前項では「バリアフリー化のために、鉄道料金を 10円ほど値上げする」という方針を示した。その代案がある。鉄道に身障者割引を導入することだ。これなら費用ゼロで、同等の効果を出せる。
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前項の「鉄道料金を 10円ほど値上げする」という案は、莫大なコストがかかる割に、効果はほぼゼロである。都市圏外の無人駅を利用したがる身障者など、ほとんどいないからだ。結局、「莫大な費用をかけて、効果はゼロ同然」という無駄の極致をやることになる。
とはいえ、身障者への対策を何もしなくていい、ということにはならない。何らかの対処はした方がいい。とはいえ、費用はなるべく抑えたい。
すると、「困ったときの Openブログなら、何とかしろ」と読者は言うだろう。そこで提案しよう。こうだ。
「鉄道身障者割引を導入する」
具体的には、こうだ。
「オフシーズンの平日に限り、身障者を対象として、鉄道料金を3割引にする。ただし、乗降する駅は、バリアフリーの駅に限る」
これで問題は一挙に解決する。
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ではなぜ、割引によって解決するのか? バリアフリーの駅をひとつも増やさないのに、どうして問題が消えるのか?
それは、発想の転換による。こうだ。
「問題が生じるのは、バリアのある駅を身障者が利用するからだ。ならば、バリアのある駅では、バリアをなくすかわりに、身障者をなくせばいい。たとえバリアが残っていても、バリアを使う身障者が消えれば、問題も消える」
A&B で問題が生じるなら、
B を消すかわりに
A を消せば、
A&B の問題は消える。
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では、バリアのある駅で身障者を消すには、どうすればいいか? こうだ。
「バリアのある駅から、バリアのない駅へ、身障者を移す」
そのための方法が、価格による誘導だ。
「バリアのある駅でなく、バリアのない駅を使えば、3割引」
これによって、身障者は、バリアのある無人駅を使うのをやめて、バリアのない有人駅を使うようになる。こうして、「身障者がバリアのある駅で困る」という問題は消える。バリアフリーの駅をひとつも増やさないまま、利用する人を動かすことで、問題を解消する。
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これはどういうことか? そもそも、身障者が無人駅を使う理由は、「料金が安いから」だった。別に無人駅をどうしても使いたいという特別な理由があったわけではない。安くて楽しめる旅館があれば、どこでも良かった。ただし、熱海のような大きな駅のそばにある旅館は、値段が高い。無人駅のような鄙びた駅のそばにある旅館は、値段が安い。だから、そういう安い旅館を使おうとして、無人駅を利用したくなっただけだ。
しかし、無人駅を使う理由がただの「安上がり」ということであれば、一人の身障者に千円の利益を与えるために、首都圏の乗客が千億円も払うというのは馬鹿げている。これでは千億円の費用をかけて、千円の利益を生む、というようなものだ。
だから、そんなことはやめてしまえばいい。かわりに、「バリアのある無人駅を使わなければ、料金を千円引きにしますよ」というふうにすればいい。これによって、千億円の費用をかけるのと同等の効果が生じる。
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問題は、費用だ。費用はどのくらいになるか?
「一律、3割引」というふうにすれば、それによる収入減が生じるので、かなりの額のコストがかかる。千億円とは言わないまでも、何億円かはかかりそうだ。この方法はあまりよろしくない。
「平日のみ、3割引」というふうにすれば、コストはほとんどかからない。なぜか? 理由は、次の三つだ。
(1) 車椅子の乗客が少し増えようが増えまいが、鉄道会社にかかる費用負担はまったく変わらない。(電気代や減価償却費などは変わらない。)
(2) 平日ならば、もともと乗客はガラガラだ。空気を運んでるようなものだ。この状況でなら、車椅子の乗客が少し増えても、新たな損失は生じない。(満員ではないので、「得べかりし利益」などはない。)
(3) 料金値下げによって、新たに車椅子の乗客が増えれば、その分、鉄道会社の収益は増える。値上げしても、人数が増えるので、収益の総額はかえって増えるのだ。
以上の三つのうち、特に (3) のことが重要だ。街のスーパーでは、値引き販売することで、たくさんの客を呼集めて、収益を上げる。ここでは、「値下げしても、客がたくさん来るから、収益は上がる」という構造がある。これとどうようのことが、(3) でも成立するのだ。つまり、「値下げして収益アップ」だ。
このことは、もともと客が来ない平日に限って値下げすることで、実現する。
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結論。
バリアフリーの駅を利用することを条件に、車椅子の乗客には身障者割引を実施すればいい。そうすれば、バリアのある駅を利用する身障者はいなくなるから、バリアのある駅の問題は解消する。駅を変えるのではなく、人を移せばいいのだ。そうれば、費用はゼロ同然で、同様の効果を出すことができる。
費用はゼロ同然だが、場合によっては、費用負担が生じるどころか、黒字になるかもしれない。割引によって利用者が増えれば、収入総額はかえって増えるからだ。
これで、一石二鳥となる。
[ 付記 ]
対象となる身障者は、車椅子を利用するような、下肢障害のある障害者に限る。
障害者手帳の有無は問わない方がいい。高齢で、下半身がやや不自由で、「ときどき車椅子を使う」という程度の人も含むべきだ。とにかく、車椅子を使うこと自体が、利用の条件となる。
なお、付添人1名も割引対象とするべきだろう。
利用に当たっては、対象の駅が限定されるので、あらかじめウェブサイトで確認できるようにする。このとき同時に、その駅がバリアフリーであるかどうかも確認できる。だから、「したしれべもしないまま、エレベーターのない無人駅にいきなり出向いて、そこでトラブルが生じる」という問題は回避できる。
ここでは、「IT情報を提供することで問題を解決する」という先の解決策が、自動的に取られることになる。
→ 鉄道駅の車椅子対応: Open ブログ
2021年11月24日
過去ログ
では、それをデフォルトとした上で、さらに新制度を上乗せすればいいでしょう。5割引にした上で、さらに3割引。
・ JR東 は、100km 以上の場合に限る。
・ 私鉄はそもそも 100km にならないので対象外。
→ https://x.gd/Dn6CV
都市部周辺に行く場合には、割引は得られないこともあるようです。東京から熱海は 104km なので、ぎりぎりセーフ。横浜から熱海は 距離が足りない。
という指摘もあるが、それは、本項の目的には合致しない。
本項の目的は「身障者割引を導入すること」ではなく、「身障者割引のある駅とない駅の双方を作って、ない駅から、ある駅へ、誘導する」ということだからだ。
ここでは、両者に差を付けることが大事だ。だから、全部一律に身障者割引を付けるのでは、意味がないわけだ。(誘導効果がないので。)
ここでは「差を付けることが大事だ」ということに留意しよう。