2022年06月25日

◆ 核禁止のシステム

 核兵器禁止のためには、どうすればいいか? 核禁止のために、国際会議を開いたり、条約を締結すればいいか? いや、核禁止のための新システムが必要だ。

 ――

 核廃絶は無意味だ


 核兵器禁止のためには、どうすればいいか? 核禁止のための国際会議を開いたり、核禁止のための条約を締結する……というのが、現状の方針だ。だが、そんなことはいくらやっても無意味だ。
 なぜ無意味か? それによって核廃絶が実現して、この世に一発も核兵器がなくなった状態を想定すればいい。そのとき、彼らは喜ぶだろう。「地球から一発も核兵器がなくなった! われらの理想は実現した! 万歳!」と。
 しかしその数年後には、新たに核兵器を開発した国が出現する。そして、その国が「唯一の核保有国」となる。この時点で、世界はその国に全面降伏するしかない。なぜなら、その国への対抗手段となる核兵器を持たないからである。一方的に不利になった状態では、一方的に屈服するしかない。さもなくば、(大坂夏の陣の)豊臣軍のように攻撃を受けて滅亡するしかない。
 たとえば、世界中のすべての国が核兵器を捨てたあとで、ロシアか中国が核兵器を開発したなら、その時点で、世界はその国に屈服するしかないのだ。民主主義は蹂躙され、言論の自由はなくなり、ただ独裁者の言いなりになるしかない。そういう未来が待ち受けているのだ。 

 これと似た話は、前項でも述べた。前項との違いは、次のことだ。
  ・ 前項 …… 核保有国が一つずつ減少して、最後に1国だけが残る。
  ・ 本項 …… 核保有国がゼロになったあとで、新たに1国が出現する。


 「1国だけが核保有をする」という最終状態は同じだが、それに至る過程が異なることになる。
 とはいえ、過程が異なるとしても、最終状態は同じだ。どっちにしても、「核の放棄」は、「核を独占する国の出現」をもたらして、「その国による世界征服」をもたらすことになる。それが最終状態だ。
 というわけで、「核廃絶」というのは、理想的状態のように見えて、実は、最悪の状態に至るための途中状態であるにすぎないのだ。

 ※ この話の前提には、「核兵器の開発は容易である」ということがある。ただの貧困国家である北朝鮮ですら、核兵器を開発できた。イランやイスラエルも同様だ。いくら核兵器を廃絶しても、いつでもひょっこり再登場できるのである。

 核禁止のシステム


 そこで、「核廃絶」に代わる別のものが必要となる。では、それは何か?
 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。それは、核兵器の存在をゼロにするのではなく、核兵器があったとしても核兵器の使用を禁止することだ。存在ではなく使用の方を禁止するわけだ。そして、そのためには、新しいシステムが必要となる。
 そのシステムは、次のようなものだ。
  ・ このシステムは、一種の同盟である。(NATOのようなものだ。)
  ・ システムの参加国が核攻撃を受けたら、参加国の全体が反撃する。


 これはつまり、システムの参加国は「核の傘」の庇護に入る、ということだ。
 たとえば、このシステムに日本が参加する。もし日本がはロシアから核攻撃を受けた場合には、システムの参加国の全体(米国・英国・フランスなど)が、その核兵器を使用して、(日本に核攻撃をした)ロシアに、核兵器で反撃する。

 これは、ひとことで言えば、世界規模の「核同盟」と言える。
 この核同盟によって、次の効果を得る。
  ・ 中国またはロシアは、核同盟の参加国に核攻撃がしにくくなる。
  ・ 日本やドイツは、核兵器をもつ利点がなくなるので、核開発をしなくなる。
   (それは米・英・仏にとっては、核の独占の意義を高める。)


 この核同盟を、新たなシステムとして導入することで、「核の使用禁止」を実現できる。



 [ 付記 ]
 以上で述べたのは原則だ。
 細かな仕様としては、次の細目が考えられる。

 (1) 報復の規模

 核同盟の国への核攻撃があったときには反撃するが、その反撃の規模はどのくらいにするべきか?
 原則としては「ほぼ同規模」にするといいだろう。なぜなら、「倍返しだ」という方針を取ると、敵もまた「倍返しだ」というふうになって、報復がエスカレーションするからである。その場合には、最終的には世界全体が滅亡する。そうなっては元も子もない。
 お勧めは「核の使用量は、相手の半分に留める。ただし通常戦力による報復は、倍返しとする」という方針だ。……この方針ならば、核のエスカレーションは避けられる。

 (2) エラーによる核発射

 国の首脳は命令していないのに、末端の部下が勝手に勘違いして核ミサイルを発射してしまった……というような場合には、どうするべきか?
 従来の方針では、「たとえ相手のミスによる核ミサイルの発射に対しても、こちらからは核ミサイルで報復する」というふうになっていた。しかしこれでは偶発的に世界大戦が発生してしまう。きわめてまずい。困った。どうする?
 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「ミスによる核ミサイルの発射に対しては、やはり同規模の核報復をすることを原則とする。ただし、相手の譲歩と引き替えに、核報復を中止できる」

 ここで、相手の譲歩とは、次のことだ。
 「ミスをしてしまったことのお詫びとして、自国の領土の半分を割譲する」

 たとえば、ロシアが間違えて、日本に核ミサイルをぶっ放したせいで、日本人が 30万人が死んでしまったとする。この場合、ロシアは西側の全体から核攻撃を受けて、30万人が死ぬぐらいの報復を受けることになる。
 だが、ロシアとしてはそれは困る。そこで、「自国の領土の半分を(お詫びとして)割譲するから、核ミサイルを発射しないでくれ」と頼む。これを日本が受け入れれば、ロシアへの核報復はなくなる。

 なお、被害が少ない場合もある。たとえば、核ミサイルの発射先が北海道の原野であったので、日本の被害は少なかった……というような場合。
 または、発射したミサイル数は1発だけだったので、迎撃ミサイルで撃墜することが可能となって、実質的な被害はゼロであった……というような場合。
 このような場合にも、原則としては、核報復をするべきだ。それを迎撃できるか否かは、相手の問題であって、核同盟の参加国の知ったことではない。結果的にはロシアだけが圧倒的に多くの被害を出すこととなったとしても、知ったことではない。最初に核ミサイルをぶっ放した方が悪いのだ。こちらが迎撃できたかどうかということは関係ない。
 とはいえ、このような場合には、何らかの外交協議で問題の解決が図られることもある。たとえば、
 「領土の半分の割譲でないが、北方領土(千島と樺太)を日本に返還した上で、カムチャッカ半島も割譲する」
 というふうなことだ。このくらいの譲歩を受ければ、日本としても、「まあ、勘弁してやるか。今回は一人も死者がいなかったことだし」
 と思うこともありそうだ。
 一方、日本がそう思わなかったとしたら、ロシアのどこかに核ミサイルが落ちることになる。

 以上のようにして、どこかで妥協点をもつようにすれば、少なくとも「偶発的な核戦争」が起こる危険は激減するだろう。



 [ 補足 ]
 学術的に論じよう。
 本項の話の前提となるのは「相互確証破壊」という従来の「核抑止論」の方法だ。「やられたら やり返す」という原則を取ることで、相手の核使用を抑止する、という方針だ。
 ただしこの方針は、現状では、米国とロシアの核軍拡をもたらしがちだ。それでは核禁止ができない……というのが、他国による懸念だった。そこで他国は「核抑止論は駄目だ」と考えて、「核禁止条約を」と考えた。
 だが、私は別の道を考えた。核抑止論(相互確証破壊という概念)が駄目なのではない。それに参加する参加国が少ないのが問題なのだ。ここに参加する参加国を大幅に増やせば、核の分散配置を通じて、相手の核攻撃への耐性を高めて、報復力を高めることができる。
 つまり、核兵器を増やすのではなく、同盟の参加国を増やすのだ。これによって核抑止力を維持できる。このことを通じて、必要な核兵器数を減らすことができる。
 これが本項の「うまい案」だ。
 
 ※ 日本がこれに参加した場合には、日本国内にも多数の核ミサイルが配備されることになる。そのスイッチは日本でなく米国が握ることになるが、とにかく日本には多数の核ミサイルが配備されることになる。一部は日本の潜水艦や水上艦であるかもしれない。
 ※ 「そんなのはイヤだ」と思う人もいそうだが、それがイヤなら、いつでも同盟を脱退できる。ただしその場合には、ロシアや中国の核ミサイルを浴びる可能性がすごく高まる。報復手段をもたなければ、一方的に核攻撃を受ける危険が高まる。……もし将来、中国との戦争が起これば、日本がオスプレイなんかを離島に派遣している間に、核ミサイルが東京に落ちてくる。自衛隊のすべての戦力は無効化する。(日米安保がないと仮定した場合には、そうだ。逆に言えば、今の日米安保は、2国間の「核同盟」である。日本はすでに部分的な「核同盟」に参加していると言える。)

posted by 管理人 at 23:33 | Comment(5) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
仰せの通りなんですが、やはり実現できないと思います。
 核抑止力として迎撃ミサイルがあります。今までは命中率が50%以下ということで、多核弾頭ミサイルや単に数多く発射すれば無意味になってしまう代物でした。でも最近のトラッキング技術はすごいようです。超音速巡航ミサイルが開発されているのはこのような最新の迎撃システムに対抗するためでしょう。
 近い将来は超強力レーザー迎撃システムに期待が持てます。地上からではレーザー光が散乱されるので人工衛星に搭載することになります。なにより光速で迎撃できるのがすごいところです。また大量殺戮型攻撃兵器に転用できないところが良いと思います。
 核ミサイルが無力化される未来に希望を持ちましょう。
Posted by よく見ています at 2022年06月26日 10:59
 人工衛星に莫大なエネルギーを供給するためには、原子炉が必要です。原子炉は非常に頑丈なので、人工衛星が落下したときに、地上に原子炉が衝突します。過去に、カナダに落下した事例があります。
 それ以後、危険性に鑑みて、原子炉衛星は開発されていないようです。
 今後、普及することがあれば、宇宙から原子炉が何度も降ってくることになる。

 敵の核ミサイルに攻撃される代わりに、自国の原子炉衛星が落ちてくる、ということもあるかも。あるいは、それがきっかけで、戦争になるかも。

 あと、雨の日や曇りの日には宇宙から見えないので、無効になりそうです。長波長ならば検知できるかもしれないが、長波長だと解像度が低いので、誤検出も起こりそうだ。あまり「うまいことばかり」とは行かない。
 そもそも、最初に人工衛星を破壊されたら、どうしようもない。
Posted by 管理人 at 2022年06月26日 11:11
> やはり実現できないと思います。

 正解はわかっているのに、(組織や人間関係の)しがらみのせいで、正解に到達できない。……そういうことは、しばしばある。そういうときには、どうしたらいいか? 

 それを教えてくれるのが、ドラマ「悪女(わる)」だ。
  https://mantan-web.jp/article/20220625dog00m200011000c.html

 ここでは、主演の今田美桜が大活躍する。明るい性格と、バイタリティーと、コミュ力で、自らが潤滑剤となって、もつれを解きほぐす。もつれを解きほぐせば、自然に最適解に到達できる。
 コミュ力があれば、しがらみの問題は解決できるものだ。
Posted by 管理人 at 2022年06月26日 11:25
 最後に ※ の箇所を二つ、加筆しました。
Posted by 管理人 at 2022年06月26日 11:29
核兵器の怖さ知らない輩が施政者なんですから この国は没落して当たり前でしょう。 小型軽量の核兵器なら数キロの航続能力の飛翔体で運用可能ですから 大袈裟な防空システムなど愚かなことです。核の無意味化が生殖技術、遺伝子工学方向にその可能性を求めないように切に願いたい
Posted by 放射能は体に良い at 2022年06月26日 16:48
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