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前項で示した地図(航空写真)を眺めていたら、すぐそばにメガソーラーが設置されているのに気づいた。ここだ。
※ 長和町から南方約 10km の東寄りのところだ。「長門牧場レストハウス」の少し北側だ。
これはまさしくソーラーパネルだ。こんなメガソーラーがどうしてこんなところにあるのか? 珍しいので、情報が見つかりそうだと思ってググったら、まさしくきちんとした記事になって報道されていた。
→ 白樺高原に稼働したメガソーラー、標高1400mが発電にプラスも | 日経
ここは牧場である。長門町が第3セクター方式で運営しているそうだ。長門牧場という。
(有名な出身者として、長門有希がいる。……嘘です。)
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この牧場の一部の土地を、中部電力グループのシーエナジー(名古屋市中区)が借りて、発電所を開発・運営している。
現状の収益性では、十分な投資対効果を見込めなかった。この課題を解消する手段として、長門牧場が活路を見出したのは、遊休地を賃貸し、太陽光発電所を誘致することだった。
土地の借地料が新たな収入に加わることによって、必要な規模を維持しつつ、今後も長期的に牧場として運営し続けられる経営基盤を確立できると考えた。
じつは当初、固定価格買取制度(FIT)の施行を機に、長門牧場が自ら、メガソーラーを開発・運営する構想を持っていた。しかし、太陽光発電所の開発や運営には、牧場とはまったく異なる技術や知見が必要になる。最終的に、独自の開発・運営は断念した。
こうして導入した最初のメガソーラーは、NTTファシリティーズによる出力約4.2MWの発電所だった。自社開発を断念した後、同社を紹介されて土地を貸し、2015年に稼働を開始した。
次に稼働したのが、シーエナジーによる出力約18MWのメガソーラーだった(図3)。こちらは当初からシーエナジーのメガソーラーを誘致し、開発してもらう方針だったという。
図3 は、下記だ。
→ 全景画像
その航空写真は、下記だ。( Google 地図よりも新しいので、太陽光パネルが掲載されている。)
→ Bing 航空写真
太陽光パネルの足元は、下記のようになっている。
→ 近接画像
つまり、ここはずっと牧場のままなのであって、牧場でなくなったわけではない。
また、そもそもここは、普通の農地とは違う。牧場だ。牧場というのは、農地ではなく、山林・原野に分類されるそうだ。
牧場の評価方法は、山林・原野の評価方法に準じます。
( → 農地・山林・牧場・原野などの評価方法はどのようになっている?【相続の評価】 | 遺産相続弁護士相談広場 )
とはいえ、登録上の地目が何であろうと、実質的には耕作可能である土地は、農地法上の農地として規制を受けるそうだ。
農地法上の「農地」とは「耕作の目的に供される土地」をいい、「採草放牧地」とは「農地以外の土地で主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧に供されるもの」とされています。
いずれも土地の現況に着目して判断されますので、土地登記簿上の地目が山林、原野など農地以外のものであっても、農地や採草放牧地として利用されていれば農地法の規制を受けることとなります。
なお、耕作放棄地等の休閑地であっても、耕作しようとすればいつでも耕作し得る状態にある土地は「農地」であると判断されます。
( → 農地の権利移動のための法律 〜農地法とは〜 )
この意味で、牧場だからといって、容易に農地転用ができるわけではないようだ。
それでも、農地に太陽光パネルを設置することは、牧場では可能となっているわけだ。
農地に太陽光発電を設置する際は農地転用の許可を得なければなりません。
許可なしに転用した場合、3年位以下の懲役または300万円の罰金。都道府県知事から現状回復と工事中止を命じられます。これに従わなかった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に課せられます。
例外として、農地転用を行わなくても、太陽光発電を設置できるソーラーシェアリングという方法があります。これは一定の条件を満たせばで設置することができます。
( → 農地に野立て太陽光発電を設置するには『農地転用』の手続きが必要 | 太陽光発電投資の基礎知識 )
ここに「ソーラーシェアリング」という言葉があるが、長門牧場がこの制度を使ったという情報は見出されなかった。
長門牧場がどうして太陽光パネルを設置できたのかは不明だが、普通の農地でなく牧場であったことが大きな要因であったのかもしれない。詳細は不明だ。
ただ、次の二点は重要だ。
・ こういう事例があるということ。(山間の平地部の有効利用)
・ その事例では見事に成功していること。(前項の提案が有効なこと)
この二点に留意しよう。
まあそれはどうでもいいんですが、この場所は、「八ヶ岳中信高原国定公園」に入っているのではないでしょうか。(下のリンク内の図を参照。緑の区域が国定公園で、紫の区域が国立公園。)
https://www.pref.nagano.lg.jp/shizenhogo/kurashi/shizen/koen/syoukai.html
すると、この土地の地目(牧場とか田とか畑)を変更するにあたっては、「農地法」ではなくて「自然公園法」が適用されるのでは(きちんと調べ切れてないですが……)? 少なくとも、農業委員会みたいなややこしいところが転用の許認可権を握ってははいないように思われます。管轄(主務官庁)も、農林水産省ではなくて環境省ですし(※)。そういった点も、この土地にメガソーラーがうまく設置できた(実現した)ことに関係しているかもしれません。
※ 国立公園は国の管理ですが、国定公園は都道府県の管理なので、主には長野県の環境部?