2022年06月11日

◆ ユーグレナのバイオ燃料

 ユーグレナのバイオ燃料が市販されることになった。これをどう評価するべきか?

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 ユーグレナのバイオ燃料が市販されることになった。
 脱炭素化への貢献が期待されるバイオ燃料をつくるユーグレナが10日から、名古屋市内のガソリンスタンド(GS)で、次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を販売する。一般客がサステオを日常的に給油できるGSは全国で初めて。
 サステオを20%混ぜた軽油を売り出す。既存の軽油と同等の品質を確保しており、軽油と同じようにディーゼル車に給油して使える。
 実証プラントで製造するサステオの価格は現在1リットルあたり1万円ほどだが、今回の販売価格は1リットルあたり300円前後に抑える見込み。既存の軽油と混ぜ、海外の協力会社が製造した比較的安価な燃料も調達することで価格を引き下げたという。それでも既存の軽油よりはかなり割高だが、25年に商業ベースにのせることをめざして、どれぐらい試してもらえるかを確かめたい考えだ。
( → 次世代バイオ燃料、給油できます 名古屋のGSで10日から 全国初:朝日新聞

 「とにかく実際に市販されるのだから、素晴らしい」と評価する人もいるようだが、全然ダメだ。記事に書いてある通り、「価格は現在1リットルあたり1万円ほどだ」という高価格だ。その 20%だとしても、2000円だ。これを 300円で売るとしたら、大幅赤字である。とうてい事業になっていない。客が大勢来たら、たちまち破綻してしまうので、「試しにちょっとだけ売ります」というだけのことだ。「売るフリをしているだけだ」とも言える。

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 ちなみに、昔の記事と比較するといい。2019年には、こう言っていた。
 ミドリムシなどでつくるものは現状では(1リットル当たりで)1万円します。
 ミドリムシを利用したバイオ燃料の研究への投資が進めば、あっという間に1リットル=150円になります。スマートフォンは10年で普及しましたが、今の世の中は1年や半年でいい方へパタッと向かいます。
 5年で「燃料って昔からミドリムシだったんじゃないの?」と言われるようになりますから。
( → ユーグレナ詐欺に朝日が加担: Open ブログ

 それから3年後の 2022年にどれだけ向上したか? 当時も今も、「1リットル当たりで1万円」である。まったく向上していない。3年もたって、向上がゼロである。「5年で大幅にコストダウンします」という公約は、明らかに反故にされた。

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 まあ、そうなることは、最初からわかっていた。だから上記項目では、こう記していた。
 記事では、非常に楽観的な予想が述べられている。「研究の投資が集まれば、急激にコストは下がる」というふうに。しかし、そんなことは原理的にありえない。

 これはホラでしかありえない。それも、誰も信じないような、空々しいホラだ。荒唐無稽というレベルだ。

 そして、それがまさしくホラであることが、このたびの事業で明らかになったわけだ。「5年間で大幅にコストダウンします」というのはホラであって、現実には「3年間でコストダウンの達成率はゼロです」というのが真相だ、と。

 それが判明したのが、今回のユーグレナ社の公式発表だ。

 ※ この公式発表は、「私は嘘つきです」と告白しているのも同然であるわけだ。ただしそのことは、以前の発表と対比することでわかる。ホラ吹きのホラについて、「どうせ誰も覚えていないだろう」と思ったのだろう。だが、あにはからんや。本サイトが昔の公約を収録して、対比させることで、かつての公約がホラだったと、バラしてしまうわけだ。「公約達成率はゼロです」というふうに。



 【 追記 】
 似た記事がある。ユーグレナ社ではなく、航空会社が、再生可能燃料を使う、という話。
 廃食油やごみを原料にした「持続可能な航空燃料」(SAF)の国産化を進める有志の団体を、全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)など16社が2日、立ち上げた。
 SAFは石油由来のジェット燃料よりも二酸化炭素(CO2)の排出量が抑えられる。政府は2030年までに国内航空会社の利用率10%を目指すが、ほぼすべてが海外産で、現在の利用率は1%に満たない。
 SAFの料金は従来の燃料と比べて数倍になる。
( → 持続可能な航空燃料、国産化へ団体を設立 ANA・JALなど16社:朝日新聞

 コストが2倍以上ならば、製造工程で使うエネルギーが、得られるエネルギーよりも、多くなりそうだ。2のエネルギーを使って、1のエネルギーを得る、というふうになりそうだ。無駄だね。
 原料の運搬や精製のために、莫大なエネルギーを使いそうだ。ただし廃品やゴミを原料にする場合は、運搬の費用が浮くので、その分、バイオ燃料よりは有利である。米国では2倍以下のコストで済んで、実用化できそうだ……という話を、前に記したことがある。
  → 航空燃料の脱炭素化: Open ブログ
  → 脱炭素化にバイオ燃料は不適: Open ブログ

posted by 管理人 at 23:38 | Comment(3) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 二酸化炭素の補助金と廃棄物としての廃油処理費用受取 ごく普通の軽油に混ぜ物なんで実質的には重油相当品  
 船舶の燃料くらいにしか使えないみたいですね
Posted by k at 2022年06月12日 10:23
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 航空会社による、ごみ由来の燃料、という話。
Posted by 管理人 at 2022年06月12日 20:33
こと環境、エネルギー問題になると素人だましのような事例がマスコミで大きく取り上げられることが多いですね。だいぶ前にニュージーランド航空が機内のドリンクサービスにストローを廃止して、エコだと宣伝していたのには笑ってしまいました。
Posted by よく見ています at 2022年06月12日 21:04
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