2022年06月19日

◆ 日本版 CDC の設置

 感染症の対策は、国立感染症研究所が担ってきたが、「日本版CDC」に統合・改組するという方針が出た。

 ――

 朝日新聞の記事から。
 新型コロナウイルスや新たな感染症に備え、政府が組織の再編を打ち出した。……国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合する「日本版CDC」だ。

 政策を支える専門家組織として期待されるのが、日本版CDC(米疾病対策センター)だ。
 国内では、国立感染症研究所がウイルスの基礎研究や感染状況のデータ収集などをしてきたが、実際に感染した患者を調べる臨床現場がなかった。
 一方、国立国際医療研究センターは病院機能を持ち、治療法、対策まで研究ができる。
 日本版CDCは、二つの組織を統合することで、厚労省に新たにできる感染症対策部の下に、感染症の研究・臨床が一体化した研究機関をつくるものだ。新組織は科学的知見に基づく政策提言や情報発信が強化できると期待される。
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( → 内閣感染症危機管理庁・日本版CDC 縦割り打破、課題は実効性:朝日新聞

 これを読んで、「おお、すばらしい。期待できる。さすがは岸田首相だな」と感嘆する人もいるだろう。だから、何も知らない素人向けに、私が本当のことを教えよう。

 日本の保険行政の根本的な問題は、組織の形態ではない。予算と人員だ。日本では、2009年の豚インフルエンザのあとで、「もう感染症の流行は済んだ」という判断の下で、感染症の予算と人員が大幅に減らされた。国立感染症研究所の予算と人員も大幅に削減された。また、PCR検査装置の導入も大幅に縮小となった。
 その間、MERSコロナウイルス が東南アジアで流行したので、東南アジア各国は PCR検査装置を次々と導入した。中国や韓国も同様だ。ところが日本だけは、「もう感染症の流行は済んだ」という判断の下で、PCR検査装置の導入もしなかった。だから、いざ新型コロナウイルスの流行が始まったあとで、世界のなかで日本だけが PCR検査装置不足になった。東南アジアの途上国では、ちゃんと PCR検査装置を稼働させて、感染者数をきちんと計上していったが、日本だけはそれができなかった。一時は検査数の上限を超えてしまったので、検査できないまま、陽性率ばかりが異常に上昇していった。このとき、感染者数の急増は頭打ちのように見えたが、実際には、「検査しないままで自宅待機」という形になって、「感染しているのに検査されないので計上されない」というふうになっていた。一種のインチキである。……こういう形で「感染者数が少ない」というふうになっているのは、アフリカのスーダンのような崩壊国家ぐらいのものだ。日本は一時的には、アフリカの崩壊国家並みの惨状を呈していたのである。
 それというのもすべては、「保険予算を減らす」という政府方針(財務省方針・首相方針)が理由だった。ワクチン開発の中止も同様だ。(下記)
 ファイザーと同様の技術開発は、日本でもなされていたのだ。予算は少なかったが、その少ない予算を工夫して、日本でも研究開発は十分になされていたのだ。そして実用化の寸前にまで達していた。まことにすばらしいことだ。
 なのに、安倍政権がワクチン開発予算を完全カットした。それまでは少ないながらも予算が付いていたので研究開発ができていたが、最後の最後になって(育てた果実が実をつける寸前になって)中断にしてしまった。かくて、せっかく育ったものが、枯れてしまった。……こうして、ワクチン開発は途絶えたのだ。
 ワクチン開発ができなくなったのは、すべては安倍政権の方針のせいだったのである。(かわりに八ツ場ダムや防潮堤のために莫大な金を投じたからだ。)
( → ワクチン開発の遅れの理由 : Open ブログ

 すべての根源は「保険予算を削減する」という政府方針だった。なのに、その根源を放置したまま、「組織だけをいじくる」というようなことをしても、意味がないのである。いくら組織をいじっても、PCR検査装置は増えはしない。PCR検査装置を増やすには、予算を増やすしかないのだ。また、足りない保健師を配備するには、予算を増やすしかないのだ。……根源は予算不足なのである。そこを放置したままでは、何の意味もない。

 ちなみに、保険予算を拡充するための金なら、ないわけではない。「ふるさと納税」という無駄のためには、7000億円程度を支出している。また、自民党では防衛予算を GDP 比で倍増する、という方針を出している。現行の防衛費は 6兆円弱だから、さらに 6兆円弱も防衛費を増やそう、というわけだ。それほどにも金はありあまっているようだ。しかし、そんな武器購入費のために金を投じるくらいなら、眼下の敵である「感染症」への対策のために金を投じるべきだろう。
 なのにそうしないから、コロナとの戦いで不利な戦いを強いられている。ロシアと戦うわけでもないのに、ロシアと戦うための予算を6兆円も投じようとするせいで、感染症との戦いで負けてしまうのである。
 すでにコロナとの戦いでは、日本は死者数は 31,000人 を越えた。これほど大量の死者が出ているのに、武器となる検査機を買うための予算すら投じない。かわりに組織改革でお茶を濁そうとする。
 これでは「竹槍で米軍の B-29 と戦え!」と命じた旧日本軍のようなものだ。そのトンチンカンさを自覚するがいい。



  ※ 以下は読まなくてもいい。

 [ 余談 ]
 直接の関係はないが、コロナの検査装置の話。
 コロナ感染の初期に、キヤノンが新型の検査装置を開発中という話が出たが、その装置は 2021年の夏ごろに発売されたそうだ。
  → 新型コロナウイルス(COVID-19)| LAMPdirect Genelyzer KIT | RNA検査試薬 | DNA検査 | キヤノンメディカル

 ただし、制度や価格については、情報がないので、よくわからない。あまり話題になっていないところを見ると、たいしたことはないのかもね。期待だけは持たせたが、尻すぼみか。羊頭狗肉ふう。
 

posted by 管理人 at 23:02 | Comment(0) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
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