2021年12月22日

◆ 大地震の対策は避難訓練

 北海道・東北沖の大地震が起こると、最悪 20万人ほどの死者が出る……という推計が出た。死者を減らすには、どうすればいいか? 避難訓練がとても有効だ。

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 北海道・東北沖の大地震が起こると、最悪 20万人ほどの死者が出る……という推計が出た。
 政府の中央防災会議の作業部会は21日、北海道から東北地方の太平洋沖にある日本海溝・千島海溝沿いでマグニチュード(M)9クラスの地震が起きた場合の被害想定を公表した。甚大な津波被害が広範囲に及び、死者は最大約19万9000人に上る。早期避難に加え、津波避難ビルの整備で犠牲者を約8割減らせる
( → 死者最悪19.9万人想定 津波対策で8割減―日本・千島海溝地震・中央防災会議:時事ドットコム

 死者数は7道県で最大19万9千人で、7割近くを北海道が占める。全壊や焼失は22万棟、経済被害は31兆3千億円に上る。千島海溝の地震では、冬の深夜で最大10万人が死亡する。
 いずれの地震も津波による死者がほぼ全てを占めており、
( → 死者最悪19万9000人想定 日本海溝の大地震、北海道・東北で 内閣府「対策すれば8割減」:朝日新聞

 詳細は下記。
  → 【詳報】最悪死者19万人超 千島・日本海溝の巨大地震被害想定 | NHK

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 さて。最悪 20万人近い死者が見込まれているが、死者を減らすにはどうすればいいか? 記事にはこうある。
 人的被害を最も減らすとされたのが「避難先の確保」と「避難の迅速化」です。
▽津波避難タワーなどの設備を整備して安全の確保を進めるとともに
▽浸水域にいるすべての人が、10分ほどで避難を開始すれば
死者の数を想定の2割の3万人にまで減らすことができるとしています。
( → 【詳報】最悪死者19万人超 千島・日本海溝の巨大地震被害想定 | NHKニュース

 「浸水域にいるすべての人が、10分ほどで避難を開始すれば」
 とあるが、それはどうすれば実現できるのか? 
 朝日の記事には、参考情報がある。
 寒冷地ならではの津波避難の難しさも指摘され、冬場の深夜に発生すると、夏の昼間より死者は4万人以上増えると試算された。
 揺れが5分間続き、着替えや防寒着の着用に7分かかるため、避難開始までに 12分はかかると見込む。
( → (時時刻刻)津波避難、寒冷地の壁 移動に時間・低体温リスク 日本海溝・千島海溝の地震:朝日新聞

 12分 かかるというが、それで済むとは思えない。防寒着の着用に7分というのは、中年以下の場合だろう。高齢者だと、もっと時間がかかることが見込まれる。「おじいちゃんの位牌ももっていかなくちゃ」などと、グズグズする例も考えられる。

 ――

 そこで提案しよう。「避難訓練を何度も繰り返すべし」と。
 このことは前にも述べた。過去記事から抜粋しよう。
 (2) 避難訓練の義務化
 台風が来たり、降水量が多かったりしたら、避難小屋に避難する……という訓練を、毎年、4回ぐらい実施する。
( → 豪雨の被害を減らすには: Open ブログ

 日頃の行動とは異なる行動を、いきなり「やれ」と言われても、すぐにはできない。普段からせっせと避難訓練をしているのなら別だが、そうでなければ、いきなり「避難しろ」と言われても、すぐにはできないのだ。「慣れないことはやりたがらない」というふうにも言える。
 ※ このことから「避難訓練の重要さ」がわかる。それは、やるべき知識を与えることが目的ではない。いざというときに、「すでに慣れていることを自動的にやれる」(何も考えずにやれる)というふうに、体にしみつかせることが目的だ。
( → NHK の地震番組・3件

 生死を分けるのは、「警報を受けて避難するかどうか」ということだが、その判断を正しく与えるのは、事前の避難訓練なのである。
 警報を無視して死んだのは、お年寄りが多い。お年寄りは、新たな行動をしにくい。「いざとなったら特別な行動をしろ」と教えても、そういうことができない。
 だから、「避難する」という行動を、あらかじめ何度も練習させておくことが必要なのだ。それを「新たな行動」でなく、「慣れた行動」とするために。
( → 豪雨で死者 百人以上: Open ブログ

 津波ではないが、土石流に対して、避難訓練をしていたおかげで助かった、という例。
 土石流でもけが人ゼロの団地
 団地では3年前から年2回、土砂災害を想定した避難訓練を続けてきた。
( → 広島の被害と対策(西日本豪雨): Open ブログ

 噴火があったが、避難訓練をしていたおかげで助かった、という例。
 記事の核心はこうだ。
 「避難訓練をしていた地域の住民は助かったが、そうでない地域の住民は助からなかった」
 避難訓練をしていた地域の住民は、以前の訓練に従って、避難したので、助かった。ぐずぐずしていた老人たちは、説得されて、避難した。結果、全員が避難した。
 避難訓練をしていなかった地域の住民は、警報を無視した。「火山のことはおれの方が良く知っている」と自惚れて避難勧告を無視したり、「まだまだ安全さ、噴火してから逃げれば十分さ」と楽観したりした。その後、噴火が起こると、ものすごく高速な火砕流に呑み込まれて、多数が死亡した。

( → 豪雨で死者 百人以上: Open ブログ

 何度も述べてきたように、「避難訓練」こそが大切なのだ。
 なのに、政府の報告には、その肝心のことが抜けているようだ。最も大切な話が抜けている、とも言える。



 [ 補足 ]

 ※ 政府の報告の原典を読もうと思って、探してみたが、いくら探しても、見つからない。ネット上では公開されていないようだ。困ったことだ。デジタル化に対応できない政府。

 《 加筆・訂正 》
 「原典は公開されている」とコメント欄で教わった。確かに現時点では公開されている。
 私が調べたときには未公開だったが、今では公開されているようだ。公開するまで、時間がかかった、ということらしい。
 前にもそういうことがあった。報道機関に公開してから、ネット上に出すまでに、1〜2日ぐらいかかるようだ。
 
 
posted by 管理人 at 23:58 | Comment(2) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 ↓に原典があるようです(私もまだ読んでないです)。

 http://www.bousai.go.jp/jishin/nihonkaiko_chishima/WG/index.html
Posted by かわっこだっこ at 2021年12月24日 04:42
 情報ありがとうございました。
 改めて検索してみたら、見つかりました。
 ネットに公開されるまで、時間がかかったようですね。
Posted by 管理人 at 2021年12月24日 06:00
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