2021年12月16日

◆ トヨタは EV より PHV を作れ

 トヨタは EV に注力する方針を示したが、方向を誤っている。むしろ PHV に注力するべきだ。

 ――

 トヨタは EV に注力する方針を示した。だが、現在のトヨタの EV 開発能力は、 VW 、ベンツ、日産アリアの水準に達していない。( → 前項 )
 こんなに低レベルの状態で、車種数だけをやたらと増やすのは、自殺行為だと言える。焦ったあげく、売れもしない車を大量に生産すれば、大赤字が出るだけだ。
( ※ ちなみに、ホンダは Honda e という車を大赤字で生産しているそうだ。1台生産するたびに 80万円の赤字が出るそうだ。)

 さて。一方で、私は先に、「 HV や EV よりも、PHV を優先せよ」という方針を示した。(2020年12月28日)
 「 2030年には、HV でもなく、EV でもなく、PHV を大々的に普及させるべし」という方針を、私の提案としよう。
 なお、この際、EV も補完的に普及させるべきだ。しかし、2030年になっても、EV はまだ主力とはならないだろう
( → 2030年以後は EV か HV か?: Open ブログ

 詳しい話は上記項目を読んでもらうとして、ともかくここでは「 PHV が近い将来では最有力」という方針を示した。

 これは業界内では珍しい意見である。たいていは、次のいずれかだ。
  ・ 現在は HV が有力だが、欧州車は HV 技術が弱い。
  ・ 次世代技術は EV が最有力だ。

 ここでは、HV と EV ばかりが出てきて、PHV は出てこない。「 PHV が有力だ」という発想は、すっぽり抜けているのだ。
 だから、前項のトヨタの発表でも、EV の話ばかりが出てきて、PHV の話は出てこない。

 ――

 ここで私はトヨタのために、新たな方針を示そう。こうだ。
 「トヨタは HV 技術は世界トップと言っていいが、EV 技術は劣っているので、とても勝負にならない。そこで、当面は PHV に注力するべきだ。PHV ならば、トヨタは三菱と並んで、世界トップの技術をもつ。欧州メーカーよりもずっと優れている。しかも、脱炭素の効果はかなりあるので、EV とも十分に勝負できる。つまり、トヨタが欧州メーカーとまともに勝負するには、EV でなく PHV で勝負するべきだ」

 前項ではトヨタの大々的な EV ショーを紹介したが、トヨタはむしろ PHV ショーを催すべきだったのだ。

 ――

 トヨタがこの点を誤解しているということについては、次の証拠がある。
  → 売れすぎて受注停止 トヨタが読み違えたRAV4 PHVの快進撃
  → やっとRAV4 PHV受注再開! なぜこれほど受注が殺到しているのか?





 RAV4 PHV という PHV の車を出したが、「どうせたいして売れまい」と見込んで少量生産を予定したいたら、注文が殺到したせいで、受注停止になったそうだ。

 RAV4 PHV には、18.1kWh の充電池が付いているので、標準的な EV の半分ぐらいは EV としての能力があることになる。近距離に限って言えば、ほぼ EV だと言える。しかも、価格は EV ほど高くはない。だから、「EV とHV の中間の性能で、中間の価格だ」ということで、現実的には最適解だとも言えるのだ。
 トヨタは、EV の技術能力はなくとも、PHV の技術能力はあるのだから、ここに注力するべきなのだ。それならば、欧州車の EV とも十分に伍して戦うことができる。

 ※ ちなみに、アウトランダー PHEV も、日産アリアや フォルクスワーゲン ID.5 と十分に伍して戦うことができる。

 というわけで、「トヨタは EV よりも PHV で勝負しろ」というのが、私の提言となる。



 [ 付記 ]
 なお、トヨタは RAV4 のほかに、プリウス PHV を出しているが、こちらはちょっと、いただけない。
 トヨタ自動車の米国部門は12月10日、『プリウス プライム』(日本名:『プリウスPHV』に相当)の2022年モデルを発表した。
 二次電池のリチウムイオンバッテリーの小型軽量化、大容量化により、EVモードの航続最大40kmを実現した。
( → エンジン併用で航続1030km、トヨタ プリウス PHV に2022年型…米国発表 | レスポンス(Response.jp)

 40km という数値は、RAV4 の 95km の半分以下だ。RAV4 が「半分の EV 」だとしたら、プリウス PHV は「半分の半分の EV 」だ。これでは魅力が大幅にそがれる。
 ただ、プリウス PHV は、開発時期がちょっと古いので、現代水準ではやや劣っているとしても、やむを得ない面もある。

 ただ、中途半端な PHV であるくせに、補助金だけはいっちょ前にもらえるそうだ。アウトランダー PHEV や RAV4 PHV と同額で、プリウス PHV も 50万円の補助金をもらえるそうだ。
  → 令和3年度補正予算案における補助金

 やっぱり PHV は、お得かな。



 【 関連サイト 】

 → 新型「アウトランダーPHEV」先行予約で目標の約7倍を受注
 
posted by 管理人 at 23:18 | Comment(3) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 前稿(2030年以後は EV か HV か?)も含めて読みました。技術的には仰ることが正論のように思いますが、欧州規制との兼ね合いはどうなんでしょうか? それでも、ここ数年?の特需だけでなく、2030年以降も「PHVが(まだ)有力」なんですか? 2030年時点では有力といえるとしても、それは何年頃までの見込みでしょうか?
 
(1) 2021.4.16付 ロイター
> グリーンファイナンスに関するEU規則草案では、2025年以降、メーカーがPHEVを「サステナブル投資」に分類することを禁じることになり、投資意欲を減退させる可能性がある。一方で、窒素酸化物など大気汚染物質の排出に関して制定が予定されている規則により、PHEVの製造コストが増大するかもしれない。

 https://jp.reuters.com/article/autos-europe-regulations-idJPKBN2C10M3

(2) 2021.7.16付 日経ビジネス
> (欧州委員会は)2035年に発売できる新車について、排出ガスゼロ車のみとする規制を提案した。文面を解釈すれば、対象となるのは電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)のみ。ガソリン車やディーゼル車だけではなく、実質的にエンジンを搭載したハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の販売も禁じることになる。

 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00122/071500086/
Posted by かわっこだっこ at 2021年12月17日 00:52
 未来のことははっきりしないけれど、2030年ごろが転機で、それまでは PHV が多くて、それ以後は EV が多くなりそうだ。

 ……と思っていたんだけど、最近、テスラや中国で EV の技術革新がすごいから、ちょっと前倒しされるかもしれない。

 あと、欧州メーカーには、PHV を作れない会社も多そうだ。
Posted by 管理人 at 2021年12月17日 00:59
スキーのV字ジャンプ、水泳のバサロ泳法など、日本人が欧米人との体格差を克服すべく新しい技術を開発すると欧米にルール改正されて禁止されるのはよくある話です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E7%94%B1%E5%BD%A2
によると、

第1回オリンピックの「自由形」は全員が平泳ぎ

背泳ぎが発明される

第2回は「背泳ぎ」が新たな種目に

クロールが発明される

「平泳ぎ」が新たな種目になり、
「自由形」=「クロール」になる

という歴史をたどったそうです。

・平泳ぎ=ガソリン車
・背泳ぎ=HV、PHV
・クロール=EV
・自由形=エコカー

と置き換えるとピッタリです。

上記Wikipediaに出てこない

・バタフライ=FCV

でいかがでしょうか?

で、自由形の定義を「泳いでいる最中に息継ぎをしないこと(=走行中にCO2を出さないこと)」と決め、「平泳ぎや背泳ぎは息継ぎができるから禁止」として排除しておきながら、レース前や後に酸素ボンベを使う(=車を作るときや廃車にするとき、電気を発電するときにはCO2をたくさん排出する)ことには目をつぶるといったイメージでしょうか。

全世界を走り回るのに息継ぎ禁止なんてあり得ないんですけどね。

Posted by のび at 2021年12月17日 08:34
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