地震のあとで、東電の電力が逼迫した。
何度か追記したので、それらをまとめて記す。
※ 【 追記 】〜【 追記8 】を追加。
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(21日深夜の時点で:)
地震による発電所の停止のあとで、22日には寒さのせいで、朝夕に電力需給が逼迫するそうだ。だから東電は家庭に節電を依頼している。下手をすると、ブラックアウト(全面停電)の危険もある。
→ 経産省「需給ひっ迫警報」初めて発令 あす気温低下・発電所復旧進まず 電力需給「非常に厳しい状況」節電呼びかけ|TBS NEWS
どうして朝夕かというと、日中は太陽光発電があって、その電力が供給されるが、朝夕にはそれがないからだ。
「需給調整契約を使えば」と思う人もいそうだが、朝夕は会社はもともと稼働していないので、会社では節電できない。
困った。どうする? そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。
「直前に依頼するのではなく、2日前に依頼する。依頼対象は、家庭ではなく、企業や会社や学校とする。全面的に、始業時間を2時間遅らせることを依頼する。このことで、朝寝坊を促して、朝の電力需要を減らす。
夕方も同様で、会社の終業時間を早める。これで、夕方の業務用の電力需要が減る。家庭では増えそうだが、実は、夕方では通勤途上であるか、飲み屋にいるので、家庭の電力上はあまり増えない。差し引きして、電力需要は減る」
要するに、朝寝坊と早退によって、怠けることで、問題を解決するわけだ。「怠けることが善である」という方針を取れば、たちまち解決するのだ。……ただし、二日前に通知してくれないと、困る。天気予報を利用して、ちゃんと対策を取るべし。
《 加筆 》
その後、でんき予報 を見ると、朝の危機は、余裕しゃくしゃくで乗りきった。(使用率は5時台 88%、6時台 82%、7時台 86%だ。)
午後4時台のみ、予想使用率が 100% となり、「非常に厳しい」と表示されているが、これは問題あるまい。「需給調整契約」を使えば、企業の需要を大幅カットできるからだ。
仮に供給不足になるとしたら、事前に需給調整契約を結んでおく量が不足したわけで、これは完全に東電の企業努力が足りなかったことが原因だ。最低の馬鹿経営者だったことになる。経営者の首が飛ぶね。場合によっては東電の事業免許を取り消してもいいくらいだ。(消費者の責任ではない。まったく。)
※ 朝の危機を乗り切ったのは、朝のテレビで節電要請を繰り返したせいらしい。テレビでずっと言っていれば、効果があるよね。 twitter でも、「テレビで節電要請」の話題が多い。
【 追記 】
12:05 現在、でんき予報 を見ると、電力状況は危機的だ。供給に対する需要は 103% となっており、需要超過だ。午後5時には需要超過の幅が 500万kW ほどとなり、供給量の1割を上回る。
需要超過の幅が小幅ならば、発電機を定量以上に稼働させる( 100%超えにする)ことで、何とか対処可能だ。これ以上になると、需給調整契約を大幅に発動する必要がある。そうすることができなくなると、計画停電で地域別に停電が起こるか、ブラックアウトで全域停電になる。
じゃあどうすればいいのか、という質問には、前に答えた。
→ 厳寒・猛暑なら休業日に: Open ブログ
厳寒や猛暑は、事前に予想ができるので、事前に「当日は休業」(全国で臨時休日扱い)というふうに決めればいいのだ。官公庁や銀行や学校などが全面休止になれば、民間企業のほとんども追随せざるを得なくなる。
なお、今回の事前予報は、ちょっと困難だったようだ。調べてみたところ、三日前の時点では、「寒くなりそう」というだけで、厳寒の予想はできていなかった。二日前の朝でもそうだ。厳寒になるという予想ができたのは、二日前の 13:49 の時点だ。
→ 関東週間 短い周期で天気が変わる 22日(火)は真冬のような寒さに - tenki.jp
だから、二日前の 14:00 の時点で、「気象予報による休業」という所定マニュアルにしたがって「一律休業」を決定すれば良かったのだ。この時点で全国に告知しておけば、事業所の決定が間に合うので、二日後の休業を関東全域で実行できる。(東北も同様にする。関東よりももっと寒いので。)
というわけで、対策としては、「厳寒・猛暑なら休業日に」という方針で十分に対処できる。原発稼働というような大がかりな方針は特に必要ない。
必要なのは知恵だけだ。ただし、その知恵が欠けている。東電にも、政府にも。……とすると、民間に被害が出る可能性もあるね。本日の夕方にどうなるかは、予想も付かない。愚者の愚行による広域の被害が出る可能性もある。
【 追記2 】
夕方の停電はなかったが、午後8時以後の停電の可能性が予告された。
東京電力パワーグリッドは22日、電力需給が極めて厳しくなり、午後8時以降に200万〜300万戸が停電する恐れがあると発表した。
現時点の予測では、蓄電設備の容量が22日午後8時以降になくなり、より大規模な停電を防ぐために一時的に電力供給を遮断して電力需給を均衡させるシステムが作動する見込み。どの地域を停電させるかは、東京電力ホールディングスの区割りに基づいてシステムが重要施設を除いてランダムに決める。
( → 東電管内、200万〜300万戸停電の恐れ 節電不十分なら: 日本経済新聞 )
しかし、これは馬鹿げている。この程度(5%?)の電力不足を解消するために、地域停電をするべきではない。むしろ、供給電圧を一時的に下げる方がいい。たとえば3%の電圧低下。それによって電力需要を強制的に下げることができる。
電圧を下げると、照明や電熱器などは、確実に電力消費量が低下する。(3%の電圧低下で、6%の電力消費低下が起こる。)
冷蔵庫やインバーター式エアコンでは、一時的には電力消費が減っても、機器の作動時間が長くなってしまうが、それでも、ピーク時の最大電力消費を減らせるので、ピークを引き下げる効果がある。それで十分だ。
※ 家庭単位で電圧を引き下げる機械というのもある。これは「省エネ装置」という名目で販売されたことがある。「インチキ商品だ」と非難されたこともある。しかし公的に機械の効果を調査してみると、まんざらインチキ商品でもないようだ。うたい文句ほどの大きな効果があるわけではないが、その半分ぐらいの効果はあるようだ。ただし、機械の種類ごとに、差が大きく出る。
→ 住宅用電圧調整システム (1) 本技術導入の効果・利点(環境省)
【 追記3 】
午後11時過ぎの時点で言うと、結果的には、本日の電力不足は生じなかった。理由は二つ。
・ 夕方や午後8時台の電力需要は、朝の予想値よりも大幅に少なくなった。
( 4830万kW から、 4300万kW またはそれ以下へ減った。)
・ 午後5時以後の電力供給が、朝の予定値よりも大幅に増えた。
(4300万kW ほどから、4700万kW ほど)
以上の二つの理由により、「500万kW の供給不足」になるはずだったのが、0万kW の供給過剰(余裕あり)」へと転じた。差し引きして、900万kW ほどの改善があったことになる。
需要が縮小したのは、テレビなどの報道で、民間で節電の努力が増えたからだろう。
供給が増えたのは、電力会社が休止中の発電所を稼働させたり、地震で休止中なのを何とか直したり、いろいろと努力したからだろう。
※ 続報によると、他の電力会社からの電力融通が、かなり多く得られたそうだ。また、水力発電の用水は都電を利用することで、一時的に 100% 以上の電力供給ができたという。
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参考として、昼間と深夜の「でんき予報」グラフを掲げる。


【 追記4 】
上の 【 追記2 】 では「3%の電圧低下」という案を示したが、実際にそれがなされていた、と確認された。手元の電圧を測定した人がいる。
電源周波数も目に見えて下がってますけど!? pic.twitter.com/R8bSmihm61
— ステイシー・レイクボール (@stacey_lakeball) March 22, 2022
電圧が 102Vから 99Vに 3Vほど下がっている。これで消費電力を 6%ほど減らせるはずだ。
【 追記5 】
これほどの電力危機が起こっても、原発を再稼働させないのはなぜか? 「過激派テロに対する安全策」という無意味なことをやろうとしているからだ。この件は、前に詳しく述べた。
→ 原発のテロ対策は不要だ: Open ブログ
ではなぜ、「過激派テロに対する安全策」という無意味なことをやろうとしているのか? 私が思うに、それはたぶん、当時は「ホワイトアウト」という映画が流行ったからだ。そこでは「過激派テロによる原発乗っ取り」というストーリーがあった。これを見て、自民党の右派が「過激派テロによる原発乗っ取りが怖い。対策しなくちゃ。極左対策は最優先だ」と思い込んだわけだ。……フィクションと現実との区別ができなくなったわけだ。
かくて日本の原発政策は迷走することになった。
【 追記6 】
今回の電力危機は、電力会社の無能さが原因であることが判明した。電力会社が真相を告白している。
政府が東京電力管内に「電力需給逼迫警報」を出したのは、前日21日の午後9時過ぎだった。直前のタイミングになった理由について、政府や東電は「想定外」が重なったとする。
東電によると、さらに寒くなるとの予報が21日に出たため、需要予測を見直して同日夕に経産省に報告。急きょ節電を要請することになったという。東京電力パワーグリッドの岡本浩副社長は「これほどまでの需要の伸びは想定できなかった」と話す。
( → 節電対応、企業ドタバタ 自家発電や空調・照明調節:朝日新聞 )
「想定外」「想定できなかった」のが理由であるわけだ。ところが、事前情報はこうだった。( 20日、13:49 )
あさって22日(火)は前線を伴った低気圧が本州の南を東よりに進む見込みです。各地とも冷たい雨が降り、日中も気温はあまり上がりません。最高気温は平年より大幅に低く、真冬のような寒さになるでしょう。
( → 関東週間 短い周期で天気が変わる 22日(火)は真冬のような寒さに(気象予報士 田中 円惇 2022年03月20日) - 日本気象協会 tenki.jp )
「真冬のような寒さになる」と二日前に予報されている。なのに、それを理解するのが、21日になってからだ。さらに、気温から電力不足への判断をするのに、半日もかかっている。そのせいで、21日の夕方になって、「電力不足の恐れ」という報告を出している。
無能の極みと言えるだろう。「真冬のような寒さになる」と、20日 13:49 に予報されているのだから、その 10分後には、「22日には電力危機になる」と判定できるはずだ。なぜなら、電力の予定供給量と予想需要量を比べて、引き算をすればいいだけだからだ。……なのに、その簡単なことができない。
これはつまり、東電は「引き算」という小学生並みの計算もできない、ということだ。仮に、そこいらの小学4年生が管理をしていたら、すぐに「22日には電力危機になる」と判定できたはずだ。東電には、小学4年生並みの知恵もなかったことになる。
こうなると、もう、事業免許を取り上げた方がいいだろうね。あるいは、経営陣を全員、クビにする。今のような状況だと、今後の日本の電力は、致命的なことになるぞ。
今の東電は、頭がほとんどプーチンだ。狂気の沙汰。破滅的。
【 追記7 】
需給逼迫の解決策として、電力の余っている北海道や九州から、本州へ電力を移送するために、連系線を強化する(容量を増やす)ことが不可欠だ、という意見がある。
解決には消費量の多い都市部に電力を送る送電線増強が不可欠だ。
( → 再生エネ発電量、最大4割ムダ: 日本経済新聞 )
連系線の増強は、再生可能エネルギーの導入拡大のためにも不可欠だ。太陽光発電や風力発電の適地は北海道や東北、九州といった地方に多い。地方では使い切れない電気を、人口が多い首都圏や関西圏に送れるようになる。
( → 電力、地域間融通に不全 送電設備が容量不足、教訓生かせず:朝日新聞 )
いかにももっともらしい意見だが、これは正しくない。なぜなら、「太陽光発電や風力発電の適地は北海道や東北、九州といった地方に多い」というのが正しくないからだ。太陽光発電や風力発電の適地が多いのは、北海道や九州ではなく、本州である。
特に、関東平野は日本最大の平野なので、太陽光パネルを設置するのに適した平地が多くある。現行では耕作放棄地になっている農地が多いので、これらは太陽光発電に適している。
→ 太陽光発電を増やす妙案: Open ブログ
→ 太陽光パネルの設置禁止 : Open ブログ
また、東北や中部地方には、農業には適さない中山間地が多いので、これらの中山間地の農地も、太陽光発電に適している。
→ 太陽光発電は屋根より中山間地で: Open ブログ
こういうふうに大量の適地が本州にある。だから、わざわざ北海道や九州から電力を移送する必要はないのだ。近場で太陽光発電をすれば済むのだ。
そもそも、北海道や九州から関東まで電力を持ってくると、遠距離を移送する必要があるので、次の難点がある。
・ 長距離を移送することによる、多大な送電ロス。
・ 量距離の送電網を使用する、多大な送電コスト。(設備費)
こういう難点があるのだから、「遠距離の送電をする」というような馬鹿げたことはやらない方がいいのだ。代わりに、関東平野や濃尾平野にある、大量の耕作放棄地で、太陽光発電をやればいいのだ。
※ なお、現実にはそれができないのは、政府が太陽光発電を禁止しているからだ。正確に言えば、環境省は太陽光発電を推進しているが、農水省が反対しているからだ。そして、太陽光発電の許認可権限をもつのは、環境省ではなくて、農水省なのである。かくて「政府が太陽光発電を禁止している」という状況が生じる。政府が機能不全になっているとも言える。詳しくは、上記ページ(リンク)を参照。
(簡単に言えば、農水省は「農業の推進」が目的なので、農業振興とは逆になる太陽光発電を、なるべく阻害したいのである。そのために「農地転用」を原則として不許可とするのだ。目的は省庁の権益だ。)
《 加筆 》
(海峡を渡る)連系線が駄目なのは、コスパがひどく悪い、という点だ。同規模の火力発電所を新設するのと同じぐらいの高コストがかかる。しかも、コストの償却ができない。(丸損である。)こんな馬鹿げたことをするくらいなら、火力発電所を新設した方がはるかにマシだ。
→ 北本連系(線)は無駄だ 2: Open ブログ
要するに、「北本連系線をつくれば、ひとつ作るだけで、北海道と本州の双方に対応できるから、二重の効果があってお得だな」と思ったのだが、実際にはその設備はほとんど遊休しているから、ただの無駄だ。そのくらいだったら、本州と北海道に火力発電所を一つずつ(計二つ)作る方がはるかにマシだ」ということだ。
北本連系線をつくれば、莫大なコストを回収できないので、その総額が国の負担となる。一方、本州と北海道に火力発電所を一つずつ(計二つ)作れば、莫大なコストを回収できるので、国の負担はゼロで済む。(電力会社が自分で事業をすればいいだけだ。コストは回収できる。)
「金がいくらかかるか」ではなく、「金を回収できるかどうか」に着目するべきなのだ。それもわからない政府は、コスト感覚がゼロで、金を浪費することしか考えていない。
【 追記8 】
警報の遅れについて、政府が検証作業を始めた。
22日に東京電力と東北電力の管内に初めて出された「電力需給逼迫警報」について、経済産業省は25日、対応が適切だったかの検証作業を始めた。
警報を出すタイミングは「前日の午後6時をめど」とされているが、実際に経産省が東電管内に警報を出すと明らかにしたのは、前日の21日午後9時すぎ。東北電管内を加えたのは、当日の22日午前11時半だった。
対応が遅れたのは、電力の需要を見誤ったためだ。経産省が有識者会議に出した資料では、東電は19日午後8時時点で、22日の最大需要は4300万キロワットと見込んでいたが、気象予報の変更を受けて2度にわたり修正。21日午後5時には4840万キロワットと、原発5基分にあたる540万キロワットも引き上げた。経産省はこれを受け、警報の発令を決めたという。
会議では、委員から「企業が節電に対応しやすいように、もっと早く出せないのか」との声が上がった。
( → 電力逼迫警報遅れ、検証 需要予測のあり方も 経産省:朝日新聞 )
ちゃんと検証しているようだが、核心を外している。
「19日午後8時」のあとで、「21日午後5時」というふうになっているが、これでは肝心の時点が抜けている。気象予報で「22日には寒くなる」と判明したのは、「20日午後2時」だ。この時点で警報を発令するべきだった。
「19日午後8時」では、まだ気象予報では「厳寒」とは出ていない。早すぎる。
「21日午後5時」では、気象予報が出てから 27時間も経過している。遅すぎる。
結局、「20日午後2時に警報を発令するべきだった」という肝心のことが記されていない。
これはどうしてかというと、「気象を知るには、気象予報を見るべきだ」ということに、誰も気がつかないからだ。いわば火事のときに「誰も消防車を呼んでいないのである」というふうなもので、誰一人、まともなことをしようとしないのだ。
東電も間抜けだが、政府の検証作業をする人の間抜けぶりは、輪をかけてひどい。「気象を知るには、気象予報を見るべきだ」ということに気づく人はいないのか? どうしてここまで馬鹿なのか?
コロナ警報?が本当に機能しているのかどうかは分かりませんね。私は懐疑的です。