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洋上風力発電については、本サイトではこれまで2度、言及した。いずれも「技術発展が必要だ」という趣旨だ。
→ 洋上風力を推進すべきか?: Open ブログ
その趣旨はこうだ。
「洋上風力は大切だが、技術が未発達なので、技術開発を待つといい。日本の気候は荒々しくて、風力発電には適していない。台風にも耐えられるような技術発展が必要だ」
洋上風力を推進すべきか? 2: Open ブログ
その趣旨はこうだ。
「洋上風力は大切だが、技術が未発達なので、技術開発を待つといい。時間はかなり長くかかりそうだ。コストダウンも必要だ」
いずれにおいても、洋上風力に期待しながらも、実用化にはかなり長い時間が必要だと見込んでいた。
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ところがこのたび、新たなニュースが飛び込んだ。実現には長くかかると思えたのだが、一挙に実現する運びとなったのだ。つまり、大量の設置と大幅な低コスト化が同時に実現することとなった。
記事を引用しよう。
政府は24日、千葉県と秋田県の3区域の洋上風力発電事業者として、三菱商事などが構成する企業連合(コンソーシアム)を選定したと発表した。
3事業の合計出力は約169万キロワットで、いずれの事業でも米ゼネラル・エレクトリック(GE)製の出力が1基当たり1万2600キロワットの発電設備を採用する。運転開始は2028年9月から30年の12月を予定しているという。
三菱商などのコンソーシアムは3区域でキロワット時(kWh)当たり11.99円−16.49円で応札しており、他の参加事業者を大きく引き離す形で価格点ではいずれも満点の評価を得た。
( → 三菱商連合が洋上風力発電事業を総取り、政府公募で競合を圧倒 - Bloomberg )
今すぐ実現するわけではなく、「運転開始は2028年9月から30年の12月」ということなので、かなり先のことになる。それでも、まさしく実現することを確約しているのだから、大幅な進展があったことになる。
さて。これが本当に実現するのであれば、今後の日本のエネルギー政策に大きく影響が出るはずだ。
「キロワット時当たり 11.99円−16.49円」
ということだ。(上の数字は幅があるが、低い数字の方が妥当なので、12円程度と見込んでいい。 → 典拠 )
だが、これだと、家庭用の太陽光発電の購入価格(19円)よりも大幅に安いことになる。しかもこの先、技術発展で、もっと価格が下がる見込みだ。となると、もはや家庭用の太陽光発電を推進する理由がなくなる。
「家庭用の太陽光発電を推進する」という政府や東京都の方針は、ただちに廃止するべきだ。
※ 家庭用の太陽光発電のコストも下がるぞ、という反論もあるだろう。だが、それを込みにしても、家庭用の太陽光発電は、「屋根工事」という無駄な工事費がたくさんかかるので、すごく無駄な事業なのだ。だから、さっさとやめた方がいい。前にも述べたとおり。
→ 屋根に太陽光パネルを載せるな: Open ブログ
※ 東京都は、屋根に太陽光パネルを載せることを推進している。それも「義務づける」という強制的な形で。
→ 太陽光発電の話題を二つ: Open ブログ
→ 太陽光発電に東京都が補助金: Open ブログ
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ただし、「来年のことを言うと鬼が笑う」というのにも似て、「7年以上も先の洋上風力など、信頼しがたい」というふうに不安視する声もある。
→ 【電力業界騒然】洋上風力発電で起きた財閥の価格破壊、暴落するレノバ株
今回の事業者は、三菱商事と中部電力だが、これらの企業には実績がない。そのせいで、調査不足で、事業のリスクを十分に見込んでいない恐れがあるそうだ。なのに、現実にはリスクが押し寄せて、高いコストがかかるようになったら、事業は破綻してしまうだろう。そういう「事業破綻」の恐れがあるそうだ。
つまり、先の低コストは、画期的な技術革新があったからではなく、「素人ゆえの無知による楽観」で、将来あるはずの費用負担を見失っているだけだ、という可能性がある。そして、その結果は、「事業破綻」による廃墟が残るだけだ。
そうなったら、先の低コストは、ただの夢だったことになる。そのあとには、夢破れたあとの廃墟が残るだけとなる。「夏草や つわものどもが 夢の跡」という感じだ。
実際にどうなるかは、私としては何とも言えない。私は当事者ではないので内部情報もないし、専門家ではないので周辺情報にも詳しくない。
ただ、現状のように滅茶苦茶にコストが高い状況からは脱したようだ、とだけは言えそうだ。
ちなみに現状価格は、こうだ。
着床式洋上風力発電 32円+税
浮体式洋上風力発電 36円+税
( → FIT制度における2021年度の買取価格・賦課金単価等を決定しました (METI/経済産業省) )
[ 付記1 ]
日本国内の企業は風力発電の製造からは撤退した、と前に述べた。具体的には、日立と三菱重工が撤退した。(他社製の輸入販売は続ける。)
→ 洋上風力を推進すべきか?: Open ブログ
一方、三菱は三菱でも、三菱商事が中部電力と組んで、新規参入した。
→ オランダの大手電力会社エネコ買収【三菱商事/中部電力】再エネ事業拡大
ただしこれは、製造ではない。日立や三菱重工と同様で、他社製品(GE)の輸入販売である。
日立の提携相手は、ドイツの風力発電機メーカーのエネルコンだ。
三菱重工の提携相手は、デンマークのヴェスタス社だ。
世界の風力発電で強いのは、ヴェスタス、シーメンス、GE だ。
→ 【国際】風力発電メーカーランキング、ヴェスタスとシーメンスガメサが上位。中国企業も席巻 | Sustainable Japan
となると、今後は有望なのは、三菱重工と三菱商事であるようだ。エネルコンと提携している日立は、先の見通しが暗いようだ。(私見)
《 加筆 》
一方で、シーメンスは国内で提携先を探している。
→ シーメンス・ガメサ、風力機器で国内60社と協業検討 | 電気新聞ウェブサイト
だったら、日立は(エネルコンを捨てて)シーメンスと提携した方がいいんじゃないの? 知らんけど。
[ 付記2 ]
先に紹介した下記リンク
→ 【電力業界騒然】洋上風力発電で起きた財閥の価格破壊、暴落するレノバ株
では、レノバという中小規模の会社の話がある。だが、この件は、どうでもいい。小さな会社が先行するのはいいが、そのあといくら頑張っても、どうしようもない……という話になる。
ちなみに、有馬記念では、パンサラッサが途中まで先行して独走する走りっぷりだったが、最後には力尽きて、急速に順位を落として、次々に抜かれてしまった。最終順位は 13位。……弱小の馬はいくら先行しても、最後には抜かれてしまう、ということだ。(レノバみたいだ。)

⇒ 本稿本文にも、提示の Bloomberg の記事にも書かれていないようですが、これが本当に(筆者が危惧するような)「素人ゆえの無知による楽観」ではなく、何らかの技術の大幅な進歩によって、日本でも急遽実現の見込みが立ったのだとしたら、その中身はなんでしょうか?
もともと欧州ではコストが最安で、日本ではコストが高かった。
以上のことからすると、台風対策の構造部分が「倒れにくい」というふうにメドが立ったことか。
あるいは、今回の適地が東北の西側なので、台風の心配がほとんどないという地理的な事情なのかも。(台風のある銚子沖では、コストが高くなっているので。)