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鉄骨住宅は断熱性能が弱いので、省エネではないそうだ。
なぜ鉄で作られた住宅が不向きなのか。
まず鉄が木造などと比べて熱伝導率が高いことが挙げられる。
鉄は木材より約700倍も熱を伝えやすい素材であることがわかる。
「軽量鉄骨住宅では、夏になると、エアコンを付けていても1階リビングの温度が39℃から下がらないことがよくあります。2階に行くと40℃を軽く超えていることは容易に想像できます。このような状態の住宅は冷暖房もほとんど効果はありません」
「大手ハウスメーカーの軽量鉄骨構造は鉄骨を断熱材で覆うという発想がないので、鉄のむき出しの部分からヒートブリッジ(外壁と内壁の間にある柱などが熱を伝える現象)が起こります。鉄骨部分の断熱対策ができないことで、暑さをそのまま内部に伝えてしまいます」
「メーカーによっては、パネルとパネル、パネルと窓の接合部分に15ミリほどの隙間をあえて設けて組み立てています。その隙間には断熱材を入れていないため、窓の近くに行くと隙間風が入ってきます」
そのため外気が家の中に入って来てしまうので、エアコンをつけていても効き目がなくなってしまうのだ。
「隙間風によって家の中の空気と外気が絶えず入れ替わるので、暖めても冷やしてもエネルギーロスが大きくなります。
「大手ハウスメーカーの軽量鉄骨住宅は屋根の外側を断熱で覆っていないんです。屋根の骨組みを通して太陽の熱で暖められた鉄骨が室内の柱や梁に熱を伝えやすく蒸し暑い家になっています」
( → エアコンも効かない! 大手ハウスメーカーが量産する軽量鉄骨住宅は室内でも熱中症になりやすい「驚きの真実」(香山 鉄大,週刊現代) | マネー現代 | 講談社 )
読んで、「なるほど」と思ったが、はてなブックマークでは評判がさんざんだ。「こいつは信用できない」「大手メーカーの方が信用できる」というような意見。
しかし建築業界に詳しい人らしい意見が別途出た。
→ ブクマカが断熱や耐震についてなかなか理解してくれないのでムズムズしちゃう
次の意見もある。
abeshinn メーカー名書けとかわかってない人が多いな。日本のハウスメーカーは一条工務店以外すべて断熱がザコだよ。興味があったらHEAT20とかで調べてくれ。
( → はてなブックマーク )
そこでネット具体的な会社名を調べてみると、次のページが見つかった。ここにランキングがあるので、引用しよう。
UA 値ランキング
第1位:一条工務店
第2位:アイフルホーム
第3位:タマホーム
第4位:ミサワホーム
第5位:三井ホーム
第6位:セキスイハイム
第7位:ダイワハウス
第8位:トヨタホーム
( → 大手ハウスメーカー全社の断熱性能(UA値)比較ランキング【2021】 | さとるパパの住宅論 )
1〜3位の会社は、私の頭には入っていなかった。「どこかで聞いたことがあるかな」というくらい。タマホームは、何か悪い事件で記憶に残っているぐらいだ。(ワクチン騒動があった。)
4位以下は有名な大手メーカーなので、私もちゃんと知っている。しかしこれらの有名な大手メーカーは、軒並み性能が劣るようだ。(詳しくは上記記事。)
その意味で、「大手メーカーはすべて断熱性能が駄目」という指摘は、間違っていないようだ。
ちなみに、上記のランキング外には下記がある。
住友林業
積水ハウス
へーベルハウス(旭化成ホームズ)
パナソニックホームズ(旧パナホーム)
これらは UA値を公表していないので、ランキング対象外であるそうだ。しかし、UA値を公表していないというのは、それ自体が褒められたものではない。
性能自体は、8位のトヨタホーム並みであるらしいが、そうだとしても、上位に比べれば圧倒的に劣るようだ。
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なお、余談ふうに言うと……
(1) 一条工務店は、販売個数では最大規模の会社であるそうだが、断熱性能以外の点では、評判が良くない。家そのものの魅力が薄いようだ。
→ 【2022年最新】一条工務店の評判は最悪でやばい?いくらで建てたのかの体験談とメリット・デメリット
(2) 上記記事では工法の違いは明示されていない。ちなみに、木質系としては、一条工務店の家はすべて木造住宅であるそうだ。( → 出典 )
また、ミサワホームは、「木質パネル工法」であり、鉄骨工法ではない。セキスイハイムは、鉄骨工法と木質工法をともに採用している。(ただし鉄骨工法の方が多いようだ。)
(3) ミサワホームは優良な会社だという評判があるが、実は、トヨタに買収されて、トヨタの完全子会社になってしまった。そのいわくは、下記にある。
トヨタが住宅事業に参入したのは工販合併前の1975年。順風満帆な船出ではなかった。庶民は鉄骨の家より木で造った住宅を好んだ。
トヨタホームが弱い木造住宅を手に入れる必要があった。それがミサワホーム買収の大作戦の底流にあったことは間違いない。
03年4月、トヨタ自動車の住宅事業部から分離し、トヨタホームを設立。早速、ミサワホームの買収に動いた。これにミサワホームの創業者、三澤千代治氏が猛反発した。
そこで、ミサワホームを不振企業の駆け込み寺だった産業再生機構に追い込み、トヨタが再生スポンサーになることで、ミサワホームを手に入れた。このトヨタの買収劇は、「世界のTOYOTAが、そこまでアコギなことをやるのか」と顰蹙を買った。
( → トヨタ、国内最大の住宅メーカーに…あまりに非道なミサワホーム買収劇 )
詳細は下記。
→ ミサワホーム、産業再生機構活用報道の舞台裏|アクセスジャーナル
→ トヨタホームとミサワホームの住宅問題の背景(サイト全体)
《 加筆 》
ヤマト住建 という会社もある。受賞歴などもあり、高品質さには定評があるようだ。構造は、木造で、金物で補強している。耐震ダンパーなども使って、耐震性も高いそうだ。いろいろと高品質なのに、どうして大手に含まれないのかと思ったら、売上げ規模が小さめだ。「優秀だが規模は小さめ」という会社であるようだ。1987年の創業で、歴史が浅いこともあり、大企業にはなりきれていないようだ。ネットの評判を見ると、住宅としての商品力もあまり高くないようだ。断熱性と耐震性に特化した住宅、という感じかな。
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ともあれ、木造と鉄骨の二通りがある。そして、「鉄骨は駄目だ」という評価は、木造には当てはまらない。(当り前だ。)
だから、「大手メーカーでもちゃんとした断熱性能があるぞ」という反論をしたつもりで、一条工務店、ミサワホーム、セキスイハイム(木質)を提示しても、それでは反論になっていないわけだ。……なのに、こういう馬鹿げた反論をする人が、はてなブックマークにはチラホラといる。(木造であることに気づいていないらしい。)
【 補説 】
これと関連して思い出すのが、次の件だ。
「東京都が新築の戸建て住宅に、太陽光パネルの設置を義務づける。大手住宅メーカーが対象」
この件は、本サイトでも取り上げた。
→ 太陽光発電の話題を二つ: Open ブログ
このあと、次のように批判した。
政府や東京都は、(住宅の)太陽光パネルの設置のために莫大な補助金を出したり、FIT によって実質的な補助金を出したりしているが、太陽光パネルなんかに何十万円も補助金を出すくらいなら、「高気密・高断熱住宅」のために補助金を出す方がよほどマシだろう。
( → 冬場の炭素規制が必要: Open ブログ )
これを、本項でも繰り返し、指摘したい。
小池都知事は、環境保護や炭酸ガス対策ということで、太陽光パネルに補助金を出すことばかりを考えている。
だが、本項の前半で示したように、鉄骨工法の住宅では、断熱性能が劣ることが多いのだ。特に、大手メーカーの住宅はそうだ。
だから、太陽光パネルの設置ばかりにとらわれず、鉄骨工法の住宅の断熱性能を向上させることの方に着目するべきだ。そして、そのために大切なのは、次のことだ。
「住宅の完成後に、住宅ごとに個別に断熱性能を検査する。その検査結果に従って、補助金の額を決める」
先の指摘記事にも記してあるが、断熱性能は、施工の仕方しだいでいくらでも変わる。手抜きすれば、たちどころに性能が悪化する。だから施工の結果を見て、個別に検査する必要があるのだ。そして断熱性能しだいで、補助金の額を決めればいい。……この方が、太陽光パネルの設置よりも効果があるだろう。
それをもって、本項の結論としたい。
[ 付記 ]
政府は ZEH を推進している。
→ ゼロエネルギーハウス(ZEH): Open ブログ
だが、これは方向性を間違えている、と言える。なぜなら、どれほど断熱性が悪くても、それを上回る太陽光発電を投入すれば、 ZEH は実現してしまうからである。
比喩的に言えば、ものすごく燃費の悪い自動車を許容して、「その分、自宅には巨大な太陽光パネルがあるから、差し引きして、環境には悪くない」と言うようなものだ。
そういうことではいけない。差し引きするのではなく、それぞれが別個に最善を目指すべきだ。
つまり、「断熱性が悪くても、巨大な太陽光パネルを設置すれば、それでいい」という発想を捨てて、「断熱性は断熱性で、それ自体で最善を目指す」という発想を取るべきだ。
やたらと太陽光パネルばかりにとらわれる小池都知事は、その意味で、「太陽光パネル信者」「太陽教の信者」みたいなものである。頭の発想が教条的に一つのものを信仰しすぎているのである。
【 関連項目 】
本サイトの類似項目。
「戸建て住宅よりはメガソーラーの方が効率的だ」というふうに批判したこともある。
→ EV 蓄電の問題(太陽光発電で): Open ブログ
→ 電力の余剰への対策: Open ブログ
断熱住宅に対する補助金制度との矛盾を指摘したこともある。
→ 省エネ住宅への補助金: Open ブログ
【 関連サイト 】
太陽光パネルを設置することは、補助金を考えれば、十分にペイする、という試算もある。
住宅購入者が太陽光パネルを所有しても経済メリットを期待できる。都の試算によると毎月の電気代が1万円の家庭だと、出力4キロワットの太陽光パネルが発電した電気を使うと電気代を月7700円節約できる。設置費用は92万円だが、都の補助40万円を使えば6年間で初期費用を回収可能。しかも太陽光発電は燃料費高騰の影響を受けない。今後も電気料金の上昇が続くと発電した電気を自宅で使うほど経済的になる
( → “誤解”で反対も、東京都の「太陽光パネル設置義務化」で巻き起こる賛否両論|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 )
この試算は魅力的だ。特に、今後の電気代値上げを視野に入れれば、なおさらだ。
しかし、である。この試算が成立するためには、次のことが条件となる。
「昼間も家でたっぷりと電力を使うこと」
たとえば、在宅ワーカーや専業主婦のいる家庭では、昼間に冷暖房が必要なので、電気の消費量が大きいだろう。一方、共働きで出勤する家庭では、昼間には家に誰もいないので、冷蔵庫ぐらいしか電力を食わない。となると、「電気代を月7700円節約できる」というのは、眉唾である。
「いや、共働きだって、夜には家に帰って、冷暖房を使うぞ」
という反論もありそうだが、夜には太陽光発電をしないので、意味がない。いくら電力を使っても、その電力は電力会社から買うだけだ。自家発電ではない。
というわけで、上の試算は当てにならない。在宅ワーカーや専業主婦のいる家庭では、太陽光パネルを設置する価値があるが、共働きで出勤する家庭では、お得になるとはとうてい言えないようだ。
ちなみに、「発電量の 30%以上を自家消費すること」という条件があるので、この条件を満たさないと、太陽光発電で発電した分を、電力会社に買ってもらえなくなる。すると、発電した分は、(金をもらえずに)無料で吸い上げられることになる。悲惨だ。
太陽光発電の発電電力の「30%以上を自家消費に充当」する必要があり、自家消費量が30%を下回る場合は売電権利を剥奪される可能性もあります。
( → 【最新】2022年度(令和4年度)の太陽光発電の売電価格は?FIT制度を解説。 )
再エネ発電設備の設置場所で少なくとも30%の自家消費等を実施すること:つまり発電量の70%分が売電可能です。
( → 住宅用でも10kW以上の発電システムを設置して20年間売電することは可能なのか )
「太陽光パネルを設置するとお得ですよ」という口車に乗って、ホイホイと従ったら、あとで大損した……というハメになる危険もある。うまい言葉ばかりを信じてはならないのだ。
[ 補足 ]
木造といっても、小さな工務店が作る在来工法の木造住宅もある。日本ではこれが主流であり、大手住宅メーカーのシェアは3割でしかない。
在来工法の木造住宅は、柱に杉やヒノキを使うものだ。ところが、最近では輸入木材が高額になっている。ウクライナ戦争の影響で、ロシアから輸入される木材が規制されているからだ。
→ ウッドショック長期化原因にロシアのウクライナ侵攻「世界中で木材不足に」国際機関が警鐘、林野庁は「自給率5割」訴え :: リフォーム産業新聞
林野庁は「国産材を使え」という方針のようだが、そううまくは行かない。国産の杉は強度が不足気味で、家に使うにはちょっと強度不足だ。ヒノキならば十分だが、スギよりも高額だし、国産ヒノキは量が限られているので数量不足にもなる。だから、ロシアの固くて安い木材が不可欠なのだ。……なのに、それが戦争のせいで入ってこない。
これを解決する方法はないか? ある。柱のかわりに、合板で強度を得ることだ。ミサワホームの木質パネル工法が該当する。
2バイ4 または 2バイ6 という工法も同様で、合板で強度を得る。
→ 構造材 本格的2x4・2x6工法/1階床構造(剛床構造)
というわけで、在来工法の代わりに、大手メーカーの木質パネル工法を使えば、特に問題はないようだ。
(どうしても在来工法を使いたければ、戦争が終わるまで着工を延期するか、高騰した木材に割増し価格を払うか、だ。……これに悩んでいる人も多いそうだ。)
【 訂正 】
「集成材を使えばいい」と上では述べた。だが、集成材は無垢材に比べて寿命が短い。寿命のことまで考えると、無垢材を使う在来工法の方がいいようだ。この件は、下記項目の最後で述べた。
→ マンションは 40年で老朽化?: Open ブログ

ZEH の話。
最後に[ 補足 ] を加筆しました。
木材の価格高騰 の話。
が、あとは実効性ですね。申請も検査も、審査員の技量や知識、検査会社の体制などによって「ザル」になりかねませんし、現状でもありとあらゆる法令に完全に適合しているかどうか網羅的に保証できるかというと疑問ですから。
鉄骨は構造的には優れた面もあって、決してダメなわけではありません。鉄筋コンクリート、鉄骨、木造、どれであったとしても適切な断熱計画と、ヒートブリッジの撲滅は重要で、でも設計・施工にわたって適切に行われているかというとなかなか心もとないかも。
「軽量鉄骨住宅では、夏になると、エアコンを付けていても1階リビングの温度が39℃から下がらないことがよくあります。2階に行くと40℃を軽く超えていることは容易に想像できます。このような状態の住宅は冷暖房もほとんど効果はありません」
の文章は、「エアコンを付けないと39℃から下がらない、2階は40℃を軽く超える、そういう住宅では、エアコンを付けても効果は薄い(快適にはならない)」というのが、正しい内容でしょうね。エアコンを付けて家中の室温が39〜40 ℃以上でしたら、夏場は絶対に住めませんから。
また、記事中のサーモビジョンの画像を含んだ図を確認すると、「吹き抜け部の2階の温度は 36℃を超える」と上のほうに書いてあったり、画像の1階部の色は 30〜32℃であると見て取れるなど、図で示したものと文章内容が整合していません。この記事は、大まかには正しいのでしょうが、やっつけ仕事であるような気もしますね。
論理的にはおかしくないです。
「1階リビングの温度が39℃から下がらない」というのは、LDK ではありがちです。LD と違って LDK は空間の密閉ができない(しにくい)ので、空調の効果が下がりがち。12畳用のエアコンで、18畳を冷やしても、ろくに効果がないことはある。まして、鉄骨ならば。
※ 何で小さなエアコンかというと、「断熱性は抜群」という宣伝を真に受けて、小さなエアコンでもいいと思い込んだから。
※ 気温よりもはるかに高い温度になるのは、直射日光が射しているからでしょう。遮光する必要がありそう。
> エアコンを付けて家中の
家中とは限らない。
リビングだけは滅茶苦茶に暑くても、別の小さな部屋では涼しく過ごせる、ということはあります。小さな部屋ではエアコンの効率が高いので。
⇒ コメントでご指摘のとおり、広い部屋だったり、エアコンの畳数が合ってなくて能力が低かったり、開口部(窓など)の面積が大きかったりして、「ごく稀に」エアコンをつけていてもリビングの温度が 39 ℃から下がらない家、それなのにガマンして暮らし続けている家族も、日本中探せばある(いる)かもしれません。
しかし、そういう現象が起こったら、遅くとも新築後の最初の夏に、エアコンを大きいものに取り換えるか、リビングだったら2台にするような対策を打つでしょう。暑いのが大好きな年寄りばっかりが住んでいる家でもない限り。
つまり、「エアコンつけてリビングが39℃」という現象が、「条件によっては考えられなくもない」というなら論理的にはおかしくはないですが、香山氏の記事にあるように「よくあります・よくみられます」というのはおかしいと思います。鉄骨造の住宅は、軽量鉄骨のアパートを含めて、少なくとも全国に何十万棟、何百万部屋もあるのですから、そんな現象が「よくある」のなら、何十年も前から大問題になっています。
建築家は何百もの家を見るが、消費者は自分の家しか見ないので。
いや、さすがに我慢はしていないでしょう。新築時に駄目だったというだけで、その後は何らかの改修をしたのでしょう。エアコン増設とか、庇とか、遮光カーテンとか。