※ 【 追記 】 あり。エクストレイルにガソリン車がないわけ。
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自動車の購入ガイドみたいな話は、本サイトの話題にはなりにくいのだが、技術的な興味から考えてみよう。ちょうど新車ラッシュなので。
1 エクストレイル
可変圧縮比エンジンを日本では初めて発売したことになる。(米国では以前から発売済み。)
これと e-POWER を組み合わせたのが、目新しい。ハイテクの新技術のエンジンと、ハイテクの e-POWER 。その組み合わせは、圧倒的に先進的な高技術と見える。「技術の日産」の面目躍如だ。
しかしながらこれは、「技術だけの日産」の例だとも言える。技術にとらわれるあまり、肝心の自動車としての商品力が片手落ちになっている。
特に致命的なのは、次の点だ。
「高速巡航用のエンジン直結モードがない」
このことゆえに、「高速燃費悪化」という致命的な欠点をかかえている。このことだけでも「買ってはならない」という評価を与えられる。
英国でも、兄弟車のキャシュカイが「 e-POWER 車は駄目だ」と評価されている。ガソリン車に比べて、50万円も高いのに、高速燃費はガソリン車に負けてしまうからだ。ハイブリッドにしたせいで燃費が悪化するというのでは、本末転倒だろう。あまりにも馬鹿げている。
※ エンジン直結モードがあれば、この難点はない。
※ この件は、前にも述べたことがある。
→ 次のハイブリッドは?: Open ブログ
→ e-POWER + VCターボ は無効: Open ブログ
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エクストレイルは「可変排気量エンジン」と e-POWER を組み合わせて出すぐらいだったら、二年前の時点で、 ( e-POWER なしで)「普通のガソリンエンジン」のエクストレイルを出すべきだった。さらに8カ月前の時点で「可変圧縮比エンジン」のエクストレイルを追加するべきだった。米国ではそうしているからだ。(車名はローグだが。)
→ 日産、米国のSUV「ローグ」2022年モデルに新開発の直列3気筒 1.5リッターVCターボエンジン搭載 - Car Watch
e-POWER のエクストレイル(エンジン直結なし)なんて、出す価値はないのだから、出さなくてもいいのだ。
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なお、 e-POWER を出すのだったら、充電池を大幅に増加して、PHEV にするべきだった。それならば、補助金 55万円をもらえるので、とてもお得になるからだ。
ちなみに、三菱のエクリプスクロスは、充電池を大幅に増加して、PHEV にしたので、補助金 55万円をもらえる。
→ 三菱のPHEVの補助金|MITSUBISHI MOTORS JAPAN
この補助金をもらえれば、実質、電池代はタダになるのも同然だろう。とてもお得になる。
※ ただし、エクリプスクロスは、肝心の自動車としての魅力が劣るのが難だが。どうせなら、もうちょっと奮発して、アウトランダーPHEV にすれば、満足度が高くなる。お金はかかるけど。
2 ホンダ ヴェゼル
ホンダ ヴェゼルは、エンジン直結モードがある。だから、高速燃費もいい。エクストレイルの欠点をなくした車だ、と言える。エクストレイルに比べると、ちょっと安めの車だが、デザインのセンスもいい。このクラスでは、最も人気があるようだ。そのせいで、納期の期間が長い。今では半年待ち以上になっているようだ。
良い車であるがゆえに、納期が長くなるので、そこが残念だ。
3 ホンダ ZR-V
ヴェゼルの兄弟車らしい。サイズは少し上らしい。ヴェゼルと同様なので、品質面では文句はないだろう。問題は、デザインだ。カッコ悪いね。
4 トヨタ RAV4
一時は大人気だったが、出てからかなり時間がたった。いくぶん旧式化しているようだが、ハイブリッドとしての実力は図抜けている。燃費の悪いエクストレイルを一蹴するだけの燃費性能がある。
ただし、エクストレイルみたいな「電動車のレスポンス」はない。とはいえ、オフ・ロードならば、レスポンスはあまり気にしなくてもよさそうだ。
5 トヨタ カローラクロス
値段が安くて、コスパが圧倒的に良い。燃費性能もすごく良い。お金持ちでない人が、コスパを重視して買うなら、これしかない。こんなに高性能なものが、こんなに安価で作れるのが、不思議でならない。(ま、圧倒的に大量生産しているからだ、と考えれば、話はわかるが。)
※ 新車は安いが、中古車は数十万円のプレミアムが付いていて、馬鹿高値になっている。タマ不足のせいで、中古車の方がずっと高くなっているわけだ。調べたら、納期は9カ月。ヴェゼル以上だね。
6 スバル レガシー アウトバック
いい車だという定評がある。だけど、燃費が悪いんだよね。カローラクロスの倍もガソリンを食う。現時点では、時代錯誤的だ。特に、ガソリン価格が高騰している現在では。
ハイブリッドもないし、省エネ技術もないのでは、今の時代には合いそうにない。他の5車と比べると、燃料消費の点で大幅に後塵を拝している。車としての出来はいいんだけどね。
[ 付記1 ]
いろいろと評価したが、技術面からの話だけだ。カタログを見ての性能評価だけだ。実際に運転して、総合評価したわけじゃない。
その意味では、「お買い物ガイド」というよりは、「ただの物好きの話」というぐらいのレベルの話だ。井戸端談義だと思って、読み流してください。
最後に、燃費の性能評価表。
★★★★★ カローラクロス
★★★★ ヴェゼル、RAV4
★★★ エクストレイル
★★ エクリプスクロス
★ なし
― アウトバック
[ 付記2 ]
CX-60 は、評価しなかった。エンジンによって、燃費性能に差がありすぎる。どれを選ぶかで、まったく別になる。しかも、燃費性能がいいものは、滅茶苦茶に価格が高くなる。ライバルはアリアなどの高級車になる。そこまで高い金を払うべき車ではないね。
CX-60 の主力車は、ディーゼルだが、いまどきディーゼルというのは、ちょっと時代錯誤にも思える。
ただし、炭酸ガスのことなんかを考えない米国では、CX-60 の評価が滅茶苦茶に高い。上記(1〜5)のどの車に比べても、CX-60 の方が評価が高い。(ただし価格も高いが。)
[ 付記3 ]
「おまえが買うならどれにするか?」
という質問には、こう答える。
「私は SUV なんか買わない。もっと小型の車を買う。また、四駆なんか買わない。FF を買う。なぜなら、私は田舎ではなく都会に住んでいるからだ」
SUV や四駆は、田舎 or 雪国の人向けの車だ。東京近辺に住む人の車ではない。私には関係ない。
【 追記 】
日産ノートやエクストレイルには、 e-POWER 車だけがあり、ガソリン車はない。「どうしてだろう? 出せば売れるはずなのに」と不思議に思っていたが、本項を書いたことで、ようやく理由がわかった。こうだ。
「ガソリン車を併売すると、 e-POWER 車の高速燃費がガソリン車よりも悪いことがバレてしまうから」
そもそも「 e-POWER 車はガソリン車よりも燃費がいい」ということを売りにしてきた。ところが現実には、高速燃費はガソリン車よりも悪い。とんだ羊頭狗肉だ。そういう真実がバレてしまう。それでは不都合だ。だから、真実を隠蔽するために、比較ができないようにしてしまうわけだ。「ガソリン車を併売しなければ、ガソリン車よりも燃費が悪いことが、バレずに済むぞ」と。
実は、JC08モードの燃費では、総合燃費だけなので、「高速燃費が悪い」ということはバレなかった。しかし今の WLTCモードの燃費では、総合燃費のほかに、「市街地燃費/郊外燃費/高速燃費」の3種類が別々に示される。こうなると、「 e-POWER 車は高速燃費が悪い」ということが、もろにバレてしまうのだ。
というわけで、先代のノートは e-POWER 車とガソリン車を併売したのに、( WLTCモードの燃費表示のある)現行のノートはガソリン車を併売しないのである。新型エクストレイルもまた同じ。
「王様は裸だ」という真実がバレないようにするために、こっそりと比較対象を隠すのである。
【 訂正 】
上の予想は正しいかどうか、検証してみた。最も最適なのは、エクストレイルの e-POWER と、Rogue のガソリン車を比較することだ。すると、こうだった。
・ エクストレイル 18.3km/L https://x.gd/QPEV6
・ Rogue ガソリン 37 MPG = 15.7 km/L https://x.gd/8v7fu
(前者は WLTP 高速燃費、後者は EPA 高速燃費。EPA 高速燃費の方が、数値は 6% ぐらい低く出るのが通常だ。フェアレディ Z なら、国内は 12.6km/L で、米国は 11.9km/L となる。)
というわけで、「ガソリン車の方が燃費が悪い」となる。したがって、先の「ガソリン車の方が高速燃費はいい」という推測は成立しないことになる。残念。
ただし、日産の e-POWER は、カタログ値に比べて実測値が悪い、というふうに言われている。( → https://x.gd/9V6Bu )
そのことを考慮すると、案外、両者はほぼトントンかもしれない。
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※ 以下は調査ミスなので、取り消します。詳しくはコメント欄(07月28日 08:10)を参照。
なお、同じ車種で比べるかわりに、他車のガソリン車と比べると……
WLTP燃費(高速道路モード)は:
・ RAV4・ガソリン 18.9km/L https://x.gd/Pjzdv
なので、 e-POWER よりは RAV4・ガソリン の方が良い。
ノート e-POWER の場合は、フィット・ガソリンには勝つが、ヤリス・ガソリンには負ける。
エクストレイルにガソリン車がないわけ。
> というわけで、先代のノートは e-POWER 車とガソリン車を併売したのに、( WLTCモードの燃費表示のある)現行のノートはガソリン車を併売しないのである。新型エクストレイルもまた同じ。
⇒ 新型ノート e-power(2WD)の WLTC 高速道モード燃費は、27.2〜27.6km/L です。おっしゃるとおり、旧型ノート ガソリン(2WD)の WLTC 燃費がわかれば直接比較できますが、旧型は JC08 燃費しかカタログには載っていません。
それで、直接比較はできませんが、ノート ガソリン車(2WD)の高速道モード燃費が、ノート e-power 車(2WD)のそれより本当に高いのかを推定できるかもしれません。同じ ガソリンエンジン(型式 HR12DE)を搭載して車重が新型ノートよりも10%程度も軽いマーチ(現行は 2WD しかない)の WLTC 燃費はカタログに載っています。この高速道モード燃費は、20.0〜20.8km/L です。筆者の言葉を借りれば「直結」ではなく、CVTを介して変速比を1よりも小さく(直結よりも減速の状態に)してもこの数値です。
よって、設計がかなり新しいとはいえ、(ガソリン車を設定するなら)このマーチと同じ 1.2L HR12DE を搭載するであろう新型ノートにおいて、マーチより約10%も重い車両重量にもかかわらず、マーチを約35%も上回る驚異的な高速燃費をたたき出せるのなら、筆者のいわれるとおり、「日産は、e-power車の高速燃費がガソリン車のそれよりも悪い事実を隠すために、わざと新型ノートや新型エクストレイルでは、ガソリン車を設定しなかったのだ。姑息だ」という主張は妥当です。
比較対象は単に「ガソリン車」です。市販されていない MT 車を想定していることもあります。
CVT車は嫌い。ロックアップ付きの ATの方がいい。アイシンワーナーのトヨタは得意。日産は不得意。前に日産を批判したことがある。
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でも、そこまで考えたら、もともと日産は CVT車しか作れないんだから、「ガソリン車の方が燃費がいいことを隠すため」という理屈は成立しなくなるかな。すみません。
「日産は、 e-POWER は駄目でも、ガソリン車ぐらいはまともに作れるはずだ」
という前提で書いたが、ガソリン車も駄目だったかもね。総崩れかな。
だけどエクストレイルなら、ロックアップ CVT の可能性もある。ローグには、ロックアップ CVT があると書いてある。
→ https://www.nissan-global.com/JP/INNOVATION/TECHNOLOGY/ARCHIVE/CVT/
これはスリップロスがないのか? 私は詳しくないので、わからない。
同じじゃないですよ。エンジン形式は同じでも、日産の HR12DE は、ものすごく改良の手が入っていて、初期と後期とでは性能が段違いになっています。主として燃費の効率が大幅に改善されています。
⇒ それはそうだと思いますが、でも、話の筋としては間違ってないですよね。その燃費性能が上がった HR12DE でも、現行マーチの WLTC 高速道燃費では20km/L ちょっとしか出ていないので、新型ノート e-POWWR の高速道燃費は超えられないだろう、と推定しているわけで。それとも、マーチには初期型の 燃費の悪い HR12DE を今でも引き当てていて、もし新型ノートでガソリン車の設定があれば、最新型の燃費の良い HR12DE が載ったということですか?
そうだと思います。タイ製だしね
⇒ そもそもあれですよ、CVTをユニット単体でみたら、スリップロスは大きい(伝達効率は悪い。特にA/Tに比べると高速時に悪い)のかもしれません。しかし、CVTは変速比の幅が大きくできて、かつ変速比が無段階に制御できるので、クルマとしての実燃費は、CVT車のほうが M/T車よりも(同様にたぶんDCT車よりも)優れているというのは、もはや定説ですよ。ですから、燃費のことを議論するだけなら、ガソリン×CVT車と比較して差支えないと思うのですが。
> だけどエクストレイルなら、ロックアップ CVT の可能性もある。ローグには、ロックアップ CVT があると書いてある。
⇒ CVTでも、トルクコンバーターと組み合わせた方式のCVTなら、ロックアップ機構&制御付きです。今や、ロックアップ(トルクコンバーター内でのクラッチによる直結)の付いていない A/T や CVT はほとんど存在しないのでは。日産のエクストロニックCVTも同様です。ただし、製品によって、ロックアップが働く車速に違いはあり、これをより低速側にすることが燃費を稼ぐひとつのポイントです。
トヨタがヤリスから(レクサスUX から?)新規採用した「Direct Shift-CVT」は、トルクコンバーターのロックアップクラッチ部分だけでなく、ギア式の直結機構を持たせて、発進時からM/T車のようにほとんどすべりのない動力伝達を実現したものです。
それはわかっていますけど、そういうことが成立するのは、市街地走行の場合。
一方、本項で話題にしているのは、高速の定速度で走っている場合。ここでは CVT のメリットはなく、デメリットだけがある。だから欧州では CVT が不人気だ。
> そうだと思います。タイ製だしね
⇒ タイにあるのは車両の組み立て工場です。HRエンジンは、名古屋にある愛知機械工業で生産しています。これをタイに持っていって車両に組み付けていると思われます。生産拠点はひとつなのですから、タイで作っているクルマに引き当てるエンジンだからといって、初期のバージョンをわざわざ生産しているなんてことはないでしょう。結局は日本に入ってくる車両なのですからね。
https://faq2.nissan.co.jp/faq/show/10303?category_id=16&site_domain=default
そうだったのか。知りませんでした。情報ありがとうございます。
詳しく調べた末の調査結果。
⇒ 再検討ありがとうございます。しかし、
@ WLTC燃費(高速道モード)は、同じ4WDどうしで、
・ エクストレイル e-POWER 18.3〜18.4km/L
・ RAV4 ガソリン 17.4〜17.5km/L
なので、エクストレイル e-POWER 車のほうが RAV4 ガソリン車よりも1割ほど良いです。ご提示のネット情報(MoTA のレポート記事?)で RAV4 の 18.9km/L は「実燃費」のほうです。カタログ燃費ならカタログ燃費どうしで比較してください。
A また、
> ノート e-POWER の場合は、フィット・ガソリンには勝つが、ヤリス・ガソリンには負ける。
とありますが、全然違います。ヤリスのガソリン車よりも全然良いです。2WD車どうしの比較でも4WD車どうしの比較でもそうです。また、市街地モードどうしの比較でも高速道モードどうしの比較でもそうです。
ヤリスの1,5L×CVT車の車両重量は 990〜1130kg、新型ノートの車両重量は 1190〜1340kg です。そもそも車格に違いがあるのですが、新型ノートの e-POWER 車はヤリスのガソリン車に対してアドバンテージを保っています。
おっしゃるとおり、e-POWER 車は高速での燃費には弱点がありそうですが、e-POWER の商品力を少し低く見積もり過ぎです。まずは、カタログ値などデータをしっかり見てください。
<新型ノート WEBカタログ 諸元表>
https://www3.nissan.co.jp/content/dam/Nissan/jp/vehicles/note/2111/pdf/note_specsheet.pdf
<ヤリス WEBカタログ 諸元表>
https://toyota.jp/pages/contents/yaris/001_p_001/4.0/pdf/spec/yaris_spec_202207.pdf