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(1) あいまい戦略
ウクライナ戦争では、米国が煮え切らない態度を取っているが、こんなことでは、台湾有事のときにはどうなることやら……という懸念が生じている。ウクライナを見て、台湾を心配しているわけだ。朝日新聞が報じている。
「我々は北大西洋条約機構(NATO)加盟国の領域を1インチでも防衛する」
バイデン米大統領は11日の演説でこう強調した。
「我々は(NATO非加盟の)ウクライナでロシアと戦争しない。NATOとロシアが直接対立すれば、第3次世界大戦となる」
東アジアでは中国が台湾に軍事圧力を強める。中国の台湾侵攻にバイデン氏が示した軍事介入の基準をあてはめると、ウクライナのケースに似た点がある。
米国は台湾関係法に基づき、台湾に軍事支援するなどウクライナよりも関係は深いが、公式の外交関係はない。ウクライナと同じく、米国と台湾は条約による同盟関係にない。
中国も核を保有する大国だ。米国が台湾防衛のために中国と直接交戦すれば、核戦争に発展する危険もある。さらに台湾側を不安にさせるのは、米国が中国による台湾侵攻時の対応を事前に明らかにしない「あいまい戦略」を維持していることにある。
( → (ウクライナ侵攻)「台湾侵攻」なら…米は動くか:朝日新聞 )
米国は「ウクライナは同盟国(NATO加盟国)ではないから、有事の際も防衛しない」という方針を取っている。
しかしそれだと、台湾有事のときにも防衛しない、ということになる。
バイデン大統領は、「ウクライナが侵略されても介入しない」と事前に示したことで、プーチンのウクライナ侵略を招いた。とすれば、台湾についても同様のことが成立しそうだ。
現時点では、(ウクライナのときとは違って)「介入しない」とは事前に明示することはなく、「何とも言わない」という「あいまい戦略」を取っている。しかし、事前に「介入する」と明示しておかないと、中国の楽観を招いて、台湾侵略を招きかねない。
困った。どうする?
(2)ブルジョワ戦略
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。……と言いたいところだが、いちいち言うまでもなく、それへの解決策はすでに出している。それは「共同防衛」という方針だ。つまり、次の二点だ。
・ ウクライナ領域内では、軍事介入する。
・ ウクライナ領域外では、軍事介入しない。
これが「共同防衛」という発想だ。(今回、表現を新たに定義し直した。)
→ ウクライナ戦争 7(共同防衛): Open ブログ
これと同様のことを、台湾に当てはめれば、問題なく解決するわけだ。
なお、これは外部の視点で、外部の軍事介入を評価したものだ。
一方、これを内部の視点で、自国の軍事戦略を評価すると、こうなる。
・ 自国の領域内では、敵を攻撃する。
・ 自国の領域外では、敵を攻撃しない。
実は、これはすでに知られた概念である。それは、「ゲーム理論」の「タカ・ハト・ゲーム」における「ブルジョワ戦略」というものだ。前に別項で紹介した。
それは「ブルジョワ戦略」というものだ。次の通り。
・ 自分の領域の中では「タカ」になる。
・ 自分の領域の外では「ハト」になる。
これによって、状況は安定的になる。(進化論的に安定的な戦略。)
実際、動物は、その戦略を取る。鳥がさえずるのも、自分の領域を教えるためだし、犬や虎やライオンがションベンなどで臭いを付けるのも、自分の領域を主張するためだ。(他の個体が侵入してきたら、全力で排除する。たとえ自分が死ぬことになっても。)
( → 集団的自衛権とタカ・ハト・ゲーム: Open ブログ )
こういう「ブルジョワ戦略」が最善の戦略だということを、ゲーム理論は示した。ただの「タカ」(攻撃的)や、ただの「ハト」(平和的)ではなく、自分の領域の中であるか外であるかで方針を変える戦略が最善なのである。
そして、鳥も、犬や虎やライオンなども、その方針を取ることで、無駄に争うこともなく、自分の領域を守っているのだ。
ところが人間だけは、そういう賢明な方針をとれない。
・ ロシアのように、外の領域に出てまで「タカ」の戦略を取る国もある。
・ 米国のように、仲間の領域の中においても「ハト」の戦略をとる国もある。
前者は無駄な争いを起こして、双方が傷つく結果をもたらす。
後者は必要な争いをしないことで、大切な領域を外部の乱暴者に奪われてしまう。自分の方が強いのにもかかわらず、乱暴者を排除することができず、乱暴者の好きなようにされてしまう。
ゲーム理論を知れば、ロシアや米国が鳥やライオンよりも劣る知性しかもたない、とわかる。そしてまた、正しい戦略が何であるかも教えてくれる。それは「ブルジョワ戦略」だ。つまり、鳥やライオンの方針と同じような戦略だ。
こういうことを知れば、無駄な血を流すこともなくなるだろう。
※ それにしても、ゲーム理論の研究者が、この戦争では何も発言しないのは、まったく不思議なことだ。「自分の国」という典型的な場合だけでなく、「仲間である国」というふうに話を拡張できないことに、問題があるのかもしれない。応用力が欠けているわけだ。(話の定義域が拡大すると、たちまち無能になってしまう、というわけ。アカデミズムにはありがちだが。)
(3)マリウポリと降伏
ロシアがマリウポリに降伏を要求したが、ウクライナ側は拒否した。その後、ロシア軍の総攻撃が予想されている。
マリウポリについて、ロシア国防省は21日午前5時までに降伏するよう最後通牒を送ったとロシアの国営メディアが伝えました。降伏すれば、避難ルートを開くとしています。
ウクライナのベレシュチュク副首相は「降伏は選択肢にない」と現地メディアの取材に答えました。
( → マリウポリの降伏「選択肢にない」ウクライナ副首相|テレ朝 )
ロシア国防省はウクライナ軍に対し、武器を捨てて投降し、市外に出るよう要求。21日朝を回答期限としたが、ウクライナ側は撤退を拒んだ。「最後通告」の受け入れ拒否を理由にロシア軍が総攻撃に出る恐れが出ている。
( → マリウポリ、投降を拒否 ロシア最後通告にウクライナ―総攻撃の恐れも:時事 )
降伏しなければ、攻撃を受けて死ぬ危険がある。降伏すれば、領土を奪われる。どっちにしてもまずい。困った。どうする?
そこで、困ったときの Openブログ。まともな案を出そう。こうだ。
・ 都市を明け渡す。
・ 避難民が攻撃されたら、NATO軍が防護のためにロシア軍を空爆する、と宣言する。
・ ロシアが都市を支配する限り、強力な経済制裁を続けて、ロシアを経済崩壊させる。
こうすれば、次のようになる。
・ 当面は、戦争を回避して、マリウポリの市民の生命を救える。
・ 領土は、一時的にはロシアに渡す。だが、世界全体による経済制裁を続けることで、最終的には領土の返還に至る。
なお、これは通常の戦争とは異なる。
通常の戦争ならば、戦争の終結と領土の割譲は、いっしょに起こる。
今回の戦争では、ロシアとウクライナの間で戦争が終結しても、ロシアと世界全体との間の争いは残る。それは「経済制裁」という非軍事的な争いだ。これによって、ロシアは「ウクライナには勝ったが、世界には負けた」というふうになる。そして最終的には、世界が勝つので、そのとき、ロシアはウクライナから奪った領土を返還することになる。
これで解決だ。めでたし、めでたし。
朝の危機は乗り切ったから大丈夫、という話。
民間人に危害を加えるとただの兵卒であっても戦犯として処刑されうる、との情宣活動を、ウクライナにおいて、「この戦争、敗けぢゃないか」と考え始めているかもしれないロシア軍兵士に向けて繰り拡げるべき、という意図でした。
12:05 現在の電力情報。
午後8時以後に停電の恐れがある、という話。
本日の電力不足の危機は回避された、という話。および全体の考察。グラフ付き。
3%の電圧低下が実際に観測された、という話。
原発のテロ対策、および、東電の無能さ。