2022年05月01日

◆ 知床の遊覧船の無線装備 .2

 遊覧船の無線装備がことさらひどい状況であったことが、さらに判明した。

 ――

 あまりにもひどいので、あいた口が塞がらない、という状況だ。2点ある。朝日新聞が報じている。記事は下記。
  → 船の通信、衛星電話→携帯に 大半圏外、当日118番も乗客携帯から:朝日新聞


 (1) 携帯電話

 記事から引用しよう。
 船の設備に関する省令では、船によっては通信手段として携帯電話を認めているが、常に陸上との間で連絡がとれることが条件だ。
 しかし、船長が申請した携帯事業者の通信エリア図では、当日の航路の大半がエリア外となっていた。

 携帯電話はエリア外だ。なのに、現実にはこうした。
 船長が事故3日前の船舶検査で、通信手段を衛星電話から携帯電話に切り替えて申請していたことがわかった。事故当日の通報で、船長の携帯電話が使われていなかったことも判明。現場周辺は携帯電話がつながりにくいエリアで、当日の通報が遅れた可能性もあるとみて、海上保安庁が詳しい経緯を調べている。

 携帯電話がエリア外なら、携帯電話の利用は問答無用で拒否するべきだろう。「使えない無線」で申請を認めるなんて、どうかしている。最初から書類不備で却下すべき事態だ。申請を認める国交省は、制度が狂っていると言える。
 では、どうするべきだったか? 当然ながら、海上では携帯電話以外の通信手段を義務づけるべきだった。この件は、前出項目でも言及した。
  → 知床の遊覧船の無線装備 1: Open ブログ


 (2) 衛星電話

 携帯電話がつながらないなら、他の無線手段を使うべきだった。特に、衛星電話だ。では、現実にはどうだったか? 衛星電話の設置は義務づけられていなかったそうだが、この船には衛星電話があった。衛星電話について、これまでの政府説明はこうだった。
 事故3日前の検査について国交省はこれまで、「異常は確認されなかった」と説明。

 そう報道された。ところが現実は、以下のようだった。
 国土交通省によると、同省所管の日本小型船舶検査機構(JCI)札幌支部が同20日、年1回の検査を行った際に、カズワンの船長が陸上との通信手段を携帯電話に変更すると申請。衛星電話が壊れていたためとみられ、検査員が「つながるんですね」と確認したところ、「つながる」と答えたため変更を認めたという。検査員は、実際に航路上でつながるかどうかは確認していなかった。

 嘘をつく方もひどいが、嘘を真に受ける検査員もひどい。嘘を真に受けるだけだったら、検査をする意味がないだろう。サボっているのも同然だ。国交省は何をやっているのか。検査員本人も上司も、すべてを厳しく咎めるべきだ。こういう甘い検査を許すから、24人も死ぬ事態になったのだ、と言えるかもしれない。



 [ 付記 ]
 あれこれとひどい状況が判明しているが、これまでは問題は生じなかった。なぜなら、海が危険だということは船員自身が知っていたから、船員が自分で自分の身を守っていたからだ。船員のプロ根性のおかげで、アマチュアぞろいの政府役人の規制の緩さが露見しなかった。

 これをひっくり返したのがコンサルだ。海の危険について理解しない顧客に、コンサルがあえて危険な船を購入させた。
  ・ 顧客が「船を買おうかな」と言った。
  ・ コンサルが「これで商売になる」と思って、購入させた。
  ・ 顧客は船に素人なので、何をしたらいいのかわからない。
  ・ コンサルも船に素人だが、利益のためにコストカットを命じる。
  ・ プロの船長を解雇し、未熟な初心者を船長にした。
  ・ 安全設備に手を抜いて、船をポンコツ状態にした。
  ・ 船は外海用途ではないし、無線はつながらなかった。
  ・ 社長が利益のために、あえて危険な状況で出航を命じた。
  ・ 船長は未熟者なので、危険な状況だとわからずに船出した。
  ・ 船長も乗客も、社長とコンサルに殺されたことになる。
  ・ 保険会社は莫大な保険金を支払うハメになった。
  ・ コンサルと社長は、保険金をもらって、大儲け。
  ・ 「人を殺して、大儲けだ。これでコンサル成功」
  ・ 世間の人々は悲しんでいるが、コンサルだけは大喜び。

 前出項目から再掲しよう。こういう事情があった。コンサルの言葉。
 桂田精一社長は有名百貨店で個展を行うほどの元陶芸家で、突然ホテル経営を任され、右も左もわからないド素人。

 運よく何もわからないから、小山にアドバイスされたことは「はい」「YES」「喜んで」ですぐ実行した。

 知床観光船が売り出されたとき、私は、
「値切ってはダメ! 言い値で買いなさい」
 と指導した。
( → 【魚拓】なぜ、世界遺産知床の「赤字旅館」はあっというまに黒字になったのか? | 数字は人格 | ダイヤモンド・オンライン

  → 知床の遊覧船の無線装備 1: Open ブログ

 こうやって素人にあえて危険なことをさせて、コンサルは利益を得たのだ。悪魔のごとき所業だ。
 今回、社長がひどいということで、世間で批判されている。だが、社長はただの素人であり、コンサルの言うがままに経営していただけにすぎない。コストカットのための安全設備削減もその一環だ。
 世間の指弾を浴びているのは社長だが、社長もまたコンサルにだまされた被害者の一人だとも言える。

 結局、今回の事故は、たまたま不運や偶然によって起こったのではなく、起こるべくして起こったことだと言える。


 ※ 国交省は、会社側の善意を前提として、不備を補うための制度改革をしようとしている。だが、会社側に悪意があれば(利益のために人命軽視をしようとすれば)、その制度改革は意味を失う。会社側の悪意を規制する方針こそ、必要なものとなる。
 ※ 相手の嘘を信じて、まともに検査さえもしない、というような体制では、すべては画餅になるのだ。

 ――

 参考記事:
  → 【知床遊覧船事故】株式会社武蔵野・小山昇社長の洗脳コンサルの奇行がやばい 桂田精一も洗脳されていた 「素手でトイレ掃除」「朝礼でスーパーハッピーと絶叫」 | ForestLifeNews



 【 関連サイト 】
 続報となる話がある。

 (i) ホテルで赤字

 遊覧船事業で(コストカットにより)無理やり黒字を出して、その黒字をホテル事業の赤字を埋めるために使っていたそうだ。
 同社が斜里町の世界自然遺産地域に「ホテル地の涯」をリブランドオープンさせたのは、2018年6月のこと。「しれとこ村グループ」は知床で4館のホテルを運営する一大ホテルチェーンとなっていく。
 だが実際には、グループの経営状況は火の車で、遊覧船事業の収益を旅館業で生じた債務の返済に回す“自転車操業”に陥っていたという。
( → 知床遊覧船沈没 前船長の悲痛告白「引継ぎもろくにできないまま」桂田社長の“散財”、社員との衝突、そして解雇通告… | 文春オンライン

 (ii) ホテルは黒字と称する

 現実にはホテルは赤字だったのに、「ホテルは黒字」とコンサルが宣伝していた。ダイヤモンド・オンラインが提灯持ちの記事を書いている。
 有限会社しれとこ村(北海道、旅館業)。
 桂田精一社長は有名百貨店で個展を行うほどの元陶芸家で、突然ホテル経営を任され、右も左もわからないド素人。
 運よく何もわからないから、小山にアドバイスされたことは「はい」「YES」「喜んで」ですぐ実行した。
 知床観光船が売り出されたとき、私は、
「値切ってはダメ! 言い値で買いなさい」
 と指導した。
 世界遺産のなかにあるホテルが売り出されたときも、
「買いなさい。自然に溶け込む外壁にしなさい」
 と指示した。
 すると、赤字の会社があっというまに黒字に変わった。
( → なぜ、世界遺産知床の「赤字旅館」はあっというまに黒字になったのか? | ダイヤモンド・オンライン

 あっというまに黒字になったというが、現実にはそうではなかったのは上述の (i) の通り。


posted by 管理人 at 10:36| Comment(2) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 関連サイト 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2022年05月01日 15:57
 続報

> すべてが“素人”でがく然、船長の求人断った男性語る実態…ありえないメンテナンス、船底に入る海水排出ポンプの電源オフ
  → https://www.hbc.co.jp/news/2dd4fc0264a8a7492a3fa4c01bb0cac8.html
Posted by 管理人 at 2022年05月16日 10:00
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