2022年04月21日

◆ EV の充電池を再利用

 EV の充電池を再利用しよう、という方針を日産自動車が推進している。一見、素晴らしいことだと思えるが。……

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 朝日新聞が報じている。
  → EV電池再利用、日産加速 福島の事業所、普及に備え:朝日新聞
 性能が劣化しても、まだまだ使える能力はあるので、充電池を再利用することで、有効利用する……という方針だ。
 電池に残された性能に応じ、新たなEVに再利用したり、ゴルフカートや家庭用蓄電池に転用したりする。

 電気自動車の下取価格が上がる効果もあるので、現状のように「電気自動車は、電池の劣化で、下取価格が激安になる」という問題を、いくからは回避できそうだ。
 電池を再利用する仕組みが整えば、車と合わせた下取り価格の上昇が見込める。購入への不安を和らげることができ、EV普及を後押しすると期待されている。

 以上の話を読むと、いいことずくめのように見える。だが、私は異を立てよう。

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 日産は、劣化した電池を有効利用しようとする。だが、もっと大事なのは、電池を劣化させないことだ。電池の劣化を防ぐには、精密な温度管理をすることが大切だ。実際、テスラはそうしている。
 バッテリーを冷やすバッテリークーラーとバッテリーを暖めるバッテリーヒーター
( → 新型リーフの電池の劣化: Open ブログ

 電池の劣化を防ぐには温度管理がとても大事だ……とわかっている。だから日産以外の会社はみな、クーラーとヒーターで電池の温度管理をしている。なのに日産だけは(コストカットの狙いで)クーラーとヒーターを設置しない。クーラーとヒーターを設置するには、10万円ぐらいのコストがかかるので、「そのコストを省いてコストダウンする」という狙いで、クーラーとヒーターを設置しないことにした。
 しかしそのせいで、電池の劣化が起こったので、80万円ぐらいの価値のある電池が、20万円ぐらいの価値にまで状態悪化した。この場合には、60万円分の損失が発生している。
 つまり日産は、コストダウンで 10万円を節約して、電池では 60万円の損失をもたらしているわけだ。愚の骨頂と言える。
 一方、他者は、クーラーとヒーターを設置するのに 10万円ぐらいのコストをかけるが、そのおかげで、電池の劣化はほとんどない。10万キロぐらいの走行をしても、電池の劣化は 5% ぐらいしかないので、ほぼ新品同様の状態を保っている。こうなると、EV の下取価格も大幅に上がる。

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 日産は、大幅に性能が劣化したせいで、もはや 20万円ぐらいの価値しかない中古の電池を、「ゴルフカートや家庭用蓄電池に転用したりする」というふうに再利用しようとする。「これで無駄がない」と思っているようだ。
 だが、その前に、「電池の性能を大幅に劣化させる」というところで、大幅に無駄を発生させているのだ。
 ここでは、「宝をゴミにする」(= 電池の性能を大幅に劣化させる)という無駄を発生させている。そのあとで、もはや劣化した電池をいくら再利用しても、「ゴミを再利用している」というだけのことだ。そんなふうにしてゴミをいくら再利用しても、ゴミの再利用などは、たかが知れているのだ。

 ――

 では、どうすればいいか? 
 リーフみたいなポンコツ EV (バッテリークーラーのない EV )は、さっさと生産をやめるべきだ。かわりに、バッテリークーラー付きの 新型EV を出すべきだ。
 なるほど、アリアには、バッテリークーラーが付いているので、問題はない。だが、アリアの生産台数は少なめだし、世界の各社と比べると、大幅に生産が遅れている。
 リーフの生産だけは、そこそこに世界の各社に伍しているが、そのリーフには、バッテリークーラーがない。そこで、「劣化した電池の再利用をします」なんていう方針を立てているが、そんな馬鹿げたことをするよりは、「劣化していない電池の再利用をします」という方針を立てるべきだ。そして、そのためには、バッテリークーラー付きの 新型EV を出すべきだ。
 まったく、各社に比べて、遅れすぎている。呆れるしかないね。



 [ 付記 ]
 トヨタはレクサスの EV の新型車を出すそうだ。写真を見ただけで、トヨタ bZ4X の兄弟車だとわかるが、詳細を調べると、こうわかった。
 多くの人が気になるのが、同じBEVであるトヨタ「bZ4X」とその姉妹車であるスバル「ソルテラ」との関係性でしょう。
 プラットフォームのe-TNGA、パワートレインのeアクスルといった主要部品は共用していますが、それ以外の構成部品、制御系、味付けはレクサス独自です。
 さらに新型bZ4X/新型ソルテラは新組織であるZEVファクトリーが開発を担当していますが、RZはレクサスインターナショナルと開発形態も完全に異なります。
( → 世界初公開されたレクサス新型SUV「RZ」最速試乗! トヨタ社長の「ワォ」の理由が分かった!? 新型「bZ4X」と全く違う魅力とは | くるまのニュース

 とのことだ。なるほどね。

posted by 管理人 at 23:43 | Comment(2) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いえ、現行のリーフになってから、バッテリーの劣化はそんなに問題にならなくなっています。実際、リサイクルに回収されてくるバッテリーもセルごとに検査するとほぼ新品で使える状態のものも多いそうです。確かに初代は劣化が走行による激しく、中古車が二束三文で売られている状態でしたが、現行はほぼ通常のガソリン車程度の値落ちまで改善されています。

ただ、温度管理にしてはあいかわらず酷暑や極寒の条件での充電が問題になっていますね。
Posted by なまず at 2022年04月22日 00:07
 まあ、初代がひどすぎたので、それに比べれば、ずいぶんと良くなってきている。しかしそれでも、5年で劣化が 20% を超えるものがけっこうある。
 テスラは 10年後でも劣化が 5%に収まっているので、テスラに比べると大差がある。
Posted by 管理人 at 2022年04月22日 01:16
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