2021年11月30日

◆ パナソニックは電池事業を売却せよ

 パナソニックの EV用電池の事業は、没落の一途なので、売却するべきだ。

 ――

 前日項目 では、日産の EV事業を紹介した。それを報じる朝日新聞の記事で、パナソニックの EV用電池の事業が没落の一途だ、と紹介されている。
 かつて世界首位だったパナソニックは中韓勢に押されている。世界シェアは1割強と世界3位で、設備投資には慎重だ。以前は車載電池を家電に代わる主力事業に位置づけていた。米EVメーカーのテスラなどに納入してきたが、投資がかさみ電池事業は赤字傾向だった。19年には電池事業を収益改善が必要な「再挑戦事業」に格下げした。
 猛烈なスピードで技術革新が進む車載電池は新製品が次々と登場する。工場を新設しても、電池が時代遅れになれば、投資が回収できず赤字になる。「脱炭素の流れは追い風だが市場環境は厳しい。もう主流事業ではない」(社員)との声があがる。
 自動車業界に詳しいみずほ銀行の湯進(タンジン)・主任研究員は「日本の電池産業は量で勝負しても中韓勢には勝てない。技術と品質で差別化するしかない」という。
( → EVシフト、命運握るのは車載電池 「中国・韓国に量では勝てない」:朝日新聞

 一方で、その間に、CATL は急増している。同じ記事に、こうある。
 CATLは巨額の資金を投入して電池工場を増設している。20年2月以降に公表した設備投資額は1兆5千億円を超える。25年には生産能力を20年の約5倍にまで引き上げる見込みだ。
 経済産業省幹部はCATLについて、「政府の政策によって短期間で生産規模を拡大した。そこで蓄積した技術と巨額な資本でグローバル市場で独り立ちした」と指摘する。

 別記事には、こうある。
 中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は10月27日、2021年7〜9月期の決算を発表した。それによれば、売上高は前年同期の2.3倍の292億8700万元(約5230億6600万円)、純利益は同じく2.3倍の32億6700万元(約583億4860万円)と、大幅な増収増益を達成した。
 CATLは高い技術力と生産能力をテコに、急成長する市場でシェアを伸ばしている。車載電池の業界団体のまとめによれば、中国市場での1〜9月のメーカー別シェアは首位のCATLが50.8%を確保。2位の比亜迪(BYD)の16.0%、3位の中航?電科技の6.1%を大きく引き離した。
 今回発表した7〜9月期の決算報告書を見ると、2021年9月末時点で建設途上にある生産拠点への投資総額は214億9500万元(約3839億円)と、2020年末時点の3.7倍に急増した。また、1月から9月までに投じた研究開発費の総額は45億9500万元(約820億6700万円)と、前年同期の2倍以上に増加している。
( → 中国電池「CATL」が猛烈な生産能力拡大に走る訳 | 東洋経済

 パナソニックが事業を停滞させる一方で、CATL は1年間に売上高と利益が 2.3倍。投資総額は 3.7倍。研究開発費は 2倍以上。とんでもない急成長ぶりだ。パナソニックと比べれば、月とスッポンというような差だ。


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 では、どうしてこうなったか? 上記記事には、こうある。(再掲)
 「日本の電池産業は量で勝負しても中韓勢には勝てない。技術と品質で差別化するしかない」という。

 「政府の政策によって短期間で生産規模を拡大した。そこで蓄積した技術と巨額な資本でグローバル市場で独り立ちした」

 だが、これらはいずれもおかしい。
 (1) 量が問題だというのなら、一時は世界トップだったパナソニックこそ量的に優位だった。(2位でも悪くはない。) だが、量的に優れていたときに、どんどん没落していった。だから、量の問題ではないのだ。
 (2) 「グローバル市場で独り立ちした」というのも、ピンボケだ。それは CATL がまだ弱小メーカーだったころの話だ。現在の急成長とは何の関係もない。

 結局、(1)(2)からして、関係者の指摘はまったく見当違いだ。ではなぜ、CATL は急成長したか? 


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 なぜ CATL は急成長したか …… という話は、実は、前にも記したことがある。そこでは次の記事を引用した。
 《 中国CATL、EV電池首位疾走 世界から技術者 》
 以前は違った。トヨタなど世界の車メーカーは、中核技術の電池は内製するか、技術優位にあった日本や韓国の大手電池メーカーの供給に頼っていた。だが「その戦略が通用しなくなり始めた」。
 背景には電池の製造技術がこの数年で急速に進歩し、液晶パネルや太陽電池と同様に「装置産業化」が著しくなったことがある。大量に製造し、資金力のある企業がさらに有利となり、技術優位にあった日韓勢も厳しくなった。

 CATLはボッシュや独コンチネンタル、仏ヴァレオなど世界の部品大手から技術者を大量にスカウトして他社に差をつけ、足場を固めた。関係者は「ボッシュ出身者だけで20人いる」と話す。
 さらに中国政府と組み、海外で活躍する超一流の技術者を高待遇で中国に迎え入れる
 独BMWの高級多目的スポーツ車(SUV)への供給を通じ、BMWから電池技術を吸収できたことも成長に弾みをつけた。
( → 日本経済新聞

 その上で、次のように結論した。
  どうやら欧州の優秀な技術者を高給で招いて、先端技術を吸収したらしい。それが急成長の理由だったようだ。
 これと同様のことは、韓国の自動車メーカーもやって来た。(欧州の技術者やデザイナーを高給で招いた。)
 少し前には、韓国の電子系の会社が、日本の電子系の技術者を大量に招いていた。「週末だけ韓国に招く」というような形で、NEC やシャープなどの先端技術者に教えを請うた。こうして日本の先端技術がサムスンや LG に流出した。(「技術者を冷遇する日本の会社が悪い。自業自得だ」という声も出た。)

 で、その間、日本の会社は何をしていたかというと、「リストラ」で技術者を冷遇することばかりだった。まして、「欧州から優秀な技術者を高給で招く」というような発想はなかった。ひたすら「リストラ・コストカット・給与カット」ばかりをめざした。そのせいで、技術もカットされて、シェアもカットされて、会社そのもの( or 事業部)もカットされてしまった。(自業自得。)
 シャープ、NEC、日立、東芝、富士通などの電子部門が、今やどうなっているのかを思うと、感慨に耽るしかない。「社員をリストラすることばかりを考えていて、会社そのものがリストラされてしまった」わけだ。
 で、その間に、CATL はせっせと高給を払って、会社を急成長させたわけだ。

 皮肉っぽく言えば、CATL が急成長したのは、日本の会社がリストラに熱中していたおかげなのである。日本の会社が、社員をリストラして、自分自身をリストラしてしまったから、それで自滅した分、CATL が急成長できたのだ。

( → CATL(世界一の電池会社): Open ブログ

 ここで新たに結論を言おう。こうだ。
 「 CATL が急成長した理由は、量的に投資を拡大したからではない。質的に水準を高めたからだ。その理由は、世界中から最優秀の人材を招いたからだ。その方法は、高い給料を払うことだった」


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 つまり、高い給料を払って、最高の人材を得て、最高の技術を目指した。そのことは、次の記事からもわかる。
 CATLが躍進した原動力は、海外企業で活躍していた一流の技術者たちだ。曽毓群会長自身が物理学博士号を持つ技術者であり、業界トップレベルの研究開発体制を構築しようとしている。また、中国通信機器大手から海外事業の経験者、さらに独ボッシュなど自動車部品大手から技術者を大量にスカウト。20年6月末時点で、研究開発人員は5368人と従業員全体の2割を超えた。特に400人超の電池管理システム(BMS)部門は世界最大規模だ。
 研究開発人員に対し、業界平均より約4割も高い給与水準を設けるとともに、従業員向けの持ち株奨励制度も設けている。20年末時点で4573人に総額約10.5億元(約164億円)の自社株を与えて人材を確保し、経営の足場を固めた。
 本社施設、工場・研究センター、社員寮・マンション、ホテルが一体化された企業城下町の通称CATL村には、海外から帰国した博士約150人、修士約2000人を含む技術者が働いている。
( → ガソリン車ゼロ時代: EV用バッテリーで世界シェアトップ 「中国・CATL」の知られざる正体

 これは、CATL だけの方法ではない。アップル、テスラ、サムスンにも共通する方法だ。いずれも最高レベルの給料を払い、最高レベルの人材を集めて、最高レベルの技術水準を達成した。また、博士号をもつ高度なレベルの研究者を集めた。
 一方、日本企業の方針は、これとは正反対だった。
 「なるべく低い給料を払って、なるべく成果報酬を切り詰めて、凡庸な人材ばかりを集めた。また、修士号や博士号をもつ高度なレベルの研究者を採用することはなく、学部卒の学生ばかりをやたらと採用した」
 その結果は? 彼らのめざしたことは、「賃金コストの引き下げ」だけだった。それはまさしく達成された。しかしそのとき同時に、会社全体が没落した。会社の頭脳が秀才から凡才に転じたいのだから、会社全体が一流から二流に成り下がるのは当然のことだった。かくて、日本の電器系の会社はすべて没落した。パナソニックは、いくらか耐えていたが、数年遅れただけで、結局は没落した。

 日本の電池事業が没落したのは、技術者が馬鹿だったからではない。優秀な技術者を集めようとしなかった(ろくに給料を払わなかった)経営の方針だったのである。
 そして、そういう経営ミスに気づかないまま、別のことが理由だと思って、ああだこうだと論じているのが、評論家や役人だ。
 

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 先に記したことを再掲しよう。
 ひたすら「リストラ・コストカット・給与カット」ばかりをめざした。そのせいで、技術もカットされて、シェアもカットされて、会社そのもの( or 事業部)もカットされてしまった。(自業自得。)

 このことに気づかないようでは、お先は真っ暗だ。比較的給料の高い自動車産業は、まだ生き残れる目があるが、肝心のトヨタは、企業内労組が御用組合なので、給料があまり上がらない。このままだと、トヨタはまともな人材を集めることができなくなって、パナソニックのように没落しかねない。
 御用組合が給料引き上げに及び腰であればあるほど、かえってトヨタという会社が没落してしまうのだ。「優秀な人材が来なくなる」という形で。
 そして、その傾向は、すでに見られる。トヨタは今、没落への道を進みつつある。

 ※ 日産自動車はもっとひどいかもしれない。今の日産自動車は、東大卒がゴロゴロといるが、最近では東大卒に見放されているからだ。
  → トヨタ・日産・ホンダ「採用大学」ランキング2020!ホンダ1位は芝浦工大、トヨタと日産は?
  → 【大学ランキング】揺れる日産自動車 就職者数が多かった大学は?
  日産は過去に採用した技術者の頑張りで戦えているが、最近の技術者のレベルダウンはひどい。今のような傾向が続くと、将来的には没落しそうだ。
  ホンダに至っては、論外である。お先真っ暗だ。

 ※ 日産が生き延びるには、給料を上げるだけでいい。トヨタとホンダが生き延びるには、東京か筑波に研究所を設置することが必須だろう。お山に閉じこもっているだけでは、最優秀の人材を集めることはできない。

 ――

 おっと。最初に掲げたテーマを忘れてしまうところだった。
 最後にこう結論しておこう。
 「パナソニックは、自社の経営では電池事業を維持することはできない。ゆえに、電池事業を売却するべきだ。経営が無能ならば、経営が有能な会社に、経営権を委ねるべきだ。それが最善だ」

 では、売却先は? CATL や LG は買ってくれないだろう。わざわざゴミを買う必要性がない。買ってくれるとしたら、日産自動車の電池部門だった会社だけだ。エンビジョンAESC という。
  → 日産の電池会社、中国資本で再出発 パナを猛追: 日本経済新聞
  → 電動車が追い風に!エンビジョンAESC、車載用リチウム電池の生産能力4倍に
  → エンビジョンAESC、茨城にEV電池工場 投資500億円: 日本経済新聞
  → EV電池三国志、中国勢独走に韓国3社追随 日本は地盤沈下 | 日経

 この会社にパナソニックの電池事業を売却して、売却代金の一部はこの会社の株式で受け取ることにするのが、パナソニックとしては最善だろう。(経営権は放棄するべきだ。無能経営なので。)

posted by 管理人 at 22:15| Comment(2) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
パナソニックに電池事業を売却せよとタイトルで、内容はパナソニックは日産の子会社に電池事業を売却すべきだでは正反対では
Posted by ファミマ at 2021年12月01日 07:39
 ご指摘ありがとうございました。訂正しました。

(誤)パナソニックに
(正)パナソニックは

 ――

 なお、エンビジョンAESCは、日産の子会社ではありません。日産の持株比率は 20% だけであり、中国の会社が 80% を握って経営しています。
 日産が経営していたころには、成長できなかったのですが、中国人に買収されたら、成長できました。純粋に、経営力の差かな。

 ※ 会社の社長は日本人で、会社も日本にあるが、親会社の指揮下にあるので、経営は中国式だろう。

Posted by 管理人 at 2021年12月01日 09:14
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