2021年12月09日

◆ 太陽光発電は屋根より中山間地で

 住宅の屋根に太陽光パネルを設置することが推進されているが、むしろ、中山間地に太陽光パネルを設置するべきだ。

 ――

 政府の方針では、住宅の屋根に太陽光パネルを設置することが推進されている。FIT の買い取り価格には、明白な差がある。
住宅用太陽光発電(10kW未満)  21円
事業用太陽光発電         12円+税

 このように料金に格差を付けることは、不当である。特に、住宅用には過剰に高い金額を付けるのは、「隠れた補助金」であるから、そのための費用は電気料金に上乗せされて、「隠れた税金」となって徴収されているのに等しい。
 それをやめれば、その分、電気料金は値下げされる。そうなるのが好ましい。
  → 屋根に太陽光パネルを載せるな: Open ブログ

 ――

 とはいえ、そうすると、太陽光発電の発電量の総量が減ってしまう。それでは困る。では、どうするべきか? 
 その点については、前に妙案を示した。
 「耕作放棄地(休耕田)に太陽光パネルを設置すればいい」
 と。そのためには、
 「農地転用の禁止」
 という法律を改正すればいいのだ。
  → 太陽光発電を増やす妙案: Open ブログ
  → 太陽光パネルの設置禁止 : Open ブログ

 ――

 ここまでは、すでに述べたとおりだ。
 本項ではさらに、もう一つの提案を加える。こうだ。
 「耕作放棄地(休耕田)に太陽光パネルを設置するだけでなく、中山間地
の耕作地にも太陽光パネルを設置するといい」

 これはどういうことか? 
 「耕作地に太陽光パネルを設置するというのは、土地の有効利用の点ではもったいないぞ」
 という反論が出そうだ。
 だが、そうではないのだ。

 関東平野や濃尾平野のような大きな平野には、耕作放棄地としての広大な空き地が眠っている。そこに太陽光パネルを設置することは可能だ。(既出)
 とはいえ、平地に太陽光パネルを置くのは、ちょっともったいない。農地としても十分に適している土地を、農地に使わないのは、ちょっともったいない。

 一方で、中山間地というのは、たとえ農地として使っているとしても、農地には適さない。たとえば、内陸部の川沿いの平地部には、(とてもゆるやかな)段々畑や、段差のある田んぼがある。傾斜はとてもゆるやかなので、人が田植えをするのには何ら支障はない。とはいえ、わずかながらでも段差があると、トラクターのような大型機械を投入するのには向いていない。そのせいで、大規模農業による効率アップは望めない。
 こういう中山間地が、日本の内陸部の川沿いには、たくさんあるのだ。
 たとえば、こんな感じだ。











 こういう土地は、仮に農業をやるとしても、体の負担は大きいし、能率は低い。とても高収入は望めない。
 ならば、こういう土地は、太陽光パネルを設置することにした方が、土地の利用効率は高いのだ。
 そして、こういう土地で農業をやめた分、平野部の耕作放棄地で農業をやればいいのだ。

 ――

 実を言うと、日本の内陸部の川沿いには、人口が多すぎる。そこは土地生産力が低くて、人間が農業をして生活するのには不適切なのだが、昔から伝統的に生きていた人々が多いので、なかなかその土地を離れることができない。
 かくて、川のそばという危険な土地に、今でも多くの人々が住んでいて、洪水のたびに、大きな被害が生じる。(地球温暖化のせいもあるが。)

 一方で、大きな平野部の周辺では、若い人が東京などの大都市に移動していくので、人口減と過疎化が進む。そのせいで、耕作放棄地や休耕田も増えていく。


kousaku-houkichi-suii.png
出典:耕作放棄地とは何か?


 これらの土地は、農地として適していないわけではないのだから、十分に耕作することが可能なのだ。だから、ここに人を招いて、耕作を推進するべきなのだ。(太陽光パネルを設置するよりも)

 ――

 以上によって、何をすればいいかがわかっただろう。
  ・ 耕作に不適切な中山間地には、太陽光パネルを置く。
  ・ そこにいた人々を、平野部の耕作放棄地に招く。


 こういう形の人口移転を推進すればいいのだ。
 しかもそれは、「人々の危険を下げる」という効果もある。なぜなら、中山間地の多くは、洪水や山崩れなどの危険のある土地だからだ。

 人には「適材適所」という方針があるが、農産物や太陽光パネルにも「適材適所」という方針が当てはまる。どこに何を置くのが最善になるかを、よく考えるべきだ。

 逆に、やみくもに「太陽光パネルを設置しよう」という方針を取ると、馬鹿げたことが起こる。
  ・ 屋根に太陽光パネルを設置して、高コスト・高価格にする。
  ・ 山の急斜面を削って、太陽光パネルを設置する。(環境破壊)

 これが現状の方針だ。こういう馬鹿げたことをやめよう、というのが、本項の主張だ。



 【 追記 】
 「中山間地」という言葉は不適切だったかもしれない。この言葉は、山中の段々畑を示すことが多い。だが、本項で言うのは、山中の傾斜地ではなく、山間の平地部(川沿いの地域)のことだからだ。ごく緩やかな傾斜があるだけにすぎない。(上の写真を参照)

 こういう川沿いの緩い傾斜地のことを、何と言うのかというと、どうも、適切な言葉がないようだ。「盆地」でもないし。
 本項ではとりあえず「中山間地」という言葉を使ったが、その意味合いは上記の意味合いなので、混同しないようにしてほしい。

 方針としては、こうなる。
  ・ 川沿いの緩やかな傾斜地には、太陽光パネルを置くべきだ。
  ・ 山中の段々畑は、果樹園ぐらいにして、放置するべきだ。


 これは、次のことも意味する。
 「中山間地における、一般農業の推進」という現在の政府政策を、やめるべきだ。非効率な農業は、推進するべきではない。かわりに、人口の移転を促進するべきだ。

 以上のような結論となる。



 【 追記2 】
 「中山間地」という言葉は不適切だった、と上に述べたが、それに代わる言葉もないようだ。(コメント欄の議論を参照。)
 そこで新たに造語して、言葉を定めよう。こうだ。

 《 低山間地 》…… 山間にあって、川沿いとなる細長い平地


 これに当てはまらない類似語は、こうだ。
  ・ 山間にあるが、複数の川がある、広い平地 → 盆地
  ・ 山間にあるが、そばに川がない、広い平地 → 丘陵


 こうして新たに「低山間地」という用語が定義された。
 とはいえ、一般には公認されていないので、当面は使わないでおく。

 ――

 ※ 「低山間地」は、従来の分類法で言うと、平地でもなく山林でもないので、まさしく「中山間地」に分類されるようだ。とはいえ、「中山間地」という言葉で典型的に示されるのは、山腹にある傾斜地(そこを段々畑にしたもの)である。そのイメージと「低山間地」のイメージは、大きく食い違う。そこで新たな用語を導入したわけだ。

 ※ 上では「盆地」と「丘陵」を示した。このうち、「盆地」は「低山間地」と同類であり、「丘陵」は「中山間地」と同類である。同類のもの同士は、いっしょにひっくるめて考えてよさそうだ。つまり、「盆地」は広い意味で「低山間地」に含まれ、「丘陵」は広い意味で「中山間地」に含まれる。



 【 関連項目 】
 個人住宅の屋根に置くのは、太陽光パネルよりは、太陽熱温水器の方がいい。この件は、別項で論じた。
  → 屋根に太陽光パネルを載せるな: Open ブログ
 
posted by 管理人 at 23:57 | Comment(11) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「中間産地」管理人様の造語?それとも「中山間地」のタイポ?
それはさておき、「中山間地」は元の雑木林に戻すべきでしょう。保水のために。人口が減っていくんだから、発電は平地でやればいいのでわ。
傾斜地で発電はもってのほか。全く保水が効かなくなり大惨事。北朝鮮では山を丸刈りにして畑にしたら大洪水になり提唱者が死刑になったとか。
Posted by Sourcetree at 2021年12月10日 11:37
 ご指摘ありがとうございました。修正しました。(「中間産地」と「中間山地」の二つがありました。間違えやすい音声なんですよね。)

 傾斜地は、本項では対象となっていません。あくまで段々の平地が対象です。

 保水力の点では、低い草が生えるだけでも何とかなるでしょう。十分ではないとしても、上の写真のような(傾いた)平地ならば、それでもいい。(山の斜面と違って、保水力はあまり要求されない。)

 もともと雑木林だったかどうかは不明だ。川沿いの平地は、もともと草地だった可能性が高い。山の斜面とは違う。
Posted by 管理人 at 2021年12月10日 13:12
 最後の直前に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2021年12月10日 13:34
田舎暮らしで小規模の稲作をしてますが、どんどん放棄地が増えています。廻りが作っているので止められず毎年赤字でも行っていますが皆止めたいのが本音、田んぼにソーラーが一番良いですね。
Posted by 殿屋 at 2021年12月11日 09:43
> こういう川沿いの緩い傾斜地のことを、何と言うのかというと、どうも、適切な言葉がないようだ。「盆地」でもないし。

⇒ 「扇状地」でしょうか(下のリンクの図を参照)。扇状地も、上流(標高の高いほう)から順に、扇頂、扇央、扇端というそうですが、リンク先からの記載より、「扇状地の扇央部」ということになりますか。

 https://juken-geography.com/systematic/alluvial-plain/

 ・扇頂・扇端: 集落が古くから立地。水田が多い。
 ・扇央:    昔は集落はあまりなかった。畑や果樹園として利用。

 ※別の記事の記載より(リンク省略)
 扇状地は河川上流域の山地と平野の境界に形成されます。扇状地では、谷口に近い扇頂と、扇の末端部分である扇端は水が確保しやすいことから、集落が発達します。一方で、水無川となり水に乏しい扇央では、水が得にくいため、森林や畑、桑畑、果樹園などが広がっています。
Posted by かわっこだっこ at 2021年12月11日 10:52
 上の補足です。本稿で例示された場所は、長野盆地や松本盆地や佐久盆地の中の扇状地部分だと思われます(よって盆地といえば盆地)。盆地は、河川の浸食によってもできるそうですが、この大きな長野盆地や松本盆地や佐久盆地(フォッサマグナの一部)の場合は、まず、大規模な地質活動によって形作られたようです。その中で、盆地を貫く千曲川や犀川へ流れ込む水流(支流)による堆積作用でできた扇状地が、これら盆地の辺縁のあちこちにみられるというイメージでしょうか。

 https://www.pref.nagano.lg.jp/koho/kids/menu02/yamakawa.html
Posted by かわっこだっこ at 2021年12月11日 12:41
> 扇状地は河川上流域の山地と平野の境界に形成されます。

 ここは、平野部ではなくて、長野県の高地の渓谷部です。両側の高い山脈に挟まれた、谷間の部分です。

 ただし、いわゆる谷間が「細い谷川があるだけ」であるのに対して、ここはかなり幅広い平地部があります。それは、川沿いにある細長い領域です。そこは、決して平野の一部ではないので、扇状地ではないでしょう。

 上流から運ばれた土砂が、なだらかな場所で平地を作ったという意味では、扇状地に似ているが、もともと平野部ではなくて高地の山間部だという意味では、扇状地だとは言えない。扇状地に似ている何かだ。

 河川敷という言葉の方が適していそうだが、それよりはもっと広い。盆地といえば盆地かもしれないが、特定の一箇所にとどまらず、川沿いに延々と長く長く続いている。上流から下流までずっと続いているとも言える。それは盆地とも言いがたい。


Posted by 管理人 at 2021年12月11日 13:41
 最後の直前に 【 追記2 】 を加筆しました。
 「低山間地」という用語を導入した。
Posted by 管理人 at 2021年12月11日 18:02
 なるほど。そういう場所の名称であれば「低山間地」でもいいのですが、従来から「谷底平野(こくていへいや)」「谷底低地」という言葉はあるようですね(下のリンク@の図、リンクAの図と表を参照)。

 @ 国土地理院のサイト
 https://www.gsi.go.jp/kikaku/tenkei_kasen.html#%E8%B0%B7%E5%BA%95%E5%B9%B3%E9%87%8E

 A 太陽光発電協会のサイト
 https://www.jpea.gr.jp/industry/setting/
Posted by かわっこだっこ at 2021年12月11日 22:28
> 「谷底平野(こくていへいや)」「谷底低地」

 なるほど。情報ありがとうございました。大変、参考になりました。

 本文で例示した場所は、まさしくその用語がピッタリとなる感じですね。

 ただ、その定義に従うと、
 「沖積低地の一種で、幅1〜2km以下の狭長な谷間の低平地」

 とのことなので、それより幅が広い場所は当てはまらなくなります。たとえば、この近くでは、佐久市、小諸市、上田市など。いずれも、佐久盆地、上田盆地のように、盆地という語で呼ばれます。
 しかし、谷底平野との違いは、幅が 2km を越えるか否かという点だけであって、本質的には同類なので、谷底平野と盆地というふうに別々の名称・概念で区別するのは不自然です。

 やはり、谷底平野と盆地とその中間的なものは、すべてひっくるめて、「低山間地」のような同一の用語で呼ぶ方が自然な分類でしょう。
Posted by 管理人 at 2021年12月11日 22:51
 たぶん、幅が広くなると、「河岸段丘(の段丘面)」のように呼ぶらしいのですが、国土地理院のサイト(※)の画像・図をみると中流域の感じになってしまうので、「山間(山あい)にある広い平地」という感じで呼ぶなら「低山間地」のほうが自然かもしれませんね。

 ※ どうも、URL が 〜.html で終わると張り付かずエラーになるようですので、記載は省略します。
Posted by かわっこだっこ at 2021年12月11日 23:28
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