――
一般的な土木工事とはちょっと違うが、土木技術を用いている事例だ。順に述べよう。
川崎市がけ崩れ実験
《 川崎市がけ崩れ実験15人死亡 事故から50年 なぜ実験は惨事に 》
「人工の雨でがけ崩れを起こす実験をしていたところ、予想を上回る大量の土砂が崩れ落ち、15人が死亡…」
50年前のNHKニュースで、アナウンサーが緊迫した様子でこう伝えた。東京の多摩地区や川崎、横浜の丘陵地帯で相次いでいた土砂災害のメカニズムを解き明かそうと行われた実験が、一転して大惨事になったのだ。
土砂災害を再現して防災対策に生かそうと、実際の斜面に散水ポンプで大量の雨を降らせたのだ。しかし、実験中に予想を超える斜面崩壊が起こり、現場に立ち会っていた15人が犠牲となった。
( → NHK )
土砂崩れの下側で待ち受けていたというのだから、その楽観ぶりには呆れるが、そう思うのは後知恵かもしれない。
実験関係者は「土砂は柵のところまでは来ない」と説明していた。
「実験担当者の間では、崩れないであろうとか、崩れてもその規模は小さいであろうなどの予測が話題になっていたようで、むしろ、崩壊が起こらなかった場合に、見学者達を失望させることを心配しあっていた」
この事故の本質は、「自惚れ」「過信」にある。自分たちは利口だと自惚れていた。だから「想定外のことが起こったらどうなるか」に考えが及ばなかったわけだ。「自分たちは専門家だから、すべてを知り尽くしている」と思い込んで、「判断の前提が狂っていたら」というところまでは考えが及ばなかった。
当初の計画では、数万年以上前に堆積した深い地層の下で、比較的ゆっくり崩壊することが想定されていたとみられている。しかし、実際に崩れた土砂の多くは、実験のわずか4年前、公園内の遊歩道を整備する際に削られた残土「捨て土」だったことがわかった。しかも「捨て土」の存在は、実験地が生田に決まったあとにわかったというのだ。
自惚れた専門家は「自分の判断は正しい」と思い込む。だから、「自分の判断が間違っていたら」ということまでは想定しない。それゆえ、もしそうなったときには、とんでもない被害が起こることもある。
ケースA のことばかりを考えていて、ケースB のことを考えないというのは、自惚れた専門家にはありがちなことだ。
辺野古の軟弱地盤
米軍基地の移設予定地である辺野古には軟弱地盤があることが知られているが、その状況を報じた記事がある。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設予定地である同県名護市辺野古沖。軟弱な地盤が海底に存在することがわかり、移設には地盤改良工事が必要になっている。「マヨネーズ並み」とも言われるが、実際にはどれくらい軟らかいのか。
……
羽田沖の「マヨネーズ層」は最も深い場所で海面下38メートルだったが、辺野古の軟弱地盤は約70メートルに及ぶ。
さらにB26とB28の間にあるB27地点は、防衛省の推定で粘土層が90メートルまで続く。
河野太郎防衛相(当時)は20年5月の国会で、B27地点の軟弱地盤と硬い地盤の境界を深さ77メートルと述べたが、防衛省はこの地点の調査をしていない。
防衛省は70メートルまで地盤改良を行えば足りるとの立場を崩していない。
( → マヨネーズ並み? 沖縄・辺野古沖の軟弱地盤、その軟らかさとは [沖縄はいま]:朝日新聞 )
軟弱地盤があるとわかっているのに、調査をしない。調査をしないまま、「70メートルまで地盤改良を行えば足りる」と述べる。
それじゃ、77メートルまたは 90メートルの軟弱地盤のうち、下方の 7メートルまたは 20メートルは、70メートルまでの地盤改良の範囲外なので、軟弱地盤であるままだ。……こんなことでは、グチャグチャになるのはわかりきったことだ。
――
この事例を見ると、先の「がけ崩れ実験で 15人死亡 」というのによく似ている、と気付く。
失敗がわかっていても、失敗を認めず、あくまで突進する。……いかにも日本的だ。ノモンハン、インパール、八甲田山。これまで何度も起こってきたことだ。
→ ノモンハンとコロナ: Open ブログ
→ ガダルカナルとコロナ: Open ブログ
「謝ったら死ぬ」病かな。自分の誤りを絶対に認めない。自民党政府にはよくある。毎度毎度のことだ。