※ 最後に加筆しました。日本では政府と自動車産業が協力して、EV 産業を弱体化させようとしている、という話。EV 産業の自殺策を取っている、という話。
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トヨタの bZ4X の価格は、日本では高い。
・ 日本で …… 600万円 (+ 電池保証料 30万円?)(消費税 10%込み)
・ 米国で …… 42,000ドル (483万円:1ドル=115円換算)(たぶん税別)
・ 英国で …… 633万円 (消費税 20% 込み)
日本と英国では同価格だが、英国では消費税が 10%高いので、実質的には英国の方が 10%安い。
米国でも、日本の税別 545万円(+ 電池保証料)よりも 11%安い。
日本では、輸送費がかからない分、海外よりも 10%ぐらい安くて当然なのだが、現実には 10%安いどころか、10%以上高くなっている。やたらと高くなりすぎている。それはなぜか?
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その理由を考えると、先に紹介した話が役立つ。
→ 欧州車の EV 比率が高いわけ: Open ブログ
欧州車の EV 比率はとても高い。日本に比べて約 20倍だ。どうしてこんなに差があるのか?
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20年の欧州の新車販売に占めるEVの割合は11%と主要市場で最も高い。
( → (Sunday World Economy)欧州EV化、インフラ格差の現実:朝日新聞 )
その続きに、解答がある。
正解は何か? 考えているうちに、ようやく判明した。こうだ。
「欧州では炭酸ガスの排出規制が厳しい。一定以上の炭酸ガスを排出する車を販売すると、巨額の罰金を科される。これを科されなかったのは、テスラとトヨタだけだ。テスラは電気自動車があり、トヨタはハイブリッドがある。一方、他社はみな巨額の罰金を払わされた。今年はその罰金の額がさらに増える。そこで、巨額の罰金を免れようとして、炭酸ガスを排出しない EV を大量に販売する必要に迫られた」
欧州では日本よりも大幅に EV が普及している。それは、EV 以外の車に巨額の炭酸ガス税が課されるからだ。この炭酸ガス税を免れるためには、ハイブリッドや EV を大量に販売する必要があるのだ。だから、EV の販売量が大幅に伸びている。
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以上のことから、次の結論を得る。
EV の販売量を伸ばすには、EV の価格を引き下げるしかない。だから、メーカーはやむにやまれず、 EV の価格を引き下げざるを得ない。というわけで、欧州では EV の価格がやたらと低い。いわば出血大サービスである。なぜなら、そうしなければ、課徴金を取られるので、かえって大損してしまうからだ。
次の記事が参考になる。
《 独VW、EUの新CO2規制クリアできず 罰金200億円弱か 》
独フォルクスワーゲン(VW)は21日、欧州連合(EU)が2020年に導入した新しい二酸化炭素(CO2)規制を達成できなかったと発表した。19年より排出量を2割減らしたが、目標値に1台当たり0.5グラム足りなかった。1億5千万ユーロ(約190億円)前後の罰金を支払う見通しだ。
19年(124グラム)のままだと数千億円規模の罰金の可能性があったのと比べると大幅な削減には成功した。電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)を19年の4.3倍の31万5400台販売したことが貢献した。
EUの新CO2規制は世界で最も厳しいとされる。19年実績から各社のCO2排出が改善されなければ罰金額は合計で約4兆円に上る可能性があった。各社が電動車を相次いで投入した結果、全体の罰金額は大幅に抑えられたもようだ。
( → 日本経済新聞 )
ものすごく巨額の罰金が科されることになっている。というわけで、メーカーとしては否応なしに、EV の販売数を増やさざるを得ない。つまり、罰金で払うのに相当する額を、値引きして販売せざるを得ない。
このことからすると、EV の販売価格の 10% に相当するぐらい、罰金がかかるのだろう、と推定される。だからこそ EV は、本来の価格の 10%引きぐらいの価格で売るのが当然なのだ。
このことは、欧州では当てはまる。また、同様の規制のある米国でも当てはまる。ただし、同様の規制のない日本では当てはまらない。だからこそ、欧州と米国では 10%引きの出血価格で販売して、日本では本来の価格で販売する……というふうにするのだろう。
こうして、「日本では価格が 10%ほど高い」ということが説明された。
[ 付記1 ]
トヨタは以前は、ヤリスなどのハイブリッド車の燃費が良いことで、欧州の炭酸ガス規制を十分にクリアできた。しかし年々、規制が厳しくなるので、今年はもはやハイブリッドでは規制を達成できず、EV を大幅導入せざるを得なくなった。
そのことから、EV を大量に出血販売することになったのだろう。
[ 付記2 ]
日産の場合は、日本と海外とで、リーフやアリアの販売価格に差はないようだ。これはどうしてかというと、日産はもともと EV の販売量が多いので、 EV をことさら出血価格で販売する(= 販売数増加を狙う)必要がないからだろう。そう考えれば、納得できる。
[ 付記3 ]
日本からの自動車輸出には、関税がかかる。EUは 6.3%、米国は 2.5%である(らしい)。生産国は、トヨタは日本と中国( 出典 )、日産は国内( 出典 )だ。
日産の新工場
いずれも EU 域外生産には、まともに関税がかかる。さらには、船賃もかかる。その分、コストがかかっているので、欧州や米国では高くなっていいのだが、現実には高くなっていない。その分、メーカーの負担金(出血分)が増えている計算になるね。……換言すれば、日本の EV ユーザーは虐待されている。理由は、下の 【 補説 】 に記してある通り。
※ 欧州への関税は、10%を8年で撤廃する。昨年分は → ジェトロ
※ 毎年 1.25 %ずつの切り下げであるようだ。ただし端数は四捨五入。
【 補説 】
日本では EV の普及率が低い理由は、前出項目の通りで、炭酸ガス規制がないからだ。
→ 欧州車の EV 比率が高いわけ: Open ブログ
では、どうして炭酸ガス規制がないか? それは、自動車産業が「罰金制度の導入」に反対しているからだ。(自民党政権に圧力をかけている。自動車業界に不利にならないように。)
しかしその結果、日本では EV の普及率が下がってしまっている。そのせいで、日本では EV の販売が減って、自動車業界の EV の国際競争力が低下してしまっている。
中国や欧州や米国は、政府が EV の普及に努めており、EV 産業がどんどん発達している。なのに日本だけは、政府が EV の普及を怠っている(≒ 炭酸ガス規制の罰金導入をしない)ので、自動車会社の EV の国際競争力が低下する。
自動車会社は、目先の金を望んで、EV の競争力を失ってしまう。自分で自分の首を絞めているのも同然だ。自殺政策を取っているのも同然だ。そういう業界に迎合して、EV 推進制度(≒ 炭酸ガス規制 )の導入を拒んでいるのが、日本政府だ。
自動車業界と日本政府が一緒になって、日本の EV 産業を弱体化させようとしているわけだ。時代の流れを読めない馬鹿というものは、こういうものだ。自殺するしかないね。
( ※ 日本の政治を牛耳っているのは、トヨタだ。経団連を通じて自民党を動かしているだけでなく、トヨタ総連が自動車総連と連合を動かすことで、労働界も動かしている。かくて日本全体を動かすことで、炭酸ガス規制をつぶした。そして、そのせいで、日本の EV 推進をつぶした。かくて日本は EV 後進国となった。……トヨタはずっと EV 反対の方針を取ってきたが、そのせいで、トヨタのみならず、日本の EV 産業全体をつぶす結果になった。策士、策に溺れる。詐欺師、詐欺に溺れる。)
日本では政府と自動車産業が協力して、EV 産業を弱体化させようとしている……という自殺策を取っている。そういう話。
近い将来EV車が全盛になるは確実なのだから
例えばガソリン税の代わりに車検時に走行距離と車両総重量による税金を徴収する等の
自動車関連税制の抜本的変更に早すぎるってことはないと思います。
→ なぜ、自動車メーカーは「電気自動車」を売るのか? その理由は単純明快。「罰金回避」である | Motor-Fan
https://motor-fan.jp/mf/article/52690/id-4-produktion/