太陽光発電をうまくやっている事例がある。農地の空中に太陽光パネルを設置して、その下では農作物をつくる、という併用の方法だ。……ただし、許可されにくい。
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太陽光パネルを全面的に敷き詰めるのでなく、半分ぐらいの面積で敷き詰める。(縞模様ふう)
そうすると、太陽が移動するにつれて、日向や陰となる場所も変わる。時間的に5割ぐらいの時間で、光が当たることになる。それでも、土地の面積は半分にはならない。結果的には、収量は半減にはならず、かなり多くの収量を見込める。
一方、太陽光パネルは、半分の面積に設置するわけだが、設置料が半分で発電量が半分だから、コスト的には損も得もしない。単に規模が半分になるだけだ。
結果的には、「農業も太陽光も半分ずつ」というのよりも、良い結果が得られる。質的には向上していることになる。なかなか頭のいい方法だ。
実際、これを「素晴らしい」というふうに報じる記事がいくつもある。
→ 間伐材で給湯、太陽光パネルのすき間で有機農業 市民の再エネ活用策:朝日新聞
→ 脱炭素、問われる基本計画 カギ握る再エネ、電気代アップの可能性も:朝日新聞
→ 新電力: 発電事業者 耕作放棄地にパネル:朝日新聞
→ 岐阜)電気設備会社がキクラゲ栽培 加工品も販売へ:朝日新聞
《「石炭火力を廃止できない日本の事情や削減の取り組みを説明していくしかない」。COP26に向け、環境省幹部はそう話すが、国際舞台でどれだけ理解が得られるかは分からない》脱炭素、問われる基本計画 カギ握る再エネ、電気代アップの可能性も:朝日新聞デジタル https://t.co/glCT8h8WnM
— 朝日新聞環境取材チーム (@asahi_kankyo) October 25, 2021
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だが、私が特に注目したいのは、次のことだ。
「この方法ならば、農地転用の許可が出やすいので、現状の方針(農地では太陽光発電を禁止すること)よりも、太陽光発電を設置しやすい」
こうして、現状の方針(農地では太陽光発電を禁止すること)の枠外に出やすい。大きな問題が解決されやすいことになる。
では、それでめでたしめでたしか? いや、そう甘くはないようだ。「ソーラーシェアリングならば太陽光発電が認められる」という原則が成立すればいいのだが、一般には成立しにくいようだ。「全面禁止」が「ほぼ禁止」に変わるぐらいであって、「例外的にはソーラーシェアリングが認められることもある」というぐらいであるようだ。たいていの場合には、申請しても却下されるらしい。
その根拠は、下記ページだ。
§ ソーラーシェアリングは難しいのか?
一時転用となるため、原則3年ごとに再申請が必要。
基本的な考え方としては、「太陽光パネルを設置するために下部の農地で営農する」ではないのです。
あくまでメインは農地本来の使用目的としての「営農」であり、その営農に影響が出ない範囲で、特別に「上部での発電」が許されるのだと考えてください。
せっかく立てたパネルをたった3年で撤去して、元の農地へと原状復帰しなければならなくなった場合には、致命的な損失を出すことになりかねません。
したがって、表題に答える形をとるならば、シェアリング制度を用いた営農型一時転用は「非常に難しい」と言わざるを得ません。
( → ソーラーシェアリング - 農地転用・ソーラーシェアリング申請サポートセンター )
これは行政書士による宣伝のページだ。だから話がちょっと厳しい方に誇張され気味ではある。とはいえ、大きく違うわけでもあるまい。
下記ページでも同様の話がある。
→ 営農型(ソーラーシェアリング)と農地転用型の違い|営農型太陽光情報提供システム.com
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結局、「ソーラーシェアリング」ということで、現状の「太陽光パネルの設置禁止」という方針には、風穴が空いた感じだが、現状ではまだまだ普及には遠いと言えるだろう。
太陽光発電を推進したいのであれば、現行の「太陽光発電を禁止する」(農地転用の不許可)という自己矛盾した政策を、何とかする必要がある。
特に、耕作放棄地が問題だ。「耕作放棄地でこそ、太陽光発電を推進するべきだ」と言えるはずだ。なのに現状は、「ソーラーシェアリングを認めるのは、あくまで営農の農地であり、耕作放棄地は駄目だ」となる。つまり、「現在営農中の農地では、太陽光発電を許可するが、未利用の耕作放棄地では太陽光発電を禁止する」ということだ。「ソーラー不適地では許可するが、ソーラー適地では許可しない」ということだ。これでは本末転倒だろう。現状の方針を改める必要がある。
※ ついでだが、朝日新聞の記事は、こういう現状をまるきり無視して、「耕作放棄地でソーラーシェアリングをするのはすばらしい」という称賛を書いている。「耕作放棄地でソーラーシェアリングが自由にできる」と思い込んでいる。現状の問題(原則禁止)をまったく理解できていない。
→ 新電力: 発電事業者 耕作放棄地にパネル:朝日新聞
【 関連サイト 】
参考記事。(たいした情報ではないが。)
→ ソーラーシェアリングの魅力 - 神奈川県ホームページ
→ 農業における「ソーラーシェアリング」とは 農業・エネルギー双方の課題解決のための期待 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」