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実は、「ロシアに屈するべきか否か」という質問自体がナンセンスである。問題はそこではないのだ。
いきなり結論を言おう。こうだ。
「このような小さな争点で、人類全体の存亡を賭金とするポーカーをやるべきではない」
つまり、「狂気のギャンブルをやめろ」ということだ。道理を通すかどうかという問題ではない。自らの存亡を賭金としたギャンブルをやるべきではない、ということだ。
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上のことは、昔の歴史と比較するとわかる。
山本五十六は「日本の存亡を賭金としたギャンブルをやるべきではない」とわかっていた。だから軍縮交渉では、軍縮をまとめて、戦争を避ける道を求めた。……しかし、日本の本国の首脳は、それを否定して、交渉決裂を選んだ。このとき、日本の存亡を賭金としたギャンブルに踏み切った。その結果は、「負け」だった。
「日本の存亡を賭金としたギャンブルをやるべきではない」ということを、当時の日本の首脳は理解できなかったのだ。
キューバ危機ではどうだったか? ここでも、「人類全体の存亡を賭金とするギャンブル(ポーカー)」がなされた。双方は相手の手持ちのカードが何であるかもわからないまま、ポーカーを続けた。特に米国は「相手の手持ちのカードはすごく弱い」と楽観していた。しかしそれは完全な誤認だった。
もし最終的に、勝負がなされていたなら、どうなったか? 米国本土には核ミサイルが来襲し、報復の核ミサイルがソ連を攻撃し、その報復の核ミサイルがヨーロッパに来襲していた。人類は滅亡していた。しかし、ヨーロッパ人はそのことに気付かず、キューバ危機を「対岸の火事」と見なしたまま、平然としていた。自分たちの存亡が賭金となっていることにすら気付かなかった。
最終的には、ポーカーは途中で停止した。その理由は、ケネディとフルシチョフが賢明であったからだ。彼らは「ポーカーをやめる」という決断をした。だから人類は、今も存続している。
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ひるがえって、今はどうか? 「人類全体の存亡を賭金とするポーカーをやるべきではない」と唱えているのは、世界中でただ一人、私だけだ。多くの人々は、「人類全体の存亡を賭金とするポーカーをやっている」ということにすら気付いていない。
かわりに何をしているかというと、「民主主義の理想のために筋を通そう」というようなことを主張している。たとえば、バイデンがそうだ。
日本のマスコミでも、同様の主張が多い。
ロシアがやっていることは、国際法が禁じる武力による威嚇にほかならない。
国連憲章は、他国の領土や政治的独立を脅かす目的での武力による威嚇を禁じている。2度の大戦を教訓にした戦後国際秩序の基本ルールだ。
ロシアはすでに憲章の精神を踏みにじっている。
各国には安保政策を自ら決める権利がある。他国の主権を勝手に限定するプーチン氏の対外姿勢は到底容認できない。
( → (社説)ウクライナ危機 ロシアの主張は通らぬ:朝日新聞 )
米欧の軍事同盟であるNATOへの加盟は、各国が自由な意思で選択し、NATOが受け入れるかどうかを決めるのが筋である。ロシアの要求は、ウクライナの主権をないがしろにするものだ。
( → ウクライナ緊張 ロシアの侵攻防がねばならぬ : 社説 : 読売新聞 )
どこがNATOに加盟するかを決めるのは常にNATOと加盟を希望する国々であり、ロシア政府ではない。プーチン氏に拒否権を与えれば、戦争を始めると脅すだけで欧米諸国を屈服させることができると、報復主義の政権に示すことになる。
( → 【社説】ウクライナが米国にとって重要な理由 - WSJ )
いずれも、ウクライナにおける「国家の主権」を尊重せよ、と主張している。なるほど、いかにももっともらしい理屈である。
しかし、その理屈を言うなら、それは自らを切る刃ともなる。
・ キューバ危機のときに、キューバが核ミサイルを配備できる。
・ 現在の北朝鮮は、核兵器を持てる。
・ 現在のイランは、核兵器を持てる。
これらのいずれも、「国家の主権」として尊重されることになる。少なくとも、核兵器の配備を理由に、その国を制裁することはできない。仮にそんな理屈が成立するのなら、米国・英国・フランスをも「核兵器の配備」を理由に、制裁することになる。インド・パキスタン・イスラエルも同様だろう。
ではなぜ、キューバ・北朝鮮・イランは、「核兵器の配備」を禁じられたか? なぜ国家の主権を制限されたか? それは、「他国の脅威」となるからだ。これらの国が「核兵器の配備」をしたら、その攻撃対象国には、とんでもない危険が生じる。だからそれを予防するために、「核兵器の配備」を禁じる。そのためには、「国家の主権」は制限される。
同様のことを、ロシアも考えた。「ウクライナの NATO加盟」は、「核兵器の配備」にも似た感じで、「自国の存亡を脅かす脅威だ」と認定した。現実にそうであるかどうかは議論の余地があるが、少なくともロシアは、そう認定した。「ウクライナの NATO加盟」の前に、「自国の存亡を賭金とするギャンブル」に踏み切った。
ここで、西側がギャンブルに応じれば、「人類の存亡を賭金とするギャンブル」が成立する。どっちが勝つかはわからないが、いずれにせよ、第三次世界大戦が勃発しかねない。
西側がギャンブルに応じれば、どうなるか?
・ 米国がウクライナの NATO加盟を認める
・ ロシアが反発して、ウクライナに侵攻する
ここまでは、必然的に発生する。そして、そこから第三次世界大戦までの道は、ごく短い。たかがキューバ危機ですら、第三次世界大戦は発生直前まで行った。今回は、よりいっそう、第三次世界大戦に近づきそうだ。
だからこそ、私は唱える。
「このような小さな争点で、人類全体の存亡を賭金とするポーカーをやるべきではない」
と。
ウクライナが NATO に加盟するかというのは、人類全体にとってはあまりにも小さな問題だ。そんな小さな問題で、人類全体の存亡を賭金とするポーカーをやるべきではないのだ。
世界には、もっと大きな争点がある。
・ ウイグルでの大量虐殺
・ アフリカでの大量虐殺(エチオピアやスーダン)
・ 地球温暖化による大被害
こういう大きな問題があるのだから、そっちに注目するべきなのだ。
なのに、あまりにも小さな問題で「譲れない」と意地を張ったあげく、人類全体の存亡を賭金とするポーカーをやる。狂気の沙汰だ。
山本五十六は、日本軍の暴走を止めることはできなかった。かくて日本は、破滅が必然のギャンブルに踏み切った。
人類もまた、同じ道をたどるのだろうか? それを決める分水嶺となるのが、今という時点だ。そして、たいていの人は、自らがギャンブルをしていると理解しないまま、我を張って、ギャンブルに進もうとしている。そのことは、社説を見ればわかるだろう。
人類は滅亡への道を、ひたすら真っ直ぐに進んでいるのだ。
( ※ なぜ人々は間違うか? 「自分と相手の、どちらが正しいか」という対立的な視点をとるからだ。そのとき、「両者を俯瞰する」というように、「高いところから人類全体を見下ろす」という視点がない。それは、歴史的な視点がない、ということでもある。だから人類は、愚かな大戦争を何度も繰り返すのだ。)
[ 付記 ]
たとえ話。
大阪 「大阪は、カジノ推進に向かって、ひたすらまっしぐらに進みます」
国民 「大阪人は、ギャンブル好きで、アホやなあ。ひたすら大阪自滅に向かっているぜ」
世界 「世界は、人類の存亡を賭金としたギャンブルをやります」
大阪 「世界は、ギャンブル好きで、アホやなあ。ひたすら人類滅亡に向かっているぜ」
【 関連サイト 】
ウクライナ危機の情勢の最新情報。本項の主張とは関係なくて、ただの情報である。
→ ウクライナ危機の深層、米欧とロシア長年の反目 最悪のシナリオは:朝日新聞
→ ウクライナ危機、根深い確執 NATO加盟阻止狙い、ロシアが軍事圧力:朝日新聞
【 関連項目 】
本項以前の4項目を、あらかじめ お読みください。この4項目が前提となっています。(降順:古いものが下)
→ ロンドンの山本五十六(NHK)
→ キューバ危機と第三次世界大戦
→ ユーゴスラビア紛争の教訓
→ ウクライナ危機には? 1
【 参考 】
「ロシアに屈するべきか否か」という質問にも、ちゃんと答えてくれ……という要望がありそうだ。そこで、これについては、次項で答える。
→ (補足)ポーカーの初歩: Open ブログ
相手の脅し(ブラフ)にどう応じるべきかについては、脅し(ブラフ)を扱うゲームであるポーカーで詳しく考えられている。そこから知見を得られる。

は日本の問題ではなく、小国の集まりの欧州の問題だから影響があるのですが、
そのことも記すべきかと。
しかもそのロシアの背中を押しているのは中国であることも
以下余談ですが;
ロシアは中国が台頭するまでは大国でしたが、それは影響力があったから。
今も欧州小国には大国ですが、日本に対しては対等程度、
ガス供給は多大。
ましてや、中国米国に対しては既に小国。
かつての人口田のウクライナや欧州近隣のソ連分国は既に独立
もともと、何故ソ連に属していたのかもイマイチな国々、
要はソ連やロシアの存立そのものが露呈してきている昨今、北朝鮮も然り。
その本来も記すべきかと
当て字の露西亜ですが、何故シベリアや極東までロシアだったのか、
そういうことも今後はロシアの離散にはなっていく可能性も
西アジアって当て字はなかなか意味深、併合を続けたインチキ小僧ってとこ
マッカーサーが白豚と言い放った所以かと
それでも欧州には大国にさせしめている。のが、欧州の浅はかなところかと
日本はバカ正直すぎるということでもあるかと
余談でした
言い得て妙だと思います。
が、そういうことをやっちゃうのが「種としての人類」なのかも知れません。
科学技術の進展とともにエスカレートする一方で。
「叡智」なんてものは、大して進歩していない。
むしろ退化している。そんな感じかも。
勝ち負けが半々の見込みだとギャンブルでしょうが
猪瀬の「昭和16年夏の敗戦」で分かるようにほぼ真珠湾に出向いたら100%に近い若手キャリアが導き出した3年半後の日本お手上げ。
政府も馬鹿じゃないから当時の工業国の世界、1,2を相手にするのは外せれば外したいでしょ。
やはり、今と同じで敵国スパイに、情報抜かれまくりでやられ放題だったのかな海軍連中。
日本だってかつて漢,隋、唐の間に高句麗、百済、新羅を任那、馬韓,伽耶の日本の植民地または本国そのものを通して味方につけて緩衝としたかったはずですから。
第二次大戦はポーランドがそのようにないりましたよね。
敵国陣と直接接したくないですからね。
トランプだって金正恩を資本主義国に組み入れて核弾頭をアメリカではなく中国に向けたかったはずですよ。
政府は常に馬鹿ですよ。コロナのさなかに GoTo をやって感染者を急増させたのは記憶に新しい。アメリカでは選挙が出たあとで「選挙は無効だ」と大統領が言い張って、「国会を襲え」と煽動した。イギリスでは首相が「マスクは不要だ」と言い張って、感染者を急増させた。日本では専門家が「マスクは不要だ」と言い張って、安倍首相が「マスクは必要だ」と言ったときに、ようやくマスクをするようになった。日本人がマスクをするようになったのは安倍首相のおかげなのに、「アベノマスクはけしからん」と言って、安倍首相を批判している。アベノマスクのおかげでマスクをするようになった経緯を忘れて、最初から自分たちがマスクをしていたと思い込んでいる。
政府も国民も馬鹿ばかり。今だって第三次世界大戦に足を突っ込みかけていると、誰も気付かない。
> 当時の工業国の世界、1,2を相手にするのは外せれば外したい
なぜそうしなかったのか? そのことをちゃんと理解しましょう。山本五十六のドラマを見ればわかるが、当時の日本は不平等条約をどうしても許せないという雰囲気だった。ではなぜか……というところまで、考えましょう。
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次項のポーカーの話も参照。
手持ちのカードが弱くても、相手のカードが見えないまま、強気一辺倒になる人はいる。「大和魂があれば勝てる」というふうに思い込んで。
菅首相は、そういうタイプだった。強気一辺倒で突っ込んで、惨敗した。
旧日本軍が賭けたのは「皇国の興廃」だった。対象は日本だけだったし、国民の命でなく国家体制を賭けただけだった。
現代人が賭けているのは「人類の存亡」だ。対象は世界中の全体だし、国家体制でなく人類の命すべてを賭けている。
どっちが馬鹿であるかは、言うまでもない。オール・オア・ナッシングぐらいの差で、現代人の方が圧倒的に馬鹿であろう。