2021年12月27日

◆ DMV(鉄道バス兼用車両)

 DMV とは、鉄道とバスを兼用する車両だ。世界で初めて実用化された。

 ――

 これまで実用化が難しいと言われてきたが、徳島県で初めて実用化された。交通オタクが大喜び。
 道路と線路の両方を使う世界初の乗り物「DMV(デュアル・モード・ビークル)」が25日、四国で運行を開始した。
 マイクロバスを改造したDMVは、ゴムタイヤと鉄の車輪を備えている。四国南部の海沿いにある徳島県海陽町と高知県東洋町をつなぐ約15キロメートル(所要時間は35分)のうち、10キロは線路を走行する。バスと鉄道の切り替え時は、15秒ほど車両が浮き沈みしてタイヤと車輪が交代する。
 1台の定員は20人余り。乗車はネット予約が原則で、始発から終点までの片道料金は800円だ。
 DMVはJR北海道が基本システムを開発したが、経営難から2014年に実用化を断念。徳島県が「公共交通の救世主に」と構想を受け継ぎ、関係自治体などと事業費16億円を投じて実現した。
( → 鉄道・バスの二刀流、DMVが運行開始 四国で世界初: 日本経済新聞




 JR が開発断念したものを、徳島県が奮起して実用化した。「これぞ快挙」と快哉を叫ぶ交通オタクも多いだろう。
 ただ、私としては、冷めた目で冷静に評価してみたい。

 ――

 メリットは何か? 

  ・ 乗り換えなしで行ける。 (電車との比較)
  ・ 鉄路では振動が少なくて、乗り心地がいい。 (バスとの比較)


 デメリットは何か? 

  ・ 開発費の分、コストが高い。


 このうち、メリットの二つは、観光対策として有効だろう。ただのバスでは、振動が多いので、魅力が薄れるからだ。
 逆に、(バスだけでなく)鉄道を併用する案だと、振動面では最善だが、乗り換えの面倒があるので、観光面で不利である。それよりは DMV の方が観光客向けだろう。

 ――

 ただし、ここで私は「別案はないか?」と考えた。メリットはそのまま生かして、デメリットのない方法があるのでは? (コストがかかる方法は何でも嫌いなのが私だからだ。)
 そこで考えたすえ、こういう案が思い浮かんだ。
 「シリーズ方式のハイブリッド・バスにすればいい。それなら、日産ノートと同じで、振動を大幅に減らした EV モードの走行が可能だから、振動面で有利である。また、特注車ではなく、量産車を使えるから、コスト面では大幅に安くなる。16億円もかかることはなく、2000万円ぐらいで済むだろう」
 「このようなハイブリッドバスを、普通のバスのかわりに道路上で走らせればいい。その一方で、従来の鉄道はそのまま残して運行してもいい。今回の鉄道は、海辺の高架を走るので、眺望が良くて、客を引く魅力がある。それはそれとして、そのまま生かしていい。一方で、道路上のバスは、ハイブリッド・バスにすればいい」

 これぞ名案、思ったのだが。……

 ――

 調べてみたら、うまく行かないとわかった。シリーズ方式のハイブリッド・バスは、販売されていないのだ。
 日本のバス会社の各社を見ると、いずれもハイブリッドバスを製造しているが、どれもがパラレル方式だ。目的は「燃費の向上」で、そのために、減速時にエネルギーを回収して、燃料の無駄を減らす。一方、定速走行のときには、単にディーゼルエンジンを回すだけだ。従って、エンジンの振動は絶えず鳴り響いていることになる。当然、乗り心地は良くない。(シートはぶるぶる震えるし、音もうるさい。)
 なお、日本のメーカのうち、ただ一つ、ふそうだけは、シリーズ方式のハイブリッドがあった。(エアロスターエコハイブリッド)。だが、これは 2010年9月で製造中止になった。ふそうは今後も、ハイブリッド車の開発を中止するそうだ。かわりに、EV に専念するそうだ。

 ※ シリーズ方式の技術があるのは、日産やホンダだが、この二社はバスを製造しない。一方、バス製造会社には、シリーズ方式の技術がない。

 ――

 では、どうすればいいか? シリーズ方式のハイブリッドがない以上は、もはや諦めるしかないのか? 素直に DMV を受け入れるしかないのか? いかにもコスト高で、ニッチ商品みたいで、あまり気を引かれないのだが。

 いや。諦める必要はない。別の手がある。
 それは、すぐ上にも出ていた、EV バスだ。EV バスは、ふそうも開発中だが、日野も開発している。来春には発売するそうだ。
  → 日野自動車、小型EVバス「日野ポンチョ Z EV」を2022年春に発売予定 (公式)

 EV バスならば、シリーズ方式のハイブリッド以上に、振動や騒音が少なくて、乗り心地がいい。加減速がある分、鉄道を走るのよりは不利だが、それでも「料金がずっと安く済む」というメリットがある。

 それでも鉄道ファンは、文句を言いそうだ。
 「信号などで加減速があるのは、乗り心地に大きく影響する。また、定時性も保てないし、平均速度も下がる。これらは鉄道の優位点だ。いくら EV にして、振動や騒音を下げても、しょせん鉄道には勝てるはずがない! えっへん!」
 こう威張られると、困ってしまいそうだ。どうする? 

 ――

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「 バスは EV バスにするが、そのままだと鉄道の路線を走れない。そこで、鉄道の路線から線路を引っ剥がして、アスファルトで埋め尽くせばいい。こうして鉄道を専用バス路線にすればいい。それなら、定時性を保てるし、平均速度も上がるので、鉄道のメリットをそのまま使える。しかも、車両の開発費はゼロで済む」(バスメーカーが開発してくれるので、自治体が開発費を払う必要はない)

 これはつまり、BRT のことだ。前にも言及したことがある。
  → 三陸鉄道リアス線の開通: Open ブログ
  → BRT の高速化: Open ブログ

 私はこれまで「 BRT が良い」というふうに述べて、推奨してきた。
 一方、本項では新たに、「 EV バスの BRT が良い」というふうに述べよう。これだと、コストは若干上がるが、振動と騒音の面で大きく向上するので、観光客などへのメリットが大きくなるだろう。



 [ 付記 ]
  DMV は、車両を、電車にしたりバスにしたりするものだ。線路と道路はそのままで、車両を切り替え方式とするわけだ。
  BRT は、車両はそのままで、線路を道路に作り直してしまう方式だ。
 前者( DMV )は車両の開発費がかかるが、道路や線路はそのままなので、そちらの費用はかからない。
 後者( BRT )は、線路を作り直すので、その費用がかなり多額にかかる。といっても、線路を剥がすぐらいなら、ことさら多額にはならないだろう。



 【 追記 】
 線路は、日々に維持するために、メンテナンス費が多額にかかる。(下記文書で「線路」を検索。)
  → メンテナンスの革新
  → 鉄道メンテナンスの課題と今後の展望
 こういう多額の維持費が、鉄道が赤字になる主因となる。道路ならば、こんなに多額の維持費はかからない。
 鉄道は大量輸送に適した交通手段なのであって、大量輸送のできない地方路線では、さっさと諦める方が賢明なのだ。そして、その根源は、線路のメンテナンス費である。
 「電車を 24時間、走らせろ」と素人が言うと、鉄道マニアは「線路のメンテナンスの必要性がわからないのか!」と馬鹿にする。そして、それと同じ理由(線路のメンテナンスの必要性)で、鉄道というものは大きな赤字を生み出すのである。 


 ※ 参考記事
  → 「終電後」のJR、線路の上で何をやっているのか



 【 追記2 】
 EV バスは、バス停で停車中に充電することができる。その分、搭載する電池量を少なくすることができるので、軽量で安価になる。普通の乗用車よりも、バスの方が EV に向いていると言えるだろう。
 実例は下記にある。非接触方式による充電。ワイヤレス急速充電とも言う。
  → 停車するだけでバス充電 三井物産、英で世界初の実証実験
 下記にも技術記事がある。
  → ワイヤレス充電で走るEVバス、課題の「妨害電波」の抑制に成功

posted by 管理人 at 21:58 | Comment(6) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2021年12月28日 09:15
地方の鉄路はそもそも電車ではなくてディーゼルだったりするので振動は結構あります。なので「乗り心地」の面でも鉄道のメリットとはならないことでしょう。
Posted by けろ at 2021年12月28日 09:47
 最後に 【 追記2 】 を加筆しました。バス停で EV に充電する、という話。
Posted by 管理人 at 2021年12月28日 17:39
> 阿佐海岸鉄道阿佐東線
 2021年12月25日から、全便がDMVでの運行となる。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E4%BD%90%E6%B5%B7%E5%B2%B8%E9%89%84%E9%81%93%E9%98%BF%E4%BD%90%E6%9D%B1%E7%B7%9A

 この線路(レール)がある阿佐東線は、従来の鉄道車両の運行を廃止(休止?)して、全便をDMVにするみたいですね。こういうケースでは、筆者の提案するBRT方式(EVバスにするかはともかく)が最適な気がします。

 あえて、DMV方式を取り入れるメリットがあるとすれば、この鉄道が、例えばJRなどの別の鉄道との相互乗り入れがある場合(※)。つまり、このような運行形態を一部残すメリットがある場合、または将来的にそのような運行形態を再度取り入れる可能性がある場合。要は、「鉄道も走っている町でいたい」という、自治体や住民の、ある種の未練≠ゥもしれません。
 ※ 阿佐東線も、2019年3月15日までは、朝の2往復がJR四国牟岐線の牟岐駅まで相互直通運転を行っていたとのこと(上のwikiから)。
Posted by かわっこだっこ at 2021年12月29日 11:53
>>一方、定速走行のときには、単にディーゼルエンジンを回すだけだ。従って、エンジンの振動は絶えず鳴り響いていることになる。当然、乗り心地は良くない。(シートはぶるぶる震えるし、音もうるさい。)

車体の固有振動数は1Hz帯域にあるので、車速が上がってエンジンがそれなりの回転数で回っている状況ではシートなどの振動にはほとんっど寄与しません。実際、路線バスでもエンジンによって一番ゆすられているのは、停車時でエンジン回転数が低い状況においてです。
Posted by なまず at 2021年12月30日 16:58
 前席ならばいいけれど、リアシートはエンジンの振動が伝わりますよね? 
Posted by 管理人 at 2021年12月30日 19:52
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