2022年07月02日

◆ Amazon 宅配の違法労働

 Amazon の業務委託を受けて宅配をする人たちが、苛酷業務で悲鳴を上げている。これは Amazon の違法行為(脱法行為)であると言える。

 ――

 Amazonの宅配は最近、ヤマト運輸から、Amazon の業務委託を受けて宅配をする人たちに替わりつつある。この人たちはフリーランスで働いているが、個人事業主としての扱いなので、労働者としての権利がない。そのせいで、苛酷労働に悲鳴を上げている。1日13時間の苛酷労働で、賃金は最賃以下だ。

 本日の朝日新聞が報じている。
 男性はフリーランスとして、アマゾンの2次下請けの運送会社と業務委託契約を結び、配送の仕事をしている。朝7時半に出勤し、1日13時間働く。
 2020年1月からアマゾンの荷物を配り始めた。当初は1日に配るのは70個ほど。夜8時ごろには帰宅できた。週5日働き、休憩も3時間ほど取れることも多かった。
 ところが1年ほど前、状況は一変した。契約を結ぶ会社側から、アマゾンが配達ルートの選定にAI(人工知能)を採用したと知らされた。荷物は急増。かつての3倍近くの荷物を配る日もあり、休憩が1時間も取れない日も出てきた。「一緒に住んでいると思えないほど、顔を合わせない。疲れて家族のことを考える余裕もないです」
 日当は1万8千円のまま。ガソリン代や車の維持費は自己負担で、手元に残るのは月26万円ほどだ。
( → (政治とくらし 2022参院選)荷物3倍、家族との時間がない 配送業、AIがルート選定:朝日新聞

 1日13時間労働で、月 22日なら、月286時間労働。経費を除いた収入が 26万円なら、時給は 909円。残業割増しの分を考慮すると、時給は 829円だ。
( ※ 計算法: 残業は1日5時間だが、これを 25%割増しで換算すると、6.25時間分。1日14.25時間働いているのと同じになるので、月 313.5 時間分。26万円をこの時間で割ると、時給は 829円。)

 一方、神奈川県の最低賃金は 1,040円だ。
  → 最低賃金のお知らせ - 神奈川県ホームページ
   ( ※ 残業割増しや休日出勤割増しは別途加算される、と記述してある。)

 ともあれ、最低賃金 1,040円に対して、Amazonは時給 829円しか払っていない。これは明らかに違法行為(脱法行為)であると言える。
 のみならず、1日5時間の残業を月 22日もやらせたら、月 110時間になる。これは「月 45時間まで」という残業規制の規定に反する。ここでも違法行為をしていることになる。
  → 時間外労働の上限規制

 実際には、「業務委託をしている個人事業主」という扱いで、労働者に対する規制をすり抜けているわけだが、こういうのは脱法行為であり、許しがたい。労働者を奴隷扱いしているとも言える。
 朝日新聞は、単に事象を報道するだけでなく、法律面でも指摘するべきだろう。

 ――

 以上の話に対して、読者は文句を言うかもしれない。
 「困ったときの Openブログはどうした。うまい案を出せ」と。

 まあ、私としても、簡単な解決策を示すことはできる。こうだ。
 「転職すればいい。さっさとアマゾンとの契約を打ちきって、ヤマト運輸に乗り換えればいい。ヤマト運輸でも、個人事業主に業務委託をしている。そこで働けば、まともな生活ができる。つまり、短い労働時間で、多くの収入を得ることができる」

 まあ、これは当り前なんですけどね。私がいちいち言うまでもないことだ。
 ではなぜ、彼らはあえて Amazon と奴隷契約を結ぶのか? うーん。よくわからないが、「自分の失敗を認めたくない」と思っているのかも。以下で説明しよう。

 ――

 実は、以前は、Amazon はヤマト運輸や佐川急便よりも高収入だった。ヤマト運輸や佐川急便は、1個 140円の業務委託だったのに、Amazon は1個 170円の業務委託だった。
  → ヤマト運輸、佐川急便、Amazon、これから委託を受けるならどこ?

 そこで、冒頭記事のような人は、「Amazonで高収入になるから、Amazonの業務委託を受けよう」としたわけだ。それで高収入を得て、「成功した」と思っていた。
 しかし1年前に、Amazon は方針を改定した。配達の数量は3倍になったのに、払う料金総額は同じとなった。結果的に1個あたりの単価は3分の1になった。ガソリン代などの経費が多くかかることも考えると、3分の1以下になったとも言える。ざっと見て、170円から 60円にまで下がった。これは、ヤマト運輸や佐川急便の 140円 よりも大幅に安い。
 結局、最初は高値で契約したあとで、途中で安値に切り替える、という詐欺的な手法を採ったわけだ。そういう詐欺に引っかかった人が、冒頭のように、ひどい目に遭うわけだ。
 ただし、彼らは「自分が詐欺に引っかかった愚か者だ」とは認めたくない。そこで、ヤマト運輸や佐川急便に転職しないで、あえて Amazon で耐え忍ぶ……というふうになるらしい。
 だから、そういうプライドを捨てて、さっさとAmazonから離れて、ヤマト運輸や佐川急便に転職すればいいだけのことだ。ちなみに、ヤマト運輸に勤めるなら、ここで応募すればいい。
  → 中途採用 | 契約社員採用(アンカーキャスト) | ヤマト運輸

 問題の解決法は、以上で示した。いちいち私が示すまでもないような、簡単な解決法だ。
 なのに、労働者も朝日新聞も、その簡単なことに気づかないようだ。どうなっているんだか。頭が猛暑でイカレたわけでもあるまいし。


nettyusho2.png



 ※ それはそれとして、最低賃金以下で働かせる Amazon については、摘発するべきだろう。政府が何らかの介入をするべきだ。場合によっては業務委託契約をすべて解除させるべきだ。その場合、労働者が解雇されるというよりは、日本 Amazon がつぶれる。



 【 関連サイト 】
 同趣旨の話は、前にも記事になって、話題を呼んだ。朝日の記事と読売の記事がある。

 (1) 朝日の記事

 神奈川県内の50代男性ドライバーは、2019年3月、アマゾンの2次下請けの運送会社と業務委託契約を結んだ。個人事業主なので、自分の車を使い、荷物の配送を担う。
 この1年ほどで、扱う荷物の量が急増。働き方が過酷になり、疲労がたまるようになった。
 荷物量が増え、毎日190個ほどを配る日が続いていた。前日、帰宅後に妻に「このままじゃ、倒れるか、事故を起こすかもしれない」と話したところだった。
 男性が毎日パソコンに入力してきた荷物量の記録によると、20年7月の1日の平均個数は116個。ところが、1年ほど前、業務委託契約を結んでいる会社側から、アマゾンが宅配ルートの選定にAI(人工知能)を採用したと知らされた。荷物は急増し、21年8月には平均が178個、今年5月は214個に増えた。
 一方、報酬は日当1万8千円のまま。個人事業主のため、ガソリン代や車の維持費など月5万円は自己負担で、手取りは月22万円ほどだ。
 「もう限界。改善されないと、いつか倒れる」と漏らす。
 労組の立ち上げに加わった40代の別の男性ドライバーも、長時間労働の問題を訴える。
 1日12時間以上働き、今年3月の週の平均労働時間は、66時間だった。
 「週2日の休みは疲れてほぼ寝るだけ。湯船で寝てしまい、おぼれそうになって気づくのは日常茶飯事です」と話す。

( → アマゾン配達員「荷物量が異常」、AIで決まる激務 労組結成の背景:朝日新聞


 (2) 読売の記事
 1日あたり200個前後の荷物を担当。配達が早く終わっても、遅れている別のドライバーの荷物を引き受けるよう会社から指示され、1日に働く時間は12時間以上になることもある。どれだけ運んでも報酬は1日で固定だ。
 配達状況は、スマートフォンの位置情報で同社に把握される。契約で月に働く日数が定められているが、「人手が足りない」と急な休日出勤を求められることもある。契約書には同社の指示に従うよう記され、違反すれば契約を解除される項目があるという。
 同社は取材に「契約内容は答えられない」としている。しかし、是正勧告は、個人ドライバーとの間に事実上の雇用関係が認められるとする内容だった。

 個人事業主を保護するため、政府は昨年3月、指針を策定。実質的に発注元の指揮命令下で働いていれば、労働基準法など労働法令の対象となると明記し、▽報酬の減額▽一方的な発注取り消し――など12類型について、独占禁止法違反などになりうるとの見解を示した。
( → 1日200個の荷物・ガソリン代は自己負担…立場弱い宅配個人ドライバー「自由なんてない」 : 読売新聞

 最後の話を読むと、独占禁止法などで、法的規制はちゃんとできているらしい。なのに Amazon は違法行為のやり放題だ、ということらしい。
 あるいは、例によって、「企業は独禁法違反のやり放題。いざとなったら自民党に頼めば、公取委を黙らせてくれる」ということなのかもしれない。

 思えば、能年玲奈などを排除する芸能事務所の問題でも、公取委が介入したのに、途中で沙汰止みになってしまった。ここでもはやはり、芸能事務所が自民党に献金で圧力をかけて、公取委を黙らせたのだろう。そうとしか思えない。
 日本では独禁法違反のやり放題となる。だから、Amazonの違法行為も、のさばるままだ。

 そして、そういう自民党を「素晴らしい」と評して、選挙で勝たせるのが、日本国民だ。

posted by 管理人 at 23:21 | Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Amazonの管理として一次にある会社が運送会社と契約してる個人事業者に説明無しでAmazonと雇用関係にないという書面にサインさせてます
Posted by 匿名 at 2023年03月20日 07:31
 雇用関係については、欧州が法改正に進みつつあるし、日本政府も検討中らしいので、法改正するしかなさそうですね。現行法の範囲内では解決できそうにない。
 ウーバーなどの雇用といっしょで、ギグワークの問題であるようだ。

 ──

 ただし、今調べてみたら、「Amazonと契約するのは、報酬が高いので、大手運送会社と契約するよりも、収入がいい」という反論があった。
  → https://www.bengo4.com/c_5/n_14439/

 この人の場合は、Amazonの方がいいらしい。ならば、それで満足しているのだから、それでいいのだろう。
 Amazonはあるとき急激に単価を切り下げることがあるが、そうなるまでは、Amazonで続ければいいのだろう。
 一方、単価切り下げなどでブラック労働にされた人は、さっさとAmazonから離れればいいわけだ。これらの人がなぜ離れないのかは、不思議である。本文に記したとおり。

 まあ、人それぞれで、現状はまだら状態であるようだ。
Posted by 管理人 at 2023年03月20日 10:02
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ