2022年02月15日

◆ ソーラーシェアリング

 (前項の続き)
 太陽光発電をうまくやっている事例がある。農地の空中に太陽光パネルを設置して、その下では農作物をつくる、という併用の方法だ。……ただし、許可されにくい。

 ――

 太陽光パネルを全面的に敷き詰めるのでなく、半分ぐらいの面積で敷き詰める。(縞模様ふう)
 そうすると、太陽が移動するにつれて、日向や陰となる場所も変わる。時間的に5割ぐらいの時間で、光が当たることになる。それでも、土地の面積は半分にはならない。結果的には、収量は半減にはならず、かなり多くの収量を見込める。
 一方、太陽光パネルは、半分の面積に設置するわけだが、設置料が半分で発電量が半分だから、コスト的には損も得もしない。単に規模が半分になるだけだ。
 結果的には、「農業も太陽光も半分ずつ」というのよりも、良い結果が得られる。質的には向上していることになる。なかなか頭のいい方法だ。

 実際、これを「素晴らしい」というふうに報じる記事がいくつもある。
  → 間伐材で給湯、太陽光パネルのすき間で有機農業 市民の再エネ活用策:朝日新聞
  → 脱炭素、問われる基本計画 カギ握る再エネ、電気代アップの可能性も:朝日新聞
  → 新電力: 発電事業者 耕作放棄地にパネル:朝日新聞
  → 岐阜)電気設備会社がキクラゲ栽培 加工品も販売へ:朝日新聞


 ――

 だが、私が特に注目したいのは、次のことだ。
 「この方法ならば、農地転用の許可が出やすいので、現状の方針(農地では太陽光発電を禁止すること)よりも、太陽光発電を設置しやすい」

 こうして、現状の方針(農地では太陽光発電を禁止すること)の枠外に出やすい。大きな問題が解決されやすいことになる。

 では、それでめでたしめでたしか? いや、そう甘くはないようだ。「ソーラーシェアリングならば太陽光発電が認められる」という原則が成立すればいいのだが、一般には成立しにくいようだ。「全面禁止」が「ほぼ禁止」に変わるぐらいであって、「例外的にはソーラーシェアリングが認められることもある」というぐらいであるようだ。たいていの場合には、申請しても却下されるらしい。
 その根拠は、下記ページだ。
§ ソーラーシェアリングは難しいのか?

一時転用となるため、原則3年ごとに再申請が必要。

基本的な考え方としては、「太陽光パネルを設置するために下部の農地で営農する」ではないのです。
あくまでメインは農地本来の使用目的としての「営農」であり、その営農に影響が出ない範囲で、特別に「上部での発電」が許されるのだと考えてください。

せっかく立てたパネルをたった3年で撤去して、元の農地へと原状復帰しなければならなくなった場合には、致命的な損失を出すことになりかねません
したがって、表題に答える形をとるならば、シェアリング制度を用いた営農型一時転用は「非常に難しい」と言わざるを得ません。
( → ソーラーシェアリング - 農地転用・ソーラーシェアリング申請サポートセンター

 これは行政書士による宣伝のページだ。だから話がちょっと厳しい方に誇張され気味ではある。とはいえ、大きく違うわけでもあるまい。
 下記ページでも同様の話がある。
  → 営農型(ソーラーシェアリング)と農地転用型の違い|営農型太陽光情報提供システム.com

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 結局、「ソーラーシェアリング」ということで、現状の「太陽光パネルの設置禁止」という方針には、風穴が空いた感じだが、現状ではまだまだ普及には遠いと言えるだろう。
 太陽光発電を推進したいのであれば、現行の「太陽光発電を禁止する」(農地転用の不許可)という自己矛盾した政策を、何とかする必要がある。

 特に、耕作放棄地が問題だ。「耕作放棄地でこそ、太陽光発電を推進するべきだ」と言えるはずだ。なのに現状は、「ソーラーシェアリングを認めるのは、あくまで営農の農地であり、耕作放棄地は駄目だ」となる。つまり、「現在営農中の農地では、太陽光発電を許可するが、未利用の耕作放棄地では太陽光発電を禁止する」ということだ。「ソーラー不適地では許可するが、ソーラー適地では許可しない」ということだ。これでは本末転倒だろう。現状の方針を改める必要がある。
 
 ※ ついでだが、朝日新聞の記事は、こういう現状をまるきり無視して、「耕作放棄地でソーラーシェアリングをするのはすばらしい」という称賛を書いている。「耕作放棄地でソーラーシェアリングが自由にできる」と思い込んでいる。現状の問題(原則禁止)をまったく理解できていない。
  → 新電力: 発電事業者 耕作放棄地にパネル:朝日新聞



 【 関連サイト 】

 参考記事。(たいした情報ではないが。)
  → ソーラーシェアリングの魅力 - 神奈川県ホームページ
  → 農業における「ソーラーシェアリング」とは 農業・エネルギー双方の課題解決のための期待 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」
posted by 管理人 at 22:47 | Comment(0) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
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