日本の未来を考えるなら、どのような経済政策を取ればいいか?
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前項では、朝日新聞の未来経済論を批判した。
「大量生産・大量消費の経済成長を否定して、外国人労働者や底辺層に優しい社会を築こう。それには職業訓練などの職業教育をすればいい」
という提唱に対して、次のように批判した。
「職業教育などはとっくにやっているわ。ボケ。そんなことで魔法のように社会が好転するわけがないだろうが。自分勝手な夢想もいい加減にしろ。初夢を見ているんじゃない。外国人労働者を大量導入しているせいで、かえって底辺労働者は低賃金になっているんだ。きみたちの提唱する国際化路線こそが、奴隷の大量導入を招いて、日本人の低賃金の元凶となっているんだ。きみたちの提唱は、社会を悪化させるばかりだ」
では、朝日の主張が駄目であるとしたら、かわりにどうすればいいのか? それを述べよう。(困ってないけど。)
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(1) 経済成長
朝日の主張とは違って、経済成長こそが何よりも重要な目標となる。
ここでいう経済成長とは、金額的なものだ。(というか、経済成長というのは、もともと金額でのみ表示されるものであって、物質量の増加を意味しない。前項で述べたとおり。)
歴史的に言えば、経済成長のある社会だけが、持続的に安定した状態を保てる。「鏡の国のアリス」ふうに言えば、
「その場にとどまるためには、全力で走らなければならない」
のである。
朝日の記者は、「今の状態を保てるのであれば、成長などは必要ない」と思っていうようだが、それは誤りだ。成長をなくした国は、今の状態を保つことは出来ず、どんどん没落していくのである。それが今の日本だ。ゼロ成長時代がずっと続いているが、その間、社会の状況は同じ状態が続いているのではなく、非正規雇用の増大という形で、どんどん状態が悪化していった。
「経済成長なんかしなくてもいい」と思った時点で、その社会はどんどん没落していくしかないのだ。
もう少し経済学的に言えば、こうなる。
「社会を安定的な状態に保つには、2%程度の物価上昇と経済成長が必要不可欠である。それをなくすと、社会の状況はデフレ化して、どんどん状況が悪化する」
これは人類の歴史的な知見からすでに明らかになっていることだ。経済学的な常識とも言える。
こういう経済学的な常識を無視して、「経済成長なんか不要だ」とばかりの論調を唱える朝日新聞は、あまりにも経済音痴すぎる。
まずは「経済成長こそ、未来の日本を築く基礎構造なのだ」と理解しよう。これなしには、すべてが瓦解するのである。
※ たとえば、企業がつぶれたとき、失業者が出るが、失業者が路頭に迷わずに再就職するためには、(どの職種でも)求人倍率が1以上であることが必要だ。そのためには、好況であることが必要だ。好況であるためには、経済成長が必要だ。
※ 逆に、経済成長がなければ、失業者を吸収することができないから、倒産する会社の出現にともなって、失業者は困窮する。路頭に迷った人は犯罪に走るかもしれない。こうして社会は不安定化して、どんどん崩壊していく。
※ その意味でも、「その場にとどまるためには、全力で走らなければならない」と言えるのだ。
(2) 少子化の影響
経済成長を実現するには、どうすればいいか? その方法は、正しいマクロ政策を取ればいい。つまり、巨額減税による景気刺激だ。
具体的には、下記サイトに記してある。
→ 理想党
ただし、ここでは言及していないことがある。「少子化」だ。
上のマクロ政策の話は、「人口に変動がなければ」という仮定に基づいた一般論である。(マクロ経済理論)
一方、現実の社会では、人口の変動がある。多少の変動ならば無視してもいいが、今の日本は極端な少子化が進んでいる。
先に別項で示した図を再掲しよう。(クリックして拡大)

別項:日本のマイナス成長はなぜ?
出典:総務省|平成28年版 情報通信白書
これほどにも少子化の進展が急速で大規模だと、たとえ経済成長があっても、それを相殺してしまうほどの効果がある。一人一人の労働者がいくら頑張って全力で働いても、労働者の数自体がどんどん減ってしまうと、問題が生じる。その場にとどまろうとしても、その場にとどまることができなくなるのだ。(いわば流れに逆らって進む船で、漕ぎ手の数が減っていくようなものだ。一人一人がいくら頑張っても、船をまともに進められなくなる。)
つまり、人口が減少すると、いくら経済成長があっても、すべてが崩壊してしまうのだ。話の基盤が満たされないからだ。
少子化だけではない。寿命の長寿化にともなう、高齢人口の増加という問題もある。こうなると、少子化と高齢化のダブルパンチだ。
高齢層はどんどん増えるばかりなのに、高齢層を支える生産人口は少子化で減少する。これでは社会が崩壊してしまう。


出典: 社会保障・税一体改革とは:厚労省(PDF)
(3) 少子化への対策(出生率)
経済成長のためには、人口の維持が必要であり、そのためには少子の阻止が必要だ。
では、そのためには、どうすればいいか? 政府は「保育所の充実」「保育士の優遇」などを公約しているが、それでは焼け石に水である。いったいどうすればいいのか?
その答えは、下記記事にある。
→ 人口増加率日本一になった流山市が話題に - Togetter
流山市の例だが、少子化の阻止に見事に成功している。まるで高度成長期のニュータウンのように、若年人口が急増して、児童数が激増した。小学校を次々と建設してもまだ足りない、といったありさまだ。
では、そのために、流山市は何をやったか? 政策自体は、特に変わったことをいっぱいやっているわけではない。大事なのは、その規模だ。保育所の支援であれ、保育士の支援であれ、そのための金銭的な規模を、とても大規模にした。
たとえば、保育士支援で、給料と別に月額手当が4万3000円も出る。こんなに差があるので、あちこちから保育士が来る。だから保育士不足などは生じない。結果的に待機児童ゼロが実現する。「児童ゼロ? それならば……」というわけで、若い夫婦が大量にやって来る。
こういうことを日本中で(全国規模で)実施すれば、出生率が向上する。かくて、日本全体で少子化を脱することが可能となるだろう。
(4) 少子化への対策(女性労働力)
ただし、それで話は万事解決かというと、そうでもない。出生率の向上には、(経済成長のための)即効性がないからだ。今すぐ出生率が 2.0以上に向上しても、それが現実の生産年齢人口の増加に結びつくには、20年間ほどがかかる。
逆に言えば、今すぐ少子化対策を完璧に実施したとしても、このあと 20年間は、どうしても少子化を避けられないのだ。何をどう対策しても、少子化の問題は原理的に解決不可能なのだ。
困った。どうする?
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。
それは、眠っている「女性労働力」を有効化することだ。
現状はどうかというと、女性労働力が有効に使えていない。なかば無効化されている。なるほど、女性の就業人口そのものは、かなり上昇した。しかし、その労働力が十分に生かされていないのだ。
そのことは、女性の年収を見てもわかる。たとえば、下記記事がある。
→ 妻の年収が250万円でショック
妻の年収が低すぎることにショックを受けた男性の告白が記してある。だが、今の日本では、女性の年収は、この程度であることが多い。(特に非正規の派遣社員ではそうだ。)
次の話もある。
→ 外国人男性が「日本人女性とは結婚するな」と言う理由 | 茂澄遙人
日本人妻は、出産したら退職して、以後は育児に専念し、自分では働かないことが多い。これは日本人女性に特有のことだ。他の諸外国では、女性は出産後もずっと普通に働く。
こういう彼我の差がある。ならば、出産後も女性がまともに働くようにするだけで、女性の労働人口は大幅に高まる。また、ただのパートなんかでなく、正社員としてバリバリに働けば、女性の年収は大幅に高まる。その分、一国の GDP も大幅に高まる。
結局、今の日本では半ば眠っている女性労働力を、十分に活用することで、日本は今後の 20年間も十分な経済成長をすることが可能となるのだ。少子化の弊害を克服する形で。
これが私の提案だ。
※ 「情けは人のためならず」という。女性差別や女性格差をなくすことは、女性のためになるだけでなく、女性を配偶者として家庭を築く男性たちにとっても、とても有益なことなのだ。一家の所得が向上するからだ。今は「貧しいので結婚できない」と嘆いている低所得の男性も、「貧しいからこそ結婚する必要がある」というふうになる。すると、結婚率が向上して、少子化も解消していくだろう。現状はその逆だが。
→ なぜ日本人男性は不幸なのか?: Open ブログ
→ 少子化の原因は意外にも……: Open ブログ
※ 女性の有職率を上げるには、女性の理系の進学率を高めることも大切だ。女性の大学進学率や、理系への進学率が、日本はとても低いからだ。(諸外国に比べて。)……この点については、ググれば情報がいくつも見つかる。女性管理職を登用する率も低い。
→ 女性の進学率
→ 理系で女性の比率
[ 付記 ]
朝日新聞は、口先では優しいリベラルなことを言っているつもりだが、現実には残酷非道なことをしようとしている。
・ 外国人労働者を招くと言いながら、彼らを奴隷化する。
・ 底辺層を優遇すると言いながら、彼らを低賃金化する。
という事例を示したが、さらに、次の事例もある。
・ 中小企業を優遇するといいながら、彼らを蹴落とす。(下図)

別項:中小企業を効率化するには?
口で言っていること(目的としていること)と、実際にやろうとしていること(具体策)とが、正反対である。つまり、自分が何をやろうとしているか、自分で理解できていない。馬鹿の極みだ。
それというのも、経済学的な知識が皆無であるからだ。そのせいで、やろうとしていることとは逆のことをやってしまう。
げに恐ろしきは無知なりけり。
「一日の労働時間が多過ぎて、使える時間が足りないので、夫婦で夜の営みをするための時間がない」
という問題もある。
→ https://togetter.com/li/1826269
これじゃ、少子化になるよね。
確かにその効果はあります。だけど、「だけ」ということはありません。
たしかに流山では、「周辺自治体から子育て世代や保育所難民が流入」する効果があるので、効果が何倍にも増幅されています。
ですが、全国規模でやった場合には、流山市の何分の1かの規模で、いくらかは有効になります。
とにかく、保育所充実のニーズがあることははっきりしているので、ニーズに応えれば、それ相応の効果はあります。流山市ほど劇的ではなくとも。
36協定など見直すべきですね。過労死レベルの過剰労働がまかり通っています。
サービス残業の撲滅や有給休暇の消費強制なども必要でしょう。
あとそもそも非正規雇用による格差も是正すべきでしょうね。
https://comemo.nikkei.com/n/n53754b675cc0
色々と少子化について議論されてますが、多くの学生や若い世代(20〜30代前半)と接する機会が多い中、ネットやマスコミからの情報ではなく「肌」で実感したことは、皆さんお金が無いから結婚しないのではなく(多分、給料が増えても結婚しないし、子供も産まないと思います)、自分ファーストで生きる人たちが凄く増えてるなと…
昔、評論家の宮崎哲弥氏が、「結婚はそのうち趣味嗜好のようなものになっていく」というようなことを言っていましたが、本当にそうなっていてるなと思います。