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知床の遊覧船は海底 120メートルに沈んでいるが、これを引き揚げるべきだ、という方針が出ている。
現地対策本部は今後の船体引き揚げをめぐって、運航会社側だけで費用負担が困難な場合、国が一定程度負担する可能性に言及した。
( → 【知床観光船事故】国が船体引き揚げ費用一部負担の可能性言及、運営会社での負担が困難の場合 - 社会 : 日刊スポーツ )
ただし引き揚げには、かなりの費用がかかると見込まれている。
沈んだ船をどう引き揚げるのか。
関係者によると、水深100メートル程度までであれば、特殊な潜水具を着たダイバーが専用の潜水装置を使って潜り、船体にワイヤを取り付け、大型のクレーン船で引き揚げる方法が一般的だという。水深100メートルを超える場合は、水中ロボットを使って、ワイヤを取り付ける。
ただ、「実際に引き揚げられるかは条件による」という。海底の地形や沈んだ船体の向き、波の高さや潮流、水深によってワイヤをかける際の作業の難易度が変わるからだ。
09年に長崎県平戸市沖で、巻き網漁船が沈没した際、……
船底にワイヤを通し、高さ107メートルのクレーン船で海面まで持ち上げて、港に引航。その後、船体を持ち上げて水を抜いたあと、引き揚げた。費用は数億円に及んだとみられる。
( → 海底のカズワン、引き揚げに高い壁 セウォル号では100億円超:朝日新聞デジタル )
次の記事もある。
クレーン付きの台船を現場に持っていき、クレーンの先についているワイヤーを船体に引っ掛け、水平にゆっくり引き上げる作業が考えられます。
( → 知床観光船事故 船はどう引き上げる?「飽和潜水」で救出か?|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト )
この遊覧船は 19トンなので、クレーン船で引き上げるにしても、18トンぐらいの重量(¶)がクレーンにかかることになる。容易な作業ではあるまい。だからこそ数億円もかかるわけだ。
困った。何とかならないか? もっとうまい工夫はないか?
¶ 《 加筆 》
トン数は重量ではなく容積だ、とコメント欄で指摘された。
実際の重量は 19トンではないようだ。
ただし本項の趣旨には影響しない。

出典:公式サイト
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「空気を送って、船舶を空気で浮かせる。これなら、巨大なクレーン船を使わなくて済む」
具体的な方式は、次の通り。
第1に、空気を送る方式は、戦場からパイプで空気を送るのでもいいが、それだと深い海底にまで送るのは難しそうだ。そこで、酸素ボンベか、液体水素ボンベを送って、その後に、ボンベの栓を抜いて、気泡を出せばいい。これならば気体を送るのは容易だろう。
なお、栓を抜くのは、水中ロボットでは難しそうだ。火薬と電気火花で爆発させるのは、容易そうだが、危険なのでまずい。私のお勧めは、「氷で作った栓」だ。ゴム栓と金属と氷をうまく組み合わせて、固定した栓を付ける。時間がたつと、氷が溶けるので、そのころになって栓が外れて、ボンベの気体が噴出する。およそ半日後に氷が溶けるようにすれば、うまく行くだろう。(別に急ぐわけではないので、半日をかけてもいい。)
第2に、空気を貯める場所が問題だ。
(1) 船底部
もし船舶がひっくり返っているならば、ひっくり返った船舶の内部に空気を送るだけでいい。そうすれば、ひっくり返って ∩ 型になった船舶の内部(船底部)に空気が溜まるので、あとは自動的に船舶が浮き上がる。ごく簡単に済む。
ただし、現実には、船舶はひっくり返っていないことが確認されている。(水中カメラの画像による。)
……というわけで、この方法は使えない。
(2) バルーン
バスケットボールのようなバルーンを使う、というアイデアも思い浮かぶ。バルーンに空気を入れてから、(鉤とワイヤを使って)バルーンと船体とを結びつける。船体には窓枠がいっぱいあるから、窓枠に鉤を引っ掛ければ、バルーンと結びつけることはできる。こういうバルーンを 10個ぐらい使えば、船体を 10トン分ぐらい軽くすることはできそうだ。うまく行けば、バルーンだけで船体を引き上げることもできるかもしれない。
ただし、この方法がうまく行くのは、水深が浅い場合に限られる。水深 120メートルだと、水圧が 13気圧になるので、バスケットボールのようなバルーンはつぶれてしまう。素材が柔らかすぎるし、空気は(水圧で)圧縮されてしまうからだ。ろくに体積を得られないので、浮力も小さい。
……というわけで、この方法は使えない。
(3) お椀型の金属箱
お椀型( ∩ 型)の金属をバルーンのかわりに使う、というアイデアもある。1立方メートルぐらいの金属の箱(円筒形)で、底の部分が抜けている。これを水中に入れてから、少しだけ空気を入れると、 ∩ 型の一番上にだけ空気があって、他の部分には水が入っている。これだと、密度をほぼ水と同様の 1.0 にすることができる。
このような金属の箱を、水中ロボットによって、海底まで運んでいく。海底に運んだら、鉤を使って、船舶と結びつける。
その後に、金属の箱の下側で、酸素ボンベか窒素ボンベの気泡を出す。すると、その気泡が金属の箱に貯まるので、金属の箱の中は気体だらけとなって、浮力を得る。こうして、金属の箱がバルーンと同等のものになる。かくて、船舶は浮力を得て、水上まで浮き上がっていく。
比喩的に言えば、こんな感じ。

鳥がクジラを浮かせるかわりに、バルーン代わりのもの(お椀型の金属箱)が船体を浮かせる。
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※ これでうまく行く保証はないのだが、ま、アイデアを出すだけなら、別に害はあるまい。
【 関連情報 】
小型船舶の測度なんて 検査と同じくいい加減ですから 総トンだけで船の大きさイメージするのは間違いです
排水トン数は重さですが
ご指摘ありがとうございました。本文中に注記しておきました。
それで、これからは船舶でもこういった場合に備えて、引き揚げ用のフックを必ず数か所設置するよう義務化してはどうでしょうか(転ばぬ先の杖)。水中ロボットや水中ドローンも一般的になっているので、少なくともそのフックに引き揚げ用のワイヤーを接続するだけなら、比較的簡単にできそうです。
あとは、天候の良い時をみはからって、海上のサルベージ船がワイヤーを巻き上げて、なるべく沈没船の水平を保ちながら引き揚げます。
船が少し浮いたところで別のバルーンで...という方法は無理なのでしょうか?
それは名案……と思ったけど、少ししか浮き上がらない。ロープが 110メートルなら、10メートルしか浮き上がらない。もっと浮き上がらせるには、クレーンが必要となり、元の木阿弥。
遊覧船だと、(ドアや窓で)穴だらけなので、空気を注入しても、どんどん漏れてしまう。そこが難しい。
ちなみに単純脳さんのアイデアも悪くないと思いますよ。10m上がったらその時点でさらに水深10mのところに浮きをつけて尺取虫式に引き上げることも考えられるので。(実際には30mずつくらいでもいいのではないかと)
この語を用いて、ネットをググったら、次の情報が得られた。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14261173829
→ https://x.gd/0Sor2
> つられた状態の船体が182mの海底に落下
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220524/k10013640701000.html