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トヨタと言えば、かんばん方式が有名だ。これは、ジャスト・イン・タイムで生産することで、在庫を減らすようにする方式だ。これによって在庫管理の費用を削減することができて、大幅な黒字を生み出す……というものだ。
ところが、この方式を採用してら、東日本大震災のときに、在庫不足で生産が止まってしまった。一部の部品が欠けただけで、全体の生産が止まってしまった。結局、「小さなコストをチマチマと削っていたら、莫大な損失が発生した」という結果になった。
これを教訓として、トヨタは(特に半導体について)「十分な在庫」と「供給元の多様化」を進めて、災害に強い体制を構築した。
すると、この体制が、(自然災害ならぬ)コロナ禍という状況において、十分な効果を発揮した。同業他社が「半導体不足」に悩んで大幅減産するなかで、トヨタだけは増産できて、とうとう米国市場で1位になってしまったそうだ。
2021年の米国での新車販売台数で、トヨタ自動車が米ゼネラル・モーターズ(GM)を上回り、初めて年間首位となった。半導体不足による生産減で、GMや米フォード・モーターが販売台数を前年から大きく減らした一方、トヨタは増やして逆転した。
( → トヨタ、米国での新車販売台数が初の首位に GMが90年ぶりの陥落:朝日新聞 )
半導体の調達力の成否が、差につながった。
半導体不足からGMは長期間にわたり大幅減産を強いられた。しかし、トヨタは比較的小さい規模の減産で済んだ。
半導体への対応の転機は、東日本大震災での経験がきっかけだ。
半導体は発注から供給まで通常は半年ほどかかるとされ、すぐには調達できない。
トヨタにとって本来は「在庫は悪」だ。だが、東日本大震災の危機をへて、半導体は例外的に有事に備えて、数カ月単位で手厚く在庫を持つ手法に切り替えた。グループの部品メーカーにも同じ手法を促した。半導体そのものの調達先も分散して、リスク回避を重視した。
( → トヨタ、米国販売でGM超え 「3.11」機に身につけた危機対応力:朝日新聞 )
はっきりとは書いていないが、これは「かんばん方式」「ジャスト・イン・タイム方式」とは逆の方式である。これが大きな成果をもたらしたわけだ。
[ 付記1 ]
ちなみに、日産は「ゴーン方式」で、「コスト削減が最優先」であって、「供給の安定性」のためには何の努力もしなかった。そのせいで、日産の減産幅は業界でも最大級であり、日産の収益性も業界で最悪級だった。( 2020年のコロナ禍による 2021年3月期決算)
→ 日本の自動車メーカー、2021年3月期(2020年度)決算状況
※ 実は、最悪は三菱で、日産はそれに次ぐ。だが、三菱は弱小メーカーなので、無視してもよさそうだ。
[ 付記2 ]
トヨタの「かんばん方式」については、私は前に批判したことがある。
「公共財である道路を私物化して、道路を倉庫代わりに使っている。そのせいで、一般住民が大迷惑をこうむっている」
という趣旨。詳しくは下記。
→ トラックの路駐で迷惑: Open ブログ
「トヨタもようやくそれをやめるようになったのか。よかった」
と思う人もいそうだが、さにあらず。「かんばん方式」をやめたのは、半導体だけだ。他の部品では、今も変わらず、かんばん方式をやっている。そのせいで、住民の大迷惑は解決していない。
※ トヨタの かんばん方式は、「コストの削減」「無駄の削減」というふうに説明されることが多いが、本質は「公共財を盗んでいること」である。つまり、「自分は利益を得るが、その分、他人(社会一般)の利益を減らしていること」である。
その本質は、泥棒と同じである。普通の泥棒は、1個の私人から利益を盗むが、トヨタは社会全体から少しずつ大量に盗む。だから、発覚しにくいだけだ。
「社会から利益を盗む泥棒は禁止」という法律ができたら、「盗んで金儲けする」というトヨタのビジネスモデルは、もはや成立しなくなる。(……ま、日産はもっとひどいんだけどね。)
[ 付記3 ]
別途、「高速道路の SA の駐車場が、深夜にトラックで満杯になる(あぶれるほどだ)」という問題も生じている。
この件は、前に紹介したことがある。
→ 高速道路の充電所が不足: Open ブログ
上記項目の最後で、動画とリンクを紹介している。
※ トヨタのせいではなく、かんばん方式のせいだろうが。
(誤)世界1位
(正)米国市場で1位