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(1) 過去記事
燃料電池車には「水素」の問題があるように、EV には「急速充電」の問題がある。これについては前に言及した。
世界では EV の普及が進んでいるが、日本では EV の普及は不可能だ。いくら自動車会社が頑張っても、日本には制度的な欠陥があるからだ。(劣等国家)
( → 日本では EV の普及は不可能: Open ブログ )
欧米では急速充電の設備が普及しているので、EV を使うことに支障はない。しかし日本だけは別だ。急速充電の設備がほとんど普及していない。そのせいで遠距離の走行には大きな支障が出る。事実上、(途中充電するほどの)遠距離の走行は不可能であると言える。さらには、家庭で充電するのにも、やたらとかじょうな時間がかかる。
上記項目から、引用文を再掲しよう。(利用者の体験談。)
普通充電器 …… 日産リーフを充電した場合、空の状態から満充電までにかかる充電時間が、なんと12時間以上という、とんでもない時間を要してしまい、
急速充電器 …… 80%程度まで充電しようと思ったら、1時間半以上も充電し続けないといけない
90kW級の急速充電器は全国に116台しか存在していない
一方、欧州では正反対だ。
すでにヨーロッパ全土に350kW級という、日本市場で一般的に普及している急速充電器である50kW級と比較しても、実に7倍もの超高出力を許容することのできる、超急速充電ステーションが設置され、しかもその1ステーションあたり、最大で10基以上もの充電器が設置されてもいます
欧州ではどこの充電所でも、待たずに充電できて、充電時間も短い。
日本ではどこの充電所でも、(休日には)行列ができて長々と待たされ、自分の順番が来ても充電時間が欧州の7倍もの時間がかかる。欧州で 10分間で済むことが、7倍の 70分もかかる。(これに順番待ちの時間が長々と追加される。)
要するに、日本では EV が普及する条件が全く整っていない。いくら EV が進化したとしても、充電所の充電器が旧態依然としていて、しかも数が圧倒的に不足しているので、EV が実用になる条件が整っていない。
これでは、政府がいくら高額の補助金を出しても、まったく無意味だ。これはいわば、「ガソリン車を普及させようとするが、ガソリンスタンドが整備されていない」というような状況だ。こんな状況では、車がいくら売れたとしても、その車を走らせることができない。まったくのナンセンスだ。
※ わが家の近所にも日産リーフがあるが、いつ見ても車庫に収まっていて、走行することがないようだ。日本の EV は、走らせるためにあるのではなく、車庫に飾っておくためにある。それ以外の用途はない。
※ どうしてこうなったかは、上記項目に記してある。要するに、充電所を整備する団体が、自動車会社主導ではなく、電力会社主導だからだ。そして、電力会社の目的は、「充電所のコストを最小化すること」となっている。「充電所を便利にすることで、EV の台数を増やそう」という発想は、自動車会社にはあるが、電力会社にはない。彼らはこう思う。
「 EV の台数が増えようが減るまいが、そんなことは知ったこっちゃない。大切なのは、充電所のコストを最小化することだ。そのためには、急速充電器の出力を小さくして、急速充電器の台数を最小化すればいい。そのことで、充電時間が増えようが、順番待ちの時間が増えようが、そんなことは知ったこっちゃない。それで困るのは EV メーカーと EV オーナーだけだ。彼らが困ることなど、どうでもいい。充電所の維持コストを下げることこそ、最優先だ」
こうして意図的に、日本の充電所は最悪の状態とされるようになった。
比喩的に言えば、日本の EV 普及政策は、意図的に自殺行為をしているのである。それというのも、EV メーカーと充電所会社とが、正反対の方向を目指しているからだ。
(2) 最近の情報
ネットを見ているうちに、新たな情報を得た。下記だ。
→ ツイートの対話
ここから一部抜粋しよう。
彼ら海外メーカーにすれば逆に、何で日本はCCSチャージャーがないのか?何で日本メーカーが整備していないのか?と言うでしょう。
CHAdeMOしかない日本市場が異常なのです。
欧州、米国、韓国、台湾はCCSとCHAdeMOが併設しています。最新型がCCSというだけです。
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日本のCHAdeMOも日産が孤軍奮闘しただけで、他のメーカーは「敵に塩は贈るものか」って態度でしたからね。
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アップグレードしなかった日産も問題ありますが、全くやる気のなかった他メーカーは論外です。
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リーフe+の時には曲がりなりにも90kW充電器の整備を始めた日産ですが、アリアの充電性能に合わせた充電器を本社にすら置かないって、一体どういう了見なんですかね
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日本で高出力急速充電器が広まらないのは時間課金だから。高出力なるほど設置者は儲けが出ない。欧米なみに充電量課金にすればいいのに認められないのは 電力会社以外 kwh基準での取引が禁止されてるため。この国の不自然な現象にはいつも裏に規制がからんでる。
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計量法の制限については今年の4月から緩和されるので、残る問題は「eMPの課金システム」ですね。
基本的に時間課金しか想定していないシステムですから。
充電所の料金が、電力量で課金されるのでなく、充電時間で課金される。とすれば、同じ電力量を充電するのに、時間がかかればかかるほど儲かることになる。逆に、急速充電を実現すると、充電時間が減れば減るほど損をすることになる。しかも、そういうふうになっているのは、規制があったせいらしい。……ここまで来ると、もう、呆れてものが言えないね。
日本では政府と民間が一緒になって、EV普及をつぶすのための努力をしているわけだ。一種の自殺である。しかも、自分が何をやっているか、気がつかないでいるありさまだ。
自分で自分の首を絞めながら、「苦しい、苦しい、どうしてだろう」と不思議がっているありさまだ。愚かにもほどがある。
馬鹿は死ななきゃ治らない、ということか。
( ※ それを教えて上げる声は、本サイトを初めとして、世の中には少数ながら あるのだが、その声がマスコミの耳に届くことはない。)
(3) 前項
前項では、「充電池には温度管理が必要だ」という話をした。この話も、急速充電と関連する。というのは、次のことがあるからだ。
「急速充電をすると、充電池の温度が急上昇する。特に、高出力の急速充電をすると、温度の急上昇が激しい。それゆえ、バッテリークーラーのない日産リーフの充電では、急速充電が原理的に困難だった」
なるほど、日産リーフでも、急速充電ができないわけではない。しかし、急速充電をすると、温度が急上昇するので、バッテリーが劣化してしまう。何度も何度も急速充電をすると、バッテリーの劣化の度合いがひどくなる。
だから、日産リーフに充電するのならば、家庭で何時間もかけて充電するのが基本である。少しずつ充電するのならば、温度の上昇が少ないので、バッテリーの劣化も少ないからだ。
日産の現行リーフは、初代に比べれば、バッテリーの劣化が少ないと言われる。だが、それは、「家庭で長時間の充電をすることが基本だ」という制限の上での話だ。
一方、遠距離走行を続けて、高速道路で急速充電を何度も繰り返すようだと、充電池の温度上昇が激しくなるので、バッテリーが劣化してしまう。そうなると、長年の使用のはてには、充電容量が激減してしまうし、充電時間は長くなってしまう。最悪の結果となる。
要するに、「バッテリークーラーがない」という日産リーフの欠点と、「急速充電器が少ない」という欠点は、日本の EV 普及を遅らせることの、二つの原因となっている。しかも、それら二つは、たがいに補い合うことで、問題の発露を隠蔽する効果をもつ。「急速充電器が少ない」という欠点は、日産リーフの欠点のせいで隠蔽され、日産リーフの欠点は、「急速充電器が少ない」という欠点のせいで隠蔽された。
かくて日本では、日産リーフの欠点も、「急速充電器が少ない」という欠点も、ともに大きく話題になることがない。
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とはいえ、今年になってからは、日産アリアや、トヨタ bZ4X では、「バッテリークーラーがない」という欠点は解決済みであり、急速充電は可能となっている。となると、「急速充電ができない」という問題が露見して、急速充電器の不足は社会的に大きな話題になりそうだ。
……と思ったのだが、あにはからんや。トヨタはとんでもない奇策を出して、問題の露見を防ごうとしている。
→ 気になるトヨタの電気自動車『bZ4X』/バッテリー残量の%表示なし【編集部】
トヨタ bZ4X では、バッテリー残量の%表示がないのだ。これはいわば、ガソリンタンクのガソリンの残量表示がないというのも同然だ。とんでもない奇策である。
なるほど、こうすれば、問題は露見しにくくなるだろう。「急速充電ができない」という問題や、急速充電器が不足しているという問題は、「よくわからないや」というふうに見えて、問題の所在が隠蔽されそうだ。
そして、そのまま、トヨタ bZ4X は、「使い物にならない EV 」「ただのお飾り」として、車庫に眠ったままになるのかもしれない。
まったくもって、呆れた話である。まるで嘘みたいな話。ほとんど眉唾物に聞こえそうなくらいだ。
【 追記 】
結論としては、こうなる。
日本でまともに使える EV は、テスラだけだ。テスラならば、急速充電が可能だからだ。買うなら、テスラ車にしておけ。
日本車は、急速充電ができないので、街乗り(タウンユース)しか用途がない。その意味で、タウンユース向けの日産の軽自動車 EV ならば、問題はない。
一方、日産アリアや、トヨタ bZ4X は、急速充電ができないので、長距離走行に不向きだ。それでいて、長距離走行用に、大量の電池を積み込んでいるので、重量が重くなり、価格は高騰する。まったく不要な(使い道のない)もののために、莫大な無駄をしている。……こんな商品は、ほとんど詐欺商品だと言える。(特に日本では。)
日産やトヨタが、高額な EV を販売するのは、ほとんど詐欺商売だと言える。堅気な商売をする気があるなら、電池容量を減らして「街乗り専用」として売るか、急速充電器の普及に本気で取り組むか、どちらかにするべきだ。なのに、そうしないで、高額な EV を販売するのは、ほとんど詐欺商売だと言える。日産やトヨタは、詐欺会社である。(ホンダは違う。現状では EV から撤退しているような状態だからだ。悪人ではなく、無能である。)
《 訂正 》
日産の急速充電所は、かなり普及しているそうだ。以下に記したので、参照のこと。
【 後日記 】 ( 2022-05-17 )
日産の営業所には急速充電所が配備してあって、年中無休で稼働しているそうだ。テスラほどの高電圧ではないので、いくらか時間はかかるのだが、それでも日産の営業所は数が多いので、すぐに立ち寄れるという美点がある。テスラほどの便利差はなくとも、十分に実用レベルになるようだ。
とすると、テスラと日産の二つが、日本では実用レベルの EV であると言えるようだ。一方、トヨタの急速充電所はまったく普及していないので、トヨタの EV を買っても実用にはならないようだ。もちろん、チャデモは使えるが、チャデモは急速充電所ではないのが普通だ。
この件、5月17日のコメント欄に情報元を記しておいたので、そちらを参照。
「欧州にも一部に黒い部分はある」「欧州は真っ白ではなく、いくらか灰色っぽい」
と言われても、「そりゃそうだろ」と言うしかない。物事は単純に白黒で決着が付くわけでもない。
まあ、難点はいくらかあるにしても、長期的には少しずつ解消していくでしょう。
ガソリンスタンドだって、当初は数が不足していただろうが、そのうちだんだん数が増えていった。そういうものだ。
一方、日本の場合は、「急速充電所(≒ ガソリンスタンド)を増やすまい」という努力をしている。その意味で、将来的に解決する見込みはまったくない。そもそも解決する意思がないのだから。
本項が指摘しているのは、そういう本質的なことだ。なのに、現状に例外があるかどうかを論じても、仕方ない。見当違い。
> 将来的に解決する見込みはまったくない。そもそも解決する意思がないのだから。
と述べたが、これは妥当ではなかった。というのは、新たに次の情報を得たからだ。
> 日産では独自に150kW器によるユーザー向け充電インフラ(少なくとも日産の充電器はeMPネットワークに入るはず)を設置していくことを表明していますが、トヨタはどうするのでしょうか。
https://blog.evsmart.net/toyota/bz4x/2022-toyota-bz4x-specs/
日産だけは独自に高度な急速充電所の設置を進める方針であるようだ。トヨタとホンダも協力すればいいのだが、その場合には、電力会社を切り捨てて、チャデモも切り捨てることになる。それだけの度胸はあるのか? 日産にはあるようだが、トヨタとホンダは見込み薄だ。
> アリア46kwになるようですね ただ日産ディーラーは24時間365日全国で急速充電対応していますのでトヨタより全然よい気がします 京都でトヨタディーラーにいってみましたがGW休み中で目の前に充電器ありましたがチェーンで封鎖されていました
https://twitter.com/pippo4g/status/1526449727905992704
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日産公式:
https://ev2.nissan.co.jp/OWNER/QUESTIONS/DETAIL/1182/
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私の感想:
いちいち日産の営業所まで行くのは面倒臭い。高速道路の SA に付属しているのでないと、不便だ。
元の試乗記。
→ https://motor-fan.jp/mf/article/57315/
> 新電元150kW器で最新EV3車種の充電性能検証テスト
>日産『ARIYA』、BMW『iX3』、メルセデスベンツ『EQC』の3車種で
https://blog.evsmart.net/charging-infrastructure/quick-charger/shindengen-150kw-rapid-charger-test-with-bmw-ix3-mercedes-eqc-nissan-ariya/
3車種をテストしてみたが、いずれも似たような充電性能。アリアだけが容量が少なめの充電池なので、その点では、アリアは頑張っているとも言える。
いずれにしても、30分40kWhあまり。テスラに比べると、かなり劣る。IONIC 5 よりも劣るようでもある。バッテリークーラーの性能しだい。
詳細は、記事で。
ということが実証されている。
→ https://www.youtube.com/watch?v=yRypJ_FaHyg
アリアで、150kW の急速充電を実証した人の例。短時間で大量の電力を溜め込むことができたが、時間当たりの課金なので、料金は割安になった。家庭電力よりも安上がりらしい。コメント欄に試算がある。
> 46kwh入ったということは東電の価格が1kwhあたり20〜30円として920〜1380円分なので家充電より得な場合もありそう?