2022年08月10日

◆ マレリが 1.2兆円の損失

 破綻していたマレリの再建が決まったが、 1.2兆円の負債が発生している。

 ――

 再建の見通しが不透明だったが、再建計画が決まった。
 《 自動車部品マレリの再建計画が確定 金融機関は4500億円債権放棄 》
 民事再生法の適用を受けた自動車部品大手、マレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)は9日、東京地裁に認可された再建計画が確定したと発表した。
 金融機関が総額約4500億円にのぼる債権放棄を中心とした支援をする。親会社の米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は追加出資する。
 旧カルソニックはイタリアの同業マニエッティ・マレリと2019年に経営統合した。主要取引先の日産自動車が生産台数を減らした影響などで経営が悪化。帝国データバンクによると、負債総額は約1兆2千億円にのぼる。
( → 朝日新聞

 「主要取引先の日産自動車が生産台数を減らした」ことが原因であるようなので、日産自動車の不振の影響がこんなところにも現れた……と言いたいところだが、そうでもない。
 日産自動車が不振だからといって、部品会社が続々と倒産しているわけでもない。カルソニックカンセイには、それに耐えるだけの経営体力があったはずだ。なのに、マレリと合併したせいで、その経営体力をなくした。なぜか? マレリの買収に 7200億円も費やしたからだ。
  → なぜ資金繰りは悪化したのか? 7200億円の買収が負担に 負債額1.1兆円
  → カルソニック、8000億円買収は成功するのか | 東洋経済

 7200億円(8000億円)の金を投入して、マレリを買収したが、そのあげく、1兆2千億円( or 1.1兆円)の負債を抱えて、倒産となった。これでは、倒産するためにマレリを買収したようなものだ。
 マレリを買収しなければ、カルソニックカンセイは倒産しないで済んだだろうに、マレリを買収したせいで、倒産してしまった。比喩的に言えば、1円の価値もない会社を買収するために、8000億円も投入したから、それがまるまる赤字となって、会社は倒産した。一方、マレリの株主は、1円の価値もない会社を 8000億円で売りつけたので、8000億円の丸儲けとなった。……日本側が 8000億円を丸損して、イタリア側が 8000億円を丸儲けした。そういう計算になる。


marelli.jpg


 では、こういう馬鹿げた経営判断をしたのは、誰か? もちろん、経営責任者たる、投資ファンド KKR だ。ここに責任がある。
 だったら、KKR が損失の全額を負担すればいいはずだが、株主としては株式価値をゼロにするだけで済ませている。1兆2千億円と7200億円の差額は 4800億円。この分は、KKR は負担しない。そのうち 4500億円は、金融機関が債権放棄の形で負担する。

 このあと KKR が退場するならば、話は単純になる。ところが、KKR は退場しないで、引きつづき経営を続ける。大失敗をしておきながら、自らは尻拭いをしないで、他人に尻拭い( 4500億円の負担)をさせておいて、それでいて自分たちは経営を続ける。もしうまく行ったら丸儲け、というわけだ。
 まったく、呆れた話だ。盗人猛々しい、とも言える。どうせなら、「マレリを買収したことが今回の倒産の原因です。すべての根源は KKR にあります」と声明して、責任を明らかにするべきだろう。なのに、「日産自動車の減産が原因です」と述べて、他人の責任にしている。責任転嫁。呆れるばかりだ。

 民事再生法を適用するのはいいが、せめて、「すべては KKR の経営ミスによる」と、真相を明らかにするべきだろう。だいたい、旧マレリなんかを買収するという時点で、全然ダメなんだよ。こんなゴミ企業を買収する方針を決めたことが、ひどい経営センスだった。

 その点、ホンダ系の企業を買収した日立オートモティブシステムズの方は、ずっと利口だった。
  → ホンダ系部品3社と日立オートモティブ経営統合…ホンダが株式公開買い付け開始 | レスポンス
 そして、この方針は、私の推奨したことでもあった。
  → ホンダの部品不良の問題: Open ブログ

 ここでは、「ホンダの系列メーカーは弱小ばかりだから、合併・統合する必要がある」と指摘した。
 その上で、「たとえば、カルソニックカンセイと、ホンダの系列サプライヤーを合併させる」とも提案した。
 仮に、この方針が実現していたら、(買収資金は不要なので)カルソニックカンセイは倒産しないで済んだし、マレリの買収で 8000億円を無駄に捨てることもなかっただろう。さらには、日産とホンダの系列会社が次々と集合することで、巨大なデンソーやアイシンAW に(ちょっとは)対抗できる勢力になることも可能になったかもしれない。
 
 ――

 上記項目には、こうも書いている。
 以上のようにすれば、ホンダは弱小の系列メーカーと取引することをやめて、日産・ルノー・ホンダという巨大グループの系列メーカーと取引するようになる。その系列メーカーは、もはや規模が巨大になっているのだから、十分な売上げと研究開発費を持つようになる。それによって、不具合の続発という問題を回避できるようになる。

( ※ デンソーやアイシンAW に対抗できるような系列サプライヤーを誕生させる、ということでもある。)

( ※ 「合併なんて無理」という声も上がりそうだが、カルソニックカンセイは、カルソニックとカンセイが合併してできたものだ。「合併しなければ取引停止」と通告すれば、否応なしに合併せざるを得なくなる。)

( ※ 過去において合併がうまく行った例がある。日産に鉄を納入していた日本鋼管が、日産との契約を切られて倒産の危機に瀕したが、そのあとで日本鋼管と川鉄が合併した例だ。新たに JFEホールディングスという会社ができたが、これは日本で2位の製鉄メーカーとして健闘している。)

 現実には、この記事を書いた直前に、カルソニックカンセイはマレリと合併した。(下書きだけ書いて、執筆するのにグズグズしているうちに、現実が先行してしまった。)

 ――

 ともあれ、カルソニックカンセイは、数奇な運命をたどる形で、外資に翻弄されてしまったのである。(元はと言えば、ゴーンがカルソニックの株を手放したのが原因だが。
  → 日産がカルソニックの全株式を5000億円で売却

 このときのカルソニックには、5000億円の価値があった。それをマイナス 4800億円にしてしまった KKR の責任はきわめて大きい。


posted by 管理人 at 23:14 | Comment(0) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ