2022年05月23日

◆ 児童スポーツの減量問題

 児童が柔道などのスポーツをするとき、体重制限のために過剰な減量をする(そのせいで健全な成長を阻害する)……という問題がある。

 ――

 柔道ではこの問題があるので、「小学生の全国大会を禁止する」という方針を出した。
  ※ 本項末の関連記事を参照。朝日新聞の記事一覧がある。

 これは正しい一歩ではあるが、まだまだ問題は残る。下記だ。
  ・ 地方大会では依然として、小学生にも体重制限がある。
  ・ 中学生では、全国大会もあるし、細かな体重別の階級がある。


 具体的には、中学の柔道ではこうだ。
 国際基準に則り、男女とも全7階級で行われている(男子は55kg級、60kg級、66kg級、73kg級、81kg級、90kg級、90kg超級、女子は44kg級、48kg級、52kg級、57kg級、63kg級、70kg級、70kg超級)。
( → 全国中学校柔道大会 - Wikipedia

 こういう状況では、中学や高校では体重制限による減量がなされるはずだし、その分、成長が損なわれるという問題がある。
 また、柔道以外のスポーツでも、同様の問題がある。
 困った。どうする?

 ――

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「それぞれの身長ごとに、最低体重を指定する。それより軽量である場合(痩せすぎの場合)には、失格とする」

 たとえば、次の表を採用する。[出典:標準体重一覧表(男女共通・成人)


body-cmkg.png


 身長別に、この「標準」の体重以上であることを義務づける。もし満たさない場合には、その階級には出場できない。
( ※ スポーツ選手の場合には、一般人よりも筋肉量が多いが、脂肪量は少ない。だから、両者を勘案して、「標準」の体重を基準にしていい。)

 上の表と、体重別の階級とを組み合わせると、次のようになる。
 「それぞれの階級では、体重の最大重量を定めるが、同時に、身長の最大身長を定める。最大身長を超える身長をもつ選手は、その階級には出場できない。ただし、一つ上の階級には出場できる」

 たとえば、男子 66kg には 173.5cm という数字が対応する。そこで、66kg 級の階級に出場できる選手は、身長 173.5cm という制限が付く。これより身長が高い選手は出場できない。
 こういう制限が付くと、身長 174cm の選手は、66kg 級の階級には出場できなくなる。いくら減量しても、体重ではなく身長の制限で、66kg 級の階級には出場できなくなる。つまり、必然的に 66kg 以上の体重を保つことが義務づけられる。こうして、過剰な減量は避けられる。(過剰な減量をやったとしても、出場資格を満たさず、出場できないからだ。)

 ――

 この方式のミソは、こうだ。
 「人は、減食によって体重を減らすことはできるが、減食によって身長を減らすことはできない」

 だから、身長を基準とすることで、(身長別に)過剰な減食を避けることができるわけだ。

 かくて、問題は解決される。 



 [ 付記 ]
 「 66kg には 173.5cm 」というのは、ちょっと太り気味かもしれない。スポーツ選手なら、もうちょっと体重を落とした方が良さそうだ。
 その場合には、上記の表で、「標準」と「やせ」の中間となるような数値を設定すればいい。
 上の本文中で示した数字は、あくまで例示なので、いくらでも変更が可能である。

 ただし、未成年の場合には、成長期で栄養が必要であることを考えると、未成年の場合には、肥満気味の数値を設定するといいだろう。大人の場合には、痩せ気味の数値を設定するといいだろう。

 



 【 関連サイト 】

 朝日新聞に特集記事がある。
  → (フォーラム)小学生のスポーツ全国大会:朝日新聞
  → (自由自在)動き出した柔道界、新たな課題:朝日新聞
  → 「聖域に切り込む」 スポーツ少年団の全国大会廃止を検討:朝日新聞
  → スポーツの勝利至上主義を考える ――小学生の全国大会、柔道で廃止 2氏に聞く:朝日新聞
  → (FOCUS)変わる柔道界、子ども守るためもっと バルセロナ五輪で銀・溝口紀子さん:朝日新聞



posted by 管理人 at 23:09| Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 気になったのですが、本案を採用すると、柔道でも相撲のように、今度は「太れ太れ、体重を増やせ」の方向に走り出す懸念はないでしょうか。重量級の階級の選手ばかりが増えたり、そちらの方向での勝利至上主義≠ェ問題になるとか。
 それと、筆者が言われるように、体重は増減できるが身長は簡単に増減できない(とくに減らすことはできない)ので、階級ごとに定められた身長枠の最大値に近い選手ばかりが有利になる、ということはないでしょうか。子どもが狙いの階級の最大身長に近くなったら、指導者がそこで食事を制限することもあり得そうです。
 本稿の趣旨は、子どもの成長は阻害せずに、指導者は子どもがスポーツ選手らしい体形を保つことだけに気をつけて指導して、健全な状態で競技に参加させる、ということだと思いますが、さらに身長も関係してくると、また別のややこしい問題が出てきませんか。
Posted by かわっこだっこ at 2022年05月24日 12:25
> 「太れ太れ、体重を増やせ」の方向に走り出す懸念はないでしょうか。

 一つ上の階級に上がると、強い人がいっぱいいるので、勝てなくなって、不利になります。

> 階級ごとに定められた身長枠の最大値に近い選手ばかりが有利になる、ということはないでしょうか。

 同じ階級にとどまる限りは、太った方が有利です。筋肉量が増えるので。しかしそれは、現状でも同じだ。

> 子どもが狙いの階級の最大身長に近くなったら、指導者がそこで食事を制限することもあり得そうです。

 それも現状では同じです。問題は、そのレベル。過度な制限は有害だが、少しの制限はあまり影響ありません。

> 身長も関係してくると、また別のややこしい問題が出てきませんか。

 体重だけで制限する、という問題の是正をしているだけです。
 身長の配慮をやめて、体重だけで制限する……というのが現状ですが、それだと、過剰な減量が起こります。たとえば、ノッポの力石徹が過剰に減量して、矢吹ジョーと同じ階級で対戦したあとで、(減量がたたって)死んでしまった。
 こういう問題は、本項の方法(修正案)を取れば、階級制度を残したまま、解決されます。
 ※ 力石徹は過剰な減量が禁止となる。矢吹ジョーが階級を上げることは可能。
Posted by 管理人 at 2022年05月24日 13:28
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