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日立は風力発電の製造から撤退した。
→ スクープ 日立、風力発電機生産から撤退へ:日経ビジネス電子版
とはいえ、前項で述べたように、風力発電の状況は急激に展開している。コストが劇的に安くなりつつある。同時に、市場規模が急速に拡大している。商機だ。
ならば、日立はこの商機を見逃すべきではない。撤退という形で逃げるべきではない。ヒグマに襲われたわけじゃないんだから、逃げるべきではないのだ。 (^^);
そこで、その方針が問題だ。再参入するとして、どういうふうに再参入すればいいか? その方法が問題だ。
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まず、現状を見よう。
日立は、撤退したあとは、ドイツのエネルコンの風力発電機の販売する方針だ。だが、エネルコンはあまり大きなメーカーではない。ヴェスタス、シーメンス、GE には負ける。
そこで、こう述べた。
シーメンスは国内で提携先を探している。
だったら、日立は(エネルコンを捨てて)シーメンスと提携した方がいいんじゃないの? 知らんけど。
( → 洋上風力を推進すべきか? 3: Open ブログ )
これは無責任な思いつきだ。そこで、もうちょっと念を入れて調べてみた。
エネルコンは世界第4位の風力タービン製造会社であり、ドイツ国内では1990年代以降国内トップのシェアを誇る。
最も導入実績の大きい型はE-40であり、1993年にトランスミッションを使用しない構造の先駆けとして開発された
エネルコンはイギリスの電力企業Ecotricityに対し風力タービンを供給しており、……
エネルコンの革新の中核となるものに、トランスミッションの不使用、環形の電動機と組み合わせて使用されたダイレクトドライブ機構がある。これは他の大多数の風力タービンが電動機の回転速度を挙げるため潜在的に信頼性の低いトランスミッションを使用している点と対照的である。
( → エネルコン - Wikipedia )
これを読んで、ひらめいた!

ヒントは、次の記事だ。
日本メーカーの「お家芸」とも言われる炭素繊維事業が苦戦している。軽くて強く、さびない素材として主に航空機向けに開発されたが、コロナ禍で需要が急減している。一方で、環境問題への世界的な対応強化から、風力発電向けの引き合いが増えている。
炭素繊維は鉄の4分の1の重さで、強度が10倍あるとされる。航空機のほか、自動車部品などに使われる。製造に高い技術が必要で、世界でも日本メーカーの開発が先行。関係者によると、東レ、帝人、三菱ケミカルの日本勢3社が世界シェアの60%ほどを握るという。
急速に需要が拡大しているのが風力発電向けだ。
発電用の風車の羽根は、長い方が多くの風を受けられ効率が高い。しかし、従来のガラスを使った素材などでは強度が足らず、大型化が難しかった。炭素繊維なら可能で、今では長さ50メートルを超える羽根もあるという。さらに再生可能エネルギーの普及など脱炭素に向けた世界的な取り組みの強化も追い風になっている。
( → 「お家芸」炭素繊維に逆風 コロナ影響、航空機生産減 風力発電向けは拡大:朝日新聞 )
炭素繊維の生産では日本は世界一だ。また、炭素繊維を加工して航空機の材料にする点でも、日本は世界でトップといってもいい。(ボーイング B787 の機体を炭素繊維で作っているのは日本企業だ。富士重工業、川崎重工業、三菱重工業。)
こういう状況であるなら、炭素繊維を使った風力発電用ブレードの製造も、日本が担うことができるだろう。(ブレード = 羽根)
日立はどうかというと、日立各社も炭素繊維の研究をしているのがわかる。(ググると、わかる。)
ならば日立が、ここ(炭素繊維を使った風力発電用ブレードの製造)に参入するのも好もしいだろう。
つまり、次の分業だ。
・ エネルコン …… 風力タービン機構の製造
・ 日立 …… 炭素繊維ブレードの製造(空力解析も)
こうして分業することで、二社がそれぞれの強みを生かして、弱点を補う形で、二つで一つになれる。弱小の二社が合体することで、強者になれる。しかも、それぞれ、生産量を増やせる。(現状ではシェアが小さいからだ。)
これぞ名案と言えるだろう。
( ※ ひるがえって、シーメンスの子分になるというのは、あまり良い案ではない。シーメンスは日本企業のライバルだろ。軍門に降るのはまずい。)
[ 付記 ]
東芝はどうする? 実は、すでに GE と提携している。
GEと東芝が洋上風力発電システム分野において戦略的提携契約を締結 | 東芝エネルギーシステムズ株式会社
一方、GE は三菱商事とも提携している。前項で落札した風力発電は、GE 製だ。
では、三菱商事と東芝の関係は、どうなるのか? 提携か?
そうかもしれないが、情報は少ない。下記ぐらいだ。
→ 衝撃の「11.99円」、洋上風力3海域で、三菱商事系が落札 : 日経BP
三菱と中部電力が事業会社を作って、GE の風力発電機を使って、その整備やメンテナンスは東芝がやる……ということになるのだろうと思える。だが、そうだとすると、前項の発表に東芝の名前がないのが不思議だ。よくわからないね。