから出て道路を横断するケースの2パターンとなる。衝突を回避できたか、衝突した場合でも衝突前にどの程度速度が低下したかによって得点が与えられる。
( → 夜間の歩行者対応自動ブレーキ、「カローラスポーツ」「N-VAN」がJNCAP満点:安全システム - MONOist

 具体的には、次のような試験だ。





 ──

 しかし、この夜間性能試験には、問題がある。これでは十分に性能チェックをしていない。そのことは、前に下記項目で論じた。
  → 自動ブレーキと夜間歩行者 .2: Open ブログ

 その要旨は、次の二点だ。
 (1) 下半身が明るい青色だが、黒くするべきだ。
 (2) 右折のテストをするべきだ。


 より詳しく示すために、一部抜粋しよう。
 (1) 試験では、明るい色のズボンをはいた歩行者を対象としているが、暗い色のズボンにするべきだ。

 (2) 試験では、直進する自動車の先に歩行者がいるが、右折する自動車の先に歩行者がいるという試験をするべきだ。
 その理由は、右折する自動車の先に歩行者がいるのに、気づかずに跳ねてしまった、という交通事故の事例があるからだ。

 その事例は下記。


 ──

 さて。以上はすでに記した情報だ。
 では、それから時間を経たあとで、現在ではどうなっているか? 確認してみた。
 2021年の試験結果があったので、それを見てみる。





 以前は「街灯あり」の試験だけだったが、今回では「街灯なし」の試験になっている。その点では、改善されたと言える。
 しかし、(1)(2) の点では、いまだに改善されていない。
  ・ ズボンは青いままで、黒くない。
  ・ 右折時の試験は行なっていない。

 いずれも不十分なままだ。

 というわけで、2021年現在の試験でも、「夜間の自動ブレーキ試験は駄目なままだ」と言える。



 [ 付記 ]
 「ズボンを黒くしたら、ヘッドライトの照明が当たっても見えないので、試験として意味をなさない」
 という批判が出そうだ。しかし、そんなことはない。
 ズボンを黒くしても、顔は白いので、顔はちゃんと闇夜に浮き上がる。実際、人間の目ならば、顔を認識できる。動画の一部をキャプチャー(スクショ)しよう。


jncap-yakan.jpg


 この画像では、人形の頭部が白っぽく浮き上がるので、十分に認識できる。このとき、ズボンの部分がきわめて明るくなっている。そのせいで、頭部はいくらか認識しにくくなっている。そういう問題があるが、大丈夫。
  ・ ズボンが明るく見えるならば、ズボンを見て認識できる。
  ・ ズボンが黒くて見えないならば、頭部を見て認識できる。


 問題は、頭部を認識できるか否かだ。これは、次の二つの技術で解決できる。
  ・ ロービームの光が少し上に漏れるようにする。
  ・ カメラの感度を大幅に上げる。


 カメラの感度については、近年、画像センサーの感度が急激に向上している、という点で解決できる。
 また、Google のスマホは、「複数の瞬間的画像を合成することで、長時間露光と同様の効果を得て、感度を向上させる」という手法を開発している。この手法は、対象物が高速で移動するのでない限り、有効だ。歩行者ならば、もちろん有効だ。
 
 以上の点からして、夜間歩行者の頭部を認識することは、技術的には十分に可能である。ただし、高度な技術を必要とするので、低レベルの技術しかない会社には無理だろう。できる会社とできない会社に分かれることになりそうだ。

( ※ コストカットばかりしている国産某社には無理だろうが、社員に高給を払う外国メーカーには可能だろう、と思える。ま、皮肉だけどね。)

 《 加筆 》
 もっと確実な手もある。赤外線センサー(赤外線カメラ)を使うことだ。赤外線センサーならば、ライトが当たらなくても、ちゃんと認識できる。前にも言及したことがある。
  → 自動運転と赤外線センサー: Open ブログ
  → 自動運転車の事故・続報: Open ブログ

 ただ、赤外線センサーは、コストが高い。そこが難点だ。(大量生産すれば解決可能かもしれない。)
 
 
posted by 管理人 at 23:17 | Comment(6) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 本稿の趣旨に賛同します。ただ、一足飛びに、@夜間の A右左折時の B黒っぽい服装の 歩行者などを検知して止まるのはハードルが高いですよね。

 まずは、@日中の A右左折時の 歩行者検知だと思いますが、これが一応できるとうたっているのは、その「コストカットばかりしている国産某社」の一部車種(カローラ、カローラツーリング、カローラスポーツ、ヤリス、および系列のスバルの新型レヴォーグなど)だけではなかったかと。輸入車のほうは、中々全部はわかりませんが。
Posted by かわっこだっこ at 2022年08月16日 10:09
> 右折や左折をした時にヘッドライトも曲がって暗いところとかが見やすくなる

 https://carview.yahoo.co.jp/ncar/catalog/toyota/vellfire/chiebukuro/detail/?qid=1170896036

> ハードルが高い

 初めは零点でもいいんです。何年か続ければ、しだいに点数が上がります。
 2018年の夜間テストでは、日産デイズがひどい性能だったが、翌年には大幅に向上している。テストがあることで、性能を大幅に向上させるように努力した。
Posted by 管理人 at 2022年08月16日 10:36
ここで言われている夜間テストはとても厳しいように思えます。目が悪いので免許を持っていない私ではとても認識できません。これほどのものでなくても、例えば昼間なら十分対応できるのであれば、そのような条件付きで世の中に出したらどうでしょうか。暗くなったらエンジンがかからないようにするのは簡単です。
 自動運転やロボット導入でいつも思うのですが、完璧でなくても現状よりも大幅に安全性が増すならば条件付きで売り出したら良いと思います。法律などの整備も必要と思います。例えばAT車限定の免許のように。高齢者の事故はこれで大幅に減ると思います。
Posted by よく見ています at 2022年08月16日 15:52
> とても厳しい

 本件はただの検査であり、合格が必要な入学試験(みたいなもの)ではありません。パスしないと販売禁止になるというものでもありません。検査で上位になるものが市場で有利になるだけです。

> 私ではとても認識できません。

 人間は関係なくて、機械が認識する(または認識しない)だけです。

> これほどのものでなくても、……世の中に出したらどうでしょうか。

 上に述べたように、合格しなくてもいいんです。成績が悪くても、販売できます。

> 完璧でなくても現状よりも大幅に安全性が増すならば条件付きで売り出したら良いと思います。

 そうです。そのために「実力を明らかにする」という目的で、検査をするわけです。

 なお、「大幅に安全性が増すならば」でなく「小幅に安全性が増すならば」でも十分。 
Posted by 管理人 at 2022年08月16日 16:12
コストカットばかりする日産ながらダイハツも中々酷いです。
Posted by 常連 at 2022年08月16日 19:11
 ヘッドライトの方向調整。日産フーガや、ティーダの例。

> 交差点:交差点右左折時に、進行方向を照射。横断歩行者の発見などを助けます。
 → https://www.nissan-global.com/JP/INNOVATION/TECHNOLOGY/ARCHIVE/AFS/
Posted by 管理人 at 2022年08月20日 05:44
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