――
朝日新聞の記事を紹介しよう。
未着工のリニア中央新幹線静岡工区をめぐり、科学者らでつくる国の有識者会議は19日、静岡県が懸念する大井川の流量の減少について、十分な対策をとれば中下流域への影響は抑えられるなどとする中間報告をまとめた。
報告では、工事で出た湧き水を導水路ですべて川に戻せば、中下流域の流量は維持されると結論づけた。
静岡県は、トンネル工事で湧き出た地下水が流出することで、生活を支える大井川の水が減ることを懸念し、県内での着工を認めていない。JR東海は、工事やその後の試験などに7年半ほどかかるとしている。
有識者会議の中間報告の要点
・トンネル工事で出た湧き水を全量大井川に戻せば、中下流域の河川の流量は維持される
・工事による中下流域の地下水量への影響は、季節変動などと比べてきわめて小さいと推測
( → 国交相、JR東海に異例の指導へ リニア工事「地元に真摯な対応を」:朝日新聞 )
報告では、トンネル掘削によって湧き水が出ても、導水路トンネルなどで水を戻せば中下流域の河川流量が維持されることが示された。これまでJR東海は、先進坑が貫通するまでの約10カ月間に県外に流出する水は戻すまで時間がかかると説明している。
県はトンネル湧水の全量戻しについて、工事期間中に流出する湧水を含めて、時間差なく大井川に戻すことを求めている。しかし、報告ではJR東海の主張に沿い、工事の安全性を確保するためには山梨県側から上り勾配で掘削しなければならず、その際に湧水が県外流出するのは避けられないとした。
JR東海の宇野護副社長は「水を大井川に戻す方策は時間差の問題も含めて静岡県と協議をしていくことになる。(全量戻しを実現できる方策を)考えていこうという意思はある」と話した。
( → 静岡側「100%納得できぬ」 リニア工区の中間報告、なお議論残る:朝日新聞 )
両者の意見は対立しており、合意しがたいようだ。困った。どうする?
――
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。
実は、この件では、もともと原理的な解説をしていた。以下のように。
大井川はもともと豊かな数量を誇っていた。しかし現在ではごくわずかの水量しかない。それはなぜか?
大井川の水量は、なぜ激減したか? リニア新幹線の工事のせいか? 違う。ダムのせいだ。
大井川の上流には、多くのダムがある。田代ダムなどだ。そこで大井川の水量を大量に取水する。その水で発電をするのだが、発電をしたあとで、その水をどうするか?
大井川に戻すのならば、何も問題ない。ところが実際には、大井川に戻すかわりに、山を越えた向こう側にある富士川に流してしまう。
大井川 → 導水トンネル(発電)→ 富士川
というふうに水は流れる。
かくて、大井川の水量は激減して、かわりに、富士川の水量が豊かになる。
これが真相だったのだ。
( → 大井川とリニア新幹線: Open ブログ )
モデル的に示そう。
大井川の水量は、現状では2である。リニア新幹線ができると、水量は半減して1になってしまう。そこで静岡県は「大井川の水量を守るために、リニアに反対する」と言っている。しかし実は、大井川の水量はもともと 10あったのだ。なのにそのうちの8を上流で採取して、発電用に流してしまうので、残りは2しか残らなくなった。
ここから、次の結論を得る。
「リニアのせいで水量が半減したとしても、その分、発電用の取水量を8から7に減らせば、大井川の水量は現状のまま保たれる」
要するに、上流で発電用の取水量を少し減らすだけで、大井川の水量保たれるのだ。
これぞ、うまい方法だ。
――
ただし、これには、発電所で水力発電をしている東京電力が反対するだろう。
「取水量を減らしたら、発電する電力が減るので、困る。さらに、水力発電は炭酸ガスを出さずにエコなので、好都合だ。それを減らされるのも困る。二重に困るので、大反対する」
しかし、これには解決策がある。
「お金が心配なら、減った分の売電収入に相当する額を補償する」
「エコな電力がほしいというのなら、金を渡すかわりに、エコな電力を渡す。その分は、太陽光発電で電力供給する」
では、太陽光発電の場所はどこにすればいいか? それは、前に述べたとおりだ。
→ 太陽光発電は屋根より中山間地で: Open ブログ
農作に適さない段々畑や耕作放棄地で、メガソーラーを設置すればいいのだ。それによって水力発電所で失った電力の何倍もの電力を発電できる。これで問題は解決する。
これにて一件落着。
※ あとは、細かな話を下記で。
[ 補足1 ]
田代ダムの(最大)発電能力は、約4万kW だ。
認可出力は田代川第一発電所が17,400kW、田代川第二発電所が22,700kW
( → 田代ダム - Wikipedia )
このうち、8分の1を減らすとしたら、5000kW (= 5メガW)の発電量が減ることになる。
一方、メガソーラーでは、数メガW の発電は普通だ。たとえば、前に紹介した長野県の長門牧場にあるメガソーラーは、(最大)18メガWの発電量がある。
→ 中山間地にあるメガソーラー: Open ブログ
そこで、(最大)10メガWぐらいのメガソーラーを設置すれば、平均でも5メガW以上になるだろうから、水力発電用の水を奪った分の電力を補償できることになる。
[ 補足2 ]
記事中には、次の話があった。
導水路トンネルなどで水を戻せば中下流域の河川流量が維持される。
この方法ならば、太陽光パネルを設置する必要もなく、単に導水管を設置するだけで済むので、低コストで済みそうだ。ならば、こちらの方が名案ではないか? そう思う人もいるだろう。
実は、これは、名案というほどではない。最初から示されていたことだ。つまり、「工事終了後には、大井川の水が減るという問題はなくなる」というのは、最初からわかっていたことだった。
そこで、静岡県は、その点では文句を言えなくなったので、こういう文句を言った。
「工事終了後はともかく、工事中の分だけは、大井川の水量が減る。工事中の分については、許せない!」
こんな短期間の水量減少についてだけ文句を言うというのは、もはや子供が駄々をこねるのも同然だ。まったく理屈になっていない。単に「反対のための反対」をしているだけだ。この件は、前に指摘した。
→ リニア新幹線と静岡の水利権: Open ブログ
そこで、こういうエゴイスティックな静岡県の妨害に対抗するために、次の二点を提案した。
・ 金を払って解決する
・ 静岡県の本音は、静岡空港に新幹線の駅をつくることだ。それに対処すべし。
詳しくは下記。
→ リニア新幹線と静岡の水利権: Open ブログ
→ リニア新幹線と静岡県の反発: Open ブログ
→ 静岡空港駅を作るには?: Open ブログ
[ 補足3 ]
記事中には、次の話があった。
工事の安全性を確保するためには山梨県側から上り勾配で掘削しなければならず、その際に湧水が県外流出するのは避けられない。
これも、すぐ上の方法で解決する。
この問題は、工事中だけの問題なのだから、特に大騒ぎするようなことではない。短期間のことは、金で解決が付く。(補償金だ。)
金は、地元に払ってもいいが、地元がどうしても「水を寄越せ」というのなら、金を地元には払わず、東京電力に払えばいい。つまり、東京電力に金を払って、東京電力の取水量を減らしてもらう。これで、大井川の水量は保たれる。(本文で述べた通り。)
ただし、静岡県の本音は、大井川の水量ではない。単にいやがらせの妨害をしたいだけだ。(一種のテロ行為である。)
そして、その目的は、「静岡に新幹線を止めろ」ということだ。(こっちは口では言わないが、おまえがうまく忖度しろ、と。)
ここを理解して、腹芸でうまく決めるのが、真の解決策だ。
[ 補足4 ]
「リニア新幹線なんか必要ない。過剰な高速性よりも環境保護が大事だ」
という環境保護派の意見もある。しかし、それは勘違いだ。
リニア新幹線が必要なのは、開発のためではない。やがて来る大震災(南海トラフ地震)のときに、東海道新幹線が壊滅すると、日本の物流は大混乱になるからだ。
このとき、東海道を離れた内陸部にリニア新幹線があれば、東海道新幹線のバックアップとして働くから、日本の物流の大混乱を避けられる。かくて日本経済の壊滅を防げる。
大地震のときの日本経済の壊滅を防ぐことが、リニア新幹線の建設目的なのだ。決して高速性だけが目的ではないのだ。
【 追記 】
たまたまだが、あとで調べているうちに、気づいたことがある。本項で述べた提案(取水量の削減)は、すでに検討されていた。ただし静岡県は、駄々をこねる感じで、反発している。
水問題に関するネット上の議論で見られる意見は「リニア工事で県外に流出する湧水の分だけ、田代ダムから富士川水系に流れていた水量を止めれば相殺される」など。島田市の染谷絹代市長が「田代ダムから山梨県側に流れ出るのは理解できない」と発言するなど、流域の利水関係者からも一時、JRがダム設置者の東京電力に補償金を支払って取水量を調整するよう求める声もあった。
ただ、JRは「当社から(東電に)取水制限を要請することは難しい」としている。県も慎重で「そもそもリニア工事で県外に流出する水も田代ダムで発電用に流される水も本来は大井川の水資源。相殺はできない」(県幹部)との考えだ。
( → 田代ダム取水量調整 沢枯れ、流量確保懸念 渇水時、担保できず|静岡新聞 )


※ リニアは名古屋を通ります。東京まで 40分になるので、通勤圏内かも。(金は別として)
トヨタなら、東京の研究所との連携が進みそうだ。出張も簡単。日帰りどころか、半日で片付く。
豊田中央研究所から名古屋駅まで車で 40分。東京までの 40分と、同じ時間だ。
確かにリニア新幹線であれば、南海トラフだけでなく富士山噴火の時にも、東海道新幹線のバックアップとして働きそうです。いっぽうで、今の長野→北陸新幹線ルートのほうは、金沢〜大阪間がつながっても、富士山噴火では影響を受けて全線の運行は無理そうですね。
ただし、リニア新幹線がいつ営業運転を開始するかが不透明なので、北陸新幹線も大阪まで延伸しておいたほうがいいかもしれません(第2のバックアップ)。
なお、こういった災害時には、リニア新幹線で人流の維持はできますが、東名高速・新東名高速・東海道線はストップしますから、物流の大混乱・停止は避けられない(リニア新幹線があっても経済が大打撃を受ける)と思います。
名古屋と東京がお互いに通勤圏内になるかという話については、確かに所要時間的には可能かもしれませんが、運賃がネックとなりそうです。今の東海道新幹線だと片道1万円ちょっと(自由席)ですが、これが2万円くらいになったら、週1〜2回の通勤でも負担が大きい気がします。月1〜2回の出張には問題なさそうですが。
https://trafficnews.jp/post/104019
リニアの路線距離は、東海道新幹線よりもかなり短い。(2割減?)
https://x.gd/RaD2l
東海道新幹線よりも安くしてもよさそうだが。
――
道路は、中央高速道路があるので、何とかなるでしょう。東名を使った場合と、大差ないくらいの時間と距離で済みます。
しかし、この記事にもあるように、開業延期が長引いたりリモートワークが進むことで、実際にどうなるかはわからないですよね。
中央高速(中央自動車道):私も忘れてはいませんが、南海トラフ地震では仰るとおりに何とかなるとしても、富士山噴火の時は使えなくなりそうです。
東海道心河川でボロ儲けしているのは、その黒字の額でリニアを建設するためじゃないのかな。リニアが建設されたら、もう大幅黒字は必要なくなる。リニアの収益が入るので。
富士山噴火のときには、高速道路より、普通の道路の方が大変そうです。高速は比較的早く開通しそうだが、普通の道路はいつ通れることやら。雪なら溶けるけど、火山灰は溶けない。
※ JR東海は、報道発表や沿線向けの説明資料では「中央新幹線」と称している。(出展 Wiki「中央新幹線」)
もし、リニア新幹線が本当に頓挫したら、「最初から、従来の新幹線を中央自動車道のようなルートで作っておけばよかった。それなら、同じ費用で、名古屋までではなく大阪まで作れたかもしれないのに」という人がたくさん出てきそうです。
管理人さんに教えていただいた「東海道新幹線のバックアップ」という見方を加味すると、この中央新幹線にかかわる要素の優先度は、バックアップ性 > 高速性 > 環境保護(維持)だと感じますので。
それだと、直線にできないので、在来線並みの速度にしかなりません。時速 130km ぐらい。その場合には、高い料金を取れないので、かえって赤字になりそうです。新幹線みたいなボロ儲けはできない。
新幹線のバックアップでなく、東海道本線のバックアップですね。でも、それなら、すでにありそうだ。
⇒ もちろん、リニアのような大深度?地下を走らせるようなことはしなくても、これまでの新幹線よりトンネルを多用(数・長さ)すれば、北陸新幹線の 時速260km(区間内の最高速度)とまではいかなくても、上越新幹線の時速240km(同)はいけるでしょう。もちろん、カーブなどで苦しいところは速度を落とします(下記参照)が、ずっと時速130km ということはないでしょう(平均速度は従来の東海道新幹線並みにできると推測)。
秋田新幹線や山形新幹線は時速130kmの最高速ですが、これは確か、この区間は在来線と同じ狭軌(レールの幅が狭い)で走るからだと思いました。
・東海道新幹線・熱海駅付近
急カーブになっているため、「のぞみ」「ひかり」とも速度を185km/hまで落として通過。
・上越新幹線・中山トンネル
当初計画から迂回するルートに変更されて、半径1,500mの曲線が存在する線形となっている。そのため160km/hの速度制限で走行。
・北陸新幹線・高崎分岐
上越新幹線と北陸新幹線の分岐点では、ポイント通過時に160km/hに制限。
・北陸新幹線・軽井沢駅
急カーブになっているため、「かがやき」は110km/hまで速度を落として通過。
・北陸新幹線・碓氷峠トンネル、飯山トンネルなど
30パーミルの急勾配を走行するため、線路が下り方向の列車は210km/hに制限。
https://shinkansen.tabiris.com/speed.html
これも思い出したことです。上のコメントで管理人さんは、中央自動車道を「中央高速」と表現されていますが、そもそも、日本にある「高速道路」は東名と新東名と名神だけで、他は全部「自動車道」です(下の記事を参照)。
中央自動車道も、カーブの数が多く、かつRが小さいカーブが多いので、設計上の観点から、ほとんどの区間で制限速度は時速80kmになっています(今でも)。だからといって(何十年前かの設計基準に照らした制限速度が時速80kmだとしても)、現代のクルマが時速100kmかそれ以上では安全に走れないかというと、全くそんなことはありません。カーブのきついところでだけ速度を時速80kmに落とせば、他のところは東名や新東名と同じように時速100kmや120kmで走っても、何ら問題はないでしょう。
新幹線についてもそれが言えると思います。むしろ、リニアでない中央新幹線の工事と、そこを最適に(より高速に)走れるあらたな新幹線車両の開発をセットでやるべきだった(リニア新幹線の実現よりも、技術的にはずっとハードルが低いので)とも考えられます。
https://gazoo.com/column/daily/21/07/25/
・東京〜名古屋間(286km)では39分の差
・東京〜新大阪間(438km)では53分の差
しかありません。私が直上のコメントで示唆したような、このルートに最適化した(カーブに強い)あらたな新幹線車両が開発できれば、その差はもっと縮まるでしょう(東京〜名古屋間で30分未満の差?)。それでも、リニア新幹線が必要だったのでしょうか?
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A
なお、どの技術で運行するにしても、運行コストはあまり変わりません。真空化しても、2倍にはならないでしょう。
時速 1000km だと、東京と大阪が 30分で済む。
⇒ さすがです! 仰るとおり、そこまで突き詰めれば意味がありました。以下はテスラの取り組みです(ご参考)。
※ ほぼ真空のチューブに旅客や貨物を乗せたポッドを浮かせて、時速1,000km超で走らせるという輸送システム
https://wired.jp/2018/01/16/virgin-hyperloop-one/
上の取り組みは、イーロン・マスクが最初に提唱したものかもしれませんが、ヴァージン・ハイパーループ(呼応空関連のヴァージングループの傘下)の実験事業でした。
※ CNN の続報
https://www.cnn.co.jp/travel/35162209.html