2022年01月16日

◆ トンガに飛行艇を派遣せよ

 トンガとの間で、通信や交通が遮断しているので、日本政府は飛行艇を派遣するべきだ。

 ――

 トンガとの間で、通信が遮断している。いまだに状況が伝わってこない。海底ケーブル(光ファイバー)が損壊したようだ。( → 前項末)

 交通も遮断しているようだ。火山の噴火で飛行機が飛べなくなるのは、常である。
 近年大きな被害を与えたのは、島南部の氷河エイヤフィヤトラヨークトルで 2010年に起きた噴火である。上空に広がった火山灰が航空機のエンジンに悪影響を与える懸念により、欧州各国の空港が1週間にわたり閉鎖された。北大西洋航路を中心に、空の交通は完全にまひ。当時パリに勤務していた筆者も、出張先のワシントンで足止めを食らった。
( → (日曜に想う)「地球冷却化」を懸念する人々 ヨーロッパ総局長・国末憲人:朝日新聞

 今回もこれと同様の状態だと推定される。
 ではなぜ、飛行機が飛べないのか? 噴火の塵芥がジェットエンジンを損壊しかねないからだ。レシプロエンジンなら大丈夫かというと、たぶん、もっと駄目だろう。レシプロエンジンのピストンとシリンダーの間に、塵芥が入ったら、エンジンが傷つく。隙間だらけのジェットエンジンよりも、条件は厳しい。
 ただし、塵芥が薄くなれば、飛行機は飛べなくもない。それでも、恐れおののくのは、「エンジンが故障したら、途中で不時着する」というのが、怖いからだ。実際に故障する可能性は1%ぐらいなのだろうが、その1%の事態が起こったときに、不時着するとなると、大変だ。特に、そこが海上であれば、不時着したあとは、やがては沈没しかねない。(しばらくは浮いていられるが。)

 ――

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「日本から飛行艇を派遣する。飛行艇ならば、不時着することになっても、ちゃんと水上に浮かんでいられる。だから、エンジントラブルの危険を冒しても、何とかなる」


 不時着したときに安全に浮いていられるというのは、飛行艇だけの特権だ。
 その飛行艇を備えているのは、世界のなかでも、日本とロシアぐらいだ。世界最強の飛行艇軍団をもっているのが、日本だ。だから、今こそ日本が出て、貢献するべきだ。

 今回の大噴火は、「1000年に1度の規模だとも言われている。
  → 「1000年に1度」の大噴火か トンガで通信寸断、被害把握難航:時事
 こういうときにこそ、日本が出て、世界に情報を伝えるべきなのだ。そのことを提案しよう。


US-2_wiki.jpg




 [ 付記 ]
 派遣に際して、具体的な方法について述べよう。

 まずは性能諸元。
最大速度 - 315kt=M0.47(約580km/h)
巡航速度 - 260kt=M0.38(約470km/h)
航続距離 - 4,700km(約2,500海里)
離水滑走距離 - 280m(43t時)
着水滑走距離 - 310m(43t時)
( → US-2 (航空機) - Wikipedia

 日本とトンガを直通で結ぶことはできない。途中給油は1回では無理で、2回必要だ。適した場所を探すと、次の経路が有望だ。
   日本 ―― グアム ―― ケアンズ ―― トンガ

 この経路なら「航続距離 4,700km」の範囲内で、ゆうゆうと安全に航行できる。





 日本からもっていくべきものは、衛星通信の装置だ。これで国外との通信が可能となる。
 国内のケータイ電話はつながっているそうなので、国内通信は問題ないようだ。
 あと、長波を使うアマチュア無線(ハム)の機械もあるとよさそうな気もするが、さすがにこれは時代遅れかもしれない。

 津波の影響は不明だが、救援物資はトンガの国内で調達できそうだ。日本からもっていくべきものは、特にないだろう。必要なものはあくまで、通信設備としての衛星通信だけだろう。(つまり、破損した海底ケーブルの代替手段となるもの。)
 一般的な物資輸送は、船舶を使うのが妥当だろう。

 緊急的な移送を、飛行艇が担当してもいいかもしれない。(急病人とか、政府の高官とか。)





 ※ これの YouTube のページ を見ると、英語読者による絶賛のコメントが大量に並んでいる。世界的に見て、注目を浴びているわけだ。実際、カッコいいよね。(エンジン音が素敵なので、「ビデオの BGM の音楽が邪魔だ」と不評だ。)



 【 追記 】
 参考記事。2010年のアイスランドの大噴火の時の記事。
Q 空港が閉鎖されているパリでも空は晴れ渡り、火山灰で視界が遮られているようにはみえない。なぜ航空機が飛べないのか。

A 火山灰は上昇気流で地表から6千〜1万2千メートルくらいの上空に運ばれ、大量に浮遊しているとみられる。ジェット旅客機が飛行している高度に当たる。ジェットエンジンに火山灰が入ると高温で灰の成分が溶けてエンジン内部に付着し、最悪の場合はエンジンが止まる。

Q 灰が滞留していない高度を飛行することはできないのか。

A 民間航空機が飛ぶ航路と高度は厳密に定められている。火山灰を避けてより低く飛ぼうとすると気流が安定していないので、長距離を飛びにくくなる。
( → なぜ火山灰で飛行停止?(Q&A): 日本経済新聞

 以上の問題を、飛行艇ならば解決できる。
 (1) 6千〜1万2千メートルくらいが問題なのだから、それより低い高度を飛べばいい。
 (2) 民間航空機ではなく軍用機として、1回限りの運用である。
 (3) 気流が安定しなくても、飛行艇ならば大丈夫。

 飛行艇はもともと低高度をゆっくり飛ぶために設計されている。高高度を高速に飛ぶ民間ジェット機とは設計目的が異なる。今回のような用途には、飛行艇がピッタリだ。

 なお、フィジーでは航空便が乱れたという情報はないので、日本からフィジーまでは何も問題がないようだ。火山灰の影響があるのは、トンガ近辺だけに限定されているようだ。



 【 関連項目 】

 飛行艇の話。
  → 航空による救援活動: Open ブログ
  → カリフォルニアの山火事: Open ブログ

  ※ 本サイトは、飛行艇が大好きで、飛行艇の話がしばしば出てくる。
    紅の豚 じゃないけどね。



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posted by 管理人 at 15:00 | Comment(17) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後のあたりに 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2022年01月17日 12:15
 新明和工業の飛行艇 US-2 は、本稿で紹介されている Wiki にもあるように、ロールスロイス AE2100 というターボブロップエンジン(※)を使用しているので、火山灰(塵芥)に対しては、現在ジェットエンジンの主力であるターボファンエンジンと同じように弱い(飛べない)と思います。

 ※ターボファンエンジン(ジェットエンジン)と同じくガスタービンエンジンの一種で、前方から空気を取り入れ⇒圧縮⇒燃料と混ぜて燃焼⇒タービンを回す⇒後方へ排気、という構造。 ジェットエンジンは、タービンを回した後のガスの後方噴流によって推力を得ます。ターボブロップエンジンは、タービンの動力を前方のプロペラに伝えて、主にプロペラの回転によって推力を得ます。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3


> レシプロエンジンなら大丈夫かというと、たぶん、もっと駄目だろう。レシプロエンジンのピストンとシリンダーの間に、塵芥が入ったら、エンジンが傷つく。隙間だらけのジェットエンジンよりも、条件は厳しい。

⇒ 確かに、燃焼室(シリンダー)内に塵芥が入ったらそうなりますが、ガスタービンエンジンとは違って、エアフィルター(航空機の場合は、自動車に比べて砂埃・土埃にさらされにくいので、金属のネットのようなものが多い)を通した空気を導入するので、むしろレシプロエンジン(ピストンエンジン)のほうが火山灰の中では強いかもしれません。ただし、自動車エンジン用のエアフィルターに比べてかなり目が粗いですし、さらに、高速で飛ぶ飛行機だとそれが塵芥ですぐ詰まるぞ、そうなったら出力が低下したり最悪エンストするぞ、という心配は当然あります。
Posted by かわっこだっこ at 2022年01月18日 10:44
↑すみません、ちょっと話がゴッチャになっていますが、

「飛行機のエンジンは、ターボファンでもターボブロップでもレシプロでも、火山灰(塵芥)には弱い。だから、同じ環境下を飛ぶのなら、万が一不時着してもしばらくは浮いていられる飛行艇が、こういう状況×地理環境(南太平洋)では一番安全。その飛行艇をたくさん持っている日本(自衛隊)が災害派遣すべきだ」

 という趣旨には賛同します。
Posted by かわっこだっこ at 2022年01月18日 10:56
> 同じ環境下を飛ぶのなら、

 そうじゃなくて、火山灰の少ない低高度を飛べる、という意味です。【 追記 】 に書いてある通り。
 さらに言えば、特に海面のそばは、火山灰が少ない。

 あと、火山灰がいっぱいあるさなかを飛べ、という意味ではありません。だんだん少なくなってきているから、濃度が下がるなかで、民間機よりは早い日に飛べるようになる、という意味です。

 仮に現状で空中が火山灰だらけなら、もちろん、引き返します。

 一般的に言えば、引用記事かどこかにあるように、「アイスランド噴火のときには、塵一つないと見えるパリの澄み切った空」の下でも、民間飛行機は(怖がって)飛ぶことができませんでした。そういうときにも、飛行艇ならば飛べる。早めに飛べる。

Posted by 管理人 at 2022年01月18日 11:14
 こういう事態(状況下)で、最も安全に飛べる航空機は「飛行船」でしょうね。内燃機関ではなく、バッテリー駆動(モーター)で長距離を飛べるからです。こういう時こそ、水素燃料電池(FC)を使うと、リチウムイオン電池よりも軽量にできて、コスト面でも有利になる可能性があるそうです。

 https://jp.techcrunch.com/2021/03/02/2021-02-25-sergey-brins-airship-will-use-worlds-biggest-mobile-hydrogen-fuel-cell/

 問題は、飛行速度が遅い(100〜200km/h)ことですが、むしろ遅く飛べることで、火山灰がフロントガラスや機体の表面に張り付きにくいというメリットもありそうです。

 運動性能(取り回し)が悪い、離着陸が大変だという点も、近年のドローンからのマルチコプター技術で、かなり改善がはかれるでしょう。他にも、安全性との兼ね合いですが、気嚢(浮力を得る風船部分)の一部をヘリウムではなく水素に置き換えられれば、より長い航続距離が得られ、また「燃料(エネルギー源)を運ぶ」ということにもなるので、現地でFCモジュールを使って発電して電気を供給することもできます(この水素を運ぶというアイデアは、どこかの記事でみました)。

 私は、3年以上前(最初の記事のセルゲイ・ブリン氏より先)に、水素大好きな某大企業にこのことを提案したのですが、全く相手にされなかったので、最近発売された(MIRAIのシステムを流用した)FCモジュール(下のURLの記事)を使って、自分で試作してみたいなと考えています。

 https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/34799387.html
Posted by かわっこだっこ at 2022年01月18日 11:23
> そうじゃなくて、火山灰の少ない低高度を飛べる、という意味です。【 追記 】 に書いてある通り。

⇒ なるほど、【追記】のところを見落としていましたが、民間のジェット旅客機がふだん高高度で気流の安定したところを飛ぶのは、燃費を抑えて長距離を飛ぶためでしょう。高度6千メートル以下のところを飛ぶのが苦手(不安全)だからという訳ではないのでは(得意でもないでしょうが)。

 逆に、US-2 が、高度6千メートル以下のところを飛ぶのが極めて得意(その高度域での燃費がすごく良い)という訳でもないでしょう。本当に高度数百メートルとか、まさに海面に近いところを飛ばざるを得ない状況はないか、あっても限られる(そこまで酷いときは引き返す)のですよね?

> (3)気流が安定しなくても、飛行艇ならば大丈夫。

⇒ US-2 は確かに強風や荒天に強いと思いますが、日経記事にある「気流が安定しないところ」というのはそういう意味ではないような気がします。

 こういう事態での、US-2のメリットはやはり、万が一の不時着水の時にしばらく浮いていられる点と、かなり遅い速度でも飛べるようなので機体やフロントガラスに火山灰(塵芥)が付着しにくいという点でしょう。
 比較的低い高度で長距離を飛ぶというニーズだけなら、現在主力?の C-130H 輸送機を出せば足りる(US-2 より積載量も多くて航続距離も長い)と思われます。C130H と US-2 をペア(編隊)で出して、安全のために US-2 のほうを先行させる、そして C130H に万が一トラブルが発生して不時着水したら、US-2 がこれを救援するというオペレーションならアリのような気がします。

 https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/yusouki/C-130H/index.html
Posted by かわっこだっこ at 2022年01月18日 12:10
 飛行艇のメリットは他に、滑走路がまだ復旧していなくても、島国のトンガ(とその周辺地域)なら、海に着水して多少の物資を降ろせるという点もありますね。海の上で、大きい物や重い物を降ろすのは難しそうですが、本稿で言及されている衛星通信設備を何式かならば、できるでしょうね。
 US-2 数機で工兵(今は施設科?)隊と道具を送り込んで、まず、空港滑走路の復旧の支援(主に管制設備やレーダーなどの電子機器の復旧)をしてもらう、というのもいいかもしれません。
Posted by かわっこだっこ at 2022年01月18日 12:25
> 民間のジェット旅客機がふだん高高度で気流の安定したところを飛ぶのは、燃費を抑えて長距離を飛ぶためでしょう。高度6千メートル以下のところを飛ぶのが苦手(不安全)だからという訳ではないのでは(得意でもないでしょうが)。

 民間のジェット機は、ターボファンなので、高高度を高速で飛ぶためにできており、低高度を低速で飛ぶには適していません。高度 500メートルぐらいの低空を巡行するのは、無理です。下手をしたら、墜落する。
 US-2 は、ターボプロップなので、低高度を低速で飛ぶのに適しています。ただし、トンガ周辺でだけです。火山灰を避けるために。 一方、日本からフィジーまでは、高高度をやや高速で飛びます。

 結局、ターボファンとターボプロップという違いがあります。あと、機体の形状も影響する。
 ターボプロップの民間機でもいいが、そんなのは退役していることが多い。また、民間人の出番じゃない。危険を冒す災害救助なら、軍人の出番だ。
Posted by 管理人 at 2022年01月18日 13:46
> 民間のジェット機は、ターボファンなので、高高度を高速で飛ぶためにできており、低高度を低速で飛ぶには適していません。高度 500メートルぐらいの低空を巡行するのは、無理です。下手をしたら、墜落する。

⇒ 確かに固定翼機(ヘリではない航空機)には、安全離陸速度「V2」や失速速度「VS」というのがあって、どちらが最低速度かという議論はありますが、下の記事だと、ターボファン旅客機のV2は約300km/hくらい、ターボブロップ旅客機が220〜270km/hだそうです。つまり、ターボブロップのほうが低速飛行が得意という点はそのとおりです。

 https://news.yahoo.co.jp/articles/e3edbd84a09cd40425c8478c19a499aa99ebc4ed?page=1

 いっぽうで、この記事にもあるように、「地表に近ければ近いほど、空気の密度は濃くなります。これにともなって、飛行機の最低対地速度も高度によって変化します。つまり地上から見ると、高度が低いほど、より低速で飛ぶことができるのです」なので、ターボファン旅客機が高度500mを巡航したら墜落するなんてことはありません。
 なお、空港の天候回復待ちや、着陸順番待ちで上空待機飛行(ホールディング)をすることがありますが、この時の旅客機の最低待機高度は、一般に5,000ft(約1,500m)らしいです。しかしこれは、地上建築物を余裕を持って避けるためと、もしエンジントラブルが起きた時に何とか滑空で着陸できる高度だからです。1,500m以下でずっと飛んでいたら墜落するからではありません。
Posted by かわっこだっこ at 2022年01月19日 22:54
 下手をしたら、墜落する、です。
 低空飛行の飛行機やヘリコプターが、山の斜面や鉄塔や電線にぶつかる事故は、ときどきあります。本人は 500メートルのつもりでいても、実際には 200メートルだった、ということもあります。
 そもそも、高度計は、基本的には気圧計であって、電波高度計ではないので、気圧の変化によって、高度の表示には大きな誤差が出ることがあります。
Posted by 管理人 at 2022年01月19日 23:23
 ↑その高度計は、ターボファン機とターボブロップ機とで(または旅客機と軍用機とで)大きく違うのですか? もちろん、高度の測定誤差があった時には、速度の高いターボファン機のほうが不利(地上や地上建築物に衝突しやすい)なのかもしれませんが、両者の最低速度の差はせいぜい2割(80km/h)であることを示しました。

 そもそも私は、
 
 ・飛行艇を派遣せよ←そのとおり
 ・ターボファンよりターボブロップのほうが遅く飛ぶのが得意←そのとおり
 ・まずは、民間機(民間人)より軍用機(自衛隊)の出番だ←そのとおり
 ・ジェット旅客機(ターボファン)が低高度を飛んだら危険←機体が大きくて重いから、エンジントラブルやダウンバーストなどを考えると、必要もないのに低高度に留まるのはかしこくないが、低高度だと墜落しやすいからではない。高高度でジェット気流に乗って巡航したほうが燃費が良くなるから普段はそうやって飛んでいる。

 と言っているだけです。
Posted by かわっこだっこ at 2022年01月20日 00:27
 高度計の差で墜落するのではなく、速度が速いと、間違ったときに修正しにくいということです。
 自動車や自転車よりも歩行の方が、万一のときにぶつからない、というのと同じ。ぶつかりそうになったとき、気付いてすぐに修正できるので。


> 両者の最低速度の差はせいぜい2割(80km/h)

 エンジンによる速度差ではなく、機種による速度差です。US-2 の最低速度は時速 90km ですが、こんなに遅く飛べる民間機はありません。軍用機でも、本機種以外にはありません。(ヘリや VTOL は除く)
Posted by 管理人 at 2022年01月20日 00:50
 「墜落」という言葉が、誤解を招いてまずかったかもしれませんね。「地面や地上構築物にぶつかる・衝突する」というふうに言うべきだったようです。
Posted by 管理人 at 2022年01月20日 01:01
 何度も逆らって申し訳ないのですが、US-2 が 90km/hで飛べる(飛ぶ)のは、離着水の時だけですよ。その時の機体モードは、フラップを最大に下げた(主翼揚力が最大でエアブレーキもかけた)状態で、かつ主翼、尾翼、及び垂直尾翼から圧縮空気を吹きだして、さらに揚力を稼ぐとともに、低速でも舵の効きを保つようにしています(下の記事)。

 http://kettya.com/2013/us-2.htm

 この特別な飛行モードで、巡航できるとは思えません(燃費が莫大になる)。また、いくら頑張って揚力をマックスにしているとはいえ、物理的に失速しやすいのは確かでしょうから、この飛び方は海面スレスレの時にだけ許されるのであって、それで例えば高度500mで陸上を飛べといわれたら、全てのパイロットが尻込みするはずです。

 もちろん、90km/hではないにしても、普通のターボブロップ機よりは遅く飛べるでしょうから、こういう状況で US-2 を派遣することには同意しています。
Posted by かわっこだっこ at 2022年01月20日 01:50
 超低速飛行の動画は、下記に二つ示しています。
  http://openblog.seesaa.net/article/485260494.html

 事例では、海面に対して高度 10メートルぐらいの飛行も可能です。(着水なしで。)

 速度が遅くできると、そこまで低高度まで下がれるわけです。
 実際にそこまでやる必要はないのですが、相当に、低速度・低高度の接近が可能になります。まるでヘリコプターみたいだ。
Posted by 管理人 at 2022年01月20日 07:35
 政府の対応が報道された。以下、引用。

 ――

 自衛隊の輸送機と輸送艦を派遣すると発表した。20日にも航空自衛隊のC130輸送機2機が飲料水を積み、トンガに近いオーストラリアに向けて出発する。
 日本政府は国際協力機構(JICA)を通じ、飲料水や火山灰の撤去用具を提供することにしている。高圧洗浄機などの撤去用具などを運ぶため、海上自衛隊の輸送艦おおすみ1隻も派遣することにした。
 https://digital.asahi.com/articles/DA3S15178695.html

 ――

 難点
 (1) 飲料水を日本から運ぶよりは、オーストラリアまでさっさと飛んで、そこで現地の飲料水を積み込む方が利口だろ。日本からオーストラリアまで、ただの水を運ぶのは無駄。どうせなら浄水器でも運べ。

 (2) 輸送艦おおすみは、戦車輸送艦だが、こんなものを日本から運行するのでは、時間がかかりすぎる。いったい、いつ到着するつもりなんだ。一週間後か? オーストラリアのフェリーでも借りる方が早い。
Posted by 管理人 at 2022年01月20日 20:30
 超低速飛行の動画は、既に両方確認していますが、二つのうち上の動画は、「超低速ローパス(上空パス)」といっても、90km/hというわけではなく、150〜200km/hは出ているように見えます。ただ、その速度を普通のターボブロップ機より多少落とせるだろう、という点は認めています。

> 事例では、海面に対して高度 10メートルぐらいの飛行も可能です。(着水なしで。)

⇒ もちろん、着水できるということは、その前に海面に限りなく近づくということです。ただ、そのことは、他の固定翼機(ターボファンを含む)でも同じです。どんな航空機でも着陸はするのですから。そして、どんな機体でも、タッチ・アンド・ゴー(車輪を一度接地させて再び上昇)やゴー・アラウンド(車輪を接地させずに再び上昇)はできます。つまり、普通のターボファン(旅客)機だって、動画のように数分間だけ高度10メートルを飛行することはできます(速度は200km/hくらい)。そして普通のターボブロップ機なら、たぶん速度を150km/hくらいに落としてもそれができるかもしれません。

> 速度が遅くできると、そこまで低高度まで下がれるわけです。

⇒ そこが少し違うと思います。そもそも US-2 が飛行速度を 90km/hに落とせる(落とす)のは、荒れた海面に着水する時の衝撃をなるべくやわらげて、機体を損傷させないためです。ですから、前のコメントで書いたとおり、そのモードでの離着水はかなり無理をしているのです(危険な状態なのです)。それこそ下手をして失速して落ちれば、高度10〜20mで下が海面でも機体は損傷するかもしれません。もし海面が穏やかであれば、90km/hまで速度を落とさずに安全に離着水するはずですし、車輪を出した状態で離着陸するときは、絶対にそんなことはしないでしょう(最低でも150km/hで離着陸する)。
 管理人さんは、「速度が速いと、間違ったときに修正しにくい。だから速度が遅くできると、そこまで低高度まで下がれる」と仰りたいようですが、US-2 が90km/hまで速度を落としている時は、前のコメントで書いたとおり、「失速寸前で、かつ非常に舵が効きにくい」ので、まさに「間違った時に修正しにくい。下手すると墜落する」状態です。しかし、荒れた海面に着水するときはそうしなければならないので、それを想定して、90km/hで高度10mを飛んだり、そのまま着水をしているだけです。   
 一般に、速度が速いときに高度を低くすることは、クルマでいえば車間距離を詰めることに近いので危険かもしれませんが、飛行機の場合は、速度が遅いときに高度を低くすることも別の理由で危険なのです。
Posted by かわっこだっこ at 2022年01月20日 23:38
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