2021年12月01日

◆ 日大の理事長の犯罪

 日大の理事長が逮捕された。この問題をどうすればいい? 

 ――

 今回、脱税で逮捕されたが、それは本質ではない。次の解説が妥当である。
 本当は、例えば横領であるとか背任であるとか、もう少し芯のあるような罪で検察は捕まえたいけれど、立証が難しいんですよ。脱税がいちばん簡単なんです。
 これは日本だけではありません。アメリカでギャングの親分のアル・カポネが捕まったときにも、彼はありとあらゆる不正に手を染めていたのだけれど、どれも証拠が集まらずに立件できないと。困って最後に捕まえる手段として選んだのが脱税だったんですよ。だから本当は他の罪で捕まえたいけれど、証拠が揃わないし立証が難しいから、一番立証しやすい脱税で、という。
( → 日大・田中理事長逮捕 「他の罪は立証が難しいので、まず一番立証しやすい“脱税”で」辛坊治郎が解説 ? ニッポン放送

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 では、肝心の本体となる犯罪はどうか? 
 実は、この件はすでに2度、本サイトでも論じている。
 日大の大学理事長が賄賂を着服していた、という横領事件があった。これは個人犯罪というより、根源的な問題がありそうだ。
 これはただの(悪党による)個人犯罪で片付けるべきではなく、もっと構造的な問題が根源にあるはずだ。つまり、理事長の暴走を止められないような制度があるはずだ。それは理事長への権限集中を止められない、一種の独裁制度である。(菅首相がやったことに似ている。)
( → 大学理事長の暴走: Open ブログ

 日大の理事長は、不正をしたことが判明しているのに、いまだに解任されない。これを放置する文科省は、どうかしている。
( → 日大理事長の背任を放置: Open ブログ

 ただの横領・背任といった金銭的な犯罪だけでなく、理事長の暴走を留められない制度的な問題がある。また、それを放置する文科省の責任もある。……そういうふうに論じてきた。


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 この件でさらに考えると、本日の朝日新聞・朝刊の記事がある。
 最高議決機関として大学経営の中心に位置する理事会は、田中理事長ら一部のメンバーが取り仕切り、「理事会での反対は許されない。内部統制はまったく効いていなかった」(職員の一人)とされる。
( → リベート、15年ごろ合意か 脱税事件、日大理事長側近と法人側:朝日新聞

 では、どうすればいいか? 上記記事には、一応の対策が示されている。
  文科省が設置した有識者会議は、学校法人の最高議決機関を、学長らが中心の理事会から、学外の人だけでつくる評議員会に変更する案を柱とする報告書を、12月3日にまとめる予定だ。
 私立大側は、この改革案が見えてくると、反発を強めた。「大学の実情に詳しくない人ばかりで議論しても、長期的視野で教育や研究に関する経営判断をすることは難しい」との考えからだ。専門家の間でも「評議員会が理事会に取って代わるだけになるのでは」との声がある。
 11月29日にあった自民党文部科学部会でも、有識者会議案に批判的な声が大半を占めた。文科省もこうした声は無視できず、有識者会議の案がそのまま法案化されるかは不透明だ。

 「学長らが中心の理事会から、学外の人だけでつくる評議員会に変更する」という案が出たが、大学側からは反発を食うし、専門家からも批判されるし、自民党文部科学部会からも批判される始末だ。 文科省が設置した有識者会議の案というのは、これほどにも駄目なのである。
 困った。どうする?


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 そこで、困ったときの Openブログ。まともな案を出そう。
 それに当たっては、物事の根源を考えるといい。根源を探るには、過去の歴史を知るといい。すると、次のことがわかる。
 
 大学の理事長が独裁的な権限を駆使して、内部統制が利かない……というのは、まるで癌細胞のような出来物であるかのように感じられる。しかし、そうではない。それは望まないのに発生した出来物ではなくて、あえて招き寄せたものなのである。比喩的に言えば、自然界でひとりでに発生したコロナウイルスのようなものではなく、某国の研究所で人為的に改変されて作り出されたコロナウイルスのようなものなのである。自然発生的なものではなく、人為的に生み出されたものなのだ。
 理事長が独裁的な権限をもって独走するというのは、想定外の困ったことではない。もともとそうなるように狙って決めたことなのだ。
 なぜか? 経済界では、「会社経営は社長がトップダウンで決めるべきだ」という伝統的な方針がある。日産のゴーンもそうだった。そこで、これと同じ方針を取ることで、大学経営もトップダウンで迅速で効率的な経営ができるはずだ、と掲載会の人々は考えた。たとえば、下記文書だ。
  → 経済同友会「大学改革が進まない要因はガバナンスの機能不全にある/今こそ意思決定システムの改革を」
 教授会がさまざまな決定権限を有しているので、大胆な改革は進まないのです。
 こうした現状を改革するためには、やはり、学長や学部長を教員による選挙で選ぶ方法から脱却する必要があります。理事会が学長を選任し、学長が学部長を選任する、すなわち、学長選挙、学部長選挙の廃止が必要です。従来の下からの意思決定のベクトルを、上からのベクトルに転換していかなければなりません。

 学長選で学長が教授によって選任されるという民主的な方法を否定して、理事長による専決を求めている。こうして独裁的な制度が推進された。

 文科省もまた、民主的な学長選を排そうとした。
 国立大の学長は教員の投票で選ばれていた。それが、2004年に国立大が法人化されてからは法律で、学外の企業経営者らを含む「選考会議」が学長を選ぶ仕組みになった。最終的には、大学側の申し出に基づいて文部科学相が学長を任命する。文科省は選考に外部の視点を入れ、より指導力のある人物の選出を求めた。

 しかし実際には、多くの国立大で「意向投票」という名の教員投票が残り、その結果を選考会議が尊重するケースが多かった。
 ところが今回の東大総長(学長)の選考では、意向投票に先立つ予備選で得票1位だった候補者が、意向投票の対象から外れた。「選考会議が恣意(しい)的に外したのではないか」(東大教授)との批判が多くの教員から出たが、選考会議は10月2日、来春からの次期総長に藤井輝夫副学長を選出。

 学長をトップダウンで選ぶ傾向は、徐々に強まっている。文科省は14年、教員による意向投票の結果をそのまま学長選考に反映させるのは「適切でない」と通知した。さらに文科省や内閣府などは今年3月、……選考会議が「意向投票によることなく」選ぶべきだと明記した。
 意向投票1位の候補が学長に選ばれなかったり、意向投票をしなかったりする例は、佐賀大や北海道教育大など、ほかにも出ている。
( → 混乱する国立大の学長選考 教員の意向かトップダウンか:朝日新聞

 学長を選ぶのに、教授会の専任で民主的に決めるというのが従来の方式だった。ところがそれを否定して、理事長などがトップダウンで決める独裁的な方針を取ることに改変された。「独裁方式こそが最も強力で優秀なのだ」という方針が取られたのだ。(まるで中国政府みたいだ。)
 そしてそれは、安倍首相・菅首相(当時)の方針にも合致していた。だからこそ、大学はどんどん独裁化していったのだ。そこにすべての根源があるのだ。

 ――

 では、どうしてこういう馬鹿げたことが起こったのか? その理由は、次の文章からわかる。(出典は先の経済同友会 PDF )
 事実上、教授会がさまざまな決定権限を有しているので、大胆な改革は進まないのです。企業でいえば、一般社員が役員や社長を選んでいるようなものです。

 なるほど。「一般社員が役員や社長を選んでいる」というのでは、ひどいことになりそうだ。そんな制度は認められないだろう。
 そして、それを大学に当てはめれば、こうなる。
 「学生が教授や学長を選んでいる」
 こういう制度があれば、ひどいことになりそうだ。だから、こういう制度は認められない。
 だが、現在のシステムは、
 「学生が教授や学長を選んでいる」
 のではない。かわりに、
 「教授が学長を選んでいる」
 のだ。それに匹敵するのは、
 「重役会が社長を選ぶ」
 ということだ。これは別におかしくはない。

 要するに、こうだ。
 「教授会が学長を選ぶ」というのは、「一般社員が役員や社長を選ぶ」のと同等だと見なされて、否定された。しかしそれは、比喩のすり替えだった。「教授会が学長を選ぶ」というのは、「一般社員が役員や社長を選ぶ」のではなくて、「重役が社長を選ぶ」のと同等なのだ。なのに、そのことを見失って、「一般社員が役員や社長を選ぶ」のと同等だと思い込んだ。そういう勘違いの上に、「独裁的なトップダウン制度こそが最良だ」と思い込んだ。

 こうして根源的な勘違いが、進むべき道を誤らせたのだ、と言える。そして、その結果が、トップ暴走を誰も止めることができない、という状況になったのだ。

 ちょうどコロナの惨事のさなかで、菅首相の暴走( GoTo 邁進)を、誰もが留められなかったように。そのせいで大量の死者が発生したように。

 そして、この惨事を忘れて、あっさりと自民党に政権を渡すから、日本では毎度毎度、ひどい惨事が繰り返されるのである。

 大学の惨事が繰り返されるのも、また同じ。


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posted by 管理人 at 23:07| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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