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EV では、寒冷地の暖房や温度調整が大変だ。次の二点で。
・ 暖房(空調)に電気を使うと、電気の使用量が増える。
・ 極寒状態では、バッテリーが凍結するので、加熱が必要。
この二点の問題があるので、通常、EV は寒冷地には適さない。むしろ PHV の方がいい ……と前項で述べた。
→ 雪と エンジン車・EV: Open ブログ
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ところが、この問題を先進的なハイテク技術で解決してしまおう……という技術開発がなされている。テスラの TMS (サーマルマネジメントシステム)だ。
これまでのEVの暖房と言えば、筆者がEV開発に携わっていた時代は、PTCヒーター方式であった。当時は、外気温が低いときに暖房性能や防曇機能を確保しようとすると、短時間で暖房可能な方式ではPTCヒーターが一番即効性があった。しかし、PTCヒーターは暖房の即効性には優れているものの、多くのエネルギーを消費する。最悪の場合、EVが持つバッテリーのエネルギーを半分まで使ってしまうという欠点があった。
テスラは2020年発売の「モデルY」に対して、これまでと全く異なる暖房方式を採用した。「オクトバルブ付TMS(サーマルマネジメントシステム)モジュール」と呼ばれるものである。オクトバルブは、部品内部に2つの回転弁を内蔵し、コンピュータにより流量を8方向に差配できるシステムである。これにより、バッテリーやe-Axle(モーターやインバータ、トランスミッションを1つにまとめた部品)からの排熱を利用できるようにするとともに、極寒時はバッテリーが凍っているため、暖気を送り解凍を早めることができるなど、多彩な機能を備えている。
( → 自動車部品産業にこれから起こる5つの潮流:和田憲一郎の電動化新時代!- MONOist )
なぜEVでサーマルマネジメントが必要なのかを説明したい。EVの場合、一充電走行距離の比較はガソリン車と同様、WLTCサイクル試験法に基づき行うことが多い。しかし、この試験法は外気温の変化や冷暖房なしの条件である。しかし実使用時は、走りに加え、バッテリー、モーター、インバータなどの冷却、ガラスからの放熱、冷暖房などにもバッテリーのエネルギーを使ってしまう。このため、いかに効率良く熱のエネルギー管理を行うかが大切になってくる。これがサーマルマネジメントである。
そのサーマルマネジメントの中でも、最も消費量が大きいのが暖房機能だった。エンジンの排熱が利用できないEVの暖房方法といえば、筆者がEV開発に携わっていた時代は、PTCヒータ方式である。低外気温時に、暖房性能や防曇機能を確保しようとすると、PTCヒータ方式が最も即効性があった。しかし、PTCヒータは暖房即効性には優れているものの、多くのエネルギーを消費するという欠点がある。
さて、筆者が考えるに、現時点で最も革新的かつ優れた方式として、テスラが開発したオクトバルブ付TMSモジュールがある。テスラは2020年発売の「モデルY」から当該システムを採用しているが、最大の特徴は、オクト(ラテン語で8を表す)バルブと呼ばれるユニークな部品にある。この部品は、内部に二つの回転弁を内蔵し、コンピュータにより流量を8方向に差配できるシステムを有している。
筆者が見る限り、このシステムの特徴は主に二つある。一つは、これまで利活用していなかったバッテリーやe-Axle(モーター、インバータ、トランスミッション)からの排熱を利用可能とするとともに、極寒時はバッテリーのみを暖房することができるなど、多彩な機能を有すること。
( → EVの「サーマルマネジメント」が競争激化 先頭テスラを追うのは?【和田憲一郎のモビリティ千思万考3】 | Merkmal )
こういう技術で、極寒の地方でも、EV を使えるようになりそうだ。
とはいえ、使えることは使えても、かなりの電力を食うという根本問題は解決しがたい。「本来は捨てるはずの熱を回収して暖房に使う」という方式には、とうてい及ばない。
やはり、寒冷地では、PHV を使うのが最善だと思える。自動車だけで炭酸ガスを減らしても何にもならないのだ。北電のように大量の石炭発電をしているところでは、かえって炭酸ガスの排出量が増えそうだ。
どうせなら自動車よりも火力発電所で、炭酸ガスを減らす方が利口であろう。
※ とはいえ、テスラの技術が無駄だ、というわけではない。これはこれで、十分に有益である。
トヨタのプリウスも、寒冷地仕様はニッケル水素電池を使っているようです。
https://www.google.com/amp/s/www.webcartop.jp/2016/12/58458/amp/
テスラ以外の各社は、それに対応していない。
素直に PHV を使え、というのが、私の提案。
グランピングでも、家電が使えなくなると即終了だし(笑)