2021年12月17日

◆ 送電線に 4.8兆円の巨額浪費

 経産省は再生エネの電力を、北海道・九州から本州へ送電するための、送電線を整備するために、4.8兆円をかけるそうだ。これは馬鹿げている。

 ――

 再生エネを推進するためであれば、どれほど馬鹿げた用途のためであれ、巨額の金を浪費してもいい……というのが、政府の立場だ。「金を湯水のごとく浪費する」という発想の典型だ。それも、自分の信じる愚かな妄想のために。
 経産省は送電網も強化する方針。再生エネが増えて使いきれない電気を別の電力会社のエリアに送るため、北海道や九州と本州などをつなぐ地域間の送電線を最大4.8兆円かけて増強する方向で、来年度にも具体的な計画をつくる。
( → 経産省、火力発電のさらなる出力抑制を要請へ 再生エネ普及を後押し:朝日新聞

 しかし、このような送電線は、莫大な費用がかかる割に、効果はとても小さい。4.8兆円もかけて何ができるかといえば、ほんのわずかの電力を送電できるだけだ。ほとんど「焼け石に水」である。こんなことのために巨額の金を投じるのは、あまりにもコスパが悪い。

 この件は、前にも詳しく論じた。
  → 北本連系(線)は無駄だ: Open ブログ

 一部抜粋しよう。
 たったの 30万キロワットのために、600億円だ。とんでもない巨額だ。
 では、どうしてこういう巨額になるのか? それは、「海底や青函トンネルを通る電力線」というのが、もともと高コストだからだろう。
 別に、下手なことをやって無駄を出しているわけじゃない。このような設備そのものが根本的に高コストなのである。

 では、それが駄目なら、かわりにどうすればいいか? その代案も、同じ項目に示してある。
 では、どうすればいい? ここは、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「北海道と本州との間で電力を融通するのではなく、北海道の内部で電力を融通する。そのための電力網は、既存の電力網をそのまま利用すればいいので、コストはゼロで済む」

 ここでは、ブラックアウトの対策(電力安定化)のために、発電所を分散すればいい……と示した。

 一方、本項の朝日新聞の記事では、「再生エネ発電の過剰な発電量を、本州に送るため」という目的が示されている。つまり、「余ったものを融通する」というわけだ。
 だが、この目的のためであれば、朝日新聞の記事の前半に示してある方法で足りる。つまり、こうだ。
 「再生エネ発電の過剰な分だけ、火力発電の発電量を減らす」

 つまり、再生エネ発電が増えて電力が余ったら、それを本州に送電するかわりに、その分、火力発電の発電量を減らせばいいのだ。
 これで問題は片付くはずだ。

( ※ 「困ったときの Openブログ」なんて言わなくても、すでに解決策は判明しているわけだ。)

 ――

 ちなみに、現在の北電の電源構成は、こうだ。


hokuden-ratio.gif


 やたらと石炭発電が多い。だが、石炭発電は世界的に「禁止」の流れにある。早晩、停止せざるを得ないだろう。かわりに、石油または LNG に切り替えた上で、こまめな変動にも対応できるようにすればいい。
 ともあれ、北電の発電量は、800万kW 以上もある。そのなかで、たったの 30万kW 程度を本州に送っても、ほとんど意味はない。そんな無意味なことのために巨額を投入するというのは、愚行と言うしかない。
 それよりは、再生エネの出力変動を、火力発電の出力変動で補うためのシステムを、きちんと構築するべきなのだ。それならば、30万kW どころか 400万kW ぐらいの再生エネ発電をも、受け入れることが可能になるだろう。
 
 ※ 今の政府の方針は、「とりあえず何かやっています」というポーズを取るための政策であるに過ぎず、実際に何かをもたらす効果は皆無に近い。そんなことのために兆円単位の巨費を無駄に投じようというのだから、狂気の沙汰というしかない。4.8兆円なら、国民1人あたり4万円を徴収して、無駄に捨ててしまうことになる。一家4人なら、16万円の徴収だ。
  


 [ 補足1 ]
 結局、何が言いたいか? 「送電線にはお金がかかるから、お金がもったいない」ということか? いや、違う。(お金を出したわりに)「効果がない」ということだ。
 送電線で遅れる電力が 30万kW 程度に過ぎないということは、それで増やせる再生エネ電力の量もまた 30万kW 程度に過ぎないということだ。800万kW 以上もあるなかで、たったの 30万kW 程度の再生エネ電力を増やしても、ほとんど意味がない。スズメの涙ぐらいの意味しかない。
 再生エネ電力を増やすなら、30万kW とは言わず、400万kW ぐらいは増やすべきだ。そして、その大量の再生エネ電力の変動を吸収するには、送電線では足りず、火力発電の変動に頼るしかないのだ。だから、お金をかけるべきところがあるとしたら、ここなのだ。(たとえば石炭発電をやめて、LNG 発電にする。)
 再生エネ電力を増やすという目的がある。この目的をめざすときには、目的を見失ってはならない。なのに、考えているうちに、余計なところに迷走しがちだ。
 「再生エネ電力を増やすためには、送電線があるといいな。送電線を作るには、お金がかかるから、政府が援助すればいいな。だから予算をたっぷりつければいいんだ」
 などと考えていると、予算のことばかりが気になって、肝心の目的を見失ってしまう。かくて、「たったの 30万kW というスズメの涙」という無意味なことをして、その無意味さに気づかなくなってしまうのだ。……目的を見失ったせいである。

 [ 補足2 ]
 ついでにもう一つ。
 仮に送電線を建設するとしても、その費用は、国が負担するべきではなく、電力会社が全額を負担するべきだ。
 それは当り前だ。自動車だって何だって、炭酸ガス削減のための費用は、当の会社が費用を払う。そのための費用を全額、政府負担でまかなうということはありえない。

 民間会社が自腹で負担するようになれば、費用対効果の悪いものは自動的に排除される。たとえば、こうだ。
  ・ 東電は、 30万kW の送電線のために巨費を払うくらいなら、その金を本州内の太陽光パネル建設に投じる。
  ・ 北電は、 30万kW の送電線のために巨費を払うくらいなら、その金を LNG発電所の建設に投じる。

 こういうふうにして、費用対効果の優れたものを選ぶ。それが当然のことなのだ。なのに政府に「おんぶに抱っこ」というふうにすると、巨額の金が無駄に浪費されることになる。
 ま、どうせ国民の金だから、いくらでも好き勝手に無駄遣いしてやれ、というつもりなんだろう。(それが自民党政府の基本方針。国民のため、という発想は皆無。)

posted by 管理人 at 20:54 | Comment(1) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に [ 補足1 ] [ 補足2 ] を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2021年12月17日 22:09
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