ソニーも EV を開発して、自社ブランドで売るそうだ。
※ おまけで、ヒョンデの EV の話も。
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トヨタの EV
トヨタの EV である bZ4X は、さんざん期待を持たせたすえに、国内販売しないことが決まった。肩透かしというか、唖然とするね。
トヨタ自動車は2022年半ばに発売するとしていた初の量産電気自動車(EV)である「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」について、国内向けには当面販売しない方針を固めた。
国内では5月にもサブスクリプション(定額課金)サービスに限定して提供する。生産台数の半分超を北米や欧州といったEVの主力市場に優先的に提供する。
bZ4Xは多目的スポーツ車(SUV)で、トヨタブランドとして初の量産EV。トヨタが21年12月に新たなEV戦略を打ち出して以降、発売する車の第1弾となる。トヨタが1月下旬にサプライヤーに示した計画によると、生産は4月から始め、22年度は世界で6万台弱になる見通し。トヨタの21年のEV販売台数(1万4千台)を上回る。23年度も約5万台を生産する計画だ。
環境規制が厳しく、すでにEV競争が激しくなっている欧米に優先的に供給する。
( → トヨタ初の量産EV、国内は当面販売せず サブスク限定で: 日本経済新聞 )
この件は、二つの観点で理解できる。
(1) 欧米優先
欧米優先で、日本国内では量販しない。
これはどうしてかというと、欧米には炭素規制があって、炭酸ガス排出量が多い会社は罰金を取られるからだ。この件は「ZEV 規制 / CAFE方式」という用語で説明荒れる。前に解説した。
→ 日本の温室効果ガス政策: Open ブログ
→ 欧州排ガス規制 CAFE: Open ブログ
要するに、欧米では EV を販売しないと高額の罰金を取られるから、少しでも多くの EV を販売したいのだ。罰金を取られないために。
一方、日本という国は、後進国であって、炭酸ガス規制がない。だから、EV を販売しなくても罰金を取られない。それだったら、わざわざ後進国で EV を販売する必要はないな、と思ったのだろう。日本では、炭酸ガス規制がなくて、炭酸ガスの出し放題なのだから、日本ではどんどん炭酸ガスを出してしまえ、というわけだ。
まあ、オナラの出し放題みたいなものだ。


(2) サブスクのわけ
販売せずに、サブスクにするそうだ。
本来のサブスクならば、「使いたいときだけ使って、使いたくなくなったら契約解除」というふうにできるはずだが、そういう仕組みにはなっていない。数年間の長期契約が必要であって、その間の途中解除は、原則禁止である。その意味で、リースとほとんど代わらない。
リースと違いがどこにあるかというと、任意保険の料金が込みになっている、という点が違うぐらいだ。サブスクだと、「費用は全部込みで請求します」ということになる。ユーザーとしては、あちこちに分散して契約する手間がない分、手間がかからないで済む。しかし、その分の手間賃を会社に払う必要があるので、総合的な支払額は増えてしまう。「面倒臭い手間を浮かせるためであれば、金はいくらでも払ってやる」という、ものぐさな金持ち向けのサービスだ。(中小企業の高齢経営者が想定された客だ。)とはいえ、リースとの違いは少ない。
サブスクでもリースでも、たいして違いはないが、「販売」という普通の方式とは大きく異なる。ではいったいなぜ、「販売」をやめたのか?
そのわけは、こうだろう。
メンテナンスの権限を、ユーザーが握るかわりに、会社が握る。そのことで、十分なメンテナンスを実施する。
仮にユーザーが保有していると、メンテナンスが手抜きされる恐れがある。「お金がもったいないから、定期点検の料金を浮かすために、定期点検の回数を減らす」というふうに。
それだと、車の状態を維持することに、不安が生じる。そこで、十分なメンテナンスの料金を込みにした月額料金を設定することで、料金先払いの形で、十分なメンテナンスを実施するわけだ。料金先払いなら、ユーザーが定期点検をサボることもない。メーカーとしても、自分が担当する形で、十分なメンテナンスサービスを実施できる。
要するに、サブスクやリースでは、車両本体を月額料金で払うことが大事なのではなく、付随するメンテナンスサービスを強制的に(確実に)販売することが大事なのだ。売りたいのはあくまで、車両本体ではなくて、メンテナンスサービスの方なのだ。そのために、サブスクやリースに限定する形で、販売するわけだ。
※ こういうことは、品質の安定性に不安がある未熟な商品については、ときどき実施される。たとえば、ホンダの自動運転車がそうだ。「自動運転レベル3を世界初採用した」という標榜だが、販売せずにリースするだけであり、しかも台数は100台限りである。前に言及した。
価格は従来比 400万円もアップしているからだ。これでは、売れるはずがない。
というか、この車はそもそも売っていない。市販されていないのだ。リースという形で貸与されるだけだ。台数も 100台限定だ。
「100台限定のリース販売」というのは、「市販された」とは言わない。実験的な用途で、モニター的な試験貸与をしているというだけだ。
( → 日系各社の自動運転技術: Open ブログ )
ホンダの自動運転車は、100台だけのリースをした。それと同様なのが、トヨタの(今回の) EV だろう。100台だけということはないだろうが、どっちみち、たいした台数にはなりそうにない。(日本国内では。)
こういうのは、ひどいものだ……という気もするが、粘土でないだけ、まだマシか。
ソニーの EV
ソニーもまた EV の開発に乗り出した。アップルと同様である。
ただし、製造と保守はやらないらしい。
ソニーグループの電気自動車(EV)事業への参入表明が注目されている。事業を担う新会社を今春設立し、量産化を検討する。国内大手電機メーカーが、完成車の量産検討を表明するのは初めてとされる。
EV開発では様々な企業と協業している。試作車「VISION―S(ビジョン・エス)」は、オーストリアの自動車生産会社「マグナ・シュタイヤー」に生産を委託した。
EVの保守・点検は既存の自動車工場などとの提携も検討しているという。
( → ソニーEV参入、「走るスマホ」実現へ トヨタやホンダ社長「歓迎」:朝日新聞 )
生産を委託する「マグナ・シュタイヤー」とは、どんな会社か? 公式サイトに説明がある。(日本語)
マグナ・シュタイヤーの100年以上の完成車生産と幅広いエンジニアリングサービスの経験が、独自ブランドを持たないエンジニアリング・生産パートナーとして、自動車メーカーをグローバル市場でサポートすることを可能にしています。
マグナ・シュタイヤーは、現在までに、30機種を370万台以上生産してきました。
( → マグナ シュタイヤー | マグナ )
要するに、台湾の TSMC みたいなものだ。OEM 専業メーカーであって、相手先ブランドの製造だけを行う。日本車でもすでに、トヨタ・GRスープラを製造しているそうだ。
→ マグナ・シュタイア - Wikipedia
まあ、こういう会社に委託すれば、製造の面では何とかなりそうだ。
保守・点検も、提携によって何とかなりそうだ。
ただし、問題は、デザインだな。いかにも「自動車デザインに慣れていない、プロのデザイナー」(電器製品のデザイナー?)という感じで、野暮ったい。まるで電器製品みたいなデザインだ。置物ふうであって、躍動感がない。
野暮ったいデザインだが、自分ではその野暮ったさに気づかないようだ。たぶん本人は、「どうだ、カッコいいだろ」と思っているのだろう。
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一方で、台湾のフォックスコン・テクノロジーも、EV 開発に進出した。
→ 新型EV『モデルE』、航続750km…ピニンファリーナがデザイン | レスポンス
こちらは、ピニンファリーナのデザインだけあって、優れたデザインだ。
新型EV『モデルE』、航続750km…ピニンファリーナがデザイン | レスポンス(https://t.co/iG76YEcg3O) https://t.co/KOW0Hs5xNl
— kats (@ka2i) December 2, 2021
ソニーも、ピニンファリーナに委託すればいいのにね。それができないプライドの高さが、ソニーの弱点だ。(前もベータマックスのときに、そのせいで陣営づくりをできずに、大失敗した。陣営づくりをした VHS に敗北して、ついに撤退した。)
ヒョンデの EV
ヒョンデ(旧称:ヒュンダイ)の EV は、ソニーとは正反対の方針を取って、成功した。
その方針は、開発を外部に全面的に委ねることだ。いわば「魂を売り渡す」という感じである。プライドを捨てたも同然だ。具体的には、開発部門を欧州において、欧州人の技術者が設計して、欧州人のデザイナーがデザインする。そうして純欧州製の自動車を設計したあとで、生産だけを韓国内で行う。
その結果は? 二流国家の韓国とは思えないほど、最先端の欧州水準の自動車となった。世界トップレベルの製品として、欧州でも表彰されたほどだ。
その EV は、アイオニック5(IONIQ 5)という製品だが、これを評した記事がある。
アイオニック5の開発主体は欧州にある開発部門。デザインも欧州。そこで仕事してるのは、BMWやアウディやメルセデス出身の人たちだという。中身は完全に欧州車です。
( → こ、こいつはヤバイ!! 日本車危うし!? 日本再上陸のヒョンデEVに乗ってわかった最新韓国車の驚くべき実力!! - 自動車情報誌「ベストカー」 )
今年(2021年)ドイツ市場で発売された、現代自動車(Hyundai=ヒョンデ)のIONIQ 5が2022年の「ドイツカーオブザイヤー」(GCOTY)に選出された。
「コンパクト」、「プレミアム」、「ラグジュアリー」、「ニューエナジー」、「パフォーマンス」の5つのカテゴリーで互いに競い合い、…… IONIQ 5は、「ニューエナジー」部門でカーオブザイヤーに受賞することとなった。
( → ヒョンデ(現代自動車)IONIQ5が2022年に「ドイツのカーオブザイヤー」に選出! | Motor-Fan[モーターファン] )
【今日の人気記事】ヒョンデ、ZEVで日本市場に参入 479万円のBEV「IONIQ 5」とFCEV「NEXO」2車種導入 https://t.co/5BiQUtEtmv #Hyundai #IONIQ5 #NEXO pic.twitter.com/qP7DwtrmmM
— Car Watch (@car_watch) February 8, 2022
ヒョンデは、自社の強みである生産に特化して、弱みである開発は欧州人に委ねた。なぜか? 自己の強さと弱さを正しく理解したから、自惚れることなく、自分の弱さを直視して、自分の弱さを補う対抗策を採ったのだ。
ソニーは、自社の強みである電子技術に特化するのではなく、未経験の自動車デザインにまで手を出した。自分の素人っぽさを正しく理解できないから、自惚れて、自分はデザイン能力があると思い込んで、野暮ったいデザインの車を出して、得意になっている。厚顔無恥とは、このことだ。
※ ただし、ソニーの EV は、試作車(プロトタイプ)であるから、ちゃんと路上を高速で走れる。その意味で、粘土製の EV を出すほど厚顔無恥ではない。
※ ソニーの EV のデザインは、「野暮ったい」「垢抜けない」というぐらいで済んでいる。一方、三河デザインの bZ4X は、「野暮ったい」を通り越して「不格好」というレベルになっている。まあ、粘土製でないだけマシだが。

→ https://kuruma-news.jp/vague/post/68732
自動車メーカーはどうでもいいですが。
なにか「三河」に良くない思い出でも?
視野が狭くて、小さな一地域の視点から抜け出せず、世界的な視野をもてない(世界標準のセンスをもてない)という意味です。
特定の地域(三河)である必要はなく、全国のどこであっても同様です。
ちなみに、マツダのデザインは、広島発だが、世界レベルになっている。マツダの マツダ3 という車のデザインは、「2020ワールドカーデザインオブザイヤー」という世界最優秀賞を受賞しました。
地方のデザインであっても、井の中の蛙を脱することができる。マツダは、それができた。トヨタは、できなかった。
→ https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC046IO0U2A300C2000000/
これは、「ありそうだな」とは思ったが、実際にそうするのは、ちょっと驚きだ。
ただ、ホンダも EV は弱いので、弱者連合という感じもする。