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前項の動画を見ても、立憲の代表候補4人の違いはどこにあるか、わからない人も多いだろう。そこで、私が解説をしよう。
「政策の違いはどこだ?」
と思う人がいいだろうが、実は、政策の違いはほとんどない。どれもがリベラル系の政策であって、大同小異である。ちょっとぐらいは差があるが、これといって目立つような差があるわけではない。
4候補の政策の違いについては、朝日新聞の対比表がある。
→ 立憲再生、4氏の立ち位置 逢坂氏、小川氏、泉氏、西村氏:朝日新聞
これを見ればわかるように、たいして差があるわけではない。しいて言えば、西村が財政拡大に慎重であるらしい、ということだけだ。他の3氏は、財政拡大論者であり、大差はない。
- 《 注記 》
小川淳也候補については、「緊縮財政主義者だ」という解釈が広まっている。だが、これは誤解である。彼は「消費税 25%または 100%」という政策サンプルを取って、「若者へのアンケートでは、高福祉・高負担の政策を選ぶ人が多い」という統計データを示しただけだ。彼自身は何も方針を示していなかった。
日本では「増税 = 財政緊縮」という旧・民主党の方針が有名だったので、その図式で解釈されることが多いが、小川達也自身は「増税 ≠ 財政緊縮」をはっきりと明示している。(増収分はすべて再分配に回す、と言っている。)

では、政策ではたいして違いがないとしたら、何が違うのか? それは、政治というより、選挙の戦術の違いだ。今回の4人の会見を見ればわかる。
逢坂と西村は、それぞれ、政策を語った。政策の傾向としては、特に独自性はない。まあ、普通のことを普通に語っているだけだ。だが、小さなテーマについて語っているところが、いかにも小物感があふれる。市長選レベルだね。
泉は、自分の政策を語るというより、「他人事」扱いで語っている。まるで評論家だ。立憲の代表候補が語っているのではなく、テレビのコメンテーターみたいだ。自分が何をしているか、わかっていない感じだ。完全に「場から浮いている」という感じ。論外である。党首になるよりは、記者にでもなった方がいい。
小川は、他の三人とは、全く違っている。彼の語るのは、政策ではない。もともと独自の政策があるわけではないから、政策を語ろうとしているのではない。そもそも、彼の狙っていることは、他の三人とは全く違う。彼の話のテーマはこうだ。
「いかにして選挙に勝つか」
これが彼の話のテーマだ。つまり、「目的は政権の獲得だ」と狙いを定めている。それが最優先だと見なして、そのために議席を増やそうとする。換言すれば、選挙で勝とうとする。要するに、彼だけがプロであって、他の三人はアマチュアなのだ。
これと同趣旨のことは、私が前に述べたことがある。
→ 正しいことを唱えるべきか?: Open ブログ
立憲が選挙で負けたのは、「正しいことを語る」ことを目的としたからだ。だがむしろ、「議席を増やす」ことを目的とするべきだ。……私はそう述べた。
そして、私が述べたのと同じ方針を、小川は取ろうとする。
たとえば、LGBT の問題だ。枝野はこれについて「正しいこと」を語ろうとした。そう語れば、自分たちの正しさが証明され、自民党の間違いが際立つ、と考えた。だからこそ、あれやこれやと、「自分たちの正しさを証明する」ことを語ろうとした。
だが、それがいくら正しくても、LGBT の人口はあまりにも少ない。人口の 1〜3%ぐらいだろう。ごく少数者だ。そういう少数者のために働こうと訴えても、たいていの人は馬耳東風と聞き流す。枝野が「正しいこと」を語ろうとすればするほど、たいていの人は立憲を無視する。かくて、票を失い、議席を失う。
だが、それでは駄目なのだ。立憲がなすべきことは、正しいことを語ることではなく、議席を増やすことなのだ。恵まれない少数派を優遇することではなく、大多数の一般人を豊かにすることなのだ。……そこを目的とするべきであって、狙いをきちんと見据えることが必要なのだ。
それを理解したのが、小川だった。だから彼は、そういう戦略を取って、訴えた。
他方、他の3候補は、「正しいことをします」というふうに政策や方針を唱えた。自分がいかに正しいかを訴えようとした。この3人は、立憲がなぜ先の選挙で惨敗したかを、理解できなかったのである。
[ 付記 ]
デマ・サイトの「痛いニュース」が、またデマ記事を書いている。
→ 痛いニュース(ノ∀`) : 【立憲代表選】小川氏「とにかく自公が嫌がること、自公にとって最も脅威となることを野党がまとまってやっていく」
ここでは、正しく読み取れば、次のことがわかる。
「自公が嫌がること、自公にとって最も脅威となること」= 共産党との選挙協力
共産党との選挙協力をして、候補者を一本化すると、自公の候補者が落選しそうになるので、自公はすごく嫌がるし、自公にとって脅威になる。だから、それを続ける……というふうに述べているわけだ。ごく当たり前のことだ。
ところがこれを、「ただのイヤガラセ」「悪趣味」「いじめ」というふうに誤読する人がいる。痛いニュースのデマに、まんまと引っかかってしまったわけだ。
橋下徹であれ、右翼系のデマサイトであれ、やたらと小川を攻撃する。それはつまり、「小川だけが怖い相手だ」と見据えているからだ。「他の3人は雑魚キャラだから、簡単に撃破できる」と楽観しているわけだ。
彼らにとっては、雑魚キャラよりは、ラスボスこそが怖いのだろう。
→ 小川淳也 涙のギリギリ出馬“舞台裏” 今も残る排除の禍根と立民特有の体質
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/11220559/?all=1
→ https://digital.asahi.com/articles/ASPCP6R37PCPUTFK004.html
これで逢坂は落後。西村はもともと論外。
となると、小川と泉の一騎打ちになりそうだ。
> 1人2ポイントを持つ国会議員(計280ポイント)では21日現在、泉氏が78ポイント、小川氏が54ポイント、逢坂氏が46ポイント、西村氏が42ポイントと続いている。約2割の議員が、態度を明らかにしていない。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20211121-OYT1T50199/