2021年11月22日

◆ 帝国ホテルとモダニズム建築

 帝国ホテルが建て替えられることになり、その新しい外観が公開された。

 ――

 朝日新聞の記事から。
 帝国ホテルは、建て替え計画を発表している東京・日比谷の「帝国ホテル東京」の新本館に、パリが拠点の建築家・田根剛さん(42)のデザイン案を採用すると発表した。歴史様式をまとったような、重厚かつ彫りの深い外観だ。
 同ホテルは、国内外の建築家による指名コンペを経て田根案を選んだ。
( → 帝国ホテル、歴史様式まとう新本館 建て替えへ、田根氏のデザイン案採用:朝日新聞

 具体的なデザインは、下記だ。


imperialhotel.jpg
出典:Atelier Tsuyoshi Tane Architects


 現在は三代目なので、新デザインは四代目となる。二代目は、下記に示してある。「近代建築の三大巨匠」の一人、米国のフランク・ロイド・ライトによるものだ。
  → 二代目本館の画像

 今回の田根氏のデザイン案は、この二代目の意匠を尊重することで、現行のモダニズムふうの淡泊なデザインを脱して、装飾性のある重厚なデザインを採用したそうだ。
 建築的には、装飾の少ないモダニズム的な3代目ではなく、ライトによる2代目を検証した。
 「東洋の宝石」と呼ばれた2代目の装飾性と流動的な空間に加え、ライトが影響を受けた、マヤ文明や19世紀末の米シカゴの高層建築に表れた傾向も意識したと、取材に明かした。

 以上は朝日の記事によるが、他にも参考となる情報が見つかる。
  → 帝国ホテル 公式発表(PDF)

 建築業界の解説は下記にある。
  → 帝国ホテルが東京・新本館のデザインアーキテクトに田根 剛氏を起用、2036年度完成を目指す

 ――

 さて。このデザインについては、私は歓迎できる。大いに称賛できると言える。

 当然ながら、以前の「歌舞伎座の改築案」のような物議をかもすことはないだろう。あの当時は、伝統的な重厚なデザインだったのが、単純で簡素なデザインに成り代わった。私も本ブログで強く批判したものだ。
  → 歌舞伎座の改築: Open ブログ

 その後、世間の大々的な批判を浴びたので、歌舞伎座は改築案を引っ込めて、従来デザインにうり二つの新デザインを出したので、世間の批判は収まった。
  → 歌舞伎座の改築 2: Open ブログ

 一方、今回の帝国ホテルでは、最初から重厚なデザインになったので、批判を浴びることもないだろう。私としてもこのデザインを「素晴らしい」と称賛しておこう。

 ただ、私見を言えば、このデザインは、東京都庁舎に似ていると思う。(内緒の悪口を言えば、東京都庁舎の方がずっと上だと思うけどね。)
  → 東京都庁舎の画像

 ついでに、三代目のデザインも示しておこう。
  → 三代目(現行)の画像

 これは、単純で簡素なデザインだ。モダニズム建築の系譜にある。モダニズム建築については、下記で言及しておこう。



 【 補説 】
 モダニズム建築(近代建築)は、20世紀初めごろに生じた建築運動の流れに沿うもので、次のように説明される。
 ル・コルビュジエは、「新しい建築の5つの要点(いわゆる近代建築の五原則)」としてピロティ、屋上庭園、自由な平面、水平連続窓、自由な立面を挙げたが、これらは鉄筋コンクリート造や鉄骨造という新しい技術によって、石造・煉瓦造が持っていた制約から自由になったことで可能になったものである。モダニズム建築の多くは装飾のない直線的構成を持つ立方体を特徴とし、「豆腐のような」「白い箱」と揶揄される。機能的・合理的で、地域性や民族性を超えた普遍的なデザインとされた。
( → モダニズム建築 - Wikipedia

 このような建築の意味は、現代人にとっては当たり前すぎるので、どこに特徴があるのかはわかりにくい。現代の建築のほとんどはモダニズム建築から派生したものだからだ。
 だが、その本質は、伝統建築と対比するとわかる。


traditional-house-in-the-german.jpg
出典:Depositphotos


 伝統建築とは、石造りの重厚な建築であって、小さな窓をもつものだ。たいていは縦型の窓をもつ。雨戸があることもある。ガラスは昔は高価だったので、大きな透明なガラスの変わりに、ステンドグラスを使うこともあった。

 これに対して、モダニズム建築では、水平連続窓をもつ。広くて明るい窓だ。それによって明るい採光性を得る。そして、それを可能にしたのは、コンクリートとガラスだ。(このころになって大きな透明なガラスが安価に入手できるようになったらしい。)

 伝統建築は、今で見ると、縦型の窓にガラスが嵌め込まれていることが多い。だが、私が思うに、これは窓ガラスだけをあとから嵌め込んだのだろう。建物ができたとき(19世紀以前)には、透明なガラスは採用できなかったから、木の窓(雨戸)と布などでガラスの代用としていたはずだ。

 一方、日本では、窓には紙の障子を採用していた。ガラス窓の普及は、関東大震災のあとになってからのことだ。

 モダニズム建築は、登場したときには、明るい採光性などを備えて、合理性が高かったので、非常に新しい革新的な印象をもたらした。しかしそれがあまりにもたくさん増えすぎたので、今度はそれが「マッチ箱のように平板でつまらない」というふうに低評価されることにもなった。そこで「脱・モダニズム」を唱える近年の建築が出てきたわけだ。
 今回の帝国ホテル案も、その流れの一貫にある。



 [ 余談 ]
 「日比谷という一等地にあるのに、どうして超高層ビルにしないんだ。容積率がもったいないだろ」
 と疑問に思ったが、すぐ隣(冒頭画像の奥側)に、帝国ホテルタワーという超高層ビルがある。たぶん、容積率を、このビルに移転したのだろう。だからホテルの方は高層にはしないわけだ。

 ちなみに、帝国ホテルタワーは、安いホテルかと思ったが、そうではなくて、オフィスビルである。ただのオフィスビルにホテルという名前を付けるのは、センスがないところだ。
 「どうせなら、インペリアルタワーにすればいいのに」と思って調べたら、実は正式名称がそうだった。「帝国ホテル インペリアルタワー」である。その略称で、通常は「帝国ホテルタワー」と呼ばれている。「インペリアルタワー」に比べて、1字少ないだけだが。
 ちなみに、インペリアルタワーという建物は、兵庫県にもある。どんなにすごい建物かというと、これだ。
  → インペリアルタワーの賃貸情報
 さすがに関西人はすごい。

posted by 管理人 at 23:44| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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