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前項では、「人類全体の存亡を賭金とするポーカーをやるべきではない」と述べた。（比喩だが。）
これは、ポーカーに参加した人にとっては、「相手が勝負をしようとしたときに、勝負をするな」ということだから、「勝負を降りろ」ということである。そして、勝負を降りたなら、一定の金を失うことになる。
しかしそれは、「ロシアの脅しに屈した」ということにもなりそうだ。
すると、それに反発する人が出てくる。
「ロシアの脅しに屈すると、ロシアが付け上がるから、ロシアに屈服するべきではない」
というふうに。たとえば、前項の WSJ の社説がそうだ。
だが、このような主張は、妥当ではない。それは、ポーカーのことを何も知らないでポーカーのことを論じているのも同然だ。無知の極みと言える。
仮に、このような人がポーカーをやったら、大損して破産するだろう。勝ち方を何も知らない素人だからだ。
そこで、私がポーカーの基本を教えよう。
ポーカーでは、相手が１万円を賭けたとき、こちらが取る手は３通りだ。
・ コール
・ レイズ
・ フォールド
コールは、「勝負に応じる」という意味であり、自分も１万円を賭けて、カードを見せ合う。それで勝負が決まる。
レイズは、相手の２倍以上の金を示して、掛け金を吊り上げることだ。たとえば、賭金を５万円にアップする。相手は、それに応じてコールしてもいいし、さらにレイズして 10万円にアップしてもいいし、勝負を降りてもいい。（勝負を降りた場合には、それまでにレイズした分は没収される。）
フォールドは、相手の１万円に対して、最初から勝負を降りることだ。この場合は、参加料としての少額を払うだけで済む。たとえば、500円を払って、勝負を降りる。ただし、いったんレイズをしたあとでフォールドをした場合には、それまでに自分がレイズした分の賭金を失う。
さて。相手が高い金額を賭けた場合には、どうか？ 相手は本当に強いカードをもっているか、実はただの脅しであるか、はっきりとしない。よくわからないまま、自信がなくてフォールドすると、賭金を失うので、「脅しに屈した」ことになる。それは避けるべきことか？
いや、違う。実は、ポーカーで最も多くなされる手は、フォールドである。つまり、たいていの場合には、人は最初から勝負を降りる。なぜなら、たいていの場合は、弱いカードしか配られないからだ。そういう場合には、勝負を降りるのが賢明だ。ただし、たまには強いカードが配られるから、そのときにはレイズをして、掛け金を吊り上げるといい。
さて。今回はどうか？ プーチンがいきなり賭金を１億円に吊り上げた。この場合、コールをするには１億円を賭ける必要があるし、レイズをするには２億円以上を賭ける必要がある。
ここで素人の WSJ 氏が言った。「フォールドすることは、脅しに屈することだ。そんなことをやっては駄目だ」と。しかし、そう言われても、自分の手持ちのカードは、とても自信を持てるような強いカードではない。一方、プーチンの方は自信満々である。
こういうときには、相手の手持ちのカードがわからないのだから、「フォールド」を宣言して、500円を払うのが賢明だ。すると、WSJ 氏は「 500円をみすみす失うなんて、愚の骨頂だ。馬鹿野郎」と口を極めて罵るだろう。しかし、それを甘受するべきだ。
そのあと、勝負をやめて、おたがいのカードを見せ合うといい。そこには、こう書いてあるはずだ。
・ ロシア …… 本格的な戦争も覚悟。核戦争も覚悟。
・ 米国 …… 通常兵器の限定的な戦いの予定だが、核攻撃には報復。
このとき、「米国がコールをしていたら、第三次世界大戦が発生していた可能性が高い」とわかるはずだ。そして、「やたらとけしかける WSJ 氏の言う通りにしないでよかった。おかげで 500円だけの損失で済んで良かった」と胸を撫で下ろすはずだ。
結局、ポーカーにおいては、「勝負を降りる」というのが、最も標準的な手法なのである。そういう手法を取る参加者だけが、ポーカーで儲かる。「相手の脅しに屈してはならない」なんて思っている参加者は、いつかは全財産を失うはずだ、と思った方がいい。
（ ※ とはいえ、人類はそれに気付いていない。だから人類は、ひたすら破滅に向かって突き進む。）
【 関連サイト 】
NHKスペシャルドラマ「倫敦ノ山本五十六」
— 風来かげほうしR (@tohokueaglesed1) December 30, 2021
香取慎吾演じる山本五十六が交渉相手と私的にポーカーに興ずるシーンが印象的でした
実際の山本司令長官もポーカーが強かったとの逸話が有るようですし
