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電動キックボードには、「小径タイヤ」「重心の高さ」「足が固定されている」という三つの難点がある……と先に示した。
→ 電動キックボードの是非: Open ブログ
以上はネットで調べた情報だ。これで指摘は十分かとも思えたが、あとで自分でよく考えてみたら、もっと大きな問題があるとわかった。それはブレーキの問題だ。そこで、ネットで調べ直したあとで、改めて指摘しよう。
(1) ブレーキなし
電動キックボードには、ブレーキのない商品が多い。安価商品は、たいていがそうだ。たとえば、先に次の商品の画像を掲げた。
https://amzn.to/3Lgrqwa
この商品は Amazon's Choice であり、よく売れているようだ。だが、そこにはこう記載されている。
電子制御ブレーキシステム
では、「電子制御ブレーキシステム」とは何か? ネットで調べると、こうある。
業界団体の「JEMPA(日本電動モビリティ推進協会)」では、特に「電子ブレーキ」を使ったモデルは道路を走る場合に安全な停車できない場合があるため、公道走行はしないように呼びかけています。
理由は「(電子ブレーキは)モーターの電気を止める役割しかなく、坂道や電源オフ時は止まらない」ため。つまり、たとえば、坂道を走行中に急に歩行者などが飛び出してきても急制動ができないなど、安全に公道走行するために必要な制動力を持たないということです。
では、一体どんなブレーキならいいのでしょう? それはずばり、前後ブレーキともに「ドラム式かディスク式などの機械式ブレーキ」を装備したモデル。
( → 電子ブレーキは危険! 公道を安全に走行できる「電動キックボード」5選 | clicccar.com )
要するに、(安価な)電動キックボードには、アクセルがあるだけで、ブレーキはない。ブレーキという名の装置は、ただの「アクセル OFF」を意味するだけだ。自転車に付いているようなブレーキは、ないのだ。
ブレーキのないものが、自転車やバイクのように高速で走るのだから、もはや危険このうえないと言える。
(2) ブレーキあり
では、ブレーキありならばいいのか? ネットで調べると、「高性能なディスクブレーキが搭載されていて、制動力は抜群」というような宣伝文句があふれている。では、それでいいのか?
私が考えたことは、こうだ。
「走行中に急ブレーキを掛ければ、つんのめった形になり、人は前方に放り出されてしまう」
これはどうしてか? ここでは、次の距離が問題だ。
「人間の立つ位置」と「前輪」との間の距離
この距離が大きければ、つんのめっても、人は踏ん張れる。下手をすると、スティックが折れてしまうかもしれないが、かろうじて踏ん張れる。
この距離が短ければ、つんのめったとき、人は踏ん張れない。ブレーキがかかると、後輪は持ち上がり、人は前に飛び出してしまう。人がいくら足で踏ん張ろうとしても、もはや体重がマイナスになった状況なので、踏ん張りようがない。体が浮いて、前に飛び出すだけだ。
以上のように考察したので、「電動キックボードでは急ブレーキはかからない」と判断した。その後、調べてみると、まさしく事実はその通りであると判明した。いや、もっとひどいと判明した。次のページに写真がある。
→ 電動キックボード 急停止すると人が吹っ飛ぶのでご注意下さい(急ブレーキは危険)
この写真では、電動キックボードに載っていた人が、急ブレーキを掛けて、吹っ飛んで、前方に投げ出されてしまう。そこまでは、予想通り。その先が、すごい。

投げ出されて倒れたところに、自動車が乗りかかって、この人の胴体を轢いてしまう。あわてた運転手が、「まずい」と思って、バックしたので、もう一度轢きそうになる。今度は顔を轢かれて、頭をつぶされるか、と思えたが、轢かれた人があわてて体を動かしたので、かろうじて轢かれるのを免れた。つまり、二度目に轢かれるのは回避できた。
……と思ったのだが、あとで見直したら、回避できていないみたい。二度目もしっかり轢かれたようにも見える。 (この箇所、加筆。)
— The Darwin Awards (@AwardsDarwin_) April 26, 2022
もしかしたら二度も轢かれたのかもしれないが、それにしても、ひどい。
こうなったら、私としては、うまく標語を作ろう。
「電動キックボードでは二度死ぬ」
[ 付記 ]
では、どうすればいいか?
電動キックボードでは、急ブレーキができないのだから、速度は「人間並み」つまり「最高時速は6キロ」とするのが妥当だろう。これより速い速度では、走行不可とする。(免許があっても、だ。)
この場合には、人間と同様だから、歩道上の走行を認めてもいいだろう。
つまり、電動キックボードの許可条件は、こうなる。
・ 最高時速は6キロ
・ 自転車並みのブレーキ装着を義務づける。
・ 歩道は通行可。
・ 車道は通行不可。
なお、この条件で急ブレーキを掛けた場合には、人は前に飛び出すが、そのとき、自分の足で地面を踏んで、そこで踏ん張れるので、かろうじて安全性は保たれる。歩きながら急に立ち止まるのよりは、若干劣るだろうが、それでもかろうじて安全性は保たれる。
仮にブレーキが掛けられなくて人と正面衝突したとしても、それは、歩行者同士で正面衝突したのとたいして変わるまい。
私がざっと見た限りでは、例えば以下のような製品なら、まわりで走っていても、まあ許容できます(電動キックボードというより電動バイクですが、折り畳みはできるようです)。
https://www.rideon-aioon.com/
この製品は、筆者が提示した電動キックボードの3つの問題点、「小径タイヤ」「重心の高さ」「足が固定されている」のうち、「小径タイヤ」で路面の影響を受けやすいという点以外は、それなりにクリアされているように思えます。
小径タイヤについても、この製品は直径が8インチだそうなので、前稿でも本稿でも例示されている Amazon 's Choice のものの推定15センチ(約6インチ)に比べるとましですね。
また、先ほどの座り乗りタイプに対して立ち乗りのタイプですが、下の国産品(和歌山県のメーカー)の折り畳み式電動バイクだと、前輪が12インチで後輪が10インチです。やはり、前輪は10インチ以上、できれば12インチ以上といったところが、安全性の目安になるような気がします。
https://glafit.com/news/pr20200528/
別に「キックボード」の形式にこだわる必要はなく、商品力を構成している要素自体は、「折り畳みができて室内や電車内にも持ち込める、一人乗りで機動性のある電動モビリティ」といったところでしょうから、これを満足させつつ、より安全な形状・機構の製品が主流になってほしいですね。
市販の電動キックボードは、後輪駆動のものが多く、それがために、電子制御ブレーキ以外の摩擦ブレーキが備わるとしても、前輪側の場合が大半なようです。当然のことながら、これが急ブレーキ時に前方につんのめりやすい一因です(幅広の前輪で路面グリップ力が高いモデルではなおさら)。
よって、技術的には前輪駆動(または両輪駆動)で後輪ブレーキの形式のほうが、つんのめり現象に対して安全です。そのぶん、ブレーキ時に荷重のかかる前輪と路面との間で制動力が得られないので、絶対的な制動距離は(前輪ブレーキに比べて)伸びるはずですが、それこそ、筆者のいう最高速度の制限が必要となるところかもしれません。
> あとで見直したら、回避できていないみたい。二度目もしっかり轢かれたようにも見える。
自転車やバイクでは、重心は臀部を座面に載せていることである程度固定されていると考えられます。また、急ブレーキを掛けたときには、手(ハンドル)2箇所、重心(サドル)1箇所、足(ペダル)2箇所の5点で身体を自転車・バイクに押しつける(固定)することで身体が飛び出すことを抑えているので安全性が高くなります。重心の移動が少なくなるからです。立ちこぎをしている場合でも、自転車ではハンドル2箇所、ペダル2箇所で踏ん張ることが出来ますから、それなりに重心移動を抑えられます。(ペダル自体は足の位置に応じて踏ん張れることも有利に働きます)
キックボードでは、走行中はハンドルとステップで重心の位置が決まりますが、急ブレーキが掛かると慣性の法則に従い、手(ハンドル)だけで支えることになり、重心や足は容易に移動します。したがって簡単に転倒します。
重心が高い点については自転車もほぼ同じですから、急ブレーキ時に如何に重心を移動させないかが鍵になるのだと思います。この点は圧倒的にキックボードが劣るわけです。加えて、ホイールベースが短いことがそれに輪を掛けていると考えられます。
平坦な道で試乗してワイワイしている議員たちは、問題が深刻化したときどうするつもりなのでしょうか。