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派遣社員の給与決定権は、通常は会社の人事課などにある。現場の課長レベルにはないのが普通だ。現場の課長レベルにあるのは、正社員の人事考課ぐらいであって、直接的には給与を決定する権限がないのが普通だ。
そのせいで、派遣社員がどれほど優秀であっても、その派遣社員の給与を上げることはできない。だから、その派遣社員が「やめます」と言っても、引き留めることはできない。「1人で3人分の仕事をします」というスーパー派遣社員がいれば、給料を2倍にしても引き留めたいところだが、そうすることはできない。かわりに、その社員がやめたあとは、凡庸な派遣社員を3人雇うことぐらいしかできない。あるいは、凡庸な派遣社員が1人になって、業務が回らなくなったり、正社員が残業だらけになったりする。
こういう問題を解決するには、冒頭に述べたようにすればいい。つまり、こうだ。
「派遣社員の給与決定権は、現場(の管理職)レベルに委譲する」
具体的には、課長レベルだ。
こうして、課長レベルの判断で、有能な派遣社員には高給を払えるようにするべきだ。

ただし、課長がやたらと給与を上げすぎるのも問題だ。そこで、その点をチェックする仕組みも備えるといい。
・ 1人の優秀な派遣社員に倍額を払う
・ 3人の凡庸な派遣社員を雇う
・ 他の正社員の負担が増えて残業代が大幅増
・ 業務が回らなくなって、業務破綻
これらのどれにするかを、課長が決めればいいのであって、その決定を課長よりも上の上司が評価すればいい。(課長を評価する)
もちろん、馬鹿な上司(部長)もいて、こう結論するかもしれない。
「超優秀な派遣社員を、並みの給料で雇え。それが最善だ」
そう命令した上で、それを実行できなかった課長に対しては、
「業務未達成」
と評価して、この課長を降格する(または減給にする)。
しかし、このような馬鹿上司は、それ自体が無能な証なので、こういうふうに馬鹿げた評価をした上司は、やがては解任されるだろう。そして、いったん降格または減給になった課長が、馬鹿上司のあとを襲って、新部長に昇格するだろう。
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というわけで、現場の管理職レベルに給与決定権を与えれば、万事はうまく行くのである。
※ 派遣社員だけでなく、他の非正規雇用の従業員を含む。期間従業員・非常勤社員・年度任用職員など。
[ 付記 ]
このことの本質は、「能力主義を取れ」ということだ。特に、給料を下げるときばかりでなく、給料を上げるときにこそ、「能力主義を取れ」ということだ。
なのに、企業は給料を下げるときにだけ「能力主義」と唱えて、給料を上げるときには「能力主義」と唱えない。むしろ、あげるときには、なぜか平等主義になる。……そういうところが、日本経営の駄目なところだ。
思えば、次項で示す芸能タレントもそうだ。こういうのは日本に根づく悪習とも言える。だから世界レベルの競争では、日本はあっさり負ける。
その逆が、サムスンだ。サムスンは韓国では傑出した高給と好待遇を与える。優秀なエリート社員には王子様扱いするような好待遇を与える。(大学の新卒でも専属秘書が付く。)……だからこそ、国中のエリートがサムスンを目指して、集中する。こうして、国中のエリートを集めて、技術を磨いたことで、(この分野で)世界一の企業になった。
結局、経営者のレベルは、韓国と日本では大差がある。日本の経営者は、馬鹿ばかりなのだ。やくざな芸能事務所と同レベルで、従業員のピンハネ(搾取)をすることしか考えていないのだ。
日本がどうして衰退したのかは、次項の話を見ればわかる。そこにあるのは、ただの芸能界の話ではなくて、日本全体の縮図なのである。
→ 韓国に負けた日本エンタメ: Open ブログ(次項)
派遣先の会社は「〜〜〜の業務ができる人材を派遣してください。契約金はいくら」という交渉を人材派遣会社とネゴして合意したらその契約金を支払い、派遣社員を受け入れます。派遣社員を指揮する権限はありますが評価や選考する権限はありません。
(実際には見学会と称して候補の派遣社員を事前に面接したり、フィードバックと称して評価を人材派遣会社に送ったりしていますが、最終的な決定権は人材派遣会社側にあります。派遣先の会社がそれに満足できなければ、その人材派遣会社を切って別の人材派遣会社にスイッチすることになります)
そもそも派遣社員に頼ろうとする経営者がアホである、という主張には賛成です。
派遣会社を辞めさせて、正社員にスカウトするとか、高額の非常勤社員として直接雇用するとか。
文中でも「その社員がやめたあと」と明示しています。
やめる前(雇用期間中)は、契約書に従うのは、当然のことです。当り前なので、いちいち書かなかったけれど。