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基本方針
戦争の終結のためには、何らかの行動を取る必要がある。では、どんな行動を? それを具体的にあれこれと語る前に、まずは基本となる方針を示そう。心構えなどだ。
(1) 原因を知れ
取るべき行動を具体的にあれこれと探る前に、まずは戦争に至った原因を探ることが必要だ。「どうして戦争になったか」もわからないまま、やみくもに対策を取ろうとしても、見当違いな対策になるだけだ。
ここまで戦争になってしまったことには、何らかの失敗があったことになる。その失敗をきちんと理解することが必要だ。おのれの不手際を理解することが必要だ。
「何もかもプーチンが悪い。おれたちは悪くはない」
なんて言い張っていると、(過去では)戦争を回避できなかっただけでなく、(未来では)戦争の拡大を招きかねない。それでは、めざす方向と逆方向に進みかねない。
だから、まずは戦争になった原因を知るべきだ。
(2) 戦争の原因
戦争になった原因は何か? それは、これまでのシリーズ(ウクライナ危機には 1〜6 )で示してきたことだ。
そこを読めばわかることだが、戦争の原因は、西側とロシアの双方にある。双方がともに愚かだったから、戦争が起こったのだ。少なくともどちらか一方が愚かでなかったなら、戦争は起こらなかったのだが。
その意味で、西側は戦争を起こしたことの、自らの責任を理解するべきだ。そこを理解して直視しない限り、戦争の終結はあまりにも遠くなる。
(3) 正義意識を捨てよ
西側の責任とは何か? それは、自分たちを「正義だ」と思い込んだことだ。
→ ロシアの歴史認識の解説: Open ブログ
そのせいで、一歩も妥協できなくなって、ロシアと正面衝突するに至った。仮に、ほんの少しでも、脇に逸れる(譲歩する)だけの度量があったなら、こんな大惨事には至らなかったのだが。なのに、あまりにも頑なだったことが、こういう大惨事を招いた。
→ ウクライナ危機には? 6(評価): Open ブログ の (4)
西側は自分たちを「正義だ」と思い込んだ。その何がまずかったのか?
まず、「自分たちは正義だ」というのが、まったくの虚偽だということだ。西側は、自分たちが不正義を働いたことがないと思い込んでいるが、実は、過去においては同様のことをやっている。つまり、ロシアがウクライナに対してやっていることは、過去において西側がやったことを踏襲しているだけだ。
→ ロシアの歴史認識の解説: Open ブログ
さらに、別の問題がある。自分たちを「正義だ」と思い込むと、相手の話を聞かなくなることだ。自分だけが正しいと思い込むゆえに、相手は間違っていると思い込む。そうなると、相手の話を聞かなくなって、唯我独尊になる。だから道を真っ直ぐ進むことしかできなくなる。
相手の話を聞かないまま、ほとんど盲目的になって、いつのまにか相手を傷つける。今回の事例で言えば、ロシアを軽んじて、ロシアを傷つけたが、傷つけたことにすら気づかない。そうして、道を真っ直ぐに進んだまま、相手を踏みにじったのだ。
そして、足を踏まれた人の痛みは、踏んだ人には理解できない。かくて、相手を踏みつけたまま、それに気づかずにいることになる。……こうして西側は、虎の尾を踏むことになった。
(4) 相手の話を聞け
どうしてそうなったか? それは、西側がロシアの話を聞こうとしなかったからだ。自分を「正義だ」と信じて、自分の言いたいことばかりを言う。そういう独善があった。唯我独尊と言ってもいい。
要するに、ロシアが傷ついたと訴えたのに、西側はまったく無視していた。議論に応じようともしなかった。単に頭ごなしに「ノー」と言うだけで、交渉に応じようともしなかった。
だからロシアは怒った。「聞け、聞け、と言っているのに、人の話をまったく聞こうとしないのは、西側が悪い」と。
具体的な報道を引用しよう。
プーチン氏は北大西洋条約機構(NATO)拡大などを念頭に、「将来の国の存続が不透明になるほどのリスクが生まれかねなかった」と主張。「すべての努力は無駄、無駄だった。(欧米側は)驚くことに1ミリも動かなかった」と、NATO拡大停止などのロシアの要求を拒否した欧米を批判した。
ロシアのプーチン大統領は24日、大企業幹部との会合で、「いま起きていることは、やらないとチャンスを逃す強硬手段だ。ほかの選択肢はなかった」とウクライナ侵攻を正当化した。
( → プーチン大統領「ほかの選択肢はなかった」 ウクライナ侵攻を正当化 [ウクライナ情勢]:朝日新聞 )
これがロシアの言い分だった。そしてそれは、プーチン個人の考えだけではなかった。ロシア国民の多くがそう思っていた。
米CNN放送は今月7日〜15日、ロシアの成人1021人とウクライナの成人1075人を対象にそれぞれ調査をした結果、“ウクライナのNATO加入を阻止するため、ロシアが武力を使用することは正しいと考えるか”という質問に、ロシアの回答者の50%が「そうだ」と答えた。
( → ロシア人の50%「ウクライナのNATO加入阻止のため、武力の使用は “正当”」−韓国新聞・社会/文化 )
今回の戦争を「プーチンの個人的な暴走」とみるのは、正しくない。なるほど、確かに直接の引き金を引いたのは、プーチンだ。その責任は、最高権力者としてのプーチン個人にある。
だが、「実行」の責任はプーチンにあるとしても、「戦争」を選択させた責任は西側にある。自分たちを「正義」と信じたあげく、頑なに「タカ」の路線を取り続け、一切の妥協を拒んだ。
→ ウクライナ危機には? 4(戦争の原因): Open ブログ
その上で、「双方がハトになろう、妥協しよう」というプーチンの提案を拒んだ。自分たちだけを「正義」だと信じた。
あげく、ロシアという虎の尾を踏んで、ロシアを傷つけて、ロシアを痛みで叫ばせながら、自分たちが何を踏んでいるかも理解できなかった。
そのせいで、ロシアはついに(交渉では解決できないと思ったので)、口で噛みつくことにした。つまり、「窮鼠猫を噛む」というふうにした。……それが、今回の戦争だ。
→ ウクライナ危機には? 5(続き): Open ブログ
つまり、戦争が起こったのは、西側が、相手の話を聞こうとしなかったからだ。相手の声に耳を傾けようとしなかったからだ。交渉しようとしなかったからだ。「双方がともにハトとなろう、妥協しよう」という方針を拒んだからだ。……そして、それというのも「自分たちは正義だ」と思い込んだからだ。
以上のことからすれば、このあとで何をすればいいのかもわかる。それは、「戦争を引き起こした原因」とは逆の方針を取ることだ。それはつまり、「自分たちは正義だ」と思い込むのをやめて、相手の話を聞いて、相手の言い分を理解するということだ。そのとき初めて、戦争を止めることができるようになる。
※ 特に、ロシアがウクライナの NATO加盟 を恐れる心を、理解することが必要だ。
屈服せよ、とまでは言わないが。
※ 続きは次項で。
to be continued.
( 予告しておくと、明日・明後日の話は面白くなる。あっと驚くような話。)
> 「自分たちは正義だ」というのが、まったくの虚偽だということだ。
という箇所を加筆しました。