2022年02月27日

◆ ウクライナ危機には?  5(続き)

 (前項の続き)
 ロシアは戦争を選択せざるを得ないとしても、まだ謎がある。
  ・ なぜ 戦争を実行したのか? 
  ・ 戦争を実行した時期は、なぜ今か? 


 ――

 残る問題


 前項では、「タカ・ハト・ゲーム」などの原理で、ロシアの選択肢を説明した。つまり、ロシアには「タカ」(戦争)以外の選択肢がなかったのである。
 ここまでは、話が済んだ。だが、まだ残る問題がある。それは、次の二点だ。
  ・ なぜ 戦争を実行したのか? 
  ・ 戦争を実行した時期は、なぜ今か? 


 そもそも、選択肢が「タカ」(戦争)以外にはなかったとしても、その選択肢を取らないでいる(保留状態にする)という道もあったのだ。そして、常識的には、それが最善であるとわかるはずだ。なのになぜ、「保留」にはしないで、その選択肢を「実行」することを選んだのか? ……これが謎となる。

 また、「実行」を選んだにしても、その時期はなぜ「今」という時期なのか? こんなにあわてて急いでやらなくても良かったはずだ。もっと様子見をしていて、先延ばししても良かったはずだ。常識的には、それが最善であるとわかるはずだ。なのになぜ、「延期」にはしないで、その時期を「今」にすることを選んだのか? ……これが謎となる。

 以上の二つの謎がある。これらについて考えよう。ただし、考える順番は、その順序を逆にして述べる。つまり、「時期」の問題を先にして述べる。

 なぜ今か?


 ロシアが戦争をした時期は、なぜ「今」なのか? これについて、以下で説明する。
 ただし、初めに述べておくが、これは「強い説明」ではない。根拠をある程度は説明するが、必然性があると示すほどの強さはない。「いくらかは説明できます」という程度の話である。あらかじめ、お断りしておく。

 まず、疑問がある。そもそも、今というこの時期に戦争を始める必要はないのだ。なぜなら、現時点では、ウクライナの NATO加盟は、まだ議題にも上がっていないからだ。
 キューバ危機のときには、核ミサイルがすでにキューバに運び込まれていた。米国はその事実を認識していなかったが、「核ミサイルがもうすぐキューバに運び込まれそうだ」とは認識していた。いずれにしても、米国が対抗策(キューバ侵攻をする)には、喫緊の理由があった。
 しかし今回は違う。ウクライナの NATO加盟は、まだ議題にも上がっていない。なのになぜ、ロシアは急いで、この時期に戦争を開始したのか? その理由を探ろう。


 (1) NATO 加盟の前

 ウクライナの NATO 加盟が実現したら、ウクライナにはもはや手を出せなくなる。(手を出せば NATO諸国の反撃を受ける。)
 だから、手を出すなら、今のうちだ。……そう思って、急いで戦争を開始した、とも思える。


 (2) 先手必勝

 どうせ戦争をするなら、早ければ早いほどいい。戦争をするなら、相手の準備が整わないうちにやるのが、効果的だ。(日本の真珠湾奇襲のように。) …… そう思って、「少しでも早く」というふうに決めたのだ、とも思える。


 (3) 北京五輪

 ウクライナの NATO加盟については、ロシアは急に反対したのではなく、去年の夏ごろからずっと反対していた。
  → ウクライナのNATO加盟は「越えてはならない一線」=ロシア(2021年6月17日)
 だから、本来ならば、昨年中に開戦していてもおかしくなかった。
 しかし、そうはならなかった。なぜか? たぶん、2022年2月に北京で冬季五輪があったからだろう。五輪中は開戦せずに、五輪終了後に開戦しよう、と思ったのだろう。
 しかしこれは、時期が遅れた理由であって、時期を早めた理由にはならない。(だからこの件は、あまり意味がないようだ。)


 (4) 燃料不足

 この冬は欧州で燃料不足が発生した。このことが、戦争を急ぐ理由となった。なぜなら、燃料不足のときには、ロシアに対して経済制裁を実施しにくくなるからだ。
 そもそも、通常ならば、戦争の開始には抑止力が働く。それは「戦争を開始すると、経済制裁を受けるので、損を知るぞ」という抑止力だ。
 ところが、この冬は欧州で燃料不足が発生した。ここで、もし欧州が経済制裁をすると、ロシアは対抗策として天然ガンや石油の輸出を止めそうだ。そうなると、欧州の燃料不足の状況が、いっそう悪化する。だから欧州は、現時点では、経済制裁を取れないだろう。
 つまり、欧州が燃料不足で困っているときこそ、(経済制裁を受けにくいので、)戦争開始のチャンスだ、ということになる。まるで千載一遇のチャンスみたいな。
 この状況(燃料不足)については、次の記事がある。
 欧州連合は天然ガスの4割をロシアに頼るため、24日も代表的な天然ガス指標が前日より6割上がり、1年前の8倍を超える水準になった。
( → ロシア制裁、貿易に影 日産・トヨタ、現地に工場:朝日新聞

 これが欧州在住の人々の財布を直撃しているということは、下記の事例もある。
  → 欧州でガスの価格が高騰しているため、イタリア在住の人の元に2ヶ月分で135000円の請求が届く事態に - Togetter
 月に7万円弱もガス代を払っているわけだ。大変なことだ。この先、さらに上がるとなると、欧州はとても経済制裁なんか実行できまい……とロシアは思ったのだろう。
 ただし、欧州がガス不足や石油不足で悩むのは、暖房が必要な冬季だけだ。夏になれば、暖房は必要ないので、ガス不足や石油不足は起こらない。そうなったら、欧州は経済制裁ができるので、ロシアとしては困ったことになる。
 だから、「どうせ戦争をするのならば、気温が暖かくなる前に」とロシアは思ったのだろう。

 上のことは、商店の「期間限定セール」に似ている。「お得なのは今だけですよ。今という時期を逃すと、損をしますよ。どうせ買うのだったら、今しかないですよ」というわけだ。
 こうして「今だけ、今だけ」と言って、消費者をやたらと焦らせて、購入させる。そういう手口がある。(テレビの放送販売ではよく使われる手だ。)
 それと同じ原理で、ロシアは大急ぎで、暖かくならないうちに戦争を仕掛けたのだろう。

 ――

 これと似たことは、日本の開戦[真珠湾攻撃]のときにもあった。あのときは、日本は米国に迫られて、開戦するしかない状態に追い込まれた。戦争をするか否では、戦争をするという選択肢しかなくなった。( → 前出項目
 そして、残るのは時期の選択のみとなった。時期はいつにするか? ここで、「今しかない」「これ以上待てば、不利になるだけだ」という判断が生じたので、ほとんど追い込まれるようにして、開戦に突き進んだ。
 つまり、戦争の時期を決めるときに、時期が早まるという形で、「戦争をするしかない」というふうに突き動かされたのである。
 
 今回のロシアにしても、「戦争の実行を決めてから、戦争の時期を決めた」というよりは、「戦争の時期を決めるのにともなって、追い立てられるようにして、何が何でも戦争をせざるを得ない状態になった」とも言えそうだ。

 なぜ実行か?


 話の順序は逆になるが、「なぜ戦争を実行したのか」という疑問がある。選択肢が「タカ」(戦争)以外にはなかったとしても、その選択肢を取らないでいる(保留状態にする)という道もあったのだ。そして、常識的には、それが最善であるとわかるはずだ。なのになぜ、その選択肢を「実行」することを選んだのか? なぜ「保留」にはしなかったのか? ……これについて、以下で説明する。
 ただし、初めに述べておくが、これは「強い説明」ではない。根拠をある程度は説明するが、必然性があると示すほどの強さはない。「いくらかは説明できます」という程度の話である。あらかじめ、お断りしておく。


 (1) 足元を見られる

 ロシアには、楽観があった。
 「戦争を実行しても、大丈夫だ。欧州は燃料不足なので、天然ガスの停止が怖くて、どうせ経済制裁なんかできっこない。今という燃料不足の最中ならば、戦争を実行しても大丈夫だ」
 という楽観だ。これは、言い換えれば、「欧州は足元を見られていた」ということだ。


 (2) 窮鼠猫を噛む

 一般的には、暴走気味の戦争が起こるのは、「窮鼠猫を噛む」という状況にあることが多い。追い詰められたネズミが、一転してネコに噛みつく、という現象だ。それは突発的に生じる攻撃でもある。
 
 「窮鼠猫を噛む」という突発的が起こるのはどうしてか? それについては、次の心理学的用語で説明される。
  「闘争か逃走か」

 これは、「戦うか逃げるか反応」という用語でも呼ばれる。強い心理的圧迫を受けたときに、攻撃者に対して、正面から闘争するか、背を向けて逃走するか、という二者択一の道が生じる。
 そこで、「闘争」という道を選択したならば、「窮鼠猫を噛む」という形で、無謀な攻撃をすることになる。たとえば、昔の日本が真珠湾奇襲に打って出たのは、まさしく「窮鼠猫を噛む」という状況にあったからだ。

 今回は、どうだったか? ロシアとしては、ウクライナの NATO加盟によって、国家存亡の危機に瀕している、と感じた。ウクライナの NATO加盟が実現すれば、モスクワから 460kmのところに、核ミサイルが配備されかねない。そうなったら、首元に刃を当てられたのも同然だ。いつでも寝首を掻かれる恐れがある。それは絶対に困る。(キューバに核ミサイルを配備された米国と同様だ。)
 にもかかわらず、米国はウクライナの NATO加盟について、一歩も譲る姿勢を見せない。できれば交渉で解決したいが、交渉で米国が妥協する見通しは皆無である。外交ではとうてい解決できそうにない。
 となると、ロシアとしては、あとは武力行使をするしかない……という状況に追い込まれたわけだ。ネコに迫られたネズミのように、生きるか死ぬかの瀬戸際に追い込まれたわけだ。
 となると、窮地に追い込まれたネズミが、突発的に攻勢に転じるのも、不思議ではないわけだ。かくて、「窮鼠猫を噛む」という形で、戦争が起こった。

 このように説明される。一応は。






( ※ 長くなって、書くのに疲れたので、ここで中断します。以後は、次項に続きます。)

  to be continued.


    ※ 話の調子は一転して、以後は、プーチン批判となる予定。

posted by 管理人 at 23:58 | Comment(2) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
キューバ危機とは危機レベルが違うと思います。
キューバ危機では核ミサイル基地の建設が発覚したのに対し、ウクライナはNATOへ加盟しようとしただけです。
同じというならウクライナがNATOへ加盟し、さらに核ミサイルを配備しようとしたときだと思います。
Posted by AI at 2022年02月28日 12:13
 そう言われると思ったけど、それは次項で書く予定です。
 戦争の要因は、部分的には成立するが、部分的だけだ、と冒頭で留保をしています。

> 初めに述べておくが、これは「強い説明」ではない。根拠をある程度は説明するが、必然性があると示すほどの強さはない。「いくらかは説明できます」という程度の話である。あらかじめ、お断りしておく。

 次項以降では、一転して、プーチン批判が続きます。
Posted by 管理人 at 2022年02月28日 12:47
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