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問題提起
電気自動車が実現したように、電動飛行機(電気飛行機)は実現するだろうか?
現時点のリチウム電池を使う限りでは、実用化は困難である。無人偵察機となるドローンぐらいならば可能だが、それは、「巨大な翼と、小さな胴体と、かなり低速」という条件に縛られる。一方、現実の飛行機は、「小さめの翼と、大きな胴体と、音速以上」という高性能さをもつ。電動飛行機がこの水準にまで到達するのは、容易ではない。
だが、容易ではないとしても、いつかは実現するかもしれない。今後、リチウム電池から全固体電池へと移行すれば、軽量化も達成されて、かなりの高性能さが見込めるからだ。
しかしながら、その一方で、「理論的な上限があるのでは?」という疑いもある。そこで、この問題を考えよう。
理論的な上限
理論的な上限とは、何か? それは、次の二点だ。
(1) 化石燃料を使った場合は、使用した燃料をどんどん空中に放出できるので、残りの燃料はどんどん減っていく。
一方、電動飛行機では、電池を捨てることはできないので、最初から最後まで重量は少しも減らない。
この両者の違いだけでも、電動飛行機は燃費が悪化する理由となる。
(2) 化石燃料を使った場合には、その物質のもつ化学エネルギーを熱エネルギーに転じるが、そのとき化学エネルギーのほぼすべてを使うことができる。それは炭素や水素が酸化するときに発生する熱エネルギーである。
電動飛行機の場合には、電池における化学反応で、化学エネルギーが電気エネルギーに転じている。それは酸化還元反応で生じた電子を取り出す過程である。この効率は 100%ではないにせよ、それに近い効率の高さがある。
この両者を比較すると、どちらも同程度であるとわかる。自動車の場合には、化石燃料に比べて電気自動車は圧倒的に効率が高かったが、電動飛行機の場合には同様のことは言えない。どっちみち、搭載する物質のもつ化学エネルギーという上限がある。その意味では、おおまかには同程度である。
しかも、細かく見ると、上限は、電動飛行機の方が低いと見込まれる。その理由は? 燃料はすべて利用し尽くされるが、電池の材料はすべて利用尽くされるわけではない。利用されるもの以外の、余分のもの[媒体や容器]があって、かなりの比率を占める。その分、搭載されるもののうち、消費されるものの比率は小さくなる。(重量比で、可搬エネルギーが小さくなる。)
以上の (1)(2) を考えると、原理的には、「電動飛行機の効率の上限は、現行の飛行機の効率に比べて、かなり低い」と見込まれる。つまり、こうだ。
・ 運搬可能量に比べて、本体が重すぎる。
・ 出力はかなり小さい。
・ 速度を高めれば、燃費が非常に悪くなる。
・ 燃費を向上させれば、速度は遅くなる。
こういうふうに性能が制限されることが見込まれる。しかも、それは、原理的なものだ。
なるほど、今後も電池の性能はどんどん向上するだろうし、電動飛行機の性能もどんどん向上するだろう。だが、その向上には、上限がある。最終的には、その上限まで向上するだろうが、たとえ上限に達しても、その水準は現行の飛行機よりも大幅に劣るはずだ。
原子力飛行機
では、電動飛行機には可能性がないのか? いや、そうとは限らない。電池を使う方式では無理だとしても、他の方法では軽量な発電機を実現できるかもしれない。
そのひとつの案が「原子力飛行機」だ。鉄腕アトムの 10万馬力のように、超小型の原子力発電機ができるかもしれない。
ただし、これは現時点では、マンガの世界の話に留まっている。そんな超小型の原子力発電機ができる見通しはまったくない。
また、仮にそれが可能だとしても、実用化されるかは疑わしい。たとえば、原子力飛行機が東京の都心の上を飛んで、羽田空港に着陸する……というシーンを考えると、「万一の墜落」を考えた場合に、それはちょっと実現不可能だろう。東京の上空で原子力飛行機が爆発して、放射性の物質がばらまかれる、というのは、悪夢でしかない。
原子力飛行機というのは、夢よりは悪夢に近いかもしれない。
ソーラープレーン
ここで登場するのが、ソーラープレーンだ。つまり、太陽発電のパネルを、機体の上部に敷き詰めることで、ソーラーパネル発電で電気エネルギーを獲得する……というタイプの電動飛行機だ。
これは、低速の無人偵察機では、一部では実用可能な段階になっているらしい。とはいえ、重量物を高速で運ぶ商用利用には、とても足りない。飛行機の機体正面で得られる太陽光の密度は、低すぎるからだ。
ちなみに、「太陽光パネルで発電して走る自動車」というのも開発されているが、それで得られる電力は、自動車をまともに走らせるには、とうてい足りない。「一日 10時間も発電しても、それで走れる時間は 30分程度」というふうにしかならない。「太陽光パネルで発電する電力だけで走れる」というのには、程遠い。要するに、実用レベルではない。
自動車でさえこうなのだから、飛行機ならばそれ以上に困難だ。
結局、あれもこれも駄目だ。困った。どうする?
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。下記だ。
宇宙太陽光発電
宇宙太陽光発電という方法がある。成層圏外の軌道上に、静止衛星の形で、巨大な太陽光パネルを設置する。そこで発電した電力を、電磁誘電の形で、地上にワイヤレス送電することができる。
→ 宇宙で発電、無線で送電?【ワイヤレス給電】が電力の未来を切り開く
この方法では、宇宙の軌道上で発電したあと、その電力を地上の受信機で受け取る。
一方、その電力を空中の飛行機の受信機で受け取れば、その飛行機は空中でワイヤレス給電を受けることができる。しかも、そのエネルギー密度は、太陽光のエネルギー密度よりも、圧倒的に高い。となれば、現行のソーラープレーンに比べて、圧倒的な高出力を実現できる。
宇宙発電というアイデアは、すでにある。
ソーラープレーンというアイデアも、すでにある。
そして、この二つのアイデアを組み合わせれば、これまで不可能だと思えていた電動飛行機が、可能になり得るのだ。
ただしそれは、原理的な話だ。それが(アイデア止まりでなく)現実のものとして実現するのは、今世紀中には無理かもしれないね。
※ 電動飛行機は常に場所を変えるので、それを追尾して(位置を変えながら)ワイヤレス送電する必要がある。それは技術的には難しい。
【 関連サイト 】
→ 宇宙太陽光発電システム(SSPS)|JAXA
宇宙太陽光発電システム(SSPS: Space Solar Power Systems)とは、宇宙空間において、太陽光エネルギーをマイクロ波またはレーザー光に変換して地球に伝送し、電力として利用するシステムです。
→ 宇宙太陽光発電 - Wikipedia
[ 付記 ]
「雲がかぶさると、飛行機が宇宙からの給電を受けられなくなって、墜落してしまうのでは?」
という心配がありそうだ。だが、大丈夫。雲よりも高い高度(成層圏)を飛ぶことにすれば、その問題は回避できる。これは技術的には困難ではない。
※ 雲の上を飛ぶ飛行機は、珍しくもない。


研究開発は JAXA がやっています。上のリンクページから、FAQ ページへのリンクがある。
https://www.kenkai.jaxa.jp/research/ssps/ssps-faq.html
> Q1: 宇宙太陽光発電システム(SSPS)は、いつ頃実現可能ですか?
> A1: 現在は21世紀後半以降の実現を目指して研究開発を進めています。
宇宙空間で地球を一周するように太陽電池を並べたオービタルリングというものを置いて、起動エレベータを通じて送電するというものでした。
これが実現できたら、いいなって思いますが、現実的には太陽光発電設備がスペースデブリに壊されて、またデブリが出来て・・・という課題を解決する必要があります。作品中では、豊富な電力でエネルギーシールドというもので防御するという設定でしたが、これも実現が難しいです。
太陽光発電パネルの寿命は 20年ぐらいなので、途中で一定数が壊れるのは構わない。モジュール式にして、壊れたモジュールの部分を排除して、残りの部分だけで稼働するようにすれば、一部が壊れても構わない。モジュールを小さくすると、被害が少ない。
Webb望遠鏡も、そういう仕組みにしておけばよかったんだが。これのモジュール数は18なので、1つが壊れると、一挙に 6%ほどが失われてしまう。まずいね。
なお、最初のアイデアは 1970年代だと、Wikipedia に書いてある。
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デブリの問題は、イスラエルが実用化したレーザー砲で、なんとか解決できそうだ。
https://x.gd/ZPo0x
トラックに積める原子炉。「運転開始の目標時期は2040年ごろ」とのことなので、これをエンジン代わりにすればいいのでは?
旅客機のエンジンの推力は、5万馬力。
→ https://x.gd/TImNg
5万/700=71 で、70倍もの差がある。「トラックに積める原子炉」では全然足りない。
※ 超小型原子炉というのは効率が悪いので、出力が上がらない。鉄腕アトムみたいなのは夢物語。
生きているうちに見られるかどうか