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今の日本にとって一番大切なことは何か? 物価上昇か? ウクライナ戦争か? コロナか? ……いや、それらはいずれも短期的な課題だ。今現在ではなく今後の長期的な政策を考えるに当たって、最も重要なことは、別にある。それは、「日本の没落の阻止」だ。
最近、「日本の没落」が話題になっている。かつては世界第2の経済大国として君臨していたが、今はその面影もない。では、どうしてこうなったか?
いろいろと理由は考えられるが、私が最終的に到達した結論は、こうだ。
「少子化こそが日本の没落の主因である」
このことは、人口ピラミッドを見ればわかる。次の図だ。
2025年にはこうなる。
子供を除けば、50歳以下よりも 50歳以上の方が多くなる。老人ばかりという感じだ。
60歳以上の人口は、20歳以上のうちの3分の1を越える。生産しない人口があまりにも多くなる。
これでは日本の生産力は劇的に減少し、養わねばならない負担が劇的に増加することになる。……このことが「日本の没落」の根源だ。
このことは「未来の危険」というだけでなく、今でもすでにかなりの程度で現実化している。日本はすでに没落しつつある。そのことは次の統計からもわかる。
2021年度に国民年金の保険料の支払いを全額免除や猶予された人は前年度より3万人増え、過去最多の612万人となった。加入者の4割強にあたる。
一方、全額免除や猶予者を除いた国民年金の保険料納付率(本来支払う月数のうち、実際に支払われた月数の割合)は73.9%。
規定の保険料を納めた人は713万人で、半数に届かなかった。
( → 国民年金の免除・猶予、加入者の4割強に:朝日新聞 )
保険料を納めた人が半分もいない。こんなことでは将来の年金制度は破綻する。いや、今でもすでに破綻しつつあるとも言える。ひどいものだ。
では、どうすればいいか? もちろん、「少子化対策」をすることだ。これが「日本の没落」を長期的に阻止する唯一の策だからだ。
その策を取ったからといって、今すぐ没落が阻止されるわけではない。だが、そんなことを言って対策を後回しにし続けた20〜40年のツケが、今になって露見しつつある。馬鹿丸出しというしかない。このままでは、日本は消滅しかねない。
→ イーロン・マスクさん「出生率が死亡率を超えるような変化がない限り、日本はいずれ消滅する」
今の日本の現状は、タコが自分の足を食うようなことをしているのも同然だ。
だが、愚かな人間は今日の食べ物のことしか考えないが、賢明な人間はきちんと長年の人生計画を練るものだ。愚かな子供はゲームとスマホで楽しい毎日を過ごそうとするが、賢明な子供はきちんと勉強して良い学校に入ろうとするものだ。
では、今の日本は、そのどちらか? 各党の党首の公約を見ると、そのどちらかがわかる。いずれも目先のことしか考えていない。
→ 9党首の第一声 参院選公示:朝日新聞
この記事から、各党について論評しよう。
(1) 自民
自民党は、公約というより、実績で言うべきだろう。野党と違って政権を取っているのだから、「政権を取ったらこうします」という公約よりは、実績で示せばいい。その実績では、まあ、可もなく不可もなく、というところか。めざましい実績もないが、安倍・菅内閣のような滅茶苦茶なところもない。なお、物価対策を強調しているが、この件は、各党をまとめて、後述する。
(2) 立憲
立憲は、「女性優遇」を冒頭に掲げるところが、致命的に世間ズレしている。そんなリベラルなことばかりを言っているから、リベラルの票しか取れなくなる。こんなことを冒頭に掲げる時点で、「世の中の3分の2の票はいりません」と言って切り捨てているのも同然だ。
→ リベラルはなぜ少数派か?: Open ブログ
→ 立憲はなぜ敗北したか?: Open ブログ
立憲には致命的な難点がある。それは、「正しいことを言う」のを第一目標にしており、「(多数派となるだけの)票を取る」ことが二の次になっていることだ。だから、自分たちの言いたいことばかりを言っていて、いつまでたっても票を取ることができない。
→ 正しいことを唱えるべきか?: Open ブログ
(3) 維新
原発再稼働にこだわっている。まあ、原発再稼働というのは、それなりに良い案なのだが、これだったら自民を支持すればいいだけなので、「与党の主張と同じことを言う野党」を支持する理由にはならない。
そもそも、原発再稼働というのは、前項のことからして、自民党が大失敗した方針だ。原発再稼働をするのならば、「過去の原発事故の責任を取ること」が専決となる。それもしないで、口先だけで「原発再稼働」を言うような野党は、ただの三下にしかなれないんだよ。自民に利用されて捨てられるだけだ。国民民主のように。
(4) 国民民主
「もう25年にもわたって実質賃金が下がり続けているのは日本だけだ」と言う。着眼点はいい。今回の各党の党首演説のなかで、「これは支持できる」ということを述べたのは、この党だけだ。経済センスがあり、とても頭がいい、と言える。
ただし同感できるのは、現状認識だけだ。政策立案という提案の点では、まったく支持できない。「給料を上げる。国を守る」という公約だが、「給料を上げる」のは企業の役割であり、国の役割じゃない。国のやるべきことを理解できていない。その証拠に、少子化対策すらしない。
(児童手当などの、金のバラマキ策だけは充実しているが、保育園の拡充や保育士の増員党肝心の対策は何もない。 → 公式の公約集 )
(5) 共産
毎度毎度、大企業を批判して、中小企業を優遇すると言っている。これでは、大企業に勤める労働者をすべて敵視するのも同然だ。労働者の半分ぐらいを敵視しているようなものだ。馬鹿げている。
だいたい、大企業とその労働者は、日本の税収のほとんどすべてを負担しており、中小企業とその労働者は、日本の税収をほとんど負担していない。なのに、税収を負担しない人ばかりを優遇しようとしたら、日本は破綻してしまう。
日本がなすべきことは、中小企業を優遇することではなく、中小企業をすべて消滅させて、労働者のすべてを大企業の社員にすることだ。(残るのは企業ではなく個人事業主だけだ。)……こうするのだ、誰もがハッピーになる道なのに、共産党はその逆を目指す。馬鹿丸出しというしかない。
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結局、日本にはまともな政党はない。このままでは、イーロン・マスクの言うように、日本は消滅するしかない。なのに、そのことに気づいている政党は、一つもない。馬鹿丸出しで、馬鹿同士の争いをしている、というしかない。
[ 付記1 ]
ウクライナ戦争について言えば、「武器供与」こそが最重要なのに、それを言う政党は一つもない。これらの政党はいずれも、ウクライナを見捨てていることになる。つまり、ロシアに協力しているのも同然だ。
「国を守れ」と言っている自民や国民民主は、自分たちこそが(ロシア支援で)日本を滅ぼそうとしていると自覚するべきだ。ちなみに欧州諸国は、武器支援を活発化させている。
→ CNN.co.jp : ウクライナへの武器支援、「必要な限り実施」 ドイツ首相
→ 米に続き、ドイツと英国もウクライナに重火器供与へ ロシアは反発 | 毎日新聞
[ 付記2 ]
物価上昇について、各党は対策を訴えているが、その必要はない。日本は世界のなかでも物価の優等生だからだ。下記の画像をクリックすると、数値表の全体が現れる。
政府と日銀は量的緩和政策で円安誘導し株高を演出、大企業や資産家などは利益を得ましたが「トリクルダウン」など起こらず働く人の賃金は上がりませんでした。金融政策の失敗で物価が高騰し暮らしに直撃しています。政治主導の再分配が必要です。#物価にあわせた最低賃金を#最低賃金を1500円に pic.twitter.com/cXUM4KDZPp
— たつみコータロー 前参議院議員 (@kotarotatsumi) June 21, 2022
物価が上昇しているのは、日本政府の責任ではない。世界的な傾向だ。そのなかで、日本は物価上昇を非常に抑えていると言える。この点では問題ない。
問題は、物価が上昇していることではなく、賃金が上がらないことだ。名目賃金の上昇率が物価上昇率を下回っている(実質賃金が低下している)のは、日本だけだ。日本で問題なのは、物価が上がっていることよりも、賃金が上がらないことなのだ。
この状況で「物価上昇の阻止」などばかりを訴えている政党は、なすべきことを根本的に間違えているというしかない。
[ 付記3 ]
どの党も駄目なら、どこに投票すればいいのか? 私のお勧めは、こうだ。
「自民が勝つのはわかっている。ならば、自民の大勝を望むのか、与野党伯仲を望むのか、それで決めればいい。 自民圧勝を望むなら自民に入れる。与野党伯仲を望むなら、自民を負かしそうな候補者に入れる。そうすればいい」
なお、後者は「当落線上にいる野党候補者」だ。その政党は問わない。立憲でも維新でも共産でもいい。ただし国民民主だけは別だ。この党は野党ではないと自ら公言しているので、対象とはならない。(よ党と、や党の中間なので、ゆ党と呼ばれる。)
【 関連項目 】
→ 野党の取るべき公約: Open ブログ
2021年の衆院選のときに書いた記事。ここでは「少子化」以外のことを論じている。
残念ながら日本はこれらの技術革新に遅れています。国立理工系学部の学生には全員奨学金を給付するなどの思い切った政策が必要と思います。その代わり今の生ぬるい講義は止めて、卒業、修了要件は厳しくしましょう。
現状についてなら、仕方ないというのはわかります。
本項で述べているのは、現状を改善するという意味ではなく、今後の数十年間において、急激な没落を避けるかどうか、ということです。
わかりやすく言えば、あなたの年金を払うべき人口を、現状の半減になるのは避けられないとしても、さらに半減させるべきか、ということです。
国民年金の額は現在、年額 80万円弱ですが、今の中年がもらえるのは 40万円になるでしょう。それは避けられない。その後さらに、20万円まで下げていいのか? ゼロになってもいいのか? ……そういう問題です。
※ 厚生年金ならば、その何倍かの額になるが、同様に減る。
多額の年金代を払ってももらえなくなってもいいのか? 「少子化は避けられない」と言って、現時点において未来を変えなくていいのか?
過去は変えられなくても、未来は変えられます。それを決めるのは、現在の私たちです。
主たる原因は晩婚化と経済問題です。
しかし原因などはどうでもいい。病気の原因などを知っても意味はない。大切なのは原因を知ることではなく、治療をすることです。
原因を知るのは学者に任せておけばいい。病人にとって必要なのは、病気を治してくれる医者です。
少子化も同じ。原因を知るのではなく、対策をなすことが大事です。
例えば、戦前・戦中の日本は出生率が高い社会でしたが...
・医療や衛生環境が整備されておらず乳児死亡率が高く、子供のうち誰かが生き残るようにするには、たくさん産む必要があった
・子供は農業・商業・家事などの労働力として扱われることも多く、今のような、教育にお金をかける家庭は少なかった
・国民・市民に結婚・妊娠・出産する/しないの自由が今ほど認められておらず、内心は不服でも、結婚し子供を産まざるを得なかった女性もそれなりに多かっただろう
(今でも、中近東やアフリカ等には、そのような国もまだ多いと思います)
日本よりも男女平等が進んでいる北欧には出生率が高い国があるとも聞きますが、それでも合計特殊出生率は1.5〜2.0あたりで、2を超えるところは多くないのではないでしょうか。
例えば、デンマークの出生率は最近で1.77と日本より高いですが、2を超えていません。
https://search.yahoo.co.jp/amp/jp.knoema.com/atlas/デンマーク/topics/人口統計/出生率/出生率出産%3Fmode%3Damp%26usqp%3Dmq331AQIKAGwASCAAgM%253D
そりゃまあ、そうでしょう。が、だからといって、何もしない無為無策がいい、ということにはなりません。
韓国では出生率が 0.84 になっている。日本もそうなっていいのか?
類比的に言えば、人間はどうせいつか死ぬのだから、病院も薬もなしで放置する無為無策(原始人生活)がいいのか? それとも、できる限りのことをやるのがいいのか?
少子化を完全に解決することはできないとしても、できる限りの対策はやるべきだ、というのが、私の立場です。
ただし、これは、人生観とも関連するかもしれませんね。私は「自分のできる限りのことは最大限に力を尽くす」という方針で生きてきた。
一方、「何も努力しないで、ゲームで遊ぶことを第一優先にする」という生き方もある。そういう発想だと、努力するのは馬鹿馬鹿しいんでしょうね。日本は滅びるしかないのかも。そのあとに来るのは、中国人かな。